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東方逆接触  作者: サンア
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口づけ話

独自設定的ななんかあれがあるはずだ。


パッチェさんの出番は次回になります。


 フランは急に言葉を止め、悪戯が成功した子供のようにニッコリと笑った。


「お兄さん…………ん~……凄く気持ちいいけど、ちょっとどいて」


 フランの顔にまたがっていた彼は、フランと違いまるで悩む事なくどいた。


 その時フランはある種の喪失感を味わったが、少しの間の辛抱だと歯を噛み締めてグッと堪えた。


 先程までのごっこ遊びは、レミリアとパチュリーを遠ざけるための演技だ。


 まあその演技自体も楽しんでいたが、あくまで邪魔が入らないようにすることが目的で、それは成功した。


 咲夜の報告を聞いて、すぐに二人が駆け付けると予想していたが……咲夜は意外と気が利くらしい。


「お兄さん……」


 微笑を浮かべながら身体を起こし、女性のように座る彼の膝に乗る。


「ウフフ」


 彼の胸へ顔を埋めた。そして肺いっぱいに呼吸をすると、吐き出すのを惜しむように息を止める。


「……っ……っ……っ……はあっ! はあ……はあ……ハァ」


 やがて限界が来ると咳き込むように吐き出し、呼吸を整えると、また肺いっぱいに吸う。


 いつのまにか彼に強く抱き着いていた。無意識に、彼を傷付けないよう力加減も出来ていた。


 彼の手が自分の背中と頭に置かれてるのを感じた。撫でてくれている。


 死ぬほど心地好い。


 絶頂まで達したフランの脳は、彼の服を引き裂くように身体に命令した。


 彼の服の、胸元の辺りをギュッと掴むと、力任せに引っ張った。


 まるでティッシュのように裂かれた服の切れ端が辺りに舞い散る。


「ハァ……ハァ……ハァ……!」


 息を荒くして、露出した彼の胸元へ鼻を押し付けるフラン。


 しばらく呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻そうとするが、彼の手がまた頭を撫でた。


 フランは口を大きく開き、真っ赤な舌を出して彼の胸元を這わせた。


 彼の白い肌とフランの真っ赤な舌が対照的だ。


 横顔を密着させ上下移動しつつ、舌を動かす。よだれと唾液で濡らされた胸元が妖しく光る。


「ふ……ハァアアァ……」


 狂気というにはまだ愛らしく、しかし正常というには理性的とはいえない目だ。


 口元は縄張りを荒らされた野犬のように、牙を剥き出しにしている。


 言語も不明瞭だ。通常なら不気味だし、恐怖感もある。


 が、彼は気にしない。


「んっ……」


 彼が声を上げた。これぐらいは珍しくないが、感じてるとかくすぐったいとか、そういう理由ではない。


 彼の鎖骨辺りから、数センチほど緩やかな斜めを描いた赤い線がある。


 少しするとジワッ赤い液体が滲み出た。血だ。吸血鬼のフランにはこの上ない御馳走だろう。


 フランは一瞬ハッとして目を見開いた。驚き後悔してるような、そんな表情だ。


 それも本当に文字通り一瞬の事で、彼の血に吸い付く時にはうっとりと顔を緩ませていた。


 アイスでも舐めるようなあどけなさで、彼の血を食す。一度火がついた欲望がもっともっとと多量の血を望む。


 妖怪特有の攻撃的な形状をしつつ、綺麗に整えられたフランの爪が彼の胸元を横切った。


 浅く、繊細に、必要以上に傷付けないように……。この手の力加減が苦手なフランだが、彼が相手だとそうでもなくなる。


 愛の為せる技といえなくもない。


「ん……」


 彼の胸元に三、四、五と次々に傷がつく。フランはその傷を舐めたり、顔に押し付けたりした。


 フランの顔や髪の所々に彼の血が付着し、特に頬は真っ赤になっていた。


 フランの口が彼の首筋に吸い付いた。正気ではない目で、それでも噛み付く事だけは我慢しているようだ。


 その時、ノックの音が室内に響いた。


 するとフランの目は光を取り戻し、彼から少し離れると胸元を見て表情を強張らせた。


「あっ……あアぁァアアあぁアアァあああっ!?」


 傷付いた彼を見て、フランは絶望を感じた。先程一瞬見せた表情を更に歪ませて。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」


