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金色の 菜の花畑の 向こうから    作者:
第1章 私は疲れている
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私は疲れている 1

初めて投稿します。

よろしくお願いします。



終了したこのお話を開いてくださってありがとうございます。


異世界の話からお読みになりたい方は

第2章からお読みください。


影についてだけお読みになりたい方は,「私は目を覚ます」4.5辺りからお読みください。





 私は疲れている。

「あと3ヶ月。」

 ため息とともにつぶやきがはき出された。

 少しだけ薄暗くなった教室の中はさっきまで賑やかに騒いでいた子ども達の影もなく,しんとして冷たい。


 机上に置かれたままのプリントの束をつかんで立ち上がると,私はストーブや電灯を確認してゆっくり教室を後にした。いわゆるオープン形式の教室はドアを閉める必要も無い。またため息が出た。


 私はこの12月で60歳になった。定年だ。もちろんまだ学校に残って仕事をすることも出来る。他の学校に行くことも出来る。だが私には延長をする気持ちはない。

このまま家に帰っても誰も待つ人はいないのに。


 ゆっくり階段を降りていく途中,まためまいが私を襲った。最近よくめまいがする。これも教職を続けようと思わなくなった原因の一つだ。


 不意に私の目の前に鮮やかな光景が浮かんできた。

 一面の黄色の花。あれは菜の花だ。菜の花の向こうから私を呼ぶ声が聞こえるような気がする。

 いつも一緒に遊んだあの子。名前ももう忘れてしまったけれど,坊主刈りの子どもが多い中で,少し長めの坊ちゃん刈りだったっけ。

「もう一度会いたいなあ。」

不意にそんな言葉が唇からこぼれる。え・・・


「り~んこちゃ~ん」「倫子ちゃ~ん」「倫子ちゃん」

「え?」

 いつの間にか私は,菜の花畑の真ん中にいた。

「最近ちっとも来なかったね。良かった。今日は遊べるだろう?」

 手に持っていたはずのプリントはどこにもない。手をまじまじと見る。ぷっくりした子どもの手だ。


「なにしてんのさ。行こうよ。」

 男の子はそう言って私の手をきゅっと握って歩き出した。

「や~い!倫太郎!また倫子と遊んでんのか~」

 あの声は淳二君。そうだ。この子の名前は倫太郎君だった。すっかり忘れていた。淳二君は,いつもいつも私が倫太郎君と遊んでいるとからかって突っかかってきた子だわ。


・・・60の今なら分かる。彼は私たちと一緒に遊びたかっただけなのだ。

「気にしちゃだめだよ。倫子ちゃん。あっちで遊ぼうよ。」

 二人でいつも地面を掘ったり,草をちぎって編んでみたり,草笛にして吹いてみたり・・・滅多にしなかったけれど,鬼ごっこもしたっけ。二人しかいなかったけれど。楽しかったなあ。


 目を開けたら階段だった。

 白昼夢?手にはプリントの束。そして・・・菜の花。

「うそ・・・」

 学校の階段。怪談?しゃれにもならないわ。疲れているのよね。今日は1本飲んじゃおうか。






 ため息。

「先生,僕の話を聞いてくださいよ~」

 目の前にはクラスの男子。

「ぼくはね~なんにもしてないんですよ~。なのにですね~,田辺君がぼくをおすんですよ~」

「何にもしてないって?」

「ま,ちょっとはしたかな~」

「何をしたの?」

「先生,察してくださいよ~」


 実に疲れる。何を察しろというのだこの子は。そこに押したという田辺君が参戦してくる。

「先生。亮介君が先にぼくのこと通せんぼしたんです。」

「なるほど・・・・」

こんなことを聞いているうちに,なんだかもう休み時間が終わってしまう。

 おや,あっちで別のけんかが始まったぞ。また呼ばれるわ。


「せんせ~」

「はいはい・・・・・」

 ハイは一回でね。・・・あれ誰が言った言葉だったっけ。


 めまい・・・不意にまた菜の花畑だ。


「倫子ちゃんってば,僕と遊んでいるとき淳二君のこと言わないでよ。」

「はいはい・・・」

「もう,ハイは一回だよっ」


 あれ?


目の前には今年の担任クラスの子ども達。

「先生~ 聞いて聞いて!!!」

「違いますよ~ぼくが正しいんです~。」






最後まで書いてから投稿しようと思ったのですが。




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