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バグった師匠に育てられて  作者: かーむ
6/13

いろいろ盛り込むね

中央広場(セントラルパーク)

 

 露天商がひしめき、みんなワイワイしていて田んぼしかないようなエルトリアとは全く違う世界が広がっていた。


 でも片道鉄道で四時間はきつい。

 まだ身体ちっちゃいから良いけど将来どうなることやら。

 

 中央は真新しいというか、ファンタジー感が新鮮だった。森で狩りして田舎街に依拠していたんだから風景を目で追っちゃうのも仕方ないのかも。


「エリィ初めての中央(セントラル)の感想はどうだ?」

「……圧巻ですね。人と絶え間なくすれ違う時点でいろいろびっくりです」

「おう、そうかそうか。良かったよ悪いイメージが付かなくて」


 とりあえず適当に誤魔化す。元の世界の都心に比べたら大したことは無いけど、十三年過ごしたエルトリア感覚だとそんな感じだろう。 


 因みに異世界でありがちな門兵は市民証というカードですり抜けた。市民証はギルドカードとも併用できるんだとさ。後は口座を作れば銀行で預金も引き下ろしもできるらしい。ニコラには国家魔導師になれば専用の口座ができるからそこに登録すればいいと言われた。


 サフィアさんは俺に付き添って試験会場へ。何とももう予約をしてしまったらしい。試験は本当ならば五月のアタマに一回しか行わないのにサフィアさんは「史上最年少記録作るなら一年待つなんて勿体無い」と言って中央に連絡をつけ俺一人のために臨時試験を開かせた。電話越しのおにいさんの声が震えていたのは何かの良い間違いだろう。


 ユリウスじーさんは集会所大総統(ギルドマスター)という立場上、あまり軍とは仲が良くないようで今日はニコラと街をぶらついている、と言っていた。

 軍でもサフィアさんだけとは旧知の仲でニコラが仲裁しているせいかあきれつは見られないし、むしろ仲が良い風にも見える。

 ユリウスじーさんはめっちゃ行きたそうにしていたから帰ったらちゃんと報告しよう。それが合格の報告なら尚いい。



 中央広場(セントラルパーク)を歩くこと数十分。試験会場に到着。俺とサフィアさんは警備の人に市民証を掲示し仲へ入る。


 ちょうど建物の中には青い軍服を着た人達が二十人くらい。みんな強そうだなオイ。


 予想はしていたが入った途端にヒソヒソと聞こえてくるおまえ場違いコール。

 若すぎだの、サフィアも早まったなだの、おいおい弟かよだの、少しイラッとした。


 サフィアさんとはかなり長い付き合いがあるので家族とまでは行かないが俺にとってしてみれば至極姉に近い存在だ。


 ちょっと本気でやっちゃおっかなー。


「サフィア中佐。例の子とはその子で間違いないか?」

 

 その男からは見据えるような視線を感じた。喉もに伸びる傷跡、鋭利な何かで削られたのだろう。喉を切られてよく生きていたな。


「えぇ、そうですともファイルマン少将」

「……うむ。まぁよい。

 早速『治癒魔法』を見せてくれ」

「出来る? エリィ……」


 心配そうなサフィアさんを片目に

 台車に載せられた魚がやって来た。

 まだピクピクと動いており生を感じる。


 ザンッ


 ファイルマン少将が剣を立て魚に向かい振りかぶった。

 魚は寸断され、二つの肉塊になる。


 なるほど。

 これを治癒しろと。


「……?!

 治癒のための魔法陣は使わないのか?」


 は? みんなそんなの使うのか?