 嗚咽をあげ涙を流し呪詛のように謝罪を続けた。かつてない罪悪感に、フランは押し潰されそうになっていた。


 彼はそんなフランの頭を撫でた。今までと同じように、動揺を見せず、表情に変わりもない。


「あっ……」


 彼に撫でられたフランは、不思議なくらいに気持ち良くなった。


 さっきまでの絶望とか後悔とか悲しみとか罪悪感とか、そういうのを忘れてしまうくらいに気持ち良かった。


 というか、実際忘れてしまっている。目尻の涙を彼が拭った。


「(あれ? なんで泣いてたんだろ?)」


 フランは本気でそう思っていた。彼の傷は今でも見えているし、傷付けた事も自覚している。


 が、泣いていた理由は思い出せなかった。そのうち、扉が開く音がして、咲夜が入ってきた。


「昼食の準備が出来ました……おや?」


 咲夜が彼の傷を見付けると、フランはばつの悪い顔をしていった。


「ああ……えと……ごめんなさいフランがやりました」


 子供のように、しかし丁寧に、咲夜に謝るというか報告をした。この頃にはもう、泣いていたという事も記憶の彼方にあった。


 咲夜はグッと彼の傷に顔を近付けると、ジッと傷の具合を眺めた。


 数十秒経つと、不意に咲夜は、ベロッと傷を舐めた。


 少し痛みがあった。それは咲夜が傷口に沿って舐めているからだろう。


 耐えれない痛みでもないので、彼は黙って咲夜を見守っていた。


「あむっ……ん、ちゅっ……んむ」


 唾液を弾く音と共に、甘ったるい声が漏れる。


「うわあ……」


 フランはその光景を見て、顔を赤くし両手で顔を覆った。照れているようだが、見るのはやめてない。指と指の間から紅い瞳を覗かせている。


 先程までの自分を忘れているのか、自分がやるのと人がやるのを見るのとは違うのか。


 とにかく、フランの様子は先程までとは異なっていた。年相応……いや見た目相応の少女のようだ。見た目相応なら少しませているが。


 酔いが覚めたというのが相応しいのだろうか。彼との接触に酔いと同じような効果があるのは、納得出来る。


 咲夜もその酔いに惑わされてしまったのだろうか。それにしては冷静なように見える。


 顔色に変わりはなく、不審な挙動もない。舐めているという行動は異常だが、それだけだ。


 まるで舐めるのが正しい対処だといわんばかりに、堂々と舐めている。


 数分ほどして、咲夜がゆっくりと舌を離した。彼の胸元と咲夜の舌に透明な橋がツーッと伸びるが、咲夜が口を閉じると儚く崩れた。


 咲夜はポケットから白いハンカチを取り出し、一切口を開かず彼の胸元を優しく拭いた。


 軽く微笑んでいるが、咲夜は喋らない。血と混ざってやや赤みを帯びた唾液が、白いハンカチを染めていく。


「さ、先に食堂に行っとくからっ!」


 顔を真っ赤にしたフランが、勢いよく扉を開けて飛び出して行った。勢いが良すぎて扉と金具の一部が壊れて散った。


 咲夜が彼の胸元から手を離したと思えば、次の瞬間には開かれた救急箱が彼の傍らに置かれていた。


 ガーゼや消毒液を取り出し、手際よく手当てを始めるが、咲夜は一切喋らなかった。


 消毒した患部に絆創膏を貼り、念のため包帯で保護をした。


「ありがとう」


 彼が礼をいうと咲夜は口を開かずにニッコリと笑い、彼へ頭を下げた。


 彼は咲夜が用意した――していた――カッターシャツに着替え、咲夜の案内で食堂まで向かった。


 第一印象はそれほど広くない、だった。調度品等も少ない。というかほとんどない。


 部屋の真ん中に円形で五人掛け程度のテーブルが置かれており、キッチンへ通じるであろう扉の隣に、よくわからない絵画が小さな額縁に飾られている。


 紅いばかりで気付き辛いが、壁紙の模様や細工が通路や他の部屋とは違う。こだわりはあるらしい。


 テーブルには白いテーブルクロスが掛けられ、真ん中には紅い造花が置かれている。その周りには料理が並べられている。


 赤くなって俯いたフランと、怪訝な顔をしたレミリアが席についていた。


 キッチンに通じるであろう扉の方から、やや騒がしい話し声が聴こえる。キッチンを挟んで隣にある部屋が、使用人が使う食堂なのだろう。


 レミリアはこれを咎めるような器の小さい女ではない。怪訝な顔の理由は喧騒に機嫌が悪くなっているのではなく、フランの様子と、彼が席に座ったにも関わらず何一つ喋らない咲夜に対してだ。


