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東方逆接触  作者: サンア
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騎乗話

キャラ崩壊とか独自設定とかおかしな口調とかあります。今回は特に酷い。露骨なパロディもあります。パロディというよりは、なんか、なんかあれですけど。


 失神した魔理沙をネタにした新聞が発行されてから、一週間ほど経ったある日の午前、彼は湖のほとりを歩いていた。


 湖の真ん中辺りの空を、多数の妖精が飛び回り戯れているのを見て、彼の口角がほんの少し上がった……ような気がする。


 その中で中心的な存在であろう、涼しげな青いワンピースを着た妖精が彼に気付いてブンブンと大きく手を振った。


 彼も手を振り返した。


 ここで彼が足を止めれば、一緒に遊べるという合図になる。


 ので、彼の歩みが止まらない事に、妖精達、特に青いワンピースの妖精――チルノ――はガックリと肩を落とした。


 諦めきれないチルノは、彼が林の中に入って視界から消えるまでジッと見ようと思った。


 見る事に集中し過ぎて、周りの妖精達が自分を呼んでいるのに気付いていない。


 そして力んでるせいか、眉間に軽くシワが寄り、睨んでいるようになってしまっている。距離的に彼からはわからないし、仮に睨まれてても彼は動じないだろう。


 彼があと一歩で林へと進入しようとした時、チルノはなんだかやるせない気持ちになったが、視線はずらさないでいた。


 それが良かった。チルノはジッと彼を見ていて良かったと心から思った。


 彼は林の前で立ち止まり、チルノの方を向くと小さく手を振った。


 それだけの事だった、が、それだけの事が嬉しかった。


 チルノは全身で嬉しさを表現した。具体的には、笑顔で飛び跳ねながら大きく両手を振った。


 彼が林へ入っていき、視界から消えた後もしばらくそうしていた。


 そんなチルノを見て、緑髪の妖精が呟いた。


「チルノちゃん、本当に幸せそうだね」


 妖精達は手を振り返されたぐらいで……等とは言わないし思わない。自分達も嬉しかったからだ。にしても、チルノの喜びようは異様だった。


 緑髪の妖精の呟きに、チルノは動きを止めた。表情は変わらず笑顔だ。


「うん! あたい、今スッゴく幸せなんだ!」


 とてもシンプルな返答に、緑髪の妖精は呆れてしまった。そんな様子に気付かれるはずもなく、チルノを中心にまた遊びが始まった。


 林の中をしばらく進むと、彼の目的地が見えてきた。正確には湖の辺りから見えていたが、まだぼやけていてハッキリとは見えていなかった。


 まあ、色だけはすぐにわかったが。


 なんというか、赤い、いや紅い。別に目に痛いほど紅いというわけではないが、他の色がほとんどないのだ。


 豊かな自然の中に、紅葉とはまるで違う性質の紅色があるから際立っている。


 色を除いた外観だけを見るなら、美しい洋館だ。貴族が住んでると言われても納得出来る。


 色のために、ホラー映画に出て来るような不気味な洋館になってしまっているが。


 そして後者の方が相応しいだろう。なぜなら、洋館の主は吸血鬼だからだ。


 洋館の名は紅魔館。紅い悪魔が住む館、そのままだが、わかりやすい。


 彼は門の前で立ち止まった。鉄格子の門で、敷地内の様子が隙間から見えた。


 庭の中心には噴水があり、左右には花壇やいばらがあった。薔薇を主とした様々な花のおかげで、色合いが良くなった。


 門の左右には外壁があり、グルッと館を囲んでいる。


 また、門の右側の壁に背を預け、腕を組み、目を閉じている女性がいた。


「……美鈴」


 彼は優しげに女性の名を呼んだ。反応はない。


「すー……すー……」


 と、規則正しく呼吸をしている。どうやら、寝ているらしい。


 頭には緑色の帽子を被っている。中心には星の飾りがあり、その星に龍の文字が刻まれている。


 館とはまた別の性質の赤色をした髪をしている。美しいストレートヘアーは腰まで伸び、側頭部の辺りでは編んでおり、先端にリボンをつけ垂らしている。


 衣服だが、なんというか面白い服だ。


 アクション映画に登場する拳法家が着ているような華人服――実際の拳法家も着ているかもしれない――と、チャイナドレスが合わさったような、淡い緑色の服だ。


