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第六話 国境警備隊     

こんばんは。

投稿です。

少し遅れました。


「それで、その者は間違いなく雷帝だったのだな?」


 厳しい口調、鋭い眼光。

 着用している警備隊の制服はびしっ、とアイロン、ノリ、バリバリでその人の人格を表しているようである。


 第六番国境警備隊の警備隊長エリ・ナリが脚を高々と組上げ、ピットを尋問する。


 ピットは人族の子どもで、雷帝と名乗る人物と会話している貴重な存在。

 そう、犬を抱きしめて泣いていた子どもだ。

 ピットは思った。


(怖いよぉ、このお姉さん……)


 ピットの恐怖を感じ取ったのか、大きな傷痕が刻み込まれた犬が寄り添ってきた。


「その犬もか?雷帝が治療したというのは?」


 ピットはささっ、と犬に飛びつき、抱きしめる。


「勝手に動くな!」


「ひっ!」


(隊長、子どもにその口調はダメでしょう)


「規則だ」


(……違うと思いますが)


 副長が暴走しがちな隊長を止めに掛かる。

 この隊長、優秀なのだが気性が激しいのだ、いつもこの気性が原因で失敗する。

 今回もそのようである。

 関係者が集められた集会場、そこには雷帝を目撃、接触した人物達が集められていた。


「言葉は柔らかくして下さい、相手は小さな子どもです!」


 抗議したのはニャオ先生である。


「黙れ、控えろ」


 むっ、とする街の人々。


「……ニャオ先生……こわい……」


「動くなと言っている!」


 その強い言葉を無視し、ピットを抱きしめるニャオ先生。

 別の街人が声をあげる。


「控えろ?動くな?なにサマだ?あんたら国境警備隊は何をしていた?あのような、ならず者達を防ぐのが仕事ではないのか?それに俺達街のヒーラーまで連れ出し、ゴンさんの薬がなかったら家族わんわんのことですが死んでいたのだぞ!」


「家族?たかがい……なんだ副長?」


 ここで副長が止めに入った。

 住人との衝突はマイナスである。


「犬は家族です、少なくともこの街の住人達はそう扱っています」


(犬は犬だ、お前達は狂犬病の恐ろしさを知っているのか?)


「犬は嫌いでね」


「そうですか、ですがここでは私情はお捨て下さい」


 ……噛まれでもしたか……

 ……たかがだと……


「隊長サン、言葉は選んでくれ、萎縮して何も言えなくなるぜ」


 街人達が抗議する。


(隊長、これでは雷帝の貴重な情報が得られませぬ、お控えを)

(副長、私に向って控えろと言うか?)

(処罰でしたら何なりと)


 今までの経験として、この副長が口を出すときは黙って従ったがいいと分ってはいる。

 分ってはいるのだがそうはいかないのがこの世界だ。


「チッ」


 舌打ちをし、竹の根の鞭をヒュンと振るエリ・ナリ隊長。


「雷帝のことを話せ、知っていること、あの者が喋った言葉!身体的特徴!全てだ!」


 さて、誰も喋らない。


(ヤバいなぁ)


 副長は思った。


(うちの隊長、切れ長の目に長い睫、綺麗な髪、美人さんだけど口元が怖いんだよなぁ、ニッコリすれば子どもなんかすぐに寄って来ると思うんだけど)


 口角がいつも下がっているのだ。

 そして眉間に皺がすぐにできる。


 誰が見ても怖いお顔に瞬時になるのだ。


 そもそも第六国境警備隊はこの若葉街より100キロ以上程離れた街に駐屯している警備隊なのだ。

 若葉街は守備範囲外、通常は立ち寄りもしない街だ。


 しかし首都本部より下された命令は飛竜とその眷属魔獣の再調査。

 不足気味のヒーラーを半ば強制的に連れ出し、再調査を行なっていたのだ。


 そこに入ってきた雷帝出現の知らせ。


 王族はこの雷帝に興味があるらしく、本部は飛竜調査をあっさりと打ち切り、雷帝の調査に切り替えたのだ。


 コロコロ変わる命令。


 下の者達はたまったもんじゃない!