 その咲夜だが、目を閉じ、小首を傾げ、人差し指を額に当て、何かを考えてるような素振りを見せていた。


 優秀な従者の思考に付き合うのはやぶさかではないが、客人を待たせるのはいただけない。


 注意しようとレミリアが口を開こうとすると、咲夜はパッと目を開けた。表情は明るい、何か思いついたらしい。


「何か思い付いたのか?」


 先程までと違って、尊大な男のような口調だ。レミリアは話し方、口調を相手によって使い分ける。


 家族や使用人の前では威厳を込めて喋る。仲の良い友人となら砕けて話す。客人の前では偉そうにならないように演じる。


 たまにこの喋り方を聞いて、カッコつけてるとからかう者もいるが、間違ってはいない。そもそも前当主、つまり親のマネで始めた事だ。が、今ではこの話し方も気に入っていた。


 いつ頃からか、使用人にも砕けた話し方をしたり、友人にも尊大な口調になり、今みたいに客人の前でも素でこの話し方をしてしまうようになった。


 そう、霊夢と魔理沙の邂逅がきっかけだったか。


 咲夜はレミリアの声に軽く頷くと、カツカツと靴音を立てながらレミリアに近寄った。


「?」


 疑問符を頭に浮かべ、眼前まで迫ってきた咲夜へと顔を上げる。


 と、咲夜は足の動きを止めると同時に上半身を前に傾けた。


 すると、顔を上げたレミリアと口づけする形になった。


「(さあてこの女は何を考えてこんな事を仕出かしたんだ?)」


 意外にもレミリアは冷静だった。この従者の奇行……天然っぷりを充分理解しているのだろう。


 咲夜の舌がレミリアの口を開こうと唇をつついている。レミリアは諦めたように唇に込めた力を弱め、咲夜の舌が口内に入り込むのを無抵抗で受け入れた。


 咲夜は人間でレミリアは吸血鬼だ。吸血鬼に血を吸われた人間はその眷属となる。つまり吸血鬼になってしまうのだ。


 万が一に噛んでしまったら大変だから、無抵抗になったのだ。


 生暖かい感触がレミリアの舌に乗ると、次に生暖かい液体が咲夜の舌を伝って喉奥に流れ込んできた。


「!」


 えもいわれぬ味わいだった。数十年熟成されながら新酒のような新鮮さを伴ったワインのような……ありえない味わいといっていい。


 甘味とか苦味とか酸味とか旨味とか、そういう既存の言葉で表せるものではない。あえて言葉にするなら、“彼の味”としかいえない。彼と接触した人妖なら理解出来るだろう。味として純粋に楽しめるのは吸血鬼だけだが。


 咲夜がゆっくりと口を離す。咲夜の口の端から彼の血が淡く流れた。


 レミリアは咲夜へソッと手を伸ばすと、人差し指で口の端を拭い、その指をペロッと真っ赤な舌で舐めた。そして口を閉じ、口内で反芻し、味を楽しんだ。


 血の味そのものを楽しんだのは久しぶりだ。名残惜しく飲み込んで、レミリアは紅く染まった牙を光らせた。


「完璧だ咲夜」


「感謝の極み」


 彼の血は美味しかった。これから食事をするのが億劫になるくらい満たされた。


「うわあ……」


 フランの声だ。彼と咲夜の接触に照れた時とは違う、何かに失望したような声色。


 二人のキスシーンに引いたのだろう。生々しさに引いたのか、行為そのものに引いたのか。或いはその二つに引いたのか、その二つ以外の何かにも引いたのか。とりあえずドン引きである。


