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東方逆接触  作者: サンア
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居眠り話

書けちゃった。


 彼がベットに横たわっているのは、寝ようと思ったからではない。単純に押し倒されたのだ。


 両手首も掴まれている。傷付けないように、しかし充分な力を感じる。彼の細腕など軽く握り潰せてしまうだろう。


「ハアーッ、ハアーッ……ハアーッ……」


 荒い呼吸と一緒に口元をなぞる舌を伝い、よだれが彼の顔に落ちた。


 窓からの月明かりしかない光源がない部屋の中で、真っ赤な双眸が妖しく輝いた。コウモリを思わせる黒い羽が大きくゆっくりと開いていく。


 ほぼ倍に膨れ上がったそれは、可愛らしいというイメージから、悪魔らしい威厳を備えた翼へと変貌する。


「ハァー……アアア……」


 荒い呼吸を整える事もせずに、大きく開いた口を彼の胸元へ近付けた。そして数時間前、自身の妹がやったように、だがそれよりも狂気に溢れた表情で、服を噛みちぎった。


 彼の胸元に傷はない。丁寧に噛みちぎったらしい。次に舌を彼のみぞおちに這わせ、ゆっくりと首筋に向かって動かした。


「んっ」


 くすぐったさに耐え切れず彼が声を漏らすと、紅い悪魔は口を大きく歪め、笑った。


 みぞおちから首筋へ、ほぼ同じ道を何度も往復した。徐々に舐める力を強めて。


「あっ」


 軽い痛みが彼の首筋を走った。赤い線が出来ている。悪魔はそれを見て狂喜の表情を浮かべた。


 じんわりと線が太くなり、そこから更に新しい線がいくつか生まれ、みぞおちへと流れていく。


 それに悪魔は吸い付いた。浅ましく唾液を弾く音を立てながら獣のように貪る。


「グゥ……アァアアァッ……フシュウグググィイイイィ……」


 最早言動も不明瞭だった。唸るような、叫ぶような、醜い化け物の鳴き声を聴いた彼は、いつのまにか解かれていた両手をレミリアの背中に回していた。



 夕食はおおよそ普段通りであった。使用人の食堂から聞こえる喧騒をBGMに、彼とフランが談笑しているのを見ながら食事をしていた。


 普段と違う点は、彼がいる事と、レミリアの食欲である。


 本日の献立は、白飯、豆腐の味噌汁、サヨリの塩焼き、カボチャの煮付け、キュウリの浅漬け。


 館の外観に合わない純和風のメニューだ。高級魚であり海産物のサヨリを除けば、幻想郷の一般的な食卓にも並ぶ品だろう。


 無論咲夜の手作りであり、味は申し分ない。フランも彼も一口一口を美味しそうに味わっていた。


 レミリアの前に並んでいるのは、ご飯と納豆とキュウリの浅漬けだけだ。食欲がないのでこれだけでよい、と事前に咲夜に伝えていたのは、食事を残すのがあまり好きではないからだ。


 ちなみに納豆はレミリアの好物である。和食全般好きだが、納豆は特にだそうだ。


 食欲がないのは彼の血が原因だろう。同じように彼の血を飲んだフランはむしろ食欲旺盛になっているが、おそらくフランはまだ吸血鬼としては未熟で、血=食事という感覚がまだ乏しいのだ。


 彼の血はあまりにも美味しい。だがそれゆえに依存性が強い。咲夜の料理に不満はないが、比べてしまっては分が悪い。彼の血が入っていれば相乗効果で更に美味くなるのか、それとも彼の血以外は不純物になってしまうのか。


 こればかりは試せない。霊夢を恐れているからではない――それも含まれるが――約束したからだ。彼に危険があってはならないし、客人として丁重にもてなす必要がある。これはレミリア・スカーレットのプライドの問題だ。寝坊とかしてたけども。


