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東方逆接触  作者: サンア
24/66

真・乗っかられ話

霊夢「よしんば私が二位だとしたら?」


萃香「世界一位です」


こいしちゃん人気投票一位おめでとう!

 古明地さとりが目を覚ましたのは見慣れた部屋であった。


 自分はいつの間に寝てしまったのだ。水橋パルスィを見掛けた所までは覚えているが……。


 窓の外は暗い。地底だからではない。夜だからだ。太陽や月は見えないが、地底でも朝と夜とを判別出来る程度には明るさは変わる。


 さとりは天蓋のついた無駄に大きく、無駄に装飾されたベットから下りると、サンダルを履きながら傍らの照明に明かりを燈した。


 淡い光が部屋を照らす。少し離れたテーブルには水差しと逆さに置かれたコップ、そしてメモ用紙が一枚、コップとテーブルに挟まれていた。コップを重しにしたようだ。


 赤い絨毯を踏み締めて歩き、コップを逆さにしてメモ用紙を手に取る。もう片方の手は水差しを持ち、コップに水を注いでいた。


『食事は台所に用意してあります。彼は予定していた部屋に案内しました。その他何かあれば遠慮なく起こして下さい』


 この箇条書きと丁寧な字はお燐か。ちゃんと言い付けを守ってくれたらしい。


「……」


 さとりは何かを思い出したかのように燈したばかりの明かりを消すと、無駄に大きな扉をくぐって廊下へ出た。


 黒と赤のタイルをスタスタと慣れた様子で歩いていく。廊下の壁には等間隔でランタンが掛けられており、それが道を照らしている。


 廊下で何匹かの夜行性のペットと擦れ違った。人型の者もいれば、動物の姿のままの者もいる。


 ペットがさとりを認め、喜ぶのがわかった。ここのペット達は皆さとりが大好きだ。さとりもまたペット達を愛している。普段なら立ち止まり二、三声をかけるが今日はそうしなかった。


 それを察するペットもいれば、寂しがったり不思議がったりするペットもいた。


 さとりが立ち止まったのは客室の扉の前だった。立ち止まったのは一瞬で、ほぼ溜めのない動きでドアノブに手をかけ、ひねった。


 ギギギッ、と建て付けが悪いのか床とドアが擦れて嫌な音が鳴る。一息に開いた方が音が小さいのを経験的に知っていたさとりは、一気にドアを押した。


 擦れ音は最初の一拍子だけでその後はさとりの経験通り音は鳴らず、しかしさとりはそんなことを気にするまでもなく、スタスタと軽快な足音で彼が眠るベットへ近付いた。


 さとりの部屋とは違い、ベットに天蓋はなく、一般的な物よりかは大きめだがサイズも常識的なそれにかれは仰向けに転がって健やかな寝息を立てていた。


 数時間でも数日でも数ヶ月でも眺めていられる姿だが、さとりの欲望は尽きることなく肥大していた。


 彼の身体を覆う薄手の布団をゆっくりと剥がし、サンダルを脱いでベットに上がり、彼の腰を跨いで座る。またぐらに熱いものを感じた。


 熱は全身に伝わり、さとりの頬を紅潮させ、額には汗が浮かび、ムッとしたなまめかしさがさとりに篭った。身体が排熱を拒否している。


 どこかに吐き出したい、吐き出さないと狂ってしまいそうになる。もう既に狂っているとも知らずにさとりは彼の衣服へ手をかけた。


 肌触りが心地好い薄手の生地で、白と水色の縞模様の寝巻だ。さとりが用意したもので、彼の寸法はあらかじめ測っていたのでピッタリだ。だがそれに安心したりするより何より、さとりは胸元のボタンに悪戦苦闘していた。


 普段のさとりなら苦もなく外せるのだろうが、今は興奮状態であるため手指が上手く働かないのだ。業を煮やしたさとりは両手で衣服の胸元をわしづかみにし、左右に思いっ切り引っ張った。


