もふもふ話
月一更新間に合わなかったでござる。
幻想郷には海がない。故に海産物は貴重である。
とあるルートから仕入れる事は可能で、それを扱う飲食店も存在するが、もちろん安くはない。
比較的安価で手に入る海産物やその加工品等もあるので、庶民の口に入らないというほど高級品ではないが、今彼等が居る店は庶民に縁のない場所だろう。
シンプルな料理だ。小さく俵型に握った酢飯の上に、一口サイズに切った魚介を乗せた物。
「会計は気にするな。私の奢りだ」
狐耳の女の言葉に、やや遠慮していたアリスは目前のそれを箸で掴み、口に運んだ。
美味しい。一口目でそう思った。酢飯の加減は絶妙に赤身の切り身に合い、ほろりと優しく解れていく飯の感触が口内を満たしていく。
それなりに料理が出来て、とある理由から海産物を手にする機会が多いアリスだが、この料理は再現出来そうになかった。
魚の切り身から、酢飯の握り具合や酢の加減まで職人芸だ。長年の修行の為せる技だろう。
座敷のテーブルには、木の葉を模した皿に寿司が盛り付けられている。酢飯の周囲を海苔で巻いて魚卵を乗せた軍艦巻きや、中心に細く切ったキュウリやかんぴょうを入れて巻いた細巻き、また先程アリスが食べたのとは別の種類の切り身が乗った寿司もある。
甘いタレを絡めた焼き穴子や酢締めの青魚等、ある程度調理されてる物もあり、それらの手のかかりようにシンプルでも奥深い物だと感心していると、着物を着た女性が藍の前に皿を置いた。
九尾の内の六尾が一斉にピクッと跳ねた。残りの三尾は隣に座る彼に絡んでいる。
視線も皿に……皿に乗った寿司に釘付けだ。しかしその寿司は、高級思考の店には似合わない庶民的な寿司だった。
例えば藍の隣に座る彼は、ルビーの如く輝く赤い粒がこぼれる程に乗ったいくらの軍艦巻きや、うっすらと白いさしの入ったマグロの赤身……いわゆるトロと呼ばれる部位など、一般的に高価とされる物を中心に食べている。
彼の対面アリスの隣に座る橙は、コハダやアジ、サバなどの光り物が中心だ。皮が銀白色に輝いてる所からそう称されている。また彼の物に比べればずっと安価で、外の世界では庶民向けの魚であり、幻想郷でも手の届かない程高い物ではない。
寿司ネタとしては、子供が頼むには渋いチョイスだが、猫の妖怪と思えば不思議ではない。
そして彼から一番離れた席にやや不満を感じているアリスは、旬の魚や貝類、巻き寿司と色んな種類をバランス良く選んでいる。
そして藍の注文だが……いなり寿司のみ、である。
甘く煮た油揚げの中に、ごまを散らした酢飯を積め、俵型に整えた物だ。和食を扱う飲食店ならメニューに載せてる所も多く、むしろこういう高級な店には無い事が多い。
爛々とした瞳の藍はそれを箸で掴み、大きく開けた口に運んだ。幸せそうな表情だ。目をぎゅっとつむり、ジタバタと動き出してしまいそうなのを我慢しているように震えている。
ゆったりとした長袖ロングスカートに、青い前掛けのような物を被せた服は中華系の民族衣装を思わせる。金髪ショートボブの頭にはピンと立った狐耳があり、背後には埋め尽くすように九本の尻尾が伸びている。
身長はやや高く、スタイルも良い。大きな胸からくびれた腰にキュッと引き締まった尻は、彼女の特徴以上に魅力的で肉感的だ。
四人の中で一番外見も中身も大人な彼女が、自身の子供のような存在の橙よりも子供らしく喜んでいるのだから、アリスは少し困惑した。
「……かわいいわね」
そんなアリスの呟きに、そんな藍の反応に慣れきった橙が優しく微笑んだ。
活発なイメージのショートカットの頭には、黒い猫耳が生えており、その片方にはリングのピアスがつけられている。
白い長袖の上にノースリーブ、下半身はフリルのついたロングスカート。ロングスカートの後ろからは二本の尻尾が飛び出し、左右へ緩やかに動いている。
その尻尾の動きが、ピクッと痙攣して止まった。何事かと橙の目線を辿ると、
「はい、あーん」
「あ~ん」
彼が箸で掴んだいなり寿司を、藍の口元に運んでいた。バカップルか、とアリスは心の中でツッコミながら羨ましく思った。
