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東方逆接触  作者: サンア
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壁尻話

タイトルで性癖がバレるシリーズ。



 彼は困っていた。


 彼が困ることなどそうあるものではない、と彼を知る者は思うのだろう。実際珍しい光景である。


 本っ当に珍しい光景である。


 状況を説明しよう。


 場所は人里の一角。中心部の喧騒から離れた静かな地域だ。


 今の季節ならば近くの山で紅葉狩りが楽しめる。渓流での釣りも乙なものだ。


 何よりの見所は広大な果樹園であろうか。人里の青果店へ季節の果物を卸す他に、果物狩りも行われている。


 寺子屋の遠足では毎年の恒例行事だ。今年は彼も引率に参加する予定で、子供達の喜びもひとしおだ。


 そういう事情で下見に来たのだ。本来なら上白沢慧音と一緒のはずだったのだが、急用のため彼一人となった。


 人通りは極めて少なく、建物もない木々に囲まれた自然色豊かな道ゆえに、その白い壁は目立った。


 後々知ったことだが、元々大きな屋敷があったらしい。今となっては原因はわからないが火事になり、激しい炎で燃え盛る中、この壁だけが残り、以降そのままにされている。


 石造りだから燃えてないのだと思われたが、どうやら木の塀に白く着色したものだ。端の方は黒焦げになっているが、それ以外は区切ったように真っ白で焼け煤すらついてない。


 その壁の近くに長年屋敷で飼われていた犬の墓があり、火事の最中住人がそちらへ導かれるよう逃げ出し、全員生存したと記述がある。


 そういった理由もあって壁が残されているのだろう。土地は果樹園の一部となってしまったが。


 幻想郷ではこのような話は珍しくもないが、この話を美談として好む者は多い。


 そんな白い壁に丸い穴がぽっかりと開いていた。なんだろうと思って彼が足を止めると、


「たーすーけーてー」


 などと抑揚のない声が穴の向こうから聴こえてきた。


 助けを求められれば、彼は助けるだろう。壁を回り込もうと歩き出す。


「あーあー今すぐー、今すぐたーすーけーてー」


 ……どうも穴を潜れと言われているらしい。嫌な予感がしないでもないが、まあ別にいいか。


 彼は絶妙に通り抜けれそうな穴へ頭から入っていった。腕から通せばよかったと、後から思った。


 腰の辺りまで入ると同時に急に穴が狭くなり、固定されてしまった。少しもがくがびくともしない。


「あー、あー、せいがー、捕まえたぞー」


 真下を向くと、額にお札を貼り付けた女が寝転がっていた。抑揚のない声を発していたのは彼女か。


「芳香?」


 彼はその女を知っていたようだ。


「なんだー?」


 女も彼を知っているのだろうか。


 暗い藤色の頭に乗っていたであろう青紫のパンチング帽は、頭の上で逆さに転がって星型のバッジを隠している。


 赤い中華服の上着にスリットの入った黒いスカート。いずれにもギザギザのレース装飾があり、ボタンは青い花の形をしている。


 中華的なデザインに額の札と突き出した両手に灰色がかった肌色……キョンシーと談ずるには充分な証拠ではないだろうか。事実彼女――宮古芳香はキョンシーである。キョンシーがわからないならゾンビと思っていい、似たようなものだ。


