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バグった師匠に育てられて  作者: かーむ
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初めての狩り

 今日で九歳になりました。

 エリファスことエリィです。


 三年の間に『治癒魔法』と『付与魔法』を会得しました。勿論、身体能力もそれに比例して異様に伸びたはずです。


 やっぱり身長が伸びると色々と変わる。顔も段々と幼さが抜けてきた。

 金髪碧眼でニコラの真似して短いポニーテール。クォーターの様な西洋のほりが深めのパーツ、鼻が生前より少し高い、と言った感じの顔つき。


 まぁ不細工では無い気がするからいいか。自分で言うのも何だが『形容し難いナニカ』と侮蔑される様な底辺の顔面偏差値でもない、ハズ……。

 心配だ。

 南無阿弥陀仏南無妙法蓮華経。


 そして、何よりニコラとの組手でカスめる位に成長したのが三年頑張った良い証拠です。


 ニコラは俺が与えられた物をこなすと次から次へと鍛錬をランクアップさせてゆく、街を半日走ってろとか、今日は魔法座学やるかとか、鍛冶仕事手伝えとか、もうその日の鍛錬は全部ニコラの気分次第。お客様との話が長引くと俺はひとり寂しく一日自主練とかザラじゃない。


 なのに何でかな。ニコラに対して部活の顧問みたいに嫌味に感じたことが無い。


 ふむ、不思議だ。


 因みにまだ親父(ニコラ)に一度として勝負に勝ったことはない。



 属性魔法と無詠唱が完璧になった時点で次に、教わったのが『治癒魔法』と『付与魔法』だ。



 まず会得した『治癒魔法』は書いて字のごとく、傷や怪我を魔法をよって薬以上の速さで修復する万能魔法。修復というか、切れた腕が治る治癒レベルからして殆ど『再生』に近いかもしれない。


 次に『付与魔法』とは魔法のイメージを視覚できる情報に変えてモノに付与し、使いたい時に魔力を流せば付与した魔法が発動する、なんの変哲も無い想像通りの魔法。


 驚きなのは、付与するのは文字で無くても良いという事。『図』とかでもいいらしいけど幅を取るので基本『文字』がこの世界ではメジャーらしい。

 俺も基本、文字で付与する。


 ぶっちゃけ、この付与魔法は俺にとって得意分野にチートを上書きした様なものだと思う。

 例えば石とかに『爆破』と付与したいならニコラの世界の場合『 Eksplozije 』と文字数が異様に増える。その魔法にもよるが、時には俺の付与する文字よりも十倍近い量になる。

 しかし、俺は『漢字』を駆使して圧倒的に付与文字数を節約できる。


 何故この国は短い言語を生み出さなかったのか不思議だが、人の言葉に対する認識を(かなめ)にしている付与魔法は異国文字でも読めるだけでは付与する事は、出来ないのだとか。


 逆に言えば俺は、この世界の文字を使った付与魔法が出来無い。まぁ、使えなくても支障はないからいいんだけど。


 そして何より今日はニコラと共に森に出掛ける。


 いよいよ狩りをする。

 ようやく魔法無しで獣を相手に出来ると、ニコラに判断された。  

 増長するつもりは無いけど多分魔物の一匹、簡単に捻り潰せる。


「……エリィ緊張してるのか?」

「いいえ、父上。昂ぶってるだけですから!」


 街外れの森に入ってから武者震いしまくっていた。

 何せこの九年間、進んでも鍛錬、戻っても鍛錬。鍛錬鍛錬の日々だったのだから。正直飽きていた。


「……まぁ、エリィならもう何の問題もなく遂げちゃうんだろうな……」


 目を爛々とさせるエリィには父親のつぶやきは聞こえなかった。




 ◇ ◇ ◇




 森に入って三十分足らず。

 ふたりは足を止めた。


「父上」

「野生の狼……やれるか?」

「はい」


 黒い瞳に灰と白の混じった体毛をまとった体長二メートル前後の大狼。鋭利な牙を剥き出し、隙間から涎を地面に垂らす。


 反射的に腰にぶら下げた鞘に手をかける。

 つか、初狩りの子供に任せ過ぎじゃないか。犬嫌いなら尻尾巻いて逃げるよ。

 犬嫌いじゃない俺もブルブルしてるし。


 いや落ち着け、落ち着け。

 狩りの基本はバレたら無闇に動かず相手の動きに併せる、だ。


 突如、大狼の姿勢が前に傾く。

 獲物目掛けて一直線。

 コチラを肉としか思っていない様な乾いた目つき。


 

 早っ……!!?



 大狼が地を蹴り勢い良く間合いを詰める。直ぐに加速、瞬く間にトップスピードとなる。


 それと同時にエリィは土魔法を無詠唱発動。

 タイムラグ無しに大狼との間に土柱が発生する。

 咄嗟の攻撃に反応できる訳も無い大狼の頭蓋に土柱が無慈悲に命中。ニコラよりもひと回り大きな身体が宙に舞った。


「ふぅ……」


 一応、定番にはなるが、かいてもいない汗をかく。

 魔法を使い慣れといて良かったー。

 この世界の狼ってめっちゃ速いんだな。

 まぁ日本に狼居ないから対比しようがないけど犬なんてもんじゃ無いな。ありゃ。

 ニコラが目を細めてこっちを見てくる。

 あれ?俺なんか不味いことしたか。


「エリィ。何故剣ではなく魔法を使った……?」

「……え? いや狼、完全に剣ばっか見てたじゃないですか。だから魔法は警戒してないんだろうなーって……魔法使ったら不味かったですか?」


 きょとーんとして、お互い何か噛み合っていないのか変な間が出来る。


「……そ、そうか。うん良くやった。流石は我が息子だな」


 ニコラは大きな手でエリィの金色の髪をなじる。

 その動きに合わせてエリィは微小をこぼした。


 

 

 ◇ ◇ ◇



 

 ニコラ視点


 

 まぁ『治癒魔法』と『付与魔法』を教えて三年でモノにする様な我が息子だ。今日の狩りも上手くやるだろう、と高を括っていたが、初狩りはまさかの展開で幕を閉じた。


 俺がエリィくらいの歳なら迷わず、最初に手をかけた武器で戦った。力で優っているならそのまま潰すまでだ、と。

 (それ)をエリィは(おとり)にしたのだった。


 単に魔法の才に富み、剣術に優れた奴など探せばこの世界に腐るほど居る。


 ただ単純に火力で押し切る。

 確かにこれもれっきとした戦術だ。

 

 しかし、こんな事ばっかりやっている奴は自分より強い奴に出会うと、たちまちソイツの価値はなくなる。


 自分の持った力を、場に合わせ使い分ける、組み合わせられる、戦場で頭を使える奴は稀だ。実践経験を積んだ兵士ならともかく初めての狩りで出来る奴など見た事がない。


 それでいてエリィは増長して自己を見失う様子がまるで無いのも不思議だ。


「予想以上というか、なんというか。まぁなるようになるか」

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