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東方逆接触  作者: サンア
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看病話

妖怪と人間の耐久力。


霊夢「たまには私がご飯作るわ」


萃香「えー」


霊夢「指切った」


彼「ペロペロ」


霊夢「やったぜ」


幽香「今度は私がご飯作るわ」


萃香「えー」


幽香「指、切れなかった」


彼「ご飯美味しいよ」


幽香「やったぜ」


こんな感じのボツネタ。


 その日、霧雨魔理沙は布団の中で目を覚ました。障子戸から柔らかい光が差し込んでいる。夜が明けたばかりのようで、小鳥のさえずりすら聞こえない静かな朝だ。


「……寒っ」


 肌寒さを感じ、身を縮こませ布団に潜り込む。ようやく秋らしい涼しげな気候になったかと思えば、あっという間に冬の如き寒さになってしまった。暦の上ではまだ秋だが、あてにならないものだ。


「ん……?」


 何かあたたかいものに当たった。あたたかく柔らかい。いったいなんだと思いまさぐっていると、


「くすぐったい」


 目の前から声がした。彼の声だ。そうだ昨日は宴会でそのまま神社に泊まったんだった。いやでもなんで目の前に彼がいるんだ。というか同じ布団で寝てる。同じ布団で……。


 例の如く魔理沙は赤面した。が、普段と様子が違う。飛び起きてあわてふためいたり、しどろもどろになって縮こまったり、いつもならそういう反応があるのだがそれがない。


 どうしたことかと自分の事ながら不思議に思っていると、


「ゴホッゴホッ、あれ……?」


 弱々しく咳が出た。そこで喉の痛みや身体のだるさに気付く。


「……風邪?」


「……っぽい」


 彼の質問におどけて答えてみせるが、その表情はぎこちない。彼は魔理沙の額に手を当てた。


「うっ」


 彼に触れられてまた身体が異様に反応するかと思われたが、どうもそんな元気すら失われてるみたいだ。ただ体温は上がったかもしれない。


「熱もあるね」


 それにしても高い体温だ。間違いなく熱がある。それなりに高熱だ。彼はそれを確認すると、ゆっくり布団から起き上がり隙間のないように布団を整えた。


「寝てて」


「……うん」


 遠慮や申し訳ないという気持ちが魔理沙に芽生えたが、それを表に出す余裕すらなかった。家に帰っても一人きりだ。この体調だと危険もあるかもしれない。素直に甘えよう。


 幸い、その日は泊まっている者の中に医療関係者がいた。鈴仙・優曇華院・イナバである。


「喉が腫れてて、高熱……風邪だとは思うけど、ええっと咳はいつから?」


「さっき。でも喉は二、三日前からちょっと痛かった」


「それね。喉の痛みって風邪の兆候みたいなものなのよ。手洗いうがいなんかしてなかったでしょ?」


「……うん」


「アレ、バカに出来ないのよ。予防になるんだから、次からは気をつけてね」


「……はい」


 弱々しい魔理沙を見て鈴仙は、普段からこれくらい素直だったらなあ、と思った。


「インフルエンザかもしれないし、一応隔離ね。この部屋には入らないようにして、入るにしても必ずマスクは付けて……ああ妖怪は大丈夫なのかな」


 妖怪にも病気というものはあるが、人間と同じ病気にかかるのかは鈴仙にはわからなかった。


「まあ人間よりかは丈夫か。じゃあひとまず魔理沙の看病は……アリス、お願い出来る?」


「わかったわ」


 これまた泊まっていたアリスは鈴仙の申し出を即答で快諾。そのまま看病の仕方、手順などを説明。


「あとは薬ね。師匠に貰って……」


 鈴仙はチラッと彼を見て、何か嫌な事でも思い出したのか盛大に溜息を吐いた。無論、彼自体が嫌なのではない。


 鈴仙の師匠、八意永琳は一言でいうなら天才である。職業は基本的には薬師だが、医者といってもいいだろう。重病人や手足を失う程の怪我も難無く完治させてしまう程の技術をもち、また彼女はあらゆる薬を作る事が出来る。


