その日彼は闘った
・・・気がつけば見慣れない木々に囲まれていた。
正直落下している時の記憶がない。
紐なしバンジーみたいなものだから仕方がない・・・と思いたい。
落下の衝撃で地面に少しめり込んではいたものの外傷は無い。
どうやら 雷に打たれても大丈夫な体というのはかなり頑丈らしい。
しかし、どうするか?最終的には人里を探さなくてはならない。
まあとりあえずは、この土まみれの体をどうにかしよう。
俺は川を探すことにした。
数分適当に歩いていると、水のせせらぎが聞こえてきた。
「しゃ。川だ。俺ついてんじゃね。」
服もそのままに川に飛び込む。
そのまま水を飲もうと、水面に顔をつけると1メートルほどのハサミをもったカニと目があった。
ヤバイ。なんだこいつ。なんなのマジ。
とりあえず逃げる。
心臓がバクバクしている、あんなもん相手にしたら死んじまう。
川から出たところで足首に違和感を覚えた
。
・・・ハサミがついている。
「えー」
いや驚いてはいるんだが、痛みがない。少々拍子抜けである。
両手でハサミを足首からはずす。
すんなりと取れた。
呆然としていると蟹がもう片方のハサミで眼球をエグろうとしていた。
体にはハサミが入らないと思ったのだろうか?
どうやらバカではないらしい。
反射的に足首から外したハサミを 眼球に向かってきたハサミに叩きつける。
「バグギャ」
中に身でも詰まっていたのだろうか少し湿った音とともにハサミは砕け散った。
すぐさま蟹は俺から距離を取ると、口?から泡を吐き出した。
泡はぷよぷよとこちらに向かってくる。
そうして俺に当たると爆発した。かわそうとは思ったが いかんせん 量が多すぎた。
かなり焦りはしたが、どうやらダメージはないようだ。
俺はカニにどうどうと歩み寄り、顔面っぽい部分を殴り飛ばした。
・・・カニはピクリともしない。
倒したようだ。見掛け倒しなのか?いや、この体が異様に頑丈なんだろう。
以前の俺ならサワガニのハサミで挟まれても悲鳴をあげていたからな。
しかしこいつは、どうやって食べればいいんだろうか。
前世?でもバイト上がりだったせいか腹ペコだ。
とりあえず生で逝ってみようと思う。
雷で死なないこの身体、食当たり程度で死にはしない・・・と信じたい。