 下半身はスカート状でスリットが入っているが、下に白いズボンを穿いていたので生足は拝めなかった。


 胸の辺りで腕を組んでいるが、なんというか、メロンが二つ入ってるかのような膨らみがある。


 声をかけても起きず、身体を揺すられても起きない。


 よく見ると、目の下に隈があった。夜更かしでもしたのだろうか。


 さてどうしたものか。


 彼は焦った様子もなく、紅魔館の門番、紅美鈴の隣の壁にもたれかかった。


 美鈴が起きるまで待つつもりだろうか。


 パチン、と音が鳴った。指を弾いた音だ。


 すると先程まで何も無かった場所に、十六夜咲夜が立っていた。


 無論メイド服を着用している。彼に送った物とほぼ同じデザインだ――こちらが元だから当然だが――。


 銀髪のボブヘアーにホワイトブリムをつけている。また、美鈴と同じように、リボンをつけた三つ編みが側頭部にあった。


 紅魔館では側頭部で髪を編む事を、義務付けられているのだろうか。


 下半身はミニスカートだ。美しい生足を惜し気もなく披露ひろうしている。


「やっぱり寝てたわね」


 超常現象といってもいい現れ方をした咲夜は、居眠りしている美鈴に呆れつつ、彼の前に歩み寄った。


 彼は咲夜が唐突に現れた事に驚いた様子はない。咲夜の能力を知っているわけではない。良い意味で幻想郷に順応しているのだろう。


 あるいは、表情に出ていないだけで驚いているのかもしれない。


 咲夜は彼の反応に少しがっかりしていた。ちょっとは驚いてくれるかな、と期待していたからだ。


 いや、驚いていたかもしれないが、表情や反応に出なければ意味がない。


「門番が失礼しました。ようこそ紅魔館へ」


 咲夜はニッコリと笑うと、彼に手を差し延べた。彼は特にためらう事なく、その手を握った。



 紅魔館の内装は、やはり紅い。外より落ち着いたように見えるのは、比較する物が少ないからだろう。


 それに、色より広さの方が気になった。


 紅魔館は大きな館だ。一般的な住宅の十倍以上はあるだろう。


 が、にしても広い。外観に見合わない広さだ。これも咲夜の能力が影響してるらしい。便利なものだ。


 長い廊下だ。長い長い廊下だ。果てない、とまではいわないが、ここまでだと却って不便だ。


 にしても歩く。館に入ってから、もうかれこれ五分は歩いている。


 彼と咲夜はというと、仲よさ気に――といっても表情に動きがあるのは咲夜だけだが――会話していた。


 なんてことはない世間話だ。掃除が大変だとか、洗濯が大変だとか、料理が大変だとか、だいたいが家事に関わる話だ。


 が、そういう話はあくまでおまけなんだろう。


 彼と咲夜は、横に並んで歩いている。廊下に向かって、左側に咲夜、右側に彼。


 今回彼は、紅魔館の当主であるレミリア・スカーレットに招待された客人の立場にある。


 そういった人を案内するなら、通常先導するものだと思うんだが、これではまるで友達か恋人だ。


 言うまでもないが、咲夜の右手は彼の腰の辺りに置かれている。


 咲夜が案内に時間をかけているのは、彼との交流を長く楽しみたいから……という訳ではない――役得だとは思っているが――。


 レミリアの都合だ。難しい話じゃない、寝坊して身支度が整ってないだけだ。


 今日が余程楽しみだったらしい。ちなみに美鈴の隈も同じ理由だ。まあ、美鈴はそうでなくても居眠りしていたかもしれないが。


 とはいえ、彼を歩かせっぱなしにするのは良くない。


 しかし、咲夜はレミリアから具体的な指示を受けてなかった。


 どれくらい時間を稼げばいいのか。というか客人相手に時間稼ぎというのも、失礼な話だ。


「(お嬢様の事だから、あと三十分はかかるだろうし……先にパチュリー様の所へ案内しようかしら)」


 紅魔館の居候にしてレミリアの親友であるパチュリー・ノーレッジも、彼の訪問を楽しみにしていた。


 予定では昼食が終わってからだったが、事情を説明すればわかってくれるだろう。彼に関わる事だ、むしろ喜ぶかもしれない。


「(寝坊したお嬢様が悪いのだし、お客様を待たせるのもね……でも、もうちょっとだけ遠回りしようかしら)」


 自身の欲望に苦笑しつつ、パチュリーが管理及び居住する図書館へと向かう。


 が、すぐ立ち止まった。無論、目的地についたから、ではない。