なんせ、これを……彼にあ~んをしてもらった者は少ない。宴会の時に見掛けそうな光景だが、彼はまあ甲斐甲斐しく働くものだから、その暇がないのだ。
どこかの魔法使いがあ~んの寸前までいったと文の新聞で読んだが、寸前で鼻血を噴き出し失神した上、従者に横取りされたのだとか。情けない話だが、気持ちは理解出来る。
ものっそい嬉しそうな表情でいなり寿司を頬張る藍でさえ、微量の鼻血を流しているからだ。アリスも我慢する自信はなかった。しかし羨ましい、すっごい羨ましい。
「いいなあ」
橙も同じく羨ましがっている。藍やアリスのように邪なもののない純粋な気持ちだが。
彼がそんな橙の呟きを聞き逃すはずがない。藍が咀嚼してる間に、自身の皿にあった寿司を掴むと橙へと差し出した。
「あーん」
「あ、あ~ん」
橙は少し照れながらそれを受け入れた。直後、首を軽く傾げて満面の笑みを浮かべる橙。彼の表情も心なしか緩んでいる。
アリスは葛藤していた。この流れならば、自分にもあ~んしてくれるかもしれない。だが言えない、言葉に出来ない。
言おうとはしている。もがいているといってもいい。パクパクと口は動くが、声を出そうとするとキュッと喉が閉じるような感覚に襲われた。
また緊張してるのか。経験にない事をやろうとして緊張するのは、当たり前なんだろう。それにしたって、自分の根性の無さには呆れ返るばかりだ。
その後も何度か挑戦してみたが、結局無理だった。ああ情けない、これではパチュリーを笑えないな。
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寿司屋を出た一行は、商店の立ち並ぶ道を歩いていた。外の世界でいうところの商店街に近いもので、混雑する程ではないが、人通りが多く活気もある。
アリスと藍のやや前方で、彼と手を繋いだ橙が左右を見回し、今にも飛び出さんばかりに所狭しと陳列された靴や、店からはみ出た形で陳列されたアクセサリーを見ては目を輝かせている。
別に靴やアクセサリーが欲しい訳ではない。彼と一緒に歩いて、彼と同じ物を見てるのが楽しいのだ。
彼もそんな橙の様子に、やや頬を緩めているように見える。
そして彼はこの商店街によく訪れるらしく、すれ違う店の店員とたまに挨拶を交わしていた。主に食料品を扱う店で、陳列されてる商品は他より圧倒的に安い。
どうも彼は博麗神社の家計も支えているらしい。
そんな彼だが、店頭の実演販売なんかでよく呼び止められたりする。扱ってる物が化粧品だったりするのは、彼の性別を誤解してるからだろう。
普段でさえ人の話には基本的に付き合う彼だが、今回は橙が興味を示したので更に立ち止まる可能性が高まってしまった。
「はいはい、さっさと行くわよ」
アリスは二人の肩を押しながら強引に歩を進めた。買う気もないのに立ち止まるのも悪いだろう、と思ったからだ。彼は男だし、橙も多少興味をもつ年頃かもしれないが、それならそれで年齢(見た目)に見合った物がある。
「たまには断る事も必要よ」
アリスの忠告に彼は小首を傾げて言った。
「霊夢にプレゼントと思って」
「冗談でしょ」
「うん」
即答したアリスだったが、彼もこんな冗談を言うのかと、彼の新たな一面を知り嬉しくなった。
そして、少し残念がっていた橙へのフォローも忘れない。
「まだ橙には早いわ。いつか私が選んであげる」
と無表情なりに笑顔を作って言ったアリスに、橙ははにかんだ笑顔を見せた。
「だからデザート……今はスイーツっていうのかしら?」
いつぞやに外の世界の雑誌を読んで知った知識だが、最近、どこかの天狗の新聞の影響で女性を中心にそういう呼び方をするのが流行っていた。
「まあいいか、食べに行くんでしょ? 早く行きましょう」
食後のデザートでも、と提案したのは彼だった。行き着けの茶店が、最近新鮮な果物を使ったフレッシュジュースを出していて、美容に良いと女性に人気なんだとか。
アリスや藍は、まあ内面は別にしても外見は女性らしい女性なので(彼の知り合いは大体そうだが)彼なりに気を遣った提案だったのだろう。