 フランは幽閉されていたが、本を読んで蓄えた知識がある。実際に見たり触れたりした事がないので世間知らずだが、無知ではない。


 キスには色々な意味がある。挨拶、友情、そして恋愛、他にもあるがおおよそこの三つ。いずれにせよ、親愛を表す行為だ。


 キスには色々な種類がある。唇をくっつけるだけのバードキスと、お互いの舌を絡ませるディープキス、他にもあるが有名なのはこの二つ。前者は挨拶――キスする部位によっては友情等――や恋愛の意味を持ち、後者は恋愛……というより性愛を意味する事が多い。


 まあこの限りではない。人命救助の手段であったりもするし――厳密にはキスではないかもしれない――、咲夜がやった口移しというのもある。


 だが書籍なんかで身につけた知識では、こういう例外に対応出来なかったりする。


 フランの常識では、同性同士のキスは変な事、なんだろう。同性同士の恋愛があると理解はしてるし、先程の二人にそういう感情がないのもわかっているが、引いてしまうというのは生理的な反応だし、その態度を隠せるほどフランは大人ではない。


 レミリアは妹が好きだ。表には出さないが、溺愛してるといってもいい。その妹に失望されたのだ。精神的な動揺は計り知れない。


 しかしレミリアは、それを表に出してオロオロするような女ではない。堂々としている。堂々とどうごまかそうか考えている。


「(そうだ、彼の血の話題を……ん?)」


 なぜ咲夜が彼の血を口に含んでいたか。咲夜は人間だ、血を吸ったわけでもあるまい。きっと彼が怪我か何かをして、その傷を舐めたりしたんだろう。傍らでニッコリと笑う咲夜を見ると、その光景が容易にイメージ出来た。


 そういえば彼は服を着替えている。食堂に入って来た時のフランは様子がおかしかった。


「……咲夜、さっきのはどうやって手に入れたのかしら?」


「お客様が怪我をしてたので、舐めとりました」


 咲夜は笑顔のまま答えた。レミリアはやっぱりかと納得しつつ、視線をフランへ移した。ドン引きしていたフランは気まずそうに俯いて、チラチラとレミリアを見ていた。


「……フランがやりました」


「そう、どんな風にしたの?」


 素直に認めたフランに軽く驚きながら、どのように怪我をさせたのかを質問した。


「……その……一緒に遊んでて……我慢出来なくなって……服、破って……牙が引っ掛かって……」


 レミリアは溜息を吐いた。それを聞いてフランの言葉が止まる。レミリアは軽く説教をしようと口を開いた。


「だいたいわかったわ。フラン、気持ちはわかるけどあまりはしたない真似は……ってやべえじゃねえええぇええぇかああアああぁアアァ!」


 途中でレミリアは大変な事に気付き、思わず叫び声を上げた。


 その叫び声を聞き、使用人達の喧騒が消えた。フランがビクッと顔を上げた。咲夜がキョトンと首を傾げた。彼はボーッとレミリアを見ていた。


 吸血鬼は人の血を食事とする。吸血鬼に血を吸われた人間はその眷属となる。理屈はわからんが、とにかく血を吸われた人間は吸血鬼と化す。


 フランは牙が引っ掛かったといった。なるほど、やべえ状況だ。



いやあ下ネタは楽しいですねぇ。もうちょっと細部を描写したかったのですが、描写しまくると思ってたオチに辿り着けなくなったりします。なんでかなあ。


ヘル○ングを読んだのでおぜうのカリスマ力が上がりました。上がってたよね? 露骨なパロも入れました。


口調についてはまああれ独自設定って事で、はい。吸血鬼化もはい独自設定かなわからん。グールになったりするとか色々あるしわからん。まあ自由にいこう。


それではまた次回。


フラン「サンアさん」


私「なにかようかな?」


フラン「フランの翼描写し忘れましたか?」


私「忘れてない」


フラン「そうですかありがとうフランの翼描写し忘れ凄いですね」


私「それほどでもない」


フラン「やはり忘れていた! しかも忘れていたのに謙虚にもそれほどでもないといった!」


私「いや今のハメでしょ? 私のシマじゃ今のノーカンだから」


じ、次回苦し紛れに描写するから……。


あとフランちゃんかわいい。

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