運動話
ボツにしたアリス。
アリス「スパッツ直穿きって素敵じゃない?」
魔理沙「え?」
アリス「彼の色んな匂いが染み付くのよ。ほら、具体的にはおし」
魔理沙「やめろっ!?」
魔理沙が可哀相過ぎるのでボツ。でも本当は桃色でオープンスケベでドドド変態なアリスが書きたい。
「容態が一気に安定したわね」
アリスは相変わらずの無感情な物言いだが、それなりに付き合いのある霊夢はアリスが感心している事がわかった。
微細な変化……例えば、表情。無表情と言えど、その時の状態や機嫌等でほんの少しの違いはある。声なんかもそうだ。嬉しい時と悲しい時ではトーンも変わる。
まあ霊夢がわかった理由は“なんとなく”なので、付き合いの長さは多分関係ないだろう。付き合いのない者に対して、霊夢の“なんとなく”が働くかはわからないが。
とりあえず、アリスを感心させた薬を運んで来たてゐは、アリスを相変わらず無表情で何考えてるかわからない奴、と思っていた。
アリスやてゐの感情は置いておくとして、アリスの言うように永琳の薬の薬効は抜群だった。
先程まで苦しげに汗を流していた魔理沙が、今は穏やかな表情で眠っている。汗も引いているし、咳も収まったようだ。
「流石ね」
朝風呂に入っていた霊夢は鈴仙からの忠告を聞いていなかったが、魔理沙が眠る部屋に入っているのはそれが原因ではない。第一アリスから説明されている。
霊夢は風邪を引きたいのだ。なぜなら彼の看病を受ける事が出来るから。自身が弱っている時に受ける彼の優しさ、大袈裟に言えば献身、いったいどんな心地好さが得られるのか。想像しただけで口角が吊り上がる。
しかし、残念というには可笑しいが、霊夢には生来より強靱な生命力が備わっており、それが風邪やそれ以外の病気を引き起こす要因やウィルスを蹴散らしてきたのだ。
大きな怪我も経験がない。弾幕ごっことは違う、危険な妖怪退治を過去幾度も経験しているのに、だ。それに関しては戦闘技術と霊力の高さも理由の一つだが。
「出掛けるの?」
てゐの言葉に、霊夢はこの世のめんどくささを凝縮したかのような表情で頷いた。
霊夢の傍らには陰陽球が浮かんでおり、一定間隔で霊夢を囲むように回転している。右手にはおはらい棒、首にはマフラーを巻いている。マフラーより先に脇を何とかしろ、と言いたいが我慢しよう。大人の事情だ。
このような出で立ちなのでてゐは質問した訳だ。
「……人里に痴女妖怪が現れたんですって、数少ない仕事だから寒いのを我慢して頑張ってくるわ。留守番よろしくね」
そう言って霊夢は神社を後にした。
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竹林の一角、藤原妹紅の住み処の周りには小さな畑があり、少し離れた所には小川がある。
住み処にしている家はくたびれたあばら家だが、それは外観だけで内装はわりとしっかりしている。
雑音もない。あるのは風に揺れる竹のざわめきと小川のせせらぎだけだ。ジッとしていれば自身の鼓動さえ聴こえてこよう。
そんなあばら家の傍らには竹炭の貯蔵庫――といっても、木枠の骨組みに竹を組んだ屋根をつけただけのものだが――と、やや開けた空間があった。
その空間に、不定期に何か軽い物を叩く音が鳴っていた。前述の通り静かなこの場所にはよく響く音だ。たまに息遣い等もあるので、人為的なものだと推測出来た。
まあ自然にはない音なので、それを聴いた者――もっとも普通の人間が近寄る事は稀だが――は妖怪の鳴き声か何かと勘違いするかもしれない。
いやしかし、最近は人里でも聴ける音だったか。その音と息遣いを発しているのは、輝夜と妹紅だ。
ワイシャツにサスペンダー付きの赤いモンペが普段の妹紅の服装だが、今は胸に白い糸でバドミントン同好会と刺繍された赤色のジャージを着ており、足元まで届く長い白髪を、いつも頭頂部につけてるリボンで束ねている。輝夜も長髪をヘアゴムで結っている。