 だが本能を前にすればそれらは脆く崩れ去ってしまう。本能は否定出来ない。本能は妖怪の強さの一端といえる。本能の否定は強さの否定だ。


 彼の血を手にする方法はある。それは彼を自分の物にすれば良いのだ。それなら霊夢は文句をいえないし、彼は頼み事を断ったりはしないだろう。


 どうやって彼を自分の物にするか、これが問題だ。周囲の納得、というより説得力も必要になる。


 恋人ではダメだ、説得力が足りない。結婚ならどうだろう……。


「お嬢様」


 レミリアはビクッと肩を震わせ、斜め後ろに立つ咲夜へ振り返った。


「な、なんだ?」


 取り繕うが咲夜にはバレバレである。


「顔が赤いようですが、気分がすぐれないのでは?」


 彼との結婚を夢想したレミリアは、頬を赤く染めていた。色々想像してしまったのだろう。口端からよだれも垂れていたが、それは時を止めた咲夜が拭いておいた。主が恥をかかないようにだ。


「な、なんでもない。大丈夫……大丈夫だ!」


 慌てて食事を再開し、五分ほどで平らげると逃げるように自室へ走って行った。


「お姉様……どうしたのかしら?」


 フランの言葉に咲夜も彼も首を傾げるだけであった。


 レミリアは自室のベットに飛び込むと、ひとしきり悶え転がり、枕に頭を埋めてわめいた。終始顔は赤いままだった。


「ハァ、ハァ……馬鹿な事を考えるのはやめましょう……触れ合えればそれだけで充分のはずよ……はずよ、ね?」


 そういえば今日はまだ彼と触れ合っていない。少しの会話だけだ。それなのに彼の血を味わったものだから、心と身体のバランスが乱れているんだ。そうだ、そうに違いない。


「……部屋かしら?」


 彼は早寝だ。宴会や用事が無ければ早々に寝てしまう。もう寝ててもおかしくない時間だろう。


「………………」


 ゴクンと大きく音を立てて唾を飲んだレミリアは、決心して立ち上がり部屋を出た。足取りはしっかりしており、目的地へ一直線に堂々と歩いているが、彼の部屋に行ってどうするか、何も考えていない。


 行けば何かしら思い付く。楽観ではない、ある種の確信があっての行動だ。


 レミリアが足を止めた。暗闇に様々な色をした宝石が浮かんでいる。少し目を凝らせば、それが枯木のような色合いをした細い翼に追随している物だとわかる。いやこの宝石も翼の一部か。翼の持ち主は妹だ。


「お姉様、さっきはどうしたの?」


 赤面した事か。レミリアは近寄ってきたフランに引き攣った笑顔で答えた。


「いや……別に……たいしたことじゃ……ないのよ」


「お兄さんのことを考えてたんでしょ?」


 レミリアの顔から笑みが消えた。フランは笑顔のままだ。狂気のこもらない普通の笑顔なのに、それがむしろ不気味にみえた。


「フランがしたみたいに……お姉様もしたいんでしょ?」


 フランが羨ましかった。あの演技ではない。その後だ。


 胸元を引っ掻き、白い肌を濡らした鮮血に顔を埋めながら喰らう。妄想するだけで甘美だ。


 フランはレミリアに近付き、耳元に口を寄せると甘い声で囁いた。


「直接だと……全然違うよ……フフフ」


 暗闇に消えていったフランはやはり狂気を携えてなかった。ただ子供が思った事を口にしただけのような、無邪気さがあった。


 フランが何かを意図してやったのか、“大好き”な姉に、ただ彼の血の味を伝えただけなのかはわからない。


 わかるのは、嫉妬から本能を剥き出しにした怪物が現れた事のみである。



「(私は何をしていたのであろう)」


 覚醒したレミリアが最初に感じたのは、全身を覆う心地好い感覚であった。感触もある。後頭部と背中に柔らかい何かが。


 その何かが後頭部を軽く上下に動く……撫でたのだ。


「あ……あぁア……」


 後頭部から全身に走った快感に、レミリアは自分の顔があられもない様になるのを感じたが、やめようがなかった。


 目はこれでもかと白目を剥き瞳は焦点が合わない、口は開ききって閉じずだらし無く舌をはみ出した。


 その舌を鮮血が濡らす。舌が血の味に気付いたのと同時に、既に口中にあった感触に気付く。


 血だ。彼の血だ。咲夜の唾液が混じらない純粋な……更に顔が歪むが自力では止めようがない。


 しかし確かにフランの言う通りだ、全然違う。と冷静に考えたのも束の間、舌の動きが止まらぬのに気付いた。自身の浅ましさに恥じらいを感じるが、やはり自力では止まってくれない。