 通路の真ん中に、二人の行く手を遮る者がいた。


 濃い黄色の髪をサイドテールにして、頭には……ドアノブカバー……のようなナイトキャップを被っている。


 この紅い館の中で、更に際立つ真紅の瞳と真紅の服。異質の紅だ。この二つは血液を思わせる。


 白い肌で、あどけない笑顔を浮かべた愛らしい顔立ちだ。ニッコリと開いた口からは、牙のような犬歯がはみ出ている。


 衣服も、半袖にミニスカート。白いソックスにストラップシューズ。どことなく気品が漂っている。


 子供のようだ。というか子供だ。見た目だけなら十歳未満だ。


 文字通り、見た目だけなら、だが。


 彼女はフランドール・スカーレット。レミリアの妹で、少々気がふれてるとか。


「ねえ、フランと遊びましょ?」


 いつのまにか、彼の目前にいたフランは上目遣いで無邪気に彼にねだった。


「うん、いいよ」


 そういう頼みを彼は断ったりしない。


 咲夜はというと、ちょうどいいか、と考えていた。


「妹様、どちらで遊ばれますか?」


 フランは首を傾げてうーんと迷うと、近くのドアを指差した。


「ここにする!」


 偶然だが、そこは彼のために用意された部屋だった。今日彼は泊まりがけで招待を受けたのだ。


「かしこまりました。昼食の時間になりましたらお知らせします。何か御用があればお呼び下さい」


 そういうと咲夜はパチンと指を鳴らし、消えてしまった。


「ウフフ……ねぇお兄さん」


 咲夜がいなくなった瞬間、フランの雰囲気が変わった。


 先程までは少女のような無邪気さに溢れていたが、今は――



「ここにもいない、か」


 ふと耳に入った呟きに目を向けた。


 青みかかった銀髪のミディアムヘアーに、妹と同じような……つまりドアノブカバーのようなナイトキャップを被っている。


 この姉妹は、ドアノブカバーのようなナイトキャップを被る事を、義務付けられているのだろうか。それとも強いられているのだろうか。


 衣服はピンク色のレースだ。袖は短く膨らみ、袖口を赤いリボンで蝶々結びにしてある。


 腰には赤い紐が結ばれており、後ろで先端が広がりリボンのような形になっているのが脇から見える。


 スカートは踵までの長さで、裾の方に赤い紐の装飾があり、それを境にフリルがついていた。


 左腕には赤い線の入ったレースを、リストバンドのように巻いている。


 ようは赤とピンクで構成されたファッションだ。背中の翼もファッションに含めるなら、そこに黒が追加されるが。


 全体的に何となく気品が感じられるのは、血筋か佇まいか。


 小首を傾げ、うーんと唸りつつ悩む姿は、ただの子供にしか見えない。


 唸りに合わせて、パタパタと翼がはためくのも可愛らしいが、それも子供っぽく見える要因になっている。


 彼女の身体からは、ほんのりと湯気が立っていた。入浴していたらしい。


 自分が好意を寄せてる人に会うのだ。特に不思議な事じゃない。


 が、その彼の姿が見当たらない。先程の呟きから察するに、彼を探してるらしい。


「今頃、彼とお喋りでもしてるものだと思ってたけど、どうかしたの? レミィ」


 あだ名を呼ばれたレミリアは、傾げた首を戻し、声の方に目を向けた。


 長い紫色の髪だ。先の方をリボンでまとめてある。


 また頭には……友人姉妹と同じようなナイトキャップ、もはや言うまでもない、ドアノブカバーのようなナイトキャップを被っている。


 レミリアやフランと長い付き合いをすると、この帽子を被りたくなる呪いでもあるのだろうか。それとも単純にお揃いか。


 しかし前の二人より、このナイトキャップが似合っている気がする。


 薄紫のゆったりとした寝巻きのような服が、そう見せるのかもしれない。


 また服にはうっすらと縦縞が入っており、各所には青と赤のリボンがあった。帽子には三日月の形をした装飾がついている。


 寝起きのようなジトッとした目付きと目が合い、レミリアは口を開いた。


「咲夜に案内を頼んだんだけど、いつまで経っても来ないから探してるのよ。咲夜の事だから、先にパチェの所に案内してるかと思って」


「私は昼食の後だと聞いてたけど……なんで私の所って思ったの?」


 読んでいた本を閉じながら質問をする。彼女から立ち上がる湯気と昨夜のはしゃぎようで、大体理由はわかっているが……パチュリー・ノーレッジは友人をからかうのが嫌いではなかった。


