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東方逆接触  作者: サンア
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太もも話


 ポカポカとした春の日差しを浴びながら、神社の縁側に腰掛けた私は、傍らに置いた木の器から煎餅を一枚取り出した。


 でけぇ、私の手の平サイズはある。食べ応えがありそう。


 大きく口を開き、煎餅にかじりついた。思ったより固くない、ほど好い噛み応えがバリボリという咀嚼音に現れている。


 左手に持った湯呑みを口に近付け傾けた。口に広がった醤油の風味が、緑茶によって喉に流し込まれる。


「ああ、平和ね」


 返事がない。彼の方へ顔を向けた。彼は私と同じように座って、読書をしていた。文庫本の小説のようね。


 どうも独り言と思われたらしい。まあ独り言みたいなもんなんだけど。


 私は彼と私の間に置かれた二つの湯呑みと、煎餅の入った木の器を奥に退け、彼に身体を寄せた。


 特に反応はない。多分、気付いてないんでしょうね。


 ……彼の太ももに手を置く。麻の着物越しに彼の体温が伝わる。


 少し手を動かしてみると、彼の太ももが柔らかいのがわかる。彼の太ももは感触が良い、特に裏側が。


 座ってる状態では裏側が触りづらいし揉みづらい。今は我慢しておこう。


 一度手を離し、彼の肩へ腕を回してこちらに寄せる。彼と私が密着した。具体的にいうと、彼の頭が私の左肩に乗った。


 しかし、それでも彼は読書をやめる気配がない。


 別に読書の邪魔が目的ではないので構わないが、なんとなくさみしい。


 肩に置いていた手を腰に移動させ、指先でお腹を軽くプニプニと押す。これも中々気持ちいいわね。


 ……ちょっと我慢出来なくなってきたわ。ま、誰も見てないしいっか。


「ねぇ、頭、膝に乗せて」


 右手で自分の膝をポンポンと叩きながらいうと、彼は特に疑問を抱いた様子もなく、私の言葉に従った。


 これで彼の太ももの裏側が露出した。迷わず私は手を伸ばす。


 柔らかい……とても心地好い。触ってるだけで幸せな気持ちになる。こんな太ももあっていいのか、あって良かった。


 でも、この太ももよりも触ってて心地好く、とても幸せな気持ちになれる部位が、彼にはある。


 それはこの太もものすぐ近く、この手を少し動かすだけでたどり着く楽園……そうそれはおし――


「霊夢ぅ、久しぶりに遊びに……来た……」


 声のする方に顔を向けた。黒い三角帽子を被り、白と黒を基調にしたエプロンドレスを着た少女が、箒にまたがって浮かんでいる。というか静止している。


「魔理沙?」


 友人の名を呼ぶ。すると、彼女は目を見開き、顔をみるみるうちに赤く染めると、


「おおおおお邪魔しましたああああああああああぁーっ!?」


 急反転して物凄い勢いで飛び去ってしまった。掃除したばかりの境内に砂埃が舞い上がる。


「こほっ……こほっ……」


 彼は咳をしながら身体を起こし、草履を履いて立ち上がった。


「掃除、するね」


 そこらに立て掛けていた竹箒を手に、さっさと掃除を始めてしまった。


 少しだけ、魔理沙にいらつきながら背後の湯呑みに手を伸ばし、残っていたお茶を飲み干した。


「……あ」


 飲み干した後に、自分のではなく彼の湯呑みだと気付いた。



 家に帰った私は箒をそこらに投げ捨て、ベットに顔を突っ伏した。


 心臓が鳴り止まない。いや鳴り止んでも困るんだが、このままでは破裂するんじゃないかってくらいの勢いで鼓動している。


 二ヶ月ほど前、ある噂を耳にした。“霊夢に恋人が出来た”というとてもシンプルな噂だった。


 天狗の新聞程度の信憑性しかなかったが、少なくとも博麗神社に居候が増えたのは確かだった。


 なにせ、神社に居候してる萃香から直接聞いたんだからな。


 萃香からそれを聞いた後、人里で霊夢がその居候と仲良く買い物や外食……平たくいえば……デ、デートしてる姿が目撃されたって聞いて……。


 私なりに気を使って、神社へ遊びに行くのは控えていた。


 私は恋人いないからよくわかんないけど、多分恋人と一緒の時間を大事にしたいだろうし……。


 でもさすがに霊夢に会いたくなったっていうか……恋人が出来たのに紹介してくれないのが寂しかったっていうか……とりあえず思い切って会いに行ったら……あ、あんな……い、いやらしいんだぜ……。


