愛した君は処刑され、その瞳だけが残った
『可愛いリア、君に一目惚れしちゃった。いつか必ず迎えに来るから、待っていてくれる?』
そう言ったのは、ずっと、ずっと昔、初めて出会ったお茶会でのことだ。
王たる父に懇願したけれど、王太子として隣国の伯爵令嬢を娶るためには、一筋縄ではいかなかった。
諦めきれずに文通を続けたある日、彼女から届いたのは別れの言葉。
『皇太子との婚約が決まったの。貴方に迷惑をかけない為にも、これが最後――』
婚約の確約が出来なくて、彼女には身分も、想いも、仔細を話してこなかった。先を越された。ただ、その無念だけが胸を深く突き刺した。
――それでも、リアが幸せなら……。
そう思ったのに、今、目の前にあるのは一つの瓶。そこに入っているのは、あの頃と何一つ変わらない綺麗なルビーを思わせる色だけ。変わり果てた彼女の、瞳。
「どうして……、リアは処刑されなければならなかった?」
ポツリと溢れたのは、もう何度目になるか分からない問。血の海と化したそこに、返ってくる言葉は一つもない。
耳にこびりついたのは彼女の声ではなく、ただの不快な音。
『は、はは! お前、能力目当てじゃなく、本当に好いてたのか? 他国へ渡さない為に飼い殺されてるだけとも知らず、滑稽だったぞ?
なのに、あの女も親も反発しやがって。素材として有用だったから、最後まで使っ――』
最期まで聞かず屑の口を塞いだ。なのに、今、胸を満たすのは空虚で冷たい何かだった。
「ああ、そうだ。リア、もう一度……」
命と引き換えにやり直せる王家の秘術。古い迷信だ。それでも、リアと共に歩む未来を賭けるには十分だ。
――今度こそ、君を救おう。
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処刑回避のため家出した令嬢は、男装騎士として運命をやり直す
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から、男主人公ライラック視点のスピンオフ短編として今回書きました。
読んでくださり、ありがとうございました!(*^^*)