「うっ……ちょ、ちょっと手違いがあって……その……」


 しどろもどろになった友人を見て笑みがこぼれた。


「はいはいわかったわ。でも、ここには来てないわよ。来てたとしても、私の所にいないなら探すのは骨ね」


 レミリアは追及されなかったのにホッとしながら周りを見回した。


 本棚、本棚、本棚、本棚……本棚だらけである。それもとても広い空間にぎっしりとだ。


 それら全ての本棚にはキッチリ本が収まっており、何よりその全ての本をパチュリーは読破している。


 自分の身長より、いや紅魔館より高い身長の大量の本棚の本を、全て、だ。


 本の種類は様々だ。魔導書やそれに近いいわくつきの本もあれば、普通の小説や、外の世界の漫画なんかもある。


 図書館として運営してる訳ではないが、ここの本を目当てに訪れる客も少なくない。


 この場で読む客もいれば、借りて帰る客もいる。定期的に盗っ人まで来るのだから、貴重な本もたくさんあるのだろう。


 ちなみに当の盗っ人は、一生借りてるだけ、とふてぶてしい態度をとっている。


 まあとにかく彼女は深い知識をもった人……いや魔法使いである事は間違いない。


「ここに来るとしたらパチェの所に案内するでしょ?」


「それもそうね……ねぇ、なにか変な事に巻き込まれたんじゃ」


 場所柄、人はめったに訪れないが、たまに血に飢えた妖怪や吸血鬼を退治しようという人間が侵入する事がある。


 それらは基本的に、侵入するまでもなく美鈴に、侵入されても咲夜によって“片付け”られて終わりだ。


 しかし美鈴をやり過ごして侵入した者に、咲夜達が気付く前に彼が見つかったとしたら……。


「それは大丈夫よ。キッチンで咲夜が普通に仕事してたから、きっとどこかに案内したのよ」


 どうやら彼に危険が迫ってるとか、そういう事はないようだ。パチュリーは安堵と同時に、呆れて首を振った。


「咲夜が普通に仕事してたって、なんでわかったの?」


「キッチンに行ったからに決まってるじゃない」


「じゃあその時、彼をどこに案内したか、咲夜に聞けばよかったんじゃないの?」


「…………あっ」


 二人はキッチンへ向かった。キッチンでは消えたり現れたりを繰り返しつつ、咲夜が料理をしていた。


 紅魔館は使用人が多いので、掃除よりもこの時間が一番大変かもしれない。


「お客様なら、今日泊まる予定のお部屋で“妹様”と遊んでらっしゃいます」


 呼び止められた咲夜は、疲れを微塵も感じさせない表情で淡々と言った。


 すると、パチュリーとレミリアの顔が真っ青になった。


「え……? ちょ、え? フランと遊んでる?」


「はい」


 目に見えて慌て始めたレミリアと、キョトンとした顔の咲夜がなんとも対照的で笑える。と、パチュリーは一瞬思ったが笑い事ではなかった。


 フランは気がふれている。ちょっとした事で理性を失い、暴れ回るというのも珍しくない。


 また身体に見合わない強大な力と、物質を問答無用で破壊出来る能力もある。


 人間を殺すのを躊躇うような性格でもない。それゆえに地下に幽閉していたが、最近はある程度自由にさせていたのだ。


 それには霊夢や魔理沙の影響があったのだが、今はどうでもいい。いやよくない。


 そう、霊夢にはとても関係がある。レミリアは先日の霊夢との会話を思い出した。



 数日前、レミリアは神社の縁側に寝転がった霊夢の前に、日傘を持って春の陽気から逃れるよう立っていた。


「彼を招待ねぇ、まあ伝えておくわ」


 そういってバリボリと煎餅にかじりつく霊夢。


「ええ、よろしくお願い」


 本当は本人に直接伝えたかったのだが、なんでも命蓮寺に用があるらしく不在だった。


 そして、彼本人に直接伝えればよかった、と心底思った。


「ああ、そうそう――」


 ゴクンと煎餅を飲み込み、身体を起こした霊夢は、ぐいっと顔をレミリアに近付けた。


「な、なによ」


 とレミリアが気恥ずかしさを覚えたのも束の間。


「彼に何かあったら殺す」


 鼓動が止まる音が聞こえた。



「パチェ、長い人生だったわね」


「諦めないで!」


 悟りを開いたかのような表情で、自分とは違う何かを見ているレミリアを彼の部屋の前まで引っ張る。


「ダメよ。もう殺されてるは、彼がいない世界に興味はないし霊夢が怖いからもう死ぬわ。私を外に投げ捨ててちょうだい」


 レミリアは吸血鬼なので、日光に当たると炭化する。


「私も彼がいない世界に興味はないわ」


 たった数日の触れ合いでここまで言わせるとは、相変わらず彼の魅力はとどまる事をしらない。