 あまりにも醜い状態に、情けなくて涙がこぼれてきた。それも好きな人の前で……。


 ポンポンと優しく背中が叩かれた。


「ふぇ……」


 急速に理性が取り戻されていく。先程までの状態が嘘のようだ。表情は呆けてはいるが素に戻っているし、舌も自分の意思で動いているようだ。大きく開いていた翼もいつものように小さくたたまれ、ゆっくり起き上がったレミリアは右手で口元のよだれを拭った後、とっても恥ずかしくなった。


 その上、自分が下着姿だという事に気付き、慌てて周りを見渡すと、ベットの隣に脱ぎ捨てたと思わしき服と、愛用の帽子が乱雑に転がっていた。


 帽子を脱いで彼の手が直接頭に触れ、意識を取り戻したのだろう。いや直接頭に触れてほしかったから、帽子を外したのかもしれない。


 そういえば、宴会で彼に頭を撫でられた妖怪は実に気持ち良さそうな顔をしていた。レミリアのようにあられもない顔ではなく、喉を撫でられた猫のような……という例えが出るのはその妖怪が化け猫だったからか。


「(なぜ私はあんな顔に……)」


 レミリアは思考に逃げていた。目の前では起き上がった彼がジーッこちらを見ているが、気持ちの整理がつくまでは待ってもらう……つもりだったが、彼の首筋を見て恥じらいという感情は飛んでいった。


 彼ににじり寄り、首筋へ指を当てた。


「痛い?」


「ちょっとだけ」


 彼の答えを聞いたレミリアはベットから降り、部屋角にある棚まで走り、一番下の段から救急箱を取り出した。レミリア自らが彼の為に用意し、昼食前に咲夜が使ったのと同じものだ。


 ベットまで戻ると手際よく処置を始めた。咲夜よりかは拙いが、それでもしっかりした手つきで三分も経たずに手当ては終わった。


「ごめんなさい……何回も」


 招待したはいいが、充分にもてなせず、むしろ迷惑をかけてるように思ったレミリアは謝罪した。彼はこういう時、言葉で返事をしない。言葉より雄弁な手段があるからか、単純に性格か。


