目標よりやる気でしょ
2015/01/23
前話加筆修正しました。
言うの忘れてましたね。というか俺自身もついこの間知ったんですけど住んでいる街の名前がわかりました。
エルトリアと言って国の西に位置せるようです。
そんでもってニコラの顧客の二人が俺の師匠になりました。ニコラも俺にとってすれば師匠みたいな立場ですが一応父親ポジションのようです。
一人目は重厚な鎧を着た白髪のおっさん。
名前はユリウス・コルテオス。いつも背中に大剣を背負っている元気なおっさん。聞く話によると集会所大総統らしい。
ユリウスじーさんは酒をラッパのみしながら……
「エリィはもう十三かっ!
時は過ぎるのがはやいなぁ
将来はウチのギルドに入るのだろう?」
ワイルド過ぎる。
ユリウスじーさん。
そしていつもながら仕草言動全てがおっさん臭え。
「おじさん何言ってんの?
ギルドなんて野蛮で秩序のない所にエリィを入隊させるわけないでしょ」
ユリウスじーさんを軽くあしらったのは二十代前半くらいの女騎士の人。俺が幼少期にニコラの正体を訪ねた人物だ。
名前はサフィア・グロリアス。
こちらは帝国軍突起戦力なんだとか。
レイピアの使い手で格闘技を幼少から親身に教えてくれた。
「ニコラさん。もちろんエリィは中央の騎士養成学校に通わせるんですよね?」
「……エリィ次第だからなんとも言えんな」
ニコラもこの二人には頭が上がらないようだ。ふたりは普通の人に比べてオーラが抜きん出ているというか、なんか大物感が漂いまくっている。ニコラはチラチラ此方に目配せをして俺の助け舟を要請しているがいつもの事なのでスルーする。
「肝心な話……エリィは何かしたい事とか無いのか?」
ユリウスじーさんが訪ねてきた。
そういえばなんだろうな。十三年異世界生活してきたけどこれと言った目標が無かったような。
ただ、強くなった。
「いや、なんで?」って言われると返す言葉が無い。
「冒険者とか? ですかね……
進路はそろそろ決めた方がいいんですか?」
「まぁね。何にとっても早いに越したことはないわよ」
サフィアさんはぶっきらぼうに言った。
結局ゴタゴタしてその日は何も進展しなかった。
いつも通り、といったほうがいいかな。
そうなるはずだったのだが……
「国家魔導師……」
確か国が直接雇用する魔法師で貴族並みの特待優遇されると聞いた気がする。
「「それだッッッッ!!」」
俺の一言で家族会議ならぬ軍法会議が始まりました。
◇ ◇ ◇
『国家魔導師』の制度が始まったのは今から五年前の事だったそうです。優秀な魔法師を国が直接雇用し、富と権利、魔法の開発資金など全て国が負担付与する代わりに『国家魔導師』は国の繁栄に尽くす。
『国家魔導師』の場合軍に入隊する訳でもなくむしろ魔法師の得意魔法によっては非戦闘員に分類される人も少なくない。
いかに国にとって有益か。反映に繋がるか、が『国家魔導師』の資格を得る為の重要事項と国では規定しているそうです。
前例で言うなら水魔法と土魔法で水田を開発し生産効率に貢献する、付与魔法による魔法具の開発、詠唱の簡略化など魔法による目覚ましい成果を挙げた人が国家魔導師に成っている事がある。何も人間兵器になれって訳じゃないようだった。
もちろん戦力的な意味で国家魔導師になった人もいる。
「あの……父上
国家魔導師は成ろうと思ってなれるものなのですか?」
「……そうか。エリィはこの世界の魔法事情に詳しくないんだったな」
悪かったね。俺だって生物図鑑全部覚えてるくらいしか取り柄ないもんね。
「大体この国だったら魔法を使えるのは十人に一人の割合だな」
お、意外と多いのか。
まだ消費税よりは低いな。
いい感じ10%。
珍しくもなく陳腐でもない塩梅。
「その中で魔法発動に詠唱を必要としない無詠唱魔法師は百人に一人。『陽』の系統を持つ者は一万人に一人の割合だ。どうだ?どれだけ自分が重宝されるか判ったか?」
はい……?
え……無詠唱が使える『陽系統』魔法師がこの国で産まれる確率は
……ざっと一千万分の一……
「……父上。念のためこの国の総人口を聞いても?」
「……三千万人はいる。間違いなく」
……この国にいても三人かよ。
おいおいまじですか。
オリンピックだったら自動的に表彰台だね。
「しかもエリィちゃんみたいに『陽系統三大魔法』を全部使える人なんて一つでもそうそういないわよ……」
サフィアさんその言い方は俺があぶくれてるみたいじゃね?
「うむ……『付与魔法』『治癒魔法』『錬金術』は『陽系統』に属しておらん奴でも会得は可能だが『陽系統』に属している奴すらまともに扱えんと聞く。
三つ全て使える奴など……魔法科学校を入学してないのにそれだけ使えたら国もこぞって動くだろうな……」
ユリウスじーさんが頭を抱えている。
そして俺は今更気づいた自分の価値。
さぁてどうすっかね。
こりゃ完全に軍事利用される的なアレだよね。
人体実験とかされるのか。
「父上。『国家魔導師』になる為には試験みたいなのが存在しますか?」
「うん。あるよ……基本的に中央に行って魔法をどれくらい使えるか簡単な試験がある」
なるほど。一応手柄だけじゃなくて目で実力を見ておきたいもんな。
ん?
つまり、その試験で『国家魔導師になりたいやつ』は得意な魔法を見せるわけだよな……
「つまり、俺は『治癒魔法』を専攻して受ければいいじゃないですか。そうすれば非戦闘員ですし、頭を使う魔法である限り洗脳も出来ませ……ん…………よ?」
みんなこっち見て口をパクパクしてる。
あれ、またまずったか。こりゃ。
「「「それだッッッッ!!」」」
えー。何時間か話をした後。
結局、目的も無く、力が有り余って、安定した正社員みたいな職を求めるエリィは『国家魔導師』の試験を受けに行く事になりました。
アレだよね。
将来の夢持ってても持ってなくても本人のやる気次第って言うよね。
おっと、これで試験落ちたら洒落にならないから勉強しとこーっと。