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東方逆接触  作者: サンア
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ダンジョン話その二

萃香「そんな……じゃあまだ戦えないんですか!?」


天子「(説明ばかりで)本当に申し訳ない」



「おっそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーい!」


 目の前に広がった異国の風景や町並みに感慨を抱こうと息を漏らすと、彼らの耳に天子の絶叫が乱暴にぶつけられた。


――少女慰められ中――


「ごめんね?」


「んふふ……もういいわよ」


 天子は近くに設置された木のベンチに腰掛けた彼に、膝枕をしてもらっていた。頭を撫でてもらえる所までがデフォルトだ。


「あんた随分立派なの着てるね」


 萃香の質問に天子は立ち上がると両手を腰に当て胸を張った。


「守護兵の初期装備よ!」


 それは胸張って威張れることなのだろうか。機嫌が悪くなっても面倒なだけなので、萃香は黙っていた。


 守護兵とやらの初期装備は、全体的に丸みのある白銀の鎧だ。背中に逆三角形の盾を背負い、腰の黒い鞘にはブロードソードが収められている。


 今彼らが居る場所は中心に大木が植えられた円形の広場だ。中心以外はレンガの床で、周囲には石材の壁といくつかの通路がある。


 ほとんどの通路に鎧を着た見張りの兵士が立っており、その中に更に厳重なものがあった。見上げると理由がわかった。


 西洋風の大きな城がある。子供向けの童話で見掛けるシンプルな外観だ。


「お城なんて初めて見たわ」


「私もぉ」


 霊夢と魔理沙だ。和城なら未だしも、西洋城は幻想郷にはないだろう。洋館なんかは意外とあるが。


「こっちよ! こっち!」


 声のした方では天子が見張りのいない通路に立っていた。


「こっちで職業決めんのよ!」


 天子の案内で通路を進んでいくと、特徴的な建物が現れた。西洋風の砦のような建物で、冒険を匂わせる武器を象った装飾や、砦に入っていく鎧や胴着を着た冒険者達の姿を見て萃香の心が踊り出した。


 砦の材質は白い石材と木材、それと所々に……例えば正面の大きな木製の扉の上に掲げられた看板、それがよくわからない銀色の材質で作られてるようだ。他にも、壁の一部や、剣や盾の装飾、壁に設置されたランタン、と様々なものにその材質が使われているみたいだ。