「よく出来ました芳香ちゃーん!」


 非常に明るい声が背後から聴こえる。彼はこの声に聞き覚えがあった。


「青娥? ひんっ」


「せいがー? なにしてるー?」


 彼と芳香はほぼ同時に声に反応した。彼は尻を打つ衝撃にも反応せねばならなかった。


「ふふふ、思った通りですわ」


 彼の尻に片手を置いて邪悪な笑みを浮かべた女――霍青娥は、稚児眉……唐子眉といった方がらしいか、∞の形に結った青い髪へかんざしを挿した。


 水色の半袖ワンピースに襟のある白いベストを羽織っている。ワンピースには芳香のトゲトゲしいレースと対照に柔らかなフリルの装飾がある。


 腰の黒いベルトには葉と桃の花のような飾りがついており、彼女が纏う半透明の羽衣は重力を無視して浮遊している。


 ワンピースの下に薄手のシャツを着ているのがわかったのは、豊満な胸に押し広げられてはみ出ていたからだ。


 見せ付けるように谷間を露出しているが、周りの視線など彼女は気にしない……むしろ楽しんでいる。そんな性格だ。


 引き締まったウエストと胸に負けず劣らずの尻、脚も長く、しかし適度な太さもある。二の腕も同様で、細部まで気を使っているのか細く白い指の爪も丁寧に磨かれていた。


 そのスタイルに決して劣らない顔立ちには、言葉では表せない色気が滲み出ている。


 強いて言葉にするならば……未亡人……人妻……いやこういう色気は結局美人からしか感じないのだ。


 未亡人だから人妻だから色気があるのではない。美人の未亡人だから美人の人妻だからこその色気だ。


 なんとも自分勝手な色気である。がまあ、男なんてそんなものだ。青娥もそれは良く理解している。


 理解しているからこそ、こんな色気を発することが出来るのだ。


 普段の人の良さそうな笑顔を掻き消し……いや違う普段の笑顔こそが仮面なのだ。今の邪悪な笑みこそが彼女の表情なのだ。


「さあて、それでは存分に楽しませていただきますわ」


 青娥は両手を彼の太ももに当てると、ゆっくりと上へ撫でた。


「いっ……んんっ」


 撫でる間に小刻みに指を動かすのを忘れず、手の動きに強弱をつけ、最後に尻をわしづかみにした。


「ひうっ」


 普段より、彼の反応が大きな気がする。実際大きい。予想が当たったと青娥の笑みが深まる。


 彼の性格なら捕まってくれるだろうとは思っていたが、こっちは賭けだった。なんせ精神的なことだ。


 単純な話だ。身体を自由に動かせない状態、特に捕まってる拘束されている状態なら多少は不安も生まれる。


 その不安からくる警戒が必要以上に身体を過敏にする。ゆえに彼の反応がいつも以上に大きいのだ。


 慧音に急用を作ったのも青娥だ。上手くいってくれたおかげでこの有り様だ。


 芳香は青娥が楽しんでいる反対側でボーッと彼を眺めていた。歪む表情によじる身体。普段このような彼は見ない。


 芳香は少し心配に思ったが、彼女は忠実なキョンシー……主人の命令がなければ何も出来ないのだ。


「あー……だいじょうぶかー?」


 それでも会話ぐらいは問題ないようだ。彼は芳香を心配させてはならないとほんのりと笑いかけて頷いた。


 芳香はそんな彼を見て胸の奥が締め付けられるような気がした。


 一方で青娥の興奮は最高潮に……否、限界を超えようとしていた。


 汗も掻かなければ呼吸に乱れもなく、行為そのものが無ければ普通の時と変わりない。


 ただし、瞳に宿した焔は太陽の如く燃え盛っていた。


 口が裂けんばかりの笑みで彼のズボンへ手をかけた。彼はズボンの内側に侵入してきた生の指の感触に、脱がされるのか、と冷静に思った。


 手首は多少動かせるが、青娥の手には当然届かない。届いてもろくな抵抗は出来まいが……。


 この日彼はバドミントン同好会のジャージを着ていた。遠足の下見というので無意識に動きやすい服装を選んだのだ。


 紐で窮屈でない程度に締めてはいるが、ジーパンに比べれば緩く、実際指の侵入を許している。


 まあ、ジーパンを穿いていたところで、結果が変わることはなかったろうが。


 青娥の思考は加速していた。剥き出しにした彼の尻に何をしようか、脳内に次々と流れるかつての妄想。


 ただひたすらに生尻の感触に酔っていたいとも思う。頬擦りしても良い、味わうのはもっと良い。なんなら邪仙術にて生やして突っ込んでもいい、違う突っ込みたい。


 流石の彼も泣くかもしれない。いや、鳴くか。痛みは与えない。入念な“仕込み”の後に、とろけきったそこへ、快楽のみを伝え……妄想だけで達してしまいそうな昂りが股ぐらに集まっていく。


