私は驚いている 9
目の前に置かれた指輪がたくさん入った箱に私は目を見張った。
守護リングって言ってた。
守護リングって何?・・・後で説明するって・・・
・・・あぁ私がこの辺の人じゃなくて,説明しなくては分かってないってことを知られたくないのかな。
「倫子ちゃんはどんなのが好き?」
実は,私は指輪が好きだ。いろんな物を持っている。でも,年のせいか,指の節々が毎年ごつくなってきて,お気に入りもはめられなくなってきていた。毎年サイズ直しするのもしゃくで,最近はほとんどしていなかった。
「選んで。」
倫太郎君が即す。
「でも」
「指輪は嫌い?」
「好きだけれど,この指ではサイズが・・・」
「それでもいいんだ。一番気に入った物を選んで欲しいんだ。」
指輪には値段がついていない。
「値段なんか考えなくていいんだよ。」
「でも,倫太郎君は,まだ学生でしょ。自分のお金なんて無いはずだよ。」
倫太郎君は苦笑していった。
「大丈夫だよ。僕は結構稼いでいるんだ。」
???
「僕はね。優秀な占い師なんだよ。」
???
「この話は家に帰ってからゆっくりと。」
家に帰ってから聞く話がまた増えた。
女の子達のこと,守護リングのこと,そして占い師のこと。
とりあえず,指輪に関心を戻さねば。きっと選ぶまでここにいるに違いないから。
「これなんかどうかなぁ。」
倫太郎君が見せてくる。金色に光る花々の中心にルビー,サファイア,エメラルド,ダイヤを配している華やかな指輪だ。いやちょっとそれは・・・
「じゃあ,こっち。」
倫太郎君は,花の形をした指輪を薦めたいらしい。
薦めてきた3つの指輪は,どれも華やかできらきらしい花がデザインされている。
花の指輪が好きなのかな。
・・・君の指に花の指輪がはまっている幻を見たのさ。つぶやくように言ってにっこりする。
「どんなのだったかよく覚えていないけれどね。
だってもう君のほうで言うと50年も前の話だからね。」
耳元で倫太郎君がこそこそ話す。くすぐったい。
「もう・・倫太郎君が決めたのでいいよ。」
倫太郎君は嬉々として最初に選んだ指輪に決める。派手だなぁ。
サイズを確認したら8号だった。昔の指輪のサイズだ。多分これで大丈夫・・・かもしれない。最終的には11号くらいにしないと入らないと思うんだけれど。
「鎖に通したいので,今度は鎖を見せてください。」
倫太郎君の言葉に,箱を片付けたお店の人が,別の箱を運んでくる。今度の箱は2個だけ。
全部金の鎖だ。鎖にもいろいろあるよね。うん。
倫太郎君は40センチくらいの少し太めの鎖を選んだ。
すぐ切れないようにするためだよ。なんて笑っている。
そのまま指輪を鎖に通し,私につけてくれる。
「後で祈りを込めるよ。」
「祈りを込める?」
これまた聞き慣れないような。
「後で話すよ。」
4つめの,後で話すよ,だ。
箱を片付けた店員さんがお茶を出してくれた。ハーブティーにミニケーキだ。
美味しい。
どうもこの体はものを食べるときこぼしやすい。今もケーキがお皿にぽろぽろ落ちる。お皿を持ち上げておいて正解だった。お皿重い。