 彼はレミリアの頭に手を伸ばし、優しく撫でた。


「あ……」


 一瞬さっきみたいになるんじゃないかと不安になったが、そんなものはすぐに吹き飛んだ。


 ただ気持ち良さに身を委ねた。撫でられる事自体も気持ち良いが、それだけではなく、内面、心や気力が充実するのも感じる。


 今なら何だって出来そうだ。レミリアは彼の肩に手を置きながら、彼の膝へと腰掛けた。


「もっと撫でて……」


 そう言いながら彼の胸へと頭を預ける。先程のあられもない顔はない。母親に甘える少女の顔付きである。


 彼はレミリアの頭を撫でながら、空いてる手で彼女の手を指を絡めて握った。


「(……ここか……ここを“見た”のか)」


 彼の胸元に滲む血にほお擦りしつつ、自室にいた時に脳裏に浮かんだビジョンを思い出した。


 今の状態と一致している。一致してるからこそ、彼の部屋に行く気になったのだが。


 運命を操る程度の能力。レミリアの固有能力だ。名前の通り、運命を操る……と思われるが、具体的にどのような能力なのかは説明しづらい。


 名前通りと解釈すれば、彼女が負けるはずなどないが、現実に彼女は何度も敗北を喫している。


 能力に制限があると考えるのが妥当だろう。あるいは、吸血鬼らしいプライドが、勝負に能力を持ち込むのを拒んでるのかもしれない。


 いずれにせよ、未来予知が出来るのは確かだ。だがそれも完全ではない。先程の自分の有様が“見えて”いれば、多少の躊躇いはあったはずだ。


「(フランの言う通り、ね)」


 口元に付着していた彼の血を、舌なめずりして舐めとる。確かに美味しい、さっきよりも美味しい、だが精神は落ち着いている。


 心と身体のバランスがどうだと自分を慰める為の適当な仮説だったが、それほど外してないのかもしれない。


 レミリアは自身の頭を撫でる彼の腕を優しく握り、自身の顔の横に移動させ、それにほお擦りしながら、彼の顔を見上げた。


 女性的で美しい顔立ちだ。実際レミリアも初見では彼を女性だと思っていたし、未だに勘違いしてる者もいる。


 レミリアはゆっくりと、彼の顔へと自らの顔を近付けていった。目的地は彼の唇である。彼を見ていて我慢出来なくなったので仕方ない。


 ググッと首を伸ばして顔を突き出すレミリア。彼は相変わらず無表情だが、相手の気持ちを察したのか、やや顔を下げた。


 もうほんの少しでお互いの唇が触れる。レミリアは目をつぶると、訪れるであろう至福に胸を高鳴らせた。


「レミリア」


 鼓動の意味が変わった。大粒の汗が額に多数生まれる。レミリアはそっと目を開けた。


 彼が居たはずだった。ずっと接触していたはずだった。離れた気配などかけらもなかった。


 レミリアの目の前には、彼と寸分違わぬ体勢でレミリアの手を握り、レミリアに手首を握られ、そしてレミリアを膝に乗せた霊夢が居た。


 蛇に睨まれた蛙。もうレミリアは動けなかった。ただ恐怖に冷や汗を流し、ビクビクと怯えながら霊夢の言葉を待つしかなかった。


 霊夢はレミリアの両手を自身の手から離し、硬直したレミリアの両脇腹を両手で挟み込み持ち上げた。


 痛みや苦しみはない。妹をあやす姉のような優しい手つきである。それがむしろ不気味で、恐ろしかった。


「……そうね、気持ちはわかるわ」


 ぐいっと顔をレミリアに寄せると、彼とはまた異質の無表情で口を開く霊夢。言葉を聞く度にレミリアの背中にゾクゾクと冷気が走った。


「だから、それくらいは別に構わないのよ。私もやってるし、それ自体はまあそんなに怒ってないのよ、多分」


 おそらくキスをしようとした事だ。やってるんだ、とレミリアは思ったが無論口にはしない。


「この怪我は許せないわ。彼が何と言おうと、あなたにどんな理由があろうと、これだけは許せない」


 霊夢はレミリアをやはり優しく下ろすと、傍らでキョトンとしていた彼の首筋に触れた。指先から淡く発光すると、次の瞬間には彼の怪我は跡形もなくなっていた。


 その時霊夢が彼に見せた笑顔は、今まで見た彼女のどんな表情より素敵だった。その次にレミリアへ見せた霊夢の表情は、今まで見た彼女のどんな表情より恐ろしかった。


「ハァ……ハァア……ハァァアァ……」


 荒く息が漏れた。覚悟していたつもりだった。霊夢に何かしら罰を与えられる覚悟を、確かに決めていた。いや覚悟そのものは揺らいでいない。


 霊夢は立ち上がると、少し離れた所にあるテーブルへ向かった。それを視線で追い掛けると、テーブルの異常に気付いた。


 花瓶、水差し、ガラスのコップ。花瓶はどの部屋にもあるし、客人を迎える部屋には後者の二つも用意する。それらは異常ではない。花瓶に刺さった花も、昨日咲夜に指示した物だ。