 今から、そう今からその妄想を実現するのだ。妄想で終わらすまいと執念の行動が青娥をここまで連れてきたのだ。


 今更だが、そもそも人通りの少ないこの道に、人払いの術も使っている。


 それが油断を生んだ。


 突如、青娥の身体が、血の飛沫を撒き散らして宙を舞った。


 一部始終を目撃していた藤原妹紅は語る。


「そうそう急に――永遠亭に案内してほしいって、生徒が運ばれたとか云々」


 一呼吸おいてグラスの飲み物を口に含む。喉を鳴らして息を吐くと麦酒の香りがした。


「でも有り得ないって、てゐは私ん家で昼寝してたし、鈴仙はそのてゐを迎えに来たし、今日は薬売りに出てなかったとも言ってた。慧音が来たのはその直後さ」


 息を切らして必死な顔で、バドミントン同好会のジャージを着て……。


「鈴仙に確認したら今は子供の患者はいないって、結局たちの悪い悪戯だろうって……んで落ち着いた慧音から遠足の下見の話を聞いて、彼を追い掛けようと流れで私も……てゐと鈴仙は恨めしそうに見てたよ。仕事じゃ仕方ないよね」


 空になったグラスを置いて表情を変える。気楽さの感じられた表情が、遠くにある目的地を眺めるような深い顔付きに…… 確かにこの後に語る話にはこの顔の方が相応しいのかもしれない。


「目的地はわかってるんだからゆっくり行こうって、紅葉を見ながらのんびり歩いてたら、ほらあそこの白い壁、あれの話を慧音が始めてさ」


 椅子の背もたれにどっしりと身体を預け、額から汗を流す。


「ちょうど見えてきたから話し出したんだろうね。散々聞いた話だよって言った瞬間、慧音が走り出した……いやアレは……突進かな」


 大股に走り出した慧音は肩で鋭角を作り、その角を邪仙の鼻に叩き付けた。想像すると恐ろしい話である。


「辺りに血の飛沫がね……一瞬驚いたけど、白い壁に……なんていうの……埋め込まれたというか、拘束されてたっていうか……とりあえずそんな彼を見たものだから、頭に血が上ったんだろうね」


 口より先に手が出る人だし、と苦笑いで続ける。


「でも邪仙、その時はまだわからなかったけどね。地面に転げるかと思ったけど、綺麗に回転して着地してさ。片手で曲がった鼻を治しながら笑ったんだよ」


 ちょっとビビったね。血走って開かれた目が、読んだばかりのホラー漫画を想起させたようだ。


「なんか、取り出したのよ。正確にいうならいつの間にか手に持ってたんだけど、これくらいの細い、多分鉄の、棒だよ」


 手振りで大きさを説明する妹紅。二十センチほどの細い棒で、持ち手が柄のようになってたそうだから武器の一種だろう。


「それを大きく真上に振りながら慧音に走って行って、降り下ろしたのさ慧音の頭に、風切り音も鳴ってたし、凄い勢いで振ったんじゃないかなあ」


 冷静ですね。との質問に妹紅は笑った。


「いやその時はもう酷い顔だったよ。普通なら死んでもおかしくない……ゴキャとかメキャみたいな音がしたから、慧音死んじゃったんじゃと思ったよ、ハハハ」


 妹紅は笑い出した。笑うほかないのだ。


「だって、鉄棒が折れたんだよ? 邪仙も一瞬呆けてさ。その隙に慧音の鉄拳が飛び込んで、歯の欠片が散ってたよ」


 ――中略――


「馬乗りになって邪仙に頭突きを食らわせる慧音を見て、凄いなって……」


 ジョッキを空にして赤い顔で妹紅は何度も凄いと連呼した。


「強いって凄いなって……何かこんなこというと変かもしれないけど、憧れちゃうよね、女として……」


 遠くにある目的地、彼女にとってそれは上白沢慧音になったのだろう。


 激戦を繰り広げ衣服は破れ、青アザと擦過傷を作り、血と歯の欠片を散らす様は、決して高潔ではない。


 しかしそれに、藤原妹紅は確かに憧れを抱いたのだ。


「ん? その後? えっと、邪仙が、スッゴい眩しい光を術かなんかで出して慧音の動きが……なんだっけ? 裸絞めにして……あれ?」


 酔いが本格的に回り記憶を取り出すのが困難になってきたらしい。こんなことなら酒の席で聞くのではなかった。


「あ、最後は覚えてるよ。近くの民宿で慧音が彼に乗っかって――」


 文々。新聞、特別インタビューより抜粋。


「……なんだこの記事」


 霧雨魔理沙は自宅のベッドで無駄に時間を潰したと握り締めた新聞を放り投げた。



お前は布都ちゃんの出番は!? と言う。


フラン「言わないよ死ねよ」


私「ごめんね」


フラン「邪仙術ってなんだよ何を生やすんだよ」


私「なにって……ナニ」


フラン「はいはいテンプレテンプレ」



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