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バグった師匠に育てられて  作者: かーむ
7/13

ぼったくりは実力あってこそ


 国家魔導師になって配布されたものがあった。


 ひとつは宝物庫というド○えもんの四次元ポケット的な収納ボックス。腰にかけるポーチサイズの大きさ。


 帰ったら魔法具を入れようかなぁ。

 折角レールガンもどき作ったんだし。

 防衛手段として持っておいたほうがいいかもだし。


 ふたつ目は国家魔導師の刻印が描かれた銀のペナント。

 失くしそうなサイズだったので、サフィアさんがチェーンを繋げてネックレスタイプにしてくれた。

 サフィアさんマジイケメン。

 今は首にかけてある。


 初めてネックレスって掛けた途端に自分も周りも反応が変わるよね。

 自分はなんか高揚感に包まれるし、周りからは色っぽくなったって言われるし。


 まぁ悪い気はしないからいいんだけど。


「ただいまっ! 

 ユリウスじーさん。ちゃんと合格したよ!」 


 遭ってすぐ開口一番ユリウスに合格報告した。面食らったように固まってしまったユリウスじーさんもその一瞬だけで。

 すぐに喜んでくれた。 


「よくやったエリィ。さすがは俺の子だ」


 ニコラも父親特有の優しい笑みで包んでくれる。

 包容力ありすぎるぜ、うちの父親。

 お母さんだったら惚れてたよ。


「おめでとうエリィって言いたい所なんだけど……ニコラさん、父親として彼に何かプレゼントをしないのですか?」

「うっ……そうだよなぁ」


 サフィアの指摘にニコラが言葉を詰まらせる。

 俺が合格するのは余裕だと言ってその後を全く考えていない様子だった。  

 そういやニコラからなにか貰った覚えはないな。

 魔法とか基礎戦術は教えて貰ったけど息子に対するプレゼントとしては響きがイマイチかも。


 何故プレゼントという流れが産まれたか。それは予想以上に国家魔導師の資格はブランド化が進んでいたことから始まった。

 国家魔導師の称号は謂わばノーベル賞のような、国家規模で認められた資格である為、十三歳で資格を得た息子に対し親が何もしないと言うのは世間的に面目が立たないのである。


 記憶を絞り出すようにしてニコラは考えている。

 時折う〜んとか言ってかなり悩んでいるみたい。

 適当でいいのになぁ。

 真面目というか、不器用というか。


 ニコラは何時もひとつひとつの事をちゃんと考えてんだよね。


「エリィ。服を新調しようか 

 ちょうどいい店が中央にはあるから

 その……行くか?」


 俺の今着ているローブの先はほつれ、スボンも結構シワが目立っていた。


 まぁプレゼントなんだし、


「勿論です

 早速、行きましょう」



 

 ◇ ◇ ◇




 ニコラとふたりで裏路地のスラム街を歩いていくと如何にも一見さんお断りの店が見えてくる。

 赤に塗装された瓦葺き屋根に煙突がひとつ突き刺さっており異世界臭が強く印象的な建物だった。


『ぼったくられるのが悪い』


 と、看板に書いてあった。

 きっとサービス精神が旺盛なんだろうな。

 メリーさんが恋しいぜ。


「ふぅ、ついたぞ

 

 ……御免くださーい」


 ニコラは堂々と正面玄関から入店。

 うむ。こういう時は迷わないよねニコラ。

 店内は木のフローリングに壁はレンガというシンプルな作りだった。


「……おいおい、こりゃとんでもねぇ珍客じゃない」

「………………」


 中にいた店員は女性だった。

 

「え? メリーさん?」


 忘れるわけない。何年も通った肉屋にエプロン姿で構えていたあの姿。

 今そこにいる人は生き写しというよりもはや実物だった。


「んー? ニコラ誰だい、その子」

「あぁ俺の子だよキリばぁ。血縁関係は無いけど産まれたてから俺が育てた正真正銘、フラメル家の子

 メリーさんの血姉妹キリーさんだよ。エリィ挨拶なさい」

「ど、どうも

 エリファス・フラメルです」


 キリーさんは穏やかで(ほが)らかなメリーさんと違い、沈着な落ち着いた雰囲気が強い。うーん、色で例えるならメリーさんがオレンジでキリーさんは深い紫って感じがする。


「キリー・フォンテーヌ・アビゲイル

 私もエリィって呼んでいいかい?