 異常なのは、その他の物だ。物自体が異常なのではない。いつのまにかそこにあった事が異常なのだ。


 御幣、おはらい棒といえばわかりやすいだろうか。先端に紙垂という細長く切った紙を挟んだ物で、いわゆるお祓い等で使われる祓具だ。


 くすんだ枯木に近い色合いなのに、高名な鍛冶師が打った刀のような鋭さがあるのは、博麗の霊力が為せる技か。


 霊夢はその御幣を手に取り、ベットの方へゆっくりと戻った。


「(首を斬られるのか)」


 レミリアが確信した理由は、立ち止まった霊夢の構えにある。


 左腕を曲げ、アゴの下で猫科動物の如く手を丸め、御幣を握った右手は御幣をかつぐように背後に構えた。


「博麗が御幣をかついだら気をつけなさい」


 一度これを味わったレミリアは、部下や友人、妹にまで警告していた。あの時もそうだった……いや理由を考えれば、あの時と比べものにならない威力になるだろう。


 レミリアは見た、両断される己の首を。未来予知か、はたまたあの時の記憶か。


 レミリアの防御……それはおよそあらゆる流派に無い、奇怪な構えであった。


 顔を俯け、両手で頭を抱え込み、頭を膝にぶつける勢いでしゃがみ込む。


 これこそがレミリア・スカーレットが必勝の構え、カリスマガード。


 御幣で吸血鬼の首を断つ事が出来るのか?


 しゃがみ込んだ構えで攻撃を防ぐ事が出来るのか?


 出来る……出来るのだ!


 霊夢が御幣を振り下ろさんと背筋に力を入れたその時、レミリアが頭を抱える腕に力を入れたその時、彼が口を開いた。


「霊夢」


 二人の動きが止まった。レミリアの場合は多少緊張が緩和しただけで、大きな動きはないが。


「なに?」


「もう怪我してないよ」


「……そうね」


「うん」


 霊夢の身体から一切の殺気が消えていた。殺気の理由が怪我で、その怪我は霊夢が治してしまってもう無い。霊夢はだらりと腕を下げた。


 レミリアは恐る恐る顔を上げた。


「うーん……そうね……じゃあ……」


 殺されても文句をいうつもりはなかったが、殺される事はなくなったらしい。霊夢の態度がそれを表している。


 彼の言葉でなければ、屁理屈だと一蹴していただろう。彼の言葉だから霊夢は素直に納得出来たのだ。理由はない。強いていうなら、彼が好きだからだ。


 それにレミリアが進んで彼に危害を与えた訳ではない。仮にそうだとしたら、彼の言葉も耳に届かなかったかもしれない。


 が、霊夢はレミリアを許すつもりはなかった。あくまでも、彼に納得しただけである。罪が消えた訳ではない。


 殺すのはやめるが、何かしら罰を……レミリアにとって……吸血鬼にとっての罰……。


 霊夢はニヤリと口角を上げ、レミリアを見下ろした。レミリアは霊夢から視線をそらし、ビクビクと震えながら言葉を待った。


「レミリア……もてなしなさい。私が、満足するまで……満足したら、許してあげる」


 レミリアは頷くしかなかった。



「ん……んん……ふわあーっあ……あう……良く寝たなあ……あっ! 今日は彼が来るんだった!」


 紅魔館の門番紅美鈴は目覚めると、いつもならしばらくボンヤリする頭を無理矢理覚醒させ、空の様子を伺った。


「良かった、まだ朝だ」


 太陽の位置から時間を察した美鈴は、彼が来たらどんなふうに出迎えようかとワクワクしながら考え始めた。


 すると、門が開いた。内側からだ。目線を向けた美鈴は驚いた。彼が出て来たのだから。


「えっ!? 来てたんですか!?」


「うん」


 美鈴は寝過ごしたのかあと呟くと、ばつが悪そうに頭を掻いた。寝過ごした所ではない、彼女は丸一日眠っていたのである。もう能力か何かが原因なんじゃないかと疑ってしまうレベルだ。


「ま、楽しかったわ」


 彼に続いて霊夢が出て来た。美鈴はそれにも驚いた。というかもう帰るのかと頭が混乱した。


 寝過ごした事は理解したが、丸一日眠っていた事はまだ理解してないのだ。


「か、帰っちゃうん……ですか?」


 残念だった。少しは彼と一緒になる時間があるかもと期待していただけに、落胆も大きかった。こんな事なら、遠足前日の小学生みたいに興奮したお嬢様に付き合うんじゃなかった。そう彼女が寝過ごした原因はレミリアなのだ。