 万病に効く薬から不老不死の妙薬まで、副産物に化粧品や美容グッズなんかを作り出してしまい、人里で人気を博しているとか。


 鈴仙はその師匠を思い出し、溜息を吐いたのだ。別に師匠が嫌いだとか、そういう理由ではない。


 昨日の宴会には永琳も参加する予定だったのだ。それが、急な予定でふいになったのだ。迷いの竹林という立地は、隠れるのには適しているが客を迎えるのは難しいのだ。


 永遠亭には、彼もそうやすやすと訪れる事が出来ない。だからこそ、永琳は彼と会うチャンスを大事にする。だが今回はやむにやまれぬといった状態で、なんというか、宴会へ向かう鈴仙を見つめる永琳の目が……睨みつけられてるとかじゃなく、とてもせつなそうな……。


「(彼を連れて行ったら、師匠はさぞかし喜ぶだろうなあ)」


 その喜びようを想像して鈴仙の口元が綻ぶ。


「(彼を連れて行かなかったら、師匠はさぞかし悲しむだろうなあ)」


 その悲しみようを想像して鈴仙は口元を引き締めた。


 さて、どうやって彼を連れて行こう。問題はそれだ。薬を取りに行くだけなら、自分一人で行けばいいのである。その方が早い。


 でもせっかくなら師匠に喜んでもらいたいし、師匠の機嫌が良くなれば薬も貰いやすい。ただ彼を連れて行く理由が見つからない。


 あーでもないこーでもないと鈴仙は唸っていたが、鈴仙に妙案が閃くまでもなく悩みは解決した。


「じゃあ行こう」


「え……あ、うん、そうね」


 彼は自分が行くのはさも当然といわんばかりに身支度を整えていた。拍子抜けした鈴仙が慌ててコートを着込み、彼の後を追う。慌てる鈴仙とは対照的に彼は落ち着いて靴を履いていた。



 迷いの竹林、まともな人間ならばまず足を踏み入れない場所である。理由は名前にあるように迷うからだ。


 竹はイネ科の一種で一日に一メートル伸びる事もあるという、とても成長の早い植物だ。他の植物に比べ特徴がなく、目印になりにくい。竹以外の植物は極めて少なく、地面は笹の葉だらけ、整備された道があるはずもないので方向感覚も狂う。無論、地図は存在しないし、地磁気が狂ってるのか方位磁石も役に立たない。


 そしてここは幻想郷。普通では説明出来ない事象が、当たり前のように起こる世界である。前述の事柄以外の“幻想”的な何かが、人々を確実に迷わせる要因になっているのだろう。人々はそれを不思議とも思わない。


「大丈夫だと思うけど、一応手を離さないでね」


「うん」


 その迷いの竹林を迷いなく進む者がいた。彼と鈴仙だ。迷い込んだ人間が見せる不安げな様子は皆無で、目的地へとまっすぐにサクサクと枯れ葉を踏み鳴らしていく。


 なぜ迷いの竹林にあって道がわかるのか。特別な順路があるのかもしれないし、迷わない為の道具を所持してる可能性もあれば、単なる慣れという事も考えられる。


 とりあえず鈴仙はこの竹林で迷わずに行動出来る数少ないうちの一人だ。


 そして鈴仙の今の心境はそれなりに幸せであった。彼と手を繋いで歩いているのだからそれは当然なのだが、師匠に比べれば多くても周りに比べれば鈴仙も彼との接触の機会は少ない。


 そんな彼と二人きりで、風情のある竹林の中を手を繋いで歩いているのだ。鈴仙は今着用している白衣を思わせる白いロングコートも、外の世界の女子高生をイメージさせる紺色のブレザーも、白いブラウスも、赤いネクタイも、チェック柄のミニスカートも、そして黒いタイツもそして黒いタイツもそして黒いタイツも不用なほどの暖かさを感じていた。