 ビリリッ、と文字通り衣の裂ける音がして、さとりの視線は彼の露出した胸元へと釘付けになった。


 そこでさとりは急速に冷静さを取り戻す事になる。理由は簡単だ。彼の胸元への道を、“妹”が阻んだからだ。


「あなた……なにしてるの?」


「胎内回帰」


 姉の質問に気が違ったような返答をしたのは古明地こいし。やや黄色がかった鮮やかな緑色のセミロングヘアーに、白く光る瞳孔のない瞳。


 服のデザインはさとりと似ているが、配色が違う。上は黄色で、襟の部分は二本の白い線が入った緑、袖の先っぽは黒色になっている。


 下のスカートは緑で、二本の白い線と薄く描かれた花の柄がある。が、今は穿いてない。ベットの端に無造作に置かれている。鴉羽色で黄色いリボンをあしらった帽子も同様だ。


 “彼の服に潜り込む”のに邪魔だったらしく、閉じた第三の眼のコードも、普段以上にこいしへと絡み付いていた。厄介な事に彼の腕とも繋がっており、引きはがすのは中々に難しそうであった。


「……そう」


 先程までは平坦で触り心地も何もなかったのに、今はしっかりとこいしの体温をまたぐらから感じる。正確には先程感じていたものも、ほぼ全てこいしのものだったのだ。


 そう考えるとわずかに残っていた興奮度もどこかへ吹き飛んだ。


 先程までさとりがこいしを認識出来なかったのは、こいしの能力によるものだ。こいしは他者に嫌われる事を知り、その原因である第三の眼を閉じ、自身の心までも閉ざした。その結果、“無意識を操る程度の能力”を手にしたのだ。


 さとりでさえ彼女の思考を読むことは出来ず、今のように無意識に翻弄される。


 決して姉妹仲は悪くない。むしろ良好である。しかし周りからは、突き放しているように見えるらしい。単にさとりが放任主義なだけなのだが。


 彼はまだ眠っている。きっとこいしにも気付いていない。いや気付いていて、そのままにしているのかもしれない。


「でもこいし、彼は私達のお母さんじゃないし、第一そこは胎内ではないわ」


 多分胎内回帰というのは冗談か何かだと思うのだが、彼からは少なからず母性は感じるし、胎内回帰とは多分安らぎなり母性なりを求める行為だと思うから、こいしの行動自体は間違ってないような気がするけど。


