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8)困惑する私

 次の朝、私は何故かいつもより二時間も早く目が覚めた。喜んで二度寝しようとしたが、どうにも眠れなかったので布団から出ることにした。このままだとゆっくり支度をしても、きっと篠原くんより早く学校に着くことになるだろう。そして、挨拶をすることになるはずだ。もちろん気まずさはあるけれど…とりあえず私は顔を洗うことにした。


***********************


 「おはよう。」


 結局私は支度が終わり次第家を出た。そして、一時間も前に大学に着いて一人悶々としていると、篠原くんが来たので挨拶をした。この瞬間が来ることはわかっていたはずなのにとても緊張する。上手く話せるだろうか。


 「…。」


 やはり今日も駄目かもしれない。他愛もない話をし、ただ笑い合っているだけで良かった関係に戻るのはもう無理なのだろうか。私は気まずさと寂しさを隠すために授業の準備に取り掛かるフリをした。


 「おはよう…。」


 それだけを言って通り過ぎて行く背中を私は見つめることしか出来ない。どうか振り向いてほしい…。そんな願いは叶わなかった。


***********************


 昼休みの終わり頃、一通のメールが届いた。私は特にすることもなかったので、すぐに確認してみることにした。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

from:サキ

to:2年生メンバー


こんにちはー

今日の飲み会は7時に「とこし屋」でお願いします。一人2000円ね。

何かあったら早めに連絡してねー

ではまた後で( *・ω・)ノ

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 「え!?」


 ガタッという音と共に私は立ち上がっていた。教室中のクラスメイトの視線が痛い。苦笑いをして座りながら篠原くんのことを見ると、彼も同じように立ち上がっていたようで、二人で教室中の注目を分け合うという状況に陥っていた。


 普通に考えればサキが間違えて再送しただけであろうメールに、私は動揺を隠せない。というのも、1限目の授業から昼休みに至るまで、既視感というか違和感というか、何とも言い表すことのできない感覚が私に付き纏っていたからである。


 しかし、私の頭の中は篠原くんのことでいっぱいで、そんな感覚に今まできちんと向き合えずにいた。そんなわけで五日前の飲み会のメールにひどく慌ててしまったのだ。自分の中でそう結論付け、この居たたまれ無さをどうにかやり過ごそうとする。


 …五日前?そこでふと思った。飲み会は月曜日だったので、それが五日前だとしたら今日は土曜日ということになる。それなのに私はこうして普通に大学に来ている。それでは、今日はいったい「いつ」?


 朝から付き纏っていたものが形を成し、一気に押し寄せて来るような感じがした。私は気持ちが悪くて目を閉じる。しかし、もう目を逸らすことは出来ないだろう。私は小さく深呼吸をし、目を開けてスマホを確認した。



 今日は「月曜日」だった。


***********************


 私が気付いてからも今日はやはり「月曜日」として進み、講義は4限で終わった。しかもただの月曜日ではなく、一度経験したあの月曜日が進行しているのだ。7時からは飲み会が待っていて、その後は篠原くんに告白される「あの月曜日」である。


 そんなこと考えながら駐輪場で自転車を取り出して振り向くと、入り口付近に篠原くんが立っているのが見えた。私は瞬時に向きを変え、別の出口から図書館に向かうことにした。


 私はどうすればいいのだろうか。もう間違えるわけにはいかないのだ。

次話との関係で改稿しました。

後ろ部分を次話の頭に持っていきます。

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