その日彼は森に落ちた
眩しいな、まだ目がチカチカする。
とりあえず立ち上が・・・足がない。
っていうより体が浮いて・・・体もない。
意味がわからない。
叫ぼうにも声が出ない。
おそらく顔もないのだろう。
ははは なんだよこれ。なんで目無いのに周り見えてんの。
まじでなんなんだよ。
訳が分からな過ぎて泣けてくる、泣けないけど。
周りには何もない。白っぽい色のような気もするが何もないということが意識的に優先される。
俺はどうしたものかと必死でフワフワ浮かびながら状況把握に務める。
1.光った2.気付いた3.意識だけで浮いている
あれ、俺死んだんじゃね。
なんで死んだかは分からんけど、あの世じゃねこれ?しかも何もないって地獄とかそういう系なのか?
思考していると突然目の前が光だした。
最近、突然発光するのが流行りなんだろうか?
光は歪みながら徐々に人の形となり170cm程の髭もじゃのおじいさんとなった。神様のようだ。なぜかそう思える。
「お前が志摩数氏か?」
どう返したものか、と思っていると。
「よい。声に出さずとも文字を思いうかべよ。」
(私が志摩です。これで大丈夫でしょうか?)イマイチわからないがやってみた。
「大丈夫だ。伝わっておる。残念だがお前は雷に打たれて死亡した」
おじいさんは何処から現れたモニター?を指差し俺が雷に打たれる様子を見せてきた。
雷やべえわ・・・雷に打たれたあとには塵一残っていない。しかしながら残骸程度は何かしら残っていてもいいのではないだろうか。
「お前はまだ20だったな。まだ若い生き返ってみるか?」
(いいんですか?)
この じじいが俺を殺ったんじゃねーか?俺も完全には知らねーが、傘の鉄心ぐらいはアース的なあれで雷に打たれても残骸として残りそうなもんだ。そもそもなぜ信号に当たらずに俺に来やがった。
「よいよい。そんなに若いのに死んでは可哀想だ。ただこちらの神話体系から外れた世界に行ってもらうことにはなるがの。なにか望みはないか?」
さっきまではコイツ以外の神さんがやった可能性も考えていたが神話体系から外れた世界に飛ばすとまで言ってくるとなると・・・隠蔽っぽいわ。
田舎から都会の大学に進学し早2年。
これほどまでのチャンスがあったか。
ちまちまと勉強し棒に振ってきたこの人生、知識をそのままにやり直す事もできるのではないだろうか?
(では年齢を15歳辺りにして、それなりの家の戸籍をいただければと思います。つけくわえて23までの生活資金及び学費あと両親無しというのは可能でしょうか?)
「できるがそれだけで良いのか?」
(はい。それだけあれば楽に生活できるとおもうので。)
今の知識もって高校やり直してイイ大学の推薦貰えれば俺就職ラクラクじゃね。
「なんとも妙なやつじゃ。本当に他にないんだな」
人が遠慮してやってんのに妙とはなんだこいつ。
(では 俺が死んだとき食らった、不自然な雷に耐えられる体をお願いしますよ。)
意趣返しがてら嫌味を送ってみる。
「わかった、多くは語るまい。早く済まして互いにこのことは忘れよう。この光の輪をくぐればお前は新たな肉体を得る。」
まあ ギブアンドテイクだ。さっさと済ますか。俺は丁度人一人入りそうな光の輪を、とりあえず覗いて?みた。
・・・ジャングルが広がっている。
そういや神様は言っていた。こちらの神話体系から外れてもらうと。
俺のエリートコースはどうなるんだろうか?
(神様、これ人間いる世界ですか?てか言葉とかどうなるんでしょうか)
あわてて、聞いてみる。
「ちっ 他の神が気づきよった。言語は調整しといてやる。早く行け」
神に吹き飛ばされ俺は森へと落ちた。