運動には邪魔だからだろう。二人は一定の距離をとり、手に持った道具で白い羽根のような何かを打ち合っている。
手に持った道具は、細長い棒で、持ち手に黒い柄があり、先端には円形の枠に網目をつけている。その網目の部分で打ち合っているらしい。
外の世界ならラケットといえば通じるか。少し前から幻想郷で流行り出したのだ。
経緯はとある商店にあったこの道具一式を、彼が譲り受け、寺子屋の授業で使ってみた所、子供達が熱中。彼は快く道具一式を寺子屋に譲った。
しかし数が少なく、取り合いなどで喧嘩になったりしたから、上白沢慧音が妹紅に相談すると、手先が器用だった妹紅が竹でラケットを自作したのだ。羽根は羽根突きの物を少し改良すれば良かった。
それを人里の公園で問題なく使えるかテストしていると、人目に触れ、また某新聞でも取り上げられると、やってみたいという人々が増えたので、慧音が寺子屋で貸出を行った結果大行列。
そのうち慧音の許可をとってラケットの制作と販売をしたいという者が現れ、慧音が妹紅に伝えると、妹紅は無償で制作法を教えた。今では人里の遊びの一つとして定着している。
「大儲けするチャンスだったのにねえ」
休憩だろうか、額の汗を拭いつつあばら家の縁側に腰掛ける輝夜が、ややからかうような口調で同じく縁側に腰掛ける妹紅に言う。
「いや慧音の頼みだからやったけど、作るの面倒だったし、金に興味ないし、それに慧音大変そうだったしなあ……あ、あんがと」
本当に金銭に興味はないのだろう。感情の抑揚がない。彼から飲み物を受け取りながら、当時の慧音を思い出す。彼女は優しい人だ。人の為なら自身の苦労は厭わない。
「慧音疲れきってたしなあ」
が、寺子屋の業務や住人からの相談、その他様々な事に協力を惜しまない彼女でも、連日現れる客には少しだけ参っていた。
「だからいいんだよ」
そんな慧音の友人である妹紅は、慧音の苦労が少しでも減ればと思ったらしい。
「そ」
そっけなく返事をする輝夜だが、その表情には笑みが浮かんでいる。きっと妹紅が予想通りの返答をしたからだろう。いつからか、自分の皮肉やからかいに過剰に反応しなくなった。昔だったらそのまま殺し合いになったものだが、妹紅も変わった。異変以降だったか、それとも慧音と親しくなってからだったか、いや彼との出会いからかもしれない。
「ダメ、寒い、バドミントン終わり」
「お前が誘ってきたんだぞ」
呆れて言う妹紅だったが、言葉が届く前に輝夜は部屋の中に入っていった。隣に座る彼に目線を向けると、彼は妹紅にゲーム機を見せた。
ああ元々そのつもりだったのかと理解した妹紅は、彼に微笑みかけると立ち上がった。
「あのさ……膝まくらしてくんない?」
唐突だ。
「いいよ」
だが彼は即答した。彼は自分に出来る事なら基本的に迷わない。
「じゃ、入ろ」
妹紅が障子戸を開け、彼を招くように手を広げた。
「早く、寒い」
中から輝夜の文句が聴こえると、
「ん」
彼は素早く立ち上がり、部屋へと入っていった。
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すっかり夜も更けた頃、彼らは永遠亭に戻っていた。
「ってか、バドミントンやるにも、ゲームやるにも永遠亭で良かったじゃない」
「あら、永遠亭だと彼に膝まくらしてもらえないわよ?」
永琳に独り占めにされるからだ。
「それは知ってるけど、というか、“見れば”わかるけど」
現在彼らが居るのは永遠亭の居間、中心には長方形の座卓があり、コンロと鍋、鍋の周りには皿に盛りつけられた野菜や肉、豆腐が置かれている。鍋はコンロの火で充分に煮えており、辺りには割り下の匂いが漂っている。食欲を刺激する匂いだ。他にはお椀や箸などの食器と生卵がある。
