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七章 分かれ道

神護国歴五十一年、五月十八日。

東方剣士団の総長、ヒルデガルト・フォン・ケイボワールが七陽の勇者候補を見るため南方剣士団を訪問。

この時、私もヒルデガルトさんに会えた。

「君が新しい金輪の勇者候補か」

ヒルデガルト・フォン・ケイボワールはキャリッシュを見て笑みながらそう言った。

「はい!」

キャリッシュは目を輝かせながらそう言った。

「うん、良い目をしているね。きっと強くなれる」

「ありがとうございます!!」

「何か困ったことがあれば相談に乗ろう」

ヒルデガルトさんはそう言って去っていった。

他愛もない会話だったんだろうけど、この時の私は幸せで一杯だった。

「はぁ~ヒルデガルトさんってオーラが違うよな~」

幸せそうにため息をついたキャリッシュは思い出しながらそう言った。

「ずっげぇずっしりしててドンッとしてて超余裕がある感じ」

キャリッシュはマリーを見て笑みながらそう言った。

「七陽の勇者で一番強いっていう評価は間違いじゃないのかもな~」

キャリッシュがそう言いながらマグカップを持とうとしたその時、マリーがキャリッシュのマグカップを取ってキャリッシュに水をかけた。

「おいおい、何すんだよ」

キャリッシュは驚きながらそう言った。

「七陽の勇者で一番強いのは曙陽の勇者様だ。他の勇者が一番強いなんて二度と言うな」

マリーはキャリッシュを睨みながらそう言うとマグカップを強く机の上に置いた。

「悪かったよ・・・」

キャリッシュはマリーを見てそう言った。

「・・・」

マリーは腕を組んでそっぽを向いた。

私はちょっとしたことだと思ってあまり気にしなかった。

でも、この日からマリーは私を明確に避けるようになった。

マリーから剣術を教えて貰えなくなった私は剣術を教わるために愛車のバイクに乗って遥々ローラの店へ行くようになった。

ミッケ母さんの師匠なだけあってローラは教え方が上手いしメチャクチャ強かった。

どうして曙陽の勇者をやめたのかわからないくらいに強かった。

ピンッと張った新聞を木刀で綺麗に一刀両断してしまうし、手のひらサイズの石を木刀で簡単に割ってしまうからとにかく驚いた。

「すげぇ!私もやりたい!」

木刀を握ったキャリッシュは真っ二つに切れた新聞を見て目を輝かせながらそう言った。

「キャリッシュ、お前さんは体の軸が少し左を向いている。だから、そのまま木刀を振ると少し斜めになってしまう。技術で切るのは無理だろう」

水筒を持ったローラはキャリッシュを見てそう言った。

「お前さんには生まれ持った身体能力があるからそれを活かして切れ」

ローラはそう言うと水筒を置いた。

「はい!」

キャリッシュはローラを見て笑みながらそう言った。

私は重りをつけた木刀を使ってひたすら素振りした。

ローラは私の素振りを見ながら的確に声をかけてくれて本当に先生って感じだった。

「ローラって曙陽の勇者だったんだろ?」

スポーツドリンクを持ったキャリッシュはローラを見てそう言った。

「あぁ、そうだ」

ローラはキャリッシュを見てそう言った。

「どうしてやめちゃったんだよ。教えるの上手いし、メチャクチャ強いのに」

キャリッシュはそう言うとスポーツドリンクを飲んだ。

「陛下に対する尊敬と忠誠心はあったが、覚悟が足りなかった。だから、やめた」

「へぇ~どれだけ覚悟すれば七陽の勇者って務まるんだ?」

「生きとし生ける者たちの命を背負う覚悟、陛下すら負かした無敵の存在に立ち向かう覚悟。どんな恐怖や絶望を与えられようとも七陽の勇者は逃げられないのだ」

この時、なんとなくだった七陽の勇者像が私の中ではっきりとした。

そして、私はヒルデガルトさんと並ぶために覚悟した。

七陽の勇者になる覚悟、最後まで死ぬ気で務める覚悟をした。

次回

八章 先輩に初めて教わったこと

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