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He burned on that day.  作者: ナダラ
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彼はギルドを訪れた

「知らない天井だ」

どうやら俺は誰かに拾われたらしい。

気がつくと何処かのベッドにいた。

なかなか立派な木造建築である。

内装しかみていないので断言は出来ないが。

にしてもまた気絶したようだ。

大方、気を抜いたところに流れてきた流木か何かがぶつかったのだろう。

雷に打たれても大丈夫なこの体も、脳を直接揺らされたとなると流石に耐えきれなかったようだ。

・・・俺多分滝から落ちてるな。生きて良かった。ほんとに。

今更ながら全身から冷や汗が溢れてきた。

「大丈夫ですか?顔色がすぐれませんよ。」

声のしたほうに振り向くと、真面目そうな美女が階段から此方の様子を伺っていた。

「あー大丈夫です。少々記憶が曖昧になっているようでして取り乱してしまいました。」

こういう真面目タイプには最もらしい理由をつけたほうが取り入りやすい・・・気がする。

「大丈夫なんですかそれ。こちらで把握できているのは貴方がシマ カズシ氏でありシマ家の現当主であるということなのですが。間違いありませんか?」

「はあ?そんな気もします」

どうやら俺は当主ということになっているようだ。

「あなたの所持品の中に300万ポルほどの金額が入ったギルドカードと家章が入っていたのでまず間違いないとは思うのですが。とりあえずこれを」

女性は赤い液体の入った瓶を差し出してきた。

「これはなんでしょうか?」

なんとなく想像はつくが一応聞いてみる。

「ポーションですよ。やはり相当強く頭をお打ったようですね。少々値は張りますが貴族の方のご家庭には必ず置いてあるんですよ。ご購入されますか?一本500ポルとなっています。」

まだ金の価値が分からない以上あまり買い物はしたくないんだが・・・正直味に興味がある。それに俺にギルドカードを返しているのだから悪い人ではないはずだ。

まあ本人にしかポルとやらを引き出せない可能性も無きにしも非ずだが。

「払いはこのカードでいいんですか?」

ベッドの枠の台に置いてあった免許証程度の大きさのカードを差し出す。

おそらくこいつがギルドカードなんだろう。

「はい。ここに魔力を少し流しながらコレに通してください。」

女性は何処からかカードリーダーのようなものを取り出した。

どこから取り出したのか非常に気になるところだが今はそれどころではない。

魔力とかどうしろってんだよ。やはり個人認証はあったようだ。

今俺は滝に落ちた事を実感したとき以上に冷や汗をかいている。

顔が急に悪くなった俺を見て焦ったのか

「だっ大丈夫ですか。早くポーションを」

女性はポーションの蓋を開けると俺に差し出してきた。

とりあえずポーションを一気飲みする。

するとどうだろうか、不思議と気持ちが落ち着いてきた。

どうやらポーションは気付け薬としても使えるようだ。

「ありがとうございます。大分楽になりました。・・・どうやら俺は記憶喪失のようです。」

「記憶喪失ですか。貴方はこの町に流れるリール川のほとりに倒れていたんですよ。何か思い出しませんか?」

滝から落ちましたとか異世界から来ましたとか正直に言ってみたいところではある、が法螺吹き男扱いされても困る。とりあえず話を変えることにした。

「まあ 男の独り身なんて記憶があろうと無かろうと対して変わりませんよ。それより魔力の通し方を教えてください。ポーションの代金を払わないとね。」

無難に苦笑で誤魔化してみる。

「記憶が無くなったのに何をヘラヘラしてるんですかっ、あなたは良くても周りの人たちが心配すると思わないんですかっ。」

激怒された。真っ赤になった女性がこちらを睨んでいる。

うん、確かに。至極最もな反応だ。

とりあえず謝罪

「っとそうだ。改めまして俺はシマ カズシ

あなたの名前は?

先程はすみませんでした。

恩人であるあなたが心配するんじゃないかと思ってはぐらかしてしまいました。

正直、俺は今とても不安なんです。記憶がないっていう事は自分が自分であることを証明できないという事だからですかね。

察するにそのカードを通すことが出来れば俺がシマ カズシだって証明出来るんじゃないかな。もし俺を許して貰えるなら、助けると思って協力して頂けないでしょうか。」

少し嘘の入った謝罪ではあるが、とりあえず謝罪しなければ彼女は怒ったまま立ち去ってしまうだろう。

こんな美人に愛想を尽かされては・・何てことは思っていない。

心配してくれている相手に対して少しおふざけが過ぎてしまった。謝罪は当然だ。

それに魔力について聞き出さなければ俺は買い物ができない。つまり生きていく事が困難になるのだから。

まあつまりは俺が慌てながら情けなく謝罪をしているのは仕方のない事なのである。

ダラカスさんは、俺が必死に弁解する様子を見てクスリと笑った。

「こちらこそ言い過ぎました。すこし取り乱してしまった様です。申し訳ありません。私はダラカス・サラス。ダラカス家の次女です。今はこのギルドに住み込んで働いています」

服装からして貴族っぽいのに住み込んで、という点も気になるが、ここがギルドだったということの方が驚きである。

俺はツイている。

「魔力の方は、そうですね。カードを認識させる程度でしたら指先から体に溜まった糸を出すイメージで一度やってみてください。」

言われた通りやってみる。

・・・なんか出てます。指先からウニョウニョ2、3本。青白いの出てます。

少しキモチ悪い。ギルドカードをつかんでみるとウニョウニョはカードに吸い込まれていった。

「これでいいんですか?」

「はい。それをこれに通してください」

カードを通した。

けたたましい音と共に赤いランプが明滅する・・・なんてことはなく。

ピーと音がなり無事ポーションの代金を払い込むことができた。

「ダラカスさんありがとうございます。どうやら俺はシマ カズシで間違いないようです。」

微笑んでみる。てか早くギルドにも行ってみたい。まったくダラカスさんが美人でなかったらさっさと移動しているところだ。

「良かったですね。私のことはサラスとお呼びください。ダラカスは響きが可愛くありませんから」

そういってダラカス・サラスはイタズラっぽく微笑んだ。

真面目系美女に不意打ちをくらうとは・・・不覚にも俺は固まってしまった。

非モテ男子のサガか。

我に返るとサラスは階段からこちらを見いて

「しばらくはここに滞在してください。ここの一階がギルド・ベレア地方南支部になっています。私がギルドマスターをしていますので困ったことがあれば来てくださいね」

俺はまた固まった。





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