「しかも、まさか、“女の子”が相手だとは思わなかったなあ」



 彼は中性的……というか女性的な顔立ちと体型をしている。


 身長は私と同じくらいで、肩から腰にかけなだらかに逆三角形を描き、腰の軽いくびれのしたには少し大きなお尻があり、お尻から下もやはりなだらかな逆三角形。


 私よりよっぽど良いスタイルをしている。


 顔立ちも良いが、男前という言葉は似合わない。美人とか美しいの方が相応しい。


 間違いなく男のはずなんだけど、まあこの世界で常識なんか通用しないか。


 人里の住人やたまにくる参拝客も、彼を女性だと思ってるらしい。わざわざ訂正するのも面倒だからほっといたけど、せめて“私の着物”を着せるのはやめた方がいいかしら。


 でもわざわざ買うのも出費になるし、本人が納得してるから別にいいか。


 そもそも服なんて買うお金ないし……あ、もうこんな時間か。


 赤く染まった空を見て、二つの湯呑みと煎餅が入っていた木の器を持って、台所へ向かう。


 台所の流しに食器を置く。二ヶ月前の私なら、このタイミングで食事の準備を始めていたのだが、今の私には居間で寝転がる時間となっている。


 彼はよく働く。彼のおかげで、元々暇を持て余していた私の日常がさらに暇になった。


 炊事洗濯掃除と家事全般は当たり前で、雑用なんかも進んで引き受けてくれる。というか、気付いたらやってくれている。


 最初、神社で倒れていたのを見つけた時は、また面倒事かと頭を抱えたが、それはもういい。


 損得でいうなら間違いなく得をしているし、仮に損をする事になっても、今更彼を手放そうとは思わない。


 端的にいうと、私は彼を気に入ってるのだ。


 なぜ気に入ったのか。これを説明するのは難しい。


 普段の生活ぶり、性格、見た目、生々しい話をするなら収入……といった具体的なものに要因はないと思う。


 なんというか、彼と過ごしているのが単純に心地好いのよ。特に彼に触れていると、その心地好さをより実感出来る。


 でも心地好いから触る訳じゃなくて、触りたいから触っていて、その結果が心地好よくて……ただ触りたくなる理由もよくわからないのよね。


 ……考えると切りがないのでやめておこう。別に困る事もないし。


 まな板を叩く包丁の音が聞こえる。どうやら彼が料理を始めたらしい。


 食材を見ると野菜が多い。どうやら、幽香からの差し入れがあったみたいね。


 幽香も彼の事を気に入ってるようで、初対面から一時間も経たないうちに彼の身体をまさぐっていた。私は一日はもった(我慢したつもりはないが)。


 彼に会ってからは神社に訪れる頻度が高くなり、無論会う度に彼に触っている。


「ただいまぁ~、今日のご飯なにぃ?」


 開け放たれた居間の障子戸から私を横切って、もう一人の居候、伊吹萃香がふらつきながら台所へ歩いていく。


 自身の身長とそう変わらない長さの薄茶色をしたロングヘアーを、先端の方でまとめているが、ふらつきながら歩いてるため度々地面を擦っている。


 頭頂部に赤いリボン、白いノースリーブに紫のロングスカート、低身長で華奢と一見幼女のような服装、体格だが、頭の左右から生えた長く捻れた角が彼女を妖怪だと示しており、また両手や腰につけている分銅の飾りが異様だ。


 が、私にしてみればただの酔っ払いだ。萃香は彼の元まで歩くと、間髪入れずに彼の腰に右手を置いた。


 ただ置いただけである。包丁を持ってるから自重しただけだろうが、逆にいえば包丁を持ってる少しの間も我慢出来ない、のかもしれない。


 彼は特に反応する事なく、取り留めない話をする萃香に相槌しつつ料理を続けている。


 彼と出会った人妖はみんなこんな感じになってしまうのか、というと、そうでもない。


 人里の人間とはそれなりに交流はあるが、私達のように彼に触った人間はいない。いや普通いないのが当たり前なんだが。


 たまに神社に遊びに来るチルノやルーミアの相手を、今は彼が引き受けているが、遊びの内容で彼に触れる事はあっても、積極的に彼に触るという事はない。ただ、よく懐かれている。


 判断材料が少ない。なんか気になってきたし、色んな妖怪と会わせてみようかしら。


 ……一々会いに行くのは面倒ね、やめよう。あ、いや別に一々会いに行く必要はなかったわね。


「久しぶりに宴会でもやりましょうか」


 そう口にすると萃香が満面の笑みで賛成してくれた。その隣で彼はキョトンとした表情を浮かべていた。




 とりあえずこんな感じで女の子達に触られます。なんか難しい話にはなりません。シリアスとか私のシマじゃノーカンだから。


 ただ面白おかしくちょっとエッチに女の子達に触られるお話です。ちなみに私の嫁はゆうかりんです。


 次回もそんなに長くないです、多分。

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