 

「特に必要ないんで……このままやります」


 とりあえず頭の残った方を治癒するか。難易度低いし。


 ムクムクと魚のない半分が生えてくる。

 ……うぇぇ、これいつ見ても気持悪い。


「こ、これは……」

「無詠唱、無円陣であのレベルの治癒……」

「速さも文句ない……」

「おいおい、あれで十三歳かよ」


 みんなが騒ぎ始めた頃、ファイルマン少将が前に出てくる。


「えっと……ダメでしたか?」

「……文句なしの合格だ。エリファス・フラメルを我が国の国家魔導師とする

 専攻は治癒魔法以外ないか?」


 あーこれはつまり他に使える魔法があるか聞いてるんだよね。


「特に無いです」

「ふむ。そうかでは奥の部屋へ来てくれ。書類を作らねばならんからな」


 「ファイルマン少将! ちょっと待って下さいッ!!」


 突然若い男の人が行く手を阻む。

 なんかめんどくさい予感。

 

「なんだね、君」

「確かに……確かに素晴らしい治癒魔法でした……

 ですが一般試験と同様に国家魔導師の資格を与えるなら他にも力量を見てからにしなければなりません!! 聞けばその子はまだ十三。成人すらしていないのですよ?!」

「必要ない。あれだけの治癒魔法が使える。それだけでいい」

「ッ。ですがッ!!」

「なら君は上官に向かって口答えするというか?」


 完全な縦社会の前に若い男の人は黙り込んだ。

 ファイルマン少将は立場的に結構上なのかね。

 まぁいいや。

 とりあえず合格したみたいだし。




 ◇ ◇ ◇



 

 俺とサフィアさんとファイルマン少将とその護衛の人が試験のあと執務室みたいな部屋にやってきた。


「まずご契約の内容ですが。エリファス・フラメル殿には国の依頼がかかった場合、それに準じて仕事をこなしてもらいます」


 護衛の女の人が言った。


「それはどれくらいの頻度になりますか?」


 俺にはブラック企業のトラウマがある。一日十時間治癒魔法使えとか言われたら泣くね。


「その年によってまちまちですが、エリファス殿の場合呼び出しの回数は大体二、三ヶ月に一回程度なるでしょう。多くても月に一回位になることを想定していてください」


 ……少なくないか?

 多くて月一の出勤で給料貰えるとか優遇されすぎだろ。

 でも言い回し的に月イチじゃ多い方ですよ。みたいな感じだよね。職務怠慢も良い所だな。まぁあんまり給料は期待できなだろうな。


「エリファス殿には呼び出しの時の成果に応じて資金を提供いたします。それ以外には月給としてエリファス殿が我が国の国家魔導師である限り、毎月聖金貨五枚を口座に納金致します」


 ………………聖金貨五枚?

 

 つまり………………金貨五百枚?


 つまり………………銀貨五万枚?


 え? こんなに毎月貰えんの?


「あの……不足ですか? 

 ならばもう少し上乗せすることも可能ですが……」

「い、いやいやいとんでもないとんでもない。これまでかってくらい十分ですよ」

「エリファスくん、君の腕ならこれから先、いくらでも金は稼げるよ。でもねそれだけ払うと言うことはそれに見合った君の価値があるのだよ。……つまり君の命は君だけのものじゃないのさ」


 サラッと怖いこと言い出すファイルマン少将。


「情けないですねファイルマン少将ともあろう御仁が。エリィを利用するのはあまりオススメしませんよ」


 サフィアさんの余裕な表情。


「ほぅ……ワケを聞いても?」

「エリィは集会所大総統(ギルドマスター)のユリウス・コルテオスから寵愛を受けています。そんな子供にちょっかいを出してみてください。国内の二大勢力が争うことになりかねませんよ……」


 ユリウスじーさんのノリならやりかねんな。


「分かった分かった。慎重な君がそこまで言うんだ本当なんだろう。私から上に釘を刺しておくよ」

「では私達はこれで」





 的な流れでエリファス・フラメルは国家魔導師になりました。

 因みに最年少記録を更新したそうです。俺の前は二十二歳が最年少記録だったのだとか。


 とにかく安定した職に就こうとしたらとんでもない高給料(ハイリターン)の派遣社員になりました。


 ユリウスじーさんとニコラと合流した後一緒にご飯を食べました。

 中央の飯屋はめっちゃうまかったです。




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