そもそも彼とのデートのつもりだったアリスはもちろん、特に用事のない橙と藍もそれを断る事はなかった。
それに美容という言葉に、少なからずアリスと藍は興味をもった。
とここでアリスが違和感に気付く。一人足りない。背後を振り返る。
先程の実演販売の所から、三十メートルは歩いただろうか。にしても、目立つな。最初に感じたのはソレだ。
食事中だからと外していた帽子を被っているから耳は隠れてるが、なんせ自身の背後を埋めてるかのような尻尾……とまで大袈裟ではないが、通行人の邪魔になる程度の大きさはある。一尾一尾にそれなりの大きさがあり、それが九尾だ。
まあ言うまでもなく藍なのだが、どうも実演販売している男の言葉をわりと真剣に聞いてるらしい。
彼と橙もアリスの様子に気付いて振り返った。橙の苦笑いに、アリスはいつもの事なのかとやや呆れた表情を浮かべて見せた。
▼
茶店は幸い空いており、奥の座敷に座る事が出来た。長居するつもりはないが、リラックス出来る空間というのは有り難い。
「す、すまない……ち、ちょっと興味が沸いて、な……」
ダース単位で買おうとしていて、ちょっとは通用しないんじゃないだろうか。そうアリスは思いつつ、白濁色の液体が注がれたガラスのコップに口をつけた。
桃の香りが鼻を抜けた。濃い甘味はあるが、後味は爽やかでくどさがない。百パーセントの果汁ではなく、清水で割るのが秘訣だそうだ。正確にはフレッシュジュースではないな……いや新鮮ではあるのだから間違ってないのか、どっちでもいいけど。
余談だがこの店の常連である霊夢は、清水ではなく酒で割って飲むらしい。
果物を一つ一つ手作業で搾って作るそうだが、手間に見合わない値段だ。フレッシュジュースだけではない、彼が食べてるわらび餅も、橙が食べてる白玉ぜんざいも安い。この店で高い物といえば、彼と橙が飲んでる玉露の煎茶ぐらいだ。
その日その日を暮らせれば良いという考えだから安く、安いゆえに繁盛している。
「藍は化粧しなくても綺麗だよ」
落ち込んだというか気まずそうにしてる藍へ、彼はさらりと言ってのけた。橙がそうですと同調している中、藍はちょうど飲み干したコップをゆっくりと竹の机に置くと、彼の両手を自身の両手で包むように取り、彼の目を真っすぐ見据えてこう言った。
「結婚しよう」
「ぶばっ!?」
アリスは白濁色の液体を噴き出した。別にドロッともネバッともしてないが、その液体は藍と彼の顔に少しだけ付着した。
私「さあ今日は寄せられた数多くの質問に答えていくよ」
フラン「それは良いけど、こういう仕様でやるのは寒いんじゃないかな?」
私「そうだね。じゃあ最初の質問いってみよー」
フラン「え、あ、はい。えと、HNてゐちゃん大好きなリア友さんからの質問です」
私「ほむ」
フラン「おしゃべり話とか、フランちゃんやおぜうの描写とか見てて思ったんだけど、ロリコンですか?」
私「いや私はロリコンじゃないよ。ちょっとナズーリンの尻尾で弄り回されたり、狂気モードでヤンデレモードなフランちゃんに絞り尽くされたり、カリスママックスなおぜうに罵られながら血を吸われたり、ケロちゃんとは純粋に子作りしたいと思ってるけどロリコンじゃないよ、紳士だよ」
フラン「続いて、HNてゐちゃんが好きすぎるリア友さんからの質問です」
私「うにゅ」
フラン「じゃあMですか?」
私「はい」
フラン「続いてHNてゐちゃん早く出せよこのゴミクズ野郎が口癖のリア友さんからの質問です」
私「あーうー」
フラン「てゐちゃんいつ出ますか?」
私「来年以降じゃね?」
フラン「このペースだもんね」
私「みんなも質問があったらどしどし送ってね」
フラン「感想だけじゃなくて活動報告とかメッセージからも受け付けてるからね。もちろん質問以外の事もいつもいつも楽しみにしてるから気軽にどんどん送ってね」
私「とんだ構ってちゃんだね」
フラン「そうだね。死ねばいいのにね」
私「つまりそれは絞り尽くしてくれるって事ですか?」
フラン「死ね」