 鉄やステンレス、銀でもない。そもそも金属なのかどうかもわからない不思議な物質だ。


「変なの」


 霊夢が呟いた。


「なにが?」


 魔理沙の質問に答えようとすると、


「ほらさっさと入るわよ!」


待ち切れずに天子が砦の扉を開けた。魔理沙は苦笑いでそれを追い掛け、三人も緩やかに続いた。


 看板の文字を信じるなら、この建物は“冒険者ギルド”という名前だそうだ。


 中は外観の通り広く、多数の人で賑わっていた。


「あっちよ!」


 天子が指差した場所には、白い長方形のプレートがぶら下がっており、“職業登録所”と乱れのない黒い文字が刻まれている。


 職業登録所とやらに入ると、黒い壁で仕切られた区画がずらっと並んでおり、一つ一つの区画に、四角い機械と文字が刻まれたボタンが規則正しくならんだ物がある。


「パソコン?」


 彼が呟いた。


「なにそれ?」


 霊夢が質問する。


「んー……」


 彼が首を傾げた。


「便利な道具……かな」


 彼にしては大雑把な説明だった。


「そう。これでなにするの?」


 次の質問は天子へだ。天子は聞かれたのが嬉しかったのか、機械の使い方から一つ一つの職業についても詳しく説明し、霊夢を辟易とさせた。


「と、とりあえずやってみようぜ」


 見兼ねた魔理沙が提案する。天子は説明を邪魔されて少し不満げな表情を浮かべたが、早く冒険を……みんなで冒険をしたい気持ちがあったので素直に受け入れた。


 操作は意外に簡単で戸惑うことはなかった。ただ、職業を決めるのに時間がかかった。一番迷っていたのは霊夢だ。


 魔理沙は“魔法使い”を選ぶだろうし、萃香は“戦士”か“格闘家”。天子は防御に特化した守護兵とかいうので、彼は多分仲間を回復したり強化する“僧侶”を選ぶと思う。


 じゃあ私はどうしよう。別になんでもいいけど、遠距離攻撃が出来ればバランスがいいかな。


 遠距離攻撃が出来るのは、“盗賊”、“射手”、“商人”、“魔法使い”……魔法使いも遠距離攻撃が出来るのか。


 天子の説明によれば、遠距離攻撃とは敵にダメージを与える以外に味方を援護する効果もあるらしく、前衛の攻撃力や命中率に影響を与えるとか何とか。


 そして魔法はMPを消費しないと使えないが、遠距離攻撃には特に代償はない。もちろん威力や効果は随分違うが。


 これならわざわざ遠距離攻撃を使える職業を選ぶ必要も……いや複数いた方が……。


 早くも考える事が面倒になってきた霊夢の目に留まったのは、画面の右下にあるランダム診断の文字だ。天子の説明では適当に職業を決めてくれるとか何とか。


 霊夢は迷わずにカーソルをランダム診断に合わせ、一切躊躇なく決定ボタンを押した。


『しばらくお待ち下さい』


 画面にそう表示されてから一分ほど経つと、画面の左側にある長方形の機械が唸り、中心にある縦長の穴からカードのような物が出て来た。


「さっきのアレと同じ物かしら」


 そのカードは先程違和感を覚えた正体不明の物質で作られた物だった。カードの表面には霊夢が入力した情報が記載されている。右下のマークは職業を表してるようだ。


「霊夢終わった?」


 振り返ると萃香と魔理沙がカードをこちらに見せるように片手を上げていた。


「ええ」


 それに倣ってカードを指に挟んで二人に見せながら立ち上がる。


「あ、そうだ霊夢。さっきの“変なの”ってなんのことだ?」


 天子の介入で中断していた質問だ。


「このカードもそうなんだけど、何か……変……なのよ。言葉では説明しづらいわ」


 霊夢が変だと思ったなら変な物なのだろう。それくらい彼女の直感には信憑性がある。


「ま、気にしなくても大丈夫だとは思うわ。ただ変なだけ」


「ふーん」


 魔理沙にはちっともわからない。魔理沙だけじゃなく萃香もピンときてない様子だった。


 数分して彼と天子が合流した。狭いからと場所を変える事になり、ギルドの二階が良いと天子がいうので行ってみると、一階の喧騒はどこへ行ったのやら、とても静かで落ち着く場所だ。テーブルや椅子がいくつかあるだけで、座ってる人の姿も少ない。