 霊夢はそれを何となく察し、彼に何か耳打ちした。霊夢の機嫌が良かったのが美鈴には幸いした。


「美鈴、両手広げて」


「あ、はい……こう、ですか?」


 美鈴が彼の言葉に両手を横に広げると、彼が飛び込んできた。


「ぎゅー」


 彼は美鈴に抱き着いていた。可愛らしい効果音付きで。


 腰からゾクゾクとしたものが全身に走ると、美鈴は満面の笑みを浮かべ彼を抱き返した。身長差がある為、彼の頭が自身の胸に埋まったが美鈴は気にしなかった。というか何か嬉しかった。


 五分くらいはそのままだった。その後美鈴は彼を解放し、やや膝を曲げ彼と視線を合わす。


「今度は私から会いに行きますね」


「うん、いつでもどうぞ」


「はい!」


 元気良く返事をした美鈴は、彼が帰ったら早速レミリアに休暇をもらいに行こうと思った。


「じゃ、帰るわよ」


 というと、霊夢は彼の腰を抱き、その場から浮かび上がった。飛んで帰るらしい、当たり前か。


 そのまま空に上がっていく二人に手を振り続け、二人が見えなくなると早速館に入ろうと門をくぐる美鈴……は驚いた。


 門のすぐ後ろに、日傘を持った笑顔の咲夜と、“メイド服を着た幼女”……レミリアが立っていたからだ。二人を見送ってたらしい。


「……あの」


「何も言うな」


「……えっと」


「良い、眠りながらもお前は仕事をしていたからな」


 美鈴の仕事は門番、つまり外敵の排除である。眠りながらでも、悪意がある気配には反応出来るし、必要があれば目覚める。


「だから居眠りに関しては何も言わん。お前も私の姿に関しては何も言うな」


「……はい」


 どうも休暇を頼める雰囲気ではないようだ。美鈴はどういった理由でこうなってるかはわからないが、赤面し涙ぐみながら主人としての威厳を保とうとするレミリアに何も言えなかった。


 咲夜は咲夜で輝かんばかりの笑顔だ。何か良い事があったのだろうか。


 館に戻る二人を見送った美鈴は、考えても何もわからないので、門の隣の壁に背を預け、目をつむり彼の感触を思い返した。しばらくすると意識が遠退いていった。



お嬢様のアヘ顔はいかがでしたでしょうか。おぜうはこんなんばっかで申し訳ない。何回も言いますが私はおぜう大好きです。


あと途中の描写はシ○ルイです。わかった人がいてくれると超嬉しい。


あとシリアスに見せかけたカリスマブレイクでしたね。シリアスなんて書けない。所々彼をもちいた超理論がありましたが、まあギャグだしと広い目で見ていただけると助かります。


でも描写は甘いですね。精進せねば。


あと美鈴の出番、冷静に全体を見れば咲夜さんの出番も少なかったですね。あ、こあちゃんも。番外編だなこれは。パッチェさんは触手がアレだったしいっかな、って思ったりしてる。


最後のアレはおぜうの吸血鬼としてのプライドをぶち壊した的な解釈ってことでいいんじゃないかな。


次回はアリスの出番だとは思いますが、小悪魔なみに改変する可能性があります。まだ何も考えてませんが、変態よりになるとは思います。ごめんなさい。


ってか、まあここまでで一章って感じかなと。区切りにはなったかなと。でも後日談的なのを入れた方が綺麗かな、と。


とりあえず色々考えますが、多分更新はしばらく先です。はい。


あああと、実はわりと残酷な表現のあるボツにした描写がありまして、あのシグ○イをパロってる辺りなんですが、何でしたら活動報告にでもあげておきますがどうでしょう?


感想でも活動報告でもメッセージでも何でもよければご意見をいただけたらな、と思います。また残酷といっても表現上そうなるだけで、基本はギャグタッチというか、パロディというか、まあ元ネタがわかれば笑えるかなあと。


まあとりあえずそのボツにした描写では完全におぜうの首が落とされてますが、ちゃんとギャグタッチです、多分。


なんか他に書く事あった気がしますが忘れたのでそれでは。

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