「お兄ちゃんはあたしのお母さんになってくれる男性だ」


 姉妹仲は良好だが、さとりは妹の事を何もかも正しく理解出来ている訳ではない。きっと、そういう状態だから二人の仲は良いのだろう。


 だからこそ、さとりは頭を抱えた。この妹が何を言っているのか、さっぱり理解出来なかった。彼がお母さんっぽいというならまだ理解出来るのだが。


 見た目が女性っぽくても、男性がお母さんっぽいのがわかるというのは変な話だという事にさとりは気付いていない。


「……私達のお父さんが彼と結婚するってことかしら?」


 違うだろうなあ。と思いながらさとりは言った。自分達の父親は今はどうしているか、生きてるか死んでるか、そもそも存在するのかもわからない。


「結婚はあたしがしたい」


 やっぱり違うか。というか、もう、わからん。妹が何を言ってるのか、何を考えてるのか、全くわからん。


「私も結婚したいわ」


 さとりは考える事をやめた。


 興奮は冷めてしまったので、もう彼をどうこうしたいというのはないが(今は)、このまま部屋に戻るのもなんだか寂しい。


 ずっと寝てたから眠気はないし、普段なら仕事なり読書なりとやれる事はあるが、仕事は彼に合わせて終わらせているし、せっかく彼が来てるのに読書というのも気が引ける。


 彼を起こすというのは論外だ。こんなに気持ち良さそうに眠っているのだし……気持ち良さそうに……眠って…………。


「お尻にお兄ちゃんのが当たって気持ちいい」


 こいしの発言に反応することもなく、さとりはただ彼の寝顔を眺めていた。眺めているだけではない、徐々に近付いている。


 ゆっくりと静かに、だが確実に、彼との口づけを狙って。


 こいしはそんな姉の姿をジーッと、白く光る目で見ていた。止めようとは思わない。


「(ああ、そういうことしてもいいんだ)」


 と思っていた。思っていたからには、姉が終わったら自分の番だとワクワクしてきた。


「(でもこのままじゃちゅー出来ないや)」


 自身の腕と彼の腕に複雑に絡み付いた第三の眼のコードが、こいしの行動を阻害していた。完全に自業自得だ。


 かなり複雑にきつく巻き付いている。無理心中しようとしてる者ぐらいしっかりと縛っている。痕が残るとかは考えなかったらしい。


 どうしようかとこいしが悩んでる間にも、さとりは動きは止めずにひたすら突き進んでいた。冷静を取り戻したとは何だったのか。


「(そーだ、引っ張ってみよう)」


 絡み付いたものをとりあえず引っ張るというのは、中々に愚かな選択肢なのかもしれない。だが、こいしの無意識は思い付いた事を即座に実行する無邪気さまで孕んでいた。


「えいっ」


 掛け声と共に腕を引っ張ると、彼の身体が少し動いた。少し、ほんの少し……さとりはそのほんの少しのところでかろうじて止まっていた。そんな時に彼の身体が動いたのだ。


 柔らかな感触がさとりの唇に伝わった。


「んーとれない」


 こいしは引っ張るのが無意味だと察すると腕を戻し、素直にちょっとずつほどき始めた。片手で固く複雑に縛られているコードをほどくのは時間がかかるだろう。


 一方さとりは放心状態に陥っていた。理性がギリギリのところで堪えていたのに、まさか彼の方から来るとは思ってなかった。というか有り得ない。


 こんな、彼から、こんな……嬉しいけど、こんな……ヤバい、熱い、彼から……キス、堪らない、キス……好きな人が……キス……熱い……好きな人から……………………。


「お兄ちゃん起きてぇー! ほどいてぇー!」


 結局自分の力ではどうにもならないと悟ったのか、こいしが大声で彼に呼び掛ける。


「ん?」


 彼はゆるりと目を開けた。すると声の方を確認する前に、引き攣った笑顔で赤面してるさとりと目が合った。


 片手で軽く口を抑え、パクパクと口を開け閉めしており、肌が露出してる部分には多量の汗が流れている。またこれは彼にはわからぬ変化だが、彼が目を開いた瞬間からさとりの心臓は数倍のスピードで鼓動を始めた。


 明らかに通常ではないさとりに、彼が心配して声をかけるのは当然だった。


「大丈夫?」


 この言葉にさとりは、数秒の間を作ってから、


「だ、だ……ダメかも、しれませぇん……」


と弱々しく答えて、倒れた。


 すぐに駆け寄ろうとした彼だったが、身体の自由がきかない。そこでこいしの存在に気付いた。


「起きたぁ? ほどいてぇ」


 自身とこいしに絡んだコードを見た彼は、ほどくのにかなり時間がかかると察し、まずはさとりの介抱のために誰かを呼ぶべきだと考えた。


「こいし、お燐呼んで」


「うん、おりいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーっんっ!」


 彼が叫ぶより遥かに効果的だろう。一分と経たずに寝ぼけ眼のお燐が扉を開け、倒れたさとりを見て驚愕した。


「お願い」


「あ……は、は、は、はいいぃっ!」


 お燐は慌てながらもさとりへ近付き、脈拍やら呼吸なりを確認していく。顔を見たときに出血があったのに一瞬恐怖したが、鼻からだと気付くといつものことかと安堵した。


「大丈夫そうなんで、さとり様を寝かしてきたらそっちを手伝いますね……こいし様」


「よろしくぅ」


 お燐がさとりを抱えて部屋を出ると、彼は一呼吸おいて、こいしに質問した。


「なにしてたの?」


 別段怒った様子もない。いつもの穏やかな彼だ。こいしと繋がったこの状態についての質問だろう。これがさとりの卒倒に関連があるかを確認する意味も含まれているかもしれないが。


「胎内回帰」


「ん?」


「胎内回帰」


「ん~?」


 彼が首を傾げると、それを真似してこいしも首を傾げた。



スッゴいタイムリーにこいしちゃんが登場する話が書けて良かったです。こいしちゃんの一位はなんですかね、やっぱりメリーさん効果ですかね、正確にいうならもえ作画ですかね、とりあえずこいしちゃんが可愛かった。にしてもこいしちゃん一位は予想外……というより霊夢さんが一位じゃないのが予想外でビックリしました。まあ私が一番気にしてるのはゆうかりんの順位なんですけどね。


私「ゆうかりんに投票しなかった人はあとで先生の所へ来なさい。フランちゃんにお仕置きしてもらいます」


フラン「こいつはフランに投票してなかったのでバラバラに引き裂いておきます」


あと胎内回帰ですが独自解釈です。画像検索はやめた方がいいです。ただこいしちゃんに言わせたかっただけです。


次回は番外編かな。ひっくり返す子が出て来るかも、予定は未定、それでは。

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