 隊長以下、不機嫌なのはこの命令変更の成せる技なのだ。


 それだけではない、ことあるごとに比較される騎士団と警備隊。

 騎士団は警備隊を、所詮警備だと軽視する傾向があり、警備隊は騎士団を飾り物と格下に見る傾向があるのだ。

 実力は均衡している分、衝突も激しかった。


 しかしどうあがいても命令系統は騎士団が上、悲しい現実がそこにあった。


 騎士団の移動は魔動騎、超高性能ゴーレムである。

 一方国境警備隊は一角パンサー、魔獣である。


 大型のネコ科の魔獣で、この魔獣はよく人族、ドワーフ族などに懐き従う魔獣なのだ。

 大きさは3m程で、頭部より突き出した長いツノが特長の魔獣だ。

 これに騎乗し、雪原を駆るのが国境警備隊である。

 勿論魔獣であるから、ご飯は食べるし、排泄物もある。

 発情もするし、病気にもなる。

 戦闘魔獣は飼育が大変なのだ。


 この第六国境警備隊、普段は荒れないのだが度重なる命令変更と疲労、雷帝の調査で焦りが出ていた。


「何を話した?……何を話したかと聞いている!」


「先生……こわい」


「やめて下さい、2、3言葉を交しただけです!」


「それを聞いているっ!」


 ここで今まで黙ってことの成り行きを見ていたゴンザが静かにキレた。


「民に寄り添っているとは思えませんな、国境警備隊とはこの程度ですか」


 ……ゴ、ゴンザさん、やめなよ……

 ……相手が悪い、ゴンさん、そこまでだ……


「なんだと?」


「警備隊は国を守る者、民を守る者ではないということですかな」


「!」


「ご老人、口が過ぎる」


「その言葉、そのままお返しする。子どもに暴言?騎士団には騎士道があるが、警備隊には何がある?是非お聞きしたい」


(おい、ゴンザ、こいつら騎士団とは犬猿の仲らしいぜ?騎士団の名前出してナニ煽っているんだよ?)


(若……)


(なんだ?)


(黙らっしゃい、このようなパーフェクトでない輩、気に入りませぬ!)


「怪我人もいます、お取り調べは後日に願いたい」


「ご老人、お前は街長か?それとも上司か?我らに命令するきか?」


「おや?雷鳴が聞こえませんか?」


「!」


 一瞬でその場が鎮まった。


「気のせいですかな?雷帝さまはお優しい方とお見受けしました。無慈悲な行いは雷帝さまの怒りを買いませんか?」


「くっ……」


「まずは謝罪でしょう?」


「頭を下げろと申すか!?」


「この世界、怪我人が出るのは日常、そのためのヒーラーです。半ば強制的に連れていき礼の一つもないとは、これいかに?」


「ご老人、口の利き方には注意されたし」


 副長が前に出る。


「そちらもな」


 ゴンザも譲らない。


「そう言えば雷帝が炎帝をゴンザと呼んだそうだが、同じ名前、お知り合いか?」


「ゴンザは異国語です、爺さんという意味ですが」


 ここで突然、雷鳴が轟く!


 ドオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


「きゃあああっ!?」

「ひっいいいい!?」

「うわっ!?」


 ゴンザ一名を除き、その場にいた者、全てが体勢を崩す。


(……若?)


(腹減った、帰るぞ)


 ……雷帝さまか?……

 ……まさか……


 ここで隊長のエリ・ナリが立ち上がり、周囲に呼びかける。


「謝罪する。前回突然の訪問でヒーラーを半ば強制的に連行し、今回、ここでの暴言の数々、不快な思いをさせてすまなかった」


「た、隊長?」


「副長、我々は若葉街の住人といがみ合いたいのではない、雷帝の話が聞きたかっただけなのだ」


(ほう、ゴンザ、このねーちゃんおもしれぇな。雷鳴で憑きものが落ちたか?)


(このままではいけない、と思ったのでしょう、雷鳴はいい切っ掛けですな)


「稀少エルフ、怪我をしているのにすまなかったな」


 突然の軟化に戸惑うニャオ先生。


「……いえ、私こそ言葉が過ぎました」


 その様子をじっと見ているピット。


「あのね、あのね」


「?」


「あのね、雷帝しゃま、お前の犬か?って言ったの」


「!?……副長、書記っ!」


「はっ!」


「それから、雷帝しゃまは、なんて言ったんだ」


「ヒーラーはどこだ、だったかな?」


 モジモジするピット。


「鬼のお面で怖かったけど、お声は優しかったの」


「そうか、他はどうだ?」


「目が赤くて、綺麗だった。それでどちらさまですかって聞いたの」


「名前を聞いたのだな?」


「うん、そしたら雷帝さまだって、それでわんわんがこのままだったら死んでしまうからオレ様が治すって言って」


「ほぼ合っています、私もその場にいましたから……」


「他には?髪の色とか」


 身を乗り出し質問する隊長。


「髪はグレーでした、身長は170はありません、体重は55くらいでしょうか、エルフの目で見ましたからかなり正確です」


「ありがとう、助かる、他はないか?」


(これは貴重な情報だぞ、騎士団に差を付ける一歩になる!)


「あっ!」


「どうしたちびっ子?」


「他はね、小さかったの」


「は?」


 巨大な『?』マークが隊長、副隊長の頭上に出現する。


「おにいちゃんのより大きかったけど、お父さんより小さかったの」


「何がだ?」


 真剣に聞く隊長のエリ・ナリ。


 真っ赤になる稀少エルフのニャオ先生。

 それを見て、何かに気がつく副隊長。


(ゴンザ)


(何でしょう若?くくっ)


(笑うなてめぇ!今すぐそいつを黙らせろっ!)



 本日はここまで、続きはまた後日。

次回投稿も木曜日、夜を予定しています。


面白し!と思われたなら本編の下にある☆☆☆☆☆から評価をしていただけると嬉しいです。

ブックマークもしていただけるとさらに嬉しいです。

よろしくお願い致します!

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