 天子によると、この空間では仲間以外の姿が見えなくなり、周りから干渉される事もなくなるようだ。今見えている人もオブジェに過ぎないとか。


「じゃとりあえず職業紹介といきましょ」


 近くのテーブルにつくと天子は足を組み、頬杖をついて質問した。偉そうな態度だが彼女にしたらこれが自然体なのだ。


「私は魔法使い――」


「知ってる次」


 魔理沙がうなだれた。


「私は格闘家――」


「知ってる次」


 萃香がうなだれた。


「私は……“ガンナー”ね」


「意外ね」


 天子が身を乗り出して霊夢のカードを奪い取った。


「この職業、強いけどお金かかるわよ」


「……ランダム診断とかでそれになったのよ」


 知ってたら選んでなかった、と霊夢がうなだれた。


「で、あなたは?」


「“巫女さん”」


「ん?」


「“巫女さん”」


「巫女?」


「“巫女さん”」


「え、ちょっとカード見せて」


「ん」


 天子が彼からカードを受け取ると、確かに職業の欄に“巫女さん”と表記されていた。しかし驚くべきはそこではなかった。


「なにこれ……回復に蘇生、遠距離攻撃に魔法攻撃も出来て、盗賊と商人の役目もこなせるじゃない……」


「なにそれ凄いの?」


 霊夢の質問に、天子は大きく頷いて答えた。


「ええ、凄いわよ。というか凄すぎよ! ステータスも悪くないし、バランスぶっ壊れてるじゃない!」


「でも巫女って言われたら納得出来る」


「あ、私も」


 幻想郷住民の感想である。


「どうやって選んだのよ、これ?」


 通常職業を選ぶ時にはもちろん“巫女さん”という職業はない。だからこそ天子は戸惑っていた。


「ランダム診断したらこれになった」


 返答はシンプルだった。


「なんかズルイけど、強いしいっか。次はフレンド登録よ」


「フレンド登録?」


「説明面倒、各々こうやって」


 さっきまで散々説明していたわがまま娘は、彼のカードの右下、おはらい棒と陰陽玉が描かれた職業マークの部分に人差し指を当てた。数秒経つとピピッと電子音が鳴る。


「これで出来たわ。フレンドになると色々やりやすいから、パパッとやっちゃいましょ」


 フレンド登録とやらをしながら、天子がフレンドの機能について説明してくれた。離れた場所にいるフレンドと会話が出来たり、フレンドの元にワープ出来たり、フレンドとの好感度が一定以上だと特典があったり、と様々で、結局わかったのはフレンド登録しておいて損はない、ということだけだった。


 フレンド登録が終わると、次にアイテムの使い方や装備品の変更方法など、なんやかんやと説明は続いた。こちらもちゃんと理解出来た事は、カード(通称冒険者カード。正式名はユカリンカードらしいふざけんな)の裏側にある画面とボタンで操作するということだった。


 大体の事を、このカードで行うらしい。職業の情報を見る事も出来た。


 部分部分が?マークで隠されてるが、その中に巫女さんの文字があった。どうやらその職業についたり、その職業の者とフレンド登録する事で情報が開示されるらしい。


 その巫女さんになる条件だが、ランダム診断で極稀に選ばれるとのこと。極稀がどのくらいの確率かはわからないが、能力的に相当低い確率なのだろう。


 なにせ天子はこの三日間、数百人のプレイヤーを見掛けたが巫女さんなど一人もいなかった。


「……と選んで……これを押せばうおっ!?」


 魔理沙が天子の説明通り操作すると、突然身体を光で包み込まれた。一瞬の発光の後には、黒いフード付きローブを着た魔理沙がいた。


「お、おぉ、まんま魔法使いって感じだな」


 魔理沙が照れ臭そうに頬を掻いて笑った。


「わかりやすくていいじゃないか」


 次に白い胴着に黒いハチマキの萃香が現れる。


「そうね」


 続いてカウボーイ風の衣装の霊夢。腰のホルスターには黒いリボルバーが収まっている。


「あ、そうだ霊夢カード貸して」


 ニヤついた天子が貸してと言いながらカードをぶんどる。


「なによ?」


 霊夢が怪訝な表情を浮かべると、霊夢のズボンが発光した。発光がおさまるとズボンはミニスカートに変わっていた。


「装備によっては見た目を変えられるのよ」


 カードを霊夢に渡しながら天子。霊夢は太ももの半分ほどしかないミニスカートを触って数秒思考すると、元のズボンに戻してしまった。


「ええ!? かわいいのに!」


 天子が頬を膨らませた。


「だって……ドロワじゃないから……」


 萃香と魔理沙が驚愕した。こいつに恥じらいなんてものがあったのかと。


「冷えちゃうじゃない」


 萃香と魔理沙が安堵した。よかったいつもの霊夢だったと。


「そうだね」


 霊夢の言葉に同調した彼の姿は、まあ見慣れたものだった。


「霊夢の服だな」


「霊夢の服ね」


「霊夢の服だね」


「抱かせてちょうだい」


「ん」


――少女抱擁中――



フラン「お前に求められてるのは日常系のイチャイチャ話だよ」


私「知ってる」


でもなんかやりたかってん。次回からはイチャイチャもしっかり入れていきますので見捨てないでお願い!


まあ、結局はいつも通りになります。ちょっと違う世界観が書きたくなって、そこに東方キャラがいたら素敵かなって。


目標は季節が変わるまでに終わらせる。マモレルカナー

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