「あ、はい。キリー……さん」

「なんだいなんだいニコラの子っていうからビックリしたわよ。結婚したんかと思ったわー」

「ははははー

 そんな簡単に女の子なんて捕まりませんってー」


 うそこけ。


 俺は内心毒づいた。

 ニコラが顧客の女の子にどんだけ告白されているのを俺が見てきたか。

 整った容姿にちょっと奥手な所が難だが絶対に相手を無視した行動を取らないダンディー。

 こんな奴がモテなくて誰がモテる。


 はぁ、俺にピンク色の展開はいつ来るのやら。


 俺ブサメンなんじゃね?って今更ながら焦る。俺ってメリーさんとか()れた人に好かれんのか……


 その後は開会懐かしかったのかニコラが目的から脱線し始めキリーさんと世間話が止まらないようなので「ユリウスじーさんに何か買ってもらおっかなー」って言ったら、慌てたニコラが見れたので機嫌直りました。




 ◇ ◇ ◇



 

 俺はトランクスパンツ以外ひん剥かれキリーさんに丈の採寸されています。


「へぇ……意外といい体付きしてるじゃないの」

「俺の息子だからなっ!」


 今一瞬ニコラがとんでもない発言をした気がしない。うん、しない。

 

 冗談はさておき前世とは比べ物にならない肉体美だよな。中学生とは思えないぜ。努力は報われるっていいよね。顔はむくれるけどなっ。


「ってちょっと

 その首に下げてるペナント……エリィちゃん国家魔導師なの? 

 レプリカなら君、いい趣味してるわよ」


 目を細め眉をしかめるキリーさん。

 見た目がメリーさんに似てるだけであって相手にし辛い。


「……さっき臨時試験を受けてきて今日から国家魔導師に成りました

 一応、治癒魔法が得意です」

「あ……あーうん。なるほどねー

 あーそれで今日は新しい服買いに来たんだねー」


 キリーさんは目が点になりながらも言葉を絞り出していた。


「ちょっと、うちの息子は次元が違うからねー」

「……はぁ、何となく予想はしてたけどこんな年端も行かないようなガキンチョが国家魔導師とはねぇ」


 ですよねー……。




 ◇ ◇ ◇




 上は手先の裾まで青を基調とするコートスーツ。前には四つの銀のボタン。

 黒のスラックスに白のバックル。

 キリーさんの仕立てた服は見た目の堅苦しさからは想像も出来ない動きやすさだった。

 キリーさん曰く魔法の発動が速くなる編み方があるんだとか。この服もその編み方を駆使して編み上げたらしい。


 此れだけの品をたった三十分やそこらで下で上げるのは(キリーさん)の所業かな。


「お代は金貨八十枚よ」


「……相変わらず容赦ないねー

 ちょっとくらい贔屓してくれよー」


 『ぼったくられるのが悪い』


 詐欺まがいに見えるがキリーさんの腕なら文句のつけようがないな。

 あんな仕立屋さん見たことないよ。

 だから自称ボッタクリなのだろう。


 お勘定。よろしく父さん。


 青のコートスーツとスラックスには予め『再製』が付与されているらしい。

 『再製』とは汚れたり破れたりしても魔力を流せば元に戻る機能。


「十日で五割増すけど貸そうか?」


 鬼かよ。キリーさん。

 十日後に金貨百二十枚になっちゃうじゃん。


「……一括で払います」


 父さんもとりあえず払えるだけの金持ってるなんてドン引きだよ。

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