「だからこそ助けるんでしょう!」


 レミリアは目を見開いた。パチュリーの言うとおりだ。好きな人を見殺しにするなんて、そんな惨めな人生――妖生というべきか――なんて真っ平ごめんだ。


 光を取り戻したレミリア、先程までとは逆にパチュリーを引っ張る勢いで、彼の部屋へと向かった。


 で、部屋の前でおどおどし始めた。


「フランに勝てる気がしない」


「レミィしっかりして!?」


 先程までの勢いはどこへいったやら、しかしまあそれも、部屋の中から彼の声が聞こえて安堵したから失ったので、ただ恐怖してる訳でもないようだ。


「ほ、ほら、彼がなにされてるかはわからないわ! 声が聞こえたからって安心しちゃダメよ!」


 パチュリー必死の説得もあり、なんとか戦う準備を整えたレミリア。


「と、とりあえず、中の様子を見ましょう」


 傍らのパチュリーが頷く。レミリアはドアノブを手に、ゆっくりと音を立てないよう細心の注意を払って扉を開けた。


「ふう……」


 ぶわっと全身に冷や汗が浮かぶ。多分、隙間からこぼれる、得体のしれない雰囲気が原因だ。


 二人は顔を見合わすと、扉の隙間から部屋を覗いた。


「スカーレット」


「ああんいい! でも名前で、もっとなじるように!」


「フランドール」


「あ、ああん!」


 レミリアとパチュリーは絶句した。そしてなんかもう凄く気まずくなった。


「ねぇお兄さん! フランの、フランの顔にまたがって、圧迫……圧迫祭りよ!」


 彼はフランの顔に乗っかった。彼の尻がフランの顔を圧迫するが、フランは笑顔で恍惚としている。


「名前を言って!」


「フランドール」


「あっああん、いい!」


 なじるようになどと言われているが、彼はただフランの名前を言ってるだけである。フランはそれで満足だそうだが。


 パチュリーもレミリアも、この光景には見覚えがあった。


 パチュリーの部屋にあるとある漫画のワンシーンだ。


「(そういえばフランに貸してたわ)」


 つまりフランは、ただのごっこ遊びをしてたのだろう。彼が関わってるので、多少何かしらの影響を受けたかもしれないし、健全な遊びとも言い難いが。


 レミリアは妹が遠い存在になってしまったような、複雑な気持ちになった。


「(……まあ、フランが楽しそうだし、いっか)」


 と考え扉を閉めた。


 冷静に考えれば、完璧と称される咲夜が判断した事だ。危険があるはずもない。あったとしても、対応策を用意していただろう。


 二人は気まずい雰囲気のまま廊下を歩いていった。ちょっとした自己嫌悪だ。


「パチェ」


「なにレミィ?」


「……あのね、私ね、フランが凄く」


「うらやましい?」


「…………ええ」


「私もよ」


「…………」


「…………」


 二人は単純に、私も顔に乗ってほしい、と思った事に、とてつもない気まずさと自己嫌悪を感じたのだ。


 二人は同時に溜め息を吐くと、何事もなかったように会話を始めた。


「やっぱ三部よね」


「私は五部が好きだわ」


 二人は他愛のない会話をしながら、図書館へとゆっくり歩いていった。



例の奇妙な冒険は大好きですが、今回パロディに使わせていただいたシーンが掲載されてる辺りは友人に借りパクされましたので記憶だけで書いてます。


何が言いたいかっていうと、○ョ○ョの奇妙な冒険、第七部、スティールボールラン、絶賛発売中!


○ョ○ョリオンもよろしくぅ!


ってことです。○ョ○ョは紅魔館メンバーの元ネタでもあるそうですね。


あとおぜうの扱いですが、次回の方が酷いかもしれません。


いやこれだけは言っておきますが、私はカリスマ溢れるお嬢様が大好きです。それは間違いありません。


ただ私が書くとなぜかカリスマが無くなるんです。ナンデダロウナー。


あとフランちゃんのこの部分が書きたくてこの作品を書きはじめたといっても過言ではありません。


他にも書きたい話はたくさんありますが、露骨に更新ペースは落ちます。


そして次回はおぜうとパチュリーのキャラ崩壊がすごい事になります。多分。


小悪魔は悩み中です。出すとしたら色々キャラ付けが必要ですから……真面目か小悪魔(性格)で迷ってます。いやまあ出すとしたら、ですが。


予想以上にたくさんの方に読んでいただけてるようで嬉しい限りです。


今後も笑っていただけるように頑張りますので、よろしくお願いします。

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