 しかしそんな幸せな気分も長続きはしなかった。


「それで姫様ったら――!?」


 他愛のない世間話の途中、鈴仙は足元に違和感を覚えた。それは違和感に終わらず、すぐに鈴仙へと襲い掛かってきた。


「あー」


 彼の間延びした声の後、鈴仙は真下へと“落ちた”。笹の葉や仕掛けに使われたであろう竹の破片が辺りに散らばる。


「はっ……ぐぐ、うぅ」


 腰への痛みに悶絶するのも束の間、鈴仙は込み上げてきた怒りを隠す事なく口から発した。


「てーゐー!」


 近くの茂みから白いワンピースを着た少女が、にししと悪戯な笑みを浮かべながら現れた。


 少女のウェーブのかかった黒髪の頭には、だらんと垂れたウサギの耳が乗っかっている。彼女は因幡てゐ、見た目は幼女だが人間の想像がつかぬほどに長生きしているとか。


「もう、鈴仙ったら何度も何度も引っ掛かり過ぎ」


 相手を小馬鹿にしたようにけらけら笑いながら、更に相手をからかう。鈴仙の怒りは瞬く間に有頂天となった。しばらく収まる事はないだろう。


 と思われたが、


「てゐ」


 てゐの肩がビクッと震えた。まさか彼が来てるとは思わなかったのだろう。鈴仙はとっさに繋いでた手を離し、彼をせいぜい後退りする程度に離した手で押していたのだ。彼を巻き込まぬように。彼には怪我一つなかったのだから、優れた判断だったといえる。


 鈴仙の怒りの理由の大半は彼を巻き込みかけた事で、そして彼も鈴仙が怪我をしたかもしれないと思って珍しく怒っているようだ。


 てゐはやや青ざめた顔を彼に向けるしかなかった。


「あ、あの、これはね、私なりのスキンシップ」


「てゐ」


「……はい」


 言い訳も通用しない。これからどんな怒られ方をするのか、というより彼に嫌われるかどうかをてゐは心配し、瞳が涙で潤んだ。


 彼はてゐの真正面に立つと、人差し指をキッと立ててゐの額に当てるようにして一言。


「めっ」


 落とし穴からよじ登っていた鈴仙の怒りは吹っ飛び、気の緩みと共に手足の力も緩んでまた落ちた。飛べよ。



「いいのよ、全然怒ってないのよ」


 永遠亭の玄関付近の廊下で、気持ち悪いぐらいにニコニコと笑う鈴仙。薄紫色の足元にまで届きそうなロングヘアーには至る所に葉が挟まり、よれよれのウサ耳には土が付着しており、衣服も汚れてしまったし、腰の痛みも残っているが鈴仙はニコニコと満面の笑みでてゐの頭を撫で回していた。


「あ、いや、鈴仙、その、ちょっ、やめ、あの」


 何を言ってもやめてくれない。彼が関わってるだけに、これが罰なら甘んじて受け入れようとてゐも思うが、鈴仙は褒めるつもりでやってるのだ。このくせ毛がもっと酷くなるんじゃないかとてゐは心配になってきた。


 鈴仙がてゐを撫でてる理由は言うまでもないが、彼の「めっ」発言が可愛かったからである、と一応説明しておこう。実際それを受けたてゐ本人も、鈴仙の気持ちがわかる程度には感じたものがある。


 そんな彼は今永琳から歓迎の抱擁を受けている最中だ。


「…………」


「…………」


「ねぇ永琳お腹すい、あら珍しい客人ね」


 永琳は無言で噛み締めていた。彼は無言で永琳の頭を撫でていた。そこに現れた形容し難いほどに美しい少女、輝夜はそれを当たり前の光景のように受け入れていた。


「ああ、因幡でいいわ鈴仙の方ね。ご飯作ってちょうだい。そうね、何でも――」


「とても美味しい物よ!」


 師の鋭い眼光に鈴仙は相変わらずニコニコしながら「はいわかりました」と快い返事をし、てゐは恐怖に怯えていた。


「へぇ、あの白黒がねぇ」


 食事を終えた輝夜は、自分の部屋に彼を招いた。物が多い部屋だが、きちんと整理されている。掃除も行き届いているのだろう綺麗な部屋だ。和風建築にマッチしない機械が多数あるが。


「薬はてゐに持って行かせたから、安心していいわ。永琳も、私も喜ぶし今日は泊まっていったら?」


 彼は少し考えてから頷いた。彼も永琳を信頼しているようだ。


「ちょうど手伝って欲しかったのよ。えっと、どこに仕舞ったかしら」


 などと言いつつ、輝夜は机の引き出しを開け、何かを探し始めた。何気ない挙動にも優雅さを感じ取れるのは、その異常なまでの器量の良さ故か。


 その黒髪のロングヘアーに櫛を通しても遮るものはなく、透き通る白い肌には儚さを感じ、スタイルは全体的にはやや細身だが一部のパーツは、不気味にバランスを崩さないように発育している。


