第51話 雷帝と雷神王とドリ
おはようございます。
投稿です。
前回、サブタイトル間違っていました。
すみません。
「イッカイ師匠、どうしたらいい?オレの治療じゃ痕が残る!」
「!」
怖さに一瞬、ぶるっ、と震えるドリ。
(いや、雷帝クンは憧れているけど、傷痕残るのは困る!それは悲しい!)
ちらり、とイッカイ、雷神王を見るドリ。
ぴくっ、と親指を動かす雷神王。
まぁその目の冷たいこと!
(ううっ……皇帝命令?勅命か?この身を雷帝クンに捧げろと!?)
ジン、ジン、と脈打つ全身の痛み。
魔法でどうにか痛みを誤魔化しているが、陛下と雷帝を前には、どうも集中力が欠けがちなのだ。
(うう、痛さを上手く抑えきれない!)
「治療を教える、いいか?」
(ひいいっ!どうか痛くありませんように!痛くありませんようにっ!痕が残りませんようにっ!)
「え?この子で治療開始!?だからオレの治療は荒いって!傷痕が残る!」
びくっ、とするドリ。再び雷神王と目が合う。
(冷たい目だなぁ、でも勅命ならしかたない……そうよ!傷が残ったら責任をとってもらおう!雷神王と雷帝クンに!)
……仰せのままに……
「ん?ドリ?何か言ったか?」
「お、おねがい……や、優しくしてね?痛いのはやだよぅ」
もはや、目に溜まる涙は痛さだけではなかった。
「お?おう!で、イッカイ師匠、どうすりゃいいんだ!?」
ドリの目、それは不安で押し潰されそうな悲しい目。
そんな目と出会う雷帝。
「……ひっく……」
「な、泣くなよ!すぐに楽にしてやるから!」
「えええええっ!?」
楽にしてやる、いろんな意味がある言葉だ。
使う人物、場所によっても意味が大きく違ってくる。
「膝が酷いな、まずは師匠の私がしてみせる、よく見ておけよ?」
「ああ、わかった!」
(……ううっ、私、どうなるんだろう!た、隊長!副長!シュウミン!ひーん!おかぁさあんっ!)
周囲の目が集まる。
カードゲームの群衆が、そのままこっちに集まってきたのだ。
そんな周囲を気にせず、雷帝はドリの肩を抱いたまま、ゆっくりと大地に降ろした。
……おい、雷帝さまがイッカイさんに師匠って言っていたぞ……
……ええ?まさか……
……いや、本当だって!……
……イッカイさんて、何者なんだ!?……
……ただの気のいい酔っ払いじゃね?……
……あのお姉ちゃん、大丈夫かなぁ……
……大丈夫だよ!……なに見ているの?……
……あのお姉ちゃん、オッパイ……
……はぁ?……
……でっかい!私も大きくなりたいっ!……
……あのお姉ちゃん、怪我しているの!フキンシンだよ!……
……なによ、フキンシンって?……
……よく知らないけど、こういう時に使う言葉……だと思う……
「理論は簡単だ」
イッカイのレクチャーが始まる。
「簡単?」
「雷精を使って電気的に傷を癒やす、それだけだ」
「?」
(ち、ちょ、雷帝クン!?なにそのお顔!?)
「まず、傷を麻痺させる、痛みを分からなくするのだ」
「ふんふん」
パチパチ、と軽い音を立て、イッカイの指先から青白い光りが溢れ出す。
光りは傷口や異物を包み、振動し始める。
「それから、次に異物を取り除く、これも電精を使ってだ。手は使わないぞ」
「ふんふん?」
ころり、と膝から鋭い瓦礫が抜け落ちる。
「次は傷口の洗浄だ、明らかな異物が魔力を通して分かるだろう」
「ふんふん??」
「これを取り除き、縫合だ。雷精を優しくぶつけると、いや当てるがいい表現か?傷口が魔力的に縫い合わされていく。この時、雷精の力次第では痕が残るのだ。雷帝殿の場合はこの力が強すぎるのだ」
「ふーん???」
酷く裂けた膝の傷口は、逆再生の動画のように塞がっていく!
「どうだ、ドリ?ゆっくり動かしてみろ」
「……はい」
恐る恐る動かしてみるドリ。
「あ!い、痛くない!……!」
慌てて口元を抑えるドリ。
痛感がじんわりと麻痺しているから、痛さを忘れがちなのだ。
(顔、腫れているんだった!歯も!)
「さて雷帝殿、やってみろ!」
「おう!任せろ!」
雷帝の手に雷精が集まる!
バチバチバチバチッ!
火花が飛び散り、周囲は真昼のように明るくなる!
「雷帝殿、ちゃんと話し聞いていたか?」
「ふんふん?」
そこには、恐怖に引きつるドリ・リリイの顔があった。
次回投稿は未定です。
今日から九月、一年が早いです。




