出会い
「ちょっとそこの人」
俺はふいに呼び止められた
呼び止めた彼は後輩にあたる一年生のようだった。
「あんた、今何聴いてるの?」
「別になんだっていいだろ。てかお前一年だろ。敬語で話さないなんて傲慢だな」
俺は好きな音楽を中断せざるを余儀なくされたのと後輩だっていうのに敬語を使わない生意気なこいつに少し腹を立てた。
「敬語くらいいいじゃん。堅苦しいの嫌いなんだよねー」
「たしかに俺も敬語使われるのあんま好きじゃないけどな」
「だろ?で、何聴いてたの?」
「ところで…まずお前は誰なんだ」
「僕?僕の名前は宮内蓮也。あんたはたしか新城水音だよね」「よく知ってるな、お前」
「蓮也って呼んで」
「じゃあ蓮也」
俺は蓮也の顔を改めて見る。
意外と童顔でかわいらいしいが少し意地悪そうに見えるのは気のせいか?
「どうした?僕の顔に何かついてる?」
「いや、別に」
「じゃあ質問に答えてよ」
俺は質問に正直に答えた。
「へえ、いい趣味じゃん。僕もそれ好きだよ」
「ふーん…」
「特に……」
言い終わると蓮也は俺の顔をまじまじと見て
「いける」
と呟いた
「何が『いける』んだ?」
「秘密。あ、高城先輩だ!」
そう言うと蓮也は俺から離れ、高城(俺の同級生・蓮也と同じ部活)のもとへ駆けていった。
「高城先輩♪」
「お、蓮也じゃん。どうしたの?」
「暇だったんで駅に来てました」
「そうかそうか」
………高城と俺に対する扱いの差が凄く激しいのだがどうすることもできない自分が憎い。
「どこ行くんだ?」
「電車。乗り遅れないようにもうホーム行く」
「へえ。じゃあまたね」
気がつくと俺は電車内で蓮也のことばかり考えていた。
俺に対してフレンドリーというか、下に見てるというか…。
憎いが憎めない曖昧な存在だ。