 そしてその服装は平安時代の着物を思わせる四季の情緒が詰め込まれたかのような模様が描かれた服……ではなく、胸元に白い糸でバドミントン同好会と刺繍された紺色のジャージである。それでも美しいのだから、さすがかぐや姫といったところか。


「あ、あったあった。じゃお願いね、素材が足りないのよ」


 輝夜が机から取り出したのは、二つ折りでスクリーンやボタンがついた四角形の……ゲーム機だ。


「やっぱ多人数でやるのが一番楽しいわよね。もこたんも呼ぼうかしら」


 まあなんていうか、これといって仕事をしていない彼女は暇を持て余しているのだ。だから、外の世界から娯楽を持ち込んでも仕方ないだろう。


 数時間後、一旦休憩しようと輝夜が言い出したところで、待ってましたと言わんばかりに永琳が部屋の戸を開けた。


 幻想郷には個性的な服を着る者が多いが、その中でも永琳の服装は飛び抜けて個性的だ。


 真ん中で区切って左右で赤色と紺色がわかれており、スカートは左右が逆になっている。また銀髪のロングヘアーを一つの三つ編みにしており、その頭にも赤十字のマークが入った、衣服と同じツートンカラーの帽子を被っている。


 彼女の顔立ちも整っている。というか幻想郷の有力者達はなぜだかみんな整った顔立ちをしているのだが、輝夜の美しさは別格というか、別の種類というべきだ。ともすれば正気を失うような、一種の怪異に近い。


 そんな輝夜の従者としては相応しい器量といえるだろう。やや目付きが鋭いが、それも魅力のうちだ。


 部屋に入ってきた永琳は彼に抱き着いた。輝夜はいつのまにか机に置かれていた饅頭を、手に取って頬張った。置いたのが永琳だとしたら早業が過ぎる。まあ相応の戦闘技術は得ているだろう。


「永琳、わかってると思うけど泊まってくれるそうよ」


 永琳の力が彼に苦痛を与えない程度に強まった。


「晩御飯はすき焼きがいいわ」


 永琳は即座に彼から離れるとどこぞへ走って行った。あとかぐや姫にしては庶民的だ。


「普段、お肉があんまり出ないのよねぇ」


 という理由からだそうだ。輝夜は彼の膝に顎を乗せ、指先で太ももをなぞりながら笑った。


「今日は良い事ばかりね」


 それにたいして、彼は輝夜の頭に優しく手を置いた。



「し、師匠!? どうしたんですか、そんな剣幕で!? え……買い物? お肉? すき焼き? は、はい買って来ます! 買って来ますけど服ぐらい着させて下さい!?」


 後日、たまたま永遠亭へと現れた藤原妹紅は、ある新聞の取材に対し「あれは痴女だった」と語った。



うどんちゃんがメインかと思ったら誰がメインかわからなくなってしまったが無口永琳って新ジャンルになりますかなりませんかどっちでもいいですかそうですね。


毎度毎度お待たせした上に短くてすみません。あと姫様の美しさが上手く表現出来ない。ちなみにバドミントン同好会のメンバーはたくさんいます。活動が終わると彼のお弁当が食べられるからね、仕方ないね。


次回はもう一回永遠亭組でその次は先に言いますがゆうかりん以外の出番はありません。こまっちゃんはちょっとだけあるかもしれない。


フラン「それはいいけど黒タイツのくだり」


私「生足って良いですよね。でもね、彼氏のために寒いのを我慢する必要はないのです。存分にタイツを穿きなさい。そして室内に入った時にちょっと暑くなってきたとか言いながらタイツを脱ぎなさい。彼氏は自分に気を許してくれてると思うと同時に生足を堪能出来るのです」


フラン「意外としっかりした理論を吐かれた。ニーソでも同じ事出来そう」


私「ニーソは脱いじゃダメでしょうがああああああああぁーっ!」


フラン「ビックリした」


私「ニーソはなあ、はいていてこそ正義なんだよ。ミニスカートにニーソを合わせるならなあ、どんな時でも脱がない覚悟を決めなくちゃいけないんだよ。そこに絶対領域がある限り」


フラン「ブックマークが減らなかったから調子に乗ってるな」


私「ちなみに私は黒タイツを脱ぐような奴も許さん」


フラン「台なしだよ」


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