またそれらがハッキリと視認出来るほど部屋は明るい。壁にある円形の窓から月明かりが差し込んでるから、という訳ではない。単純に天井に照明があるのだ。ゲーム機なんかもあるし、普通に電気が通っているのだろう。要は高性能な発電機を有しているのだ。
詳細は省くが、彼女達は月からやって来た。そして月は幻想郷、いや外の世界と比べてもかなり高度な文明と技術があり、永遠亭でもその一部が使われているそうだ。
永遠亭によく来る妹紅はその辺りの事情は把握しているので一々気にしないし、目の前で彼が永琳に抱きしめられている事も今では見慣れた光景だ。博麗神社に行けば色んなパターンが見れる事も某新聞で特集されていた。
「あの二人はいつ食べるのかな?」
「私達が寝静まった後に永琳が彼を食べるのは知ってる」
「ほどほどにしなさいよ」
いつのまにか盛りつけられていた皿の具材は鍋に投入されていた。
「私焼く方が好きなんだけど、まあそれは今度自分ちでやるわ」
具材を投入しているのは霊夢だった。
「地方によって違うみたいね。割り下をちょっとずつ入れて焼くのだったかしら?」
「鍋一つとっても違うもんだな」
突然現れた霊夢に二人が特に驚いてないのは性格だ。霊夢がここに居る理由は、里で鈴仙を退治したついでに送ってきたのだ。普段の霊夢からは考えられない行動だが、鈴仙が持ってた食材に目をつけたのなら理解出来なくもない。
ちなみに鈴仙は霊夢に退治され、別室で伸びている。てゐは帰ってきてないようだ。
「ああでもやっぱり上等な肉は違うわね。美味しいわ」
一切遠慮なく鍋をつつき始めた霊夢を見て、二人もマイペースに食事を始めた。彼と永琳に目立った動きはない。あまりにも、動きが無さ過ぎる。
彼はまあ無抵抗なのが基本なのでわからなくもないが、永琳が微動だにしないのは違和感がある。片手で彼の太ももやら背中やら尻やら撫で回さないのは違和感がある。
そんな事は気にせず食事を続けてた三人だったが、しばらくして永琳の胸元に顔を埋めていた彼がもがき出した。
「あれ、窒息してるんじゃ」
霊夢の対応は早かった。瞬間移動してるんじゃないかというほどに忽然と彼の元へ移動し、ほとんど物音を経てずに彼を永琳から引き離したのだ。彼は今、箸を片手に持った霊夢にお姫様だっこをされている状態だ。
「相変わらず凄い動きだな」
「そうね」
それらを目視出来ていた二人も充分に凄いと思うが、それは置いといて、変わらず永琳に動きはない。そのままだ人形のように彼を抱きしめた形から動かない。目線も前髪に隠れてわからず、何をたくらんでいるのかサッパリだ。
殺気がないのは確かだ。彼に対し殺気があれば霊夢がこんなに大人しい訳がない。
「あ、妹紅卵取って」
「お前のが近いだろ」
にしてもマイペースな人間ばかりだ。まあマイペースでいられるぐらいの事しかおこってないから当たり前か。
「これはほっといていいのね?」
霊夢が彼を下ろしながら、やや呆れの含む声色でいう。
「ええ、鈴仙に……ああ気絶してるのだった。妹紅運んで」
「お前の従者だろうに、運ぶけど」
二人は箸を置き、永琳の元へ移動すると二人で永琳を担いで部屋を出た。
「あの薬師のまぬけな姿は初めて見たわ」
「疲れてたみたい」
「そ、なら仕方ないわね。さ、食べましょ」
「うん」
前日から寝ていなかった永琳の睡魔は限界まで来ていたらしい。
その後、彼は約束通り永遠亭に泊まったが、翌日の昼頃まで永琳は目覚める事がなく、結果的に永琳は彼を抱きしめる事ぐらいしか出来なかった。
それでもそれなりには満足げであったが。
フラン「なにか言う事は?」
私「早くゆうかりんの話が書きたくておざなりになりましたごめんなさい」
フラン「許さん、死ね」
私「はい」
適当でごめんなさい。カリスマな永琳を可愛く書きたかったのですが玉砕。下ネタが全然含まれてませんが許しテ!
でもモコタンは書きたい感じに出来ました。輝夜も。技術云々は独自設定でお願いします。
次は下ネタ書くぞ! えげつないぐらい書くぞ!