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第五話 ニャオ先生     

こんばんは。

投稿です。

すみません、遅れました!

まさかのバイト残業でした!

今日発売の新型ゲーム機2の売り上げ伝票整理です!

ホントに!バイトにンなことさせたらいけません!

何が悲しゅうてバイトの私だけが会社に残って伝票整理?

あ、このコメント、その内消します!



 ……夜中暴れた奴等だ……

 ……ガッタの店で騒ぎを起こしたならず者か……

 ……あいつら、ニャオ先生に……


 若葉街のアイドル的存在、エルフのニャオ・ミント先生。


 一般的にエルフは長身で長寿、強靱な肉体と高度な魔法を使うとされる。

 弓、剣、槍、武術に通じ、礼節を重んじる伝説的存在だ。

 しかし、その数は圧倒的に少なく近々絶滅するのでは?と絶滅説まで流れるほど。


 一方こちらは若葉街のニャオ先生。


 エルフにしては小っちゃく、長寿ではあろうがまだ19歳である。

 弓を取らせれば「あのう、矢と弓がうまく合わないんですけど」……弓は引けない。

 的に当てる前に扱えないのだ。

 剣を取れば「こんな大きな刃、怖いです!それに重くて持てません!」……非力である。


「呪文の詠唱ですか?唱えても何も起りませんが?」


 魔力は人並み以上に持っているのだが、発動しない。


「不思議ですねぇ、なんで発動しないのでしょう?」


 街の人々は思った。


 エルフだろうか?

 エルフと我々が思っているだけではないのだろうか?

 確かに耳はエルフ耳なのだが?


 それはニャオ先生の過去。

 ニャオ先生は小さいとき、雪原に倒れていたのだ。

 それを街長のピノ・ミントが拾って街へ。

 彼は狩の途中、偶然見つけたのだ。

 雪原の魔獣に襲われたのか、旅の途中なのか、家族、両親は?全くもって何も分らない。

 ニャオ自体も覚えているのは、年齢3歳とニャオという名前だけである。

 街の長老達はエルフであろう、と言ったが、はたして?


 首都ホワイトパレスにエルフの子供を保護した、と連絡するも、虚偽であろうと逆に怒られる始末。

 そう、ニャオ先生は街のみんなと街長のピノが一生懸命育てた、いや育てている大事な子供なのだ。


 だが、ここで問題が起きた。彼らは大事にしすぎたのだ。


 エルフの子供をどう育てるか?


 誰も知らない、そしてどこにもエルフの育児書なんてない。

 彼らは、自分達の子供のように人族としてエルフを育てたのだ。

 弓や剣を教えるも、ニャオは興味を示さない。

 ならいいか、とニャオに好きなことをさせ、自由に育てたのだ。


 そして気がつく。


 あ、もしかしてニャオが弓も魔法も、力の使い方も知らないのは、俺達、私達が原因じゃね?


 教えてないし。


 街のみんなは、エルフは特殊だし、自然と扱えるようになるだろうと思っていたのだ!

 そんなことはない!学習や環境は大事なのだ!

 気が付いた時にはもう遅い、世の中のあるあるだ。


 人として育ったニャオ先生は、見た目はエルフ族だが中身は人族であった。


 エルフとしての教育、伝統、何一つ受け継いでいない。


 それでも子供好きのニャオ先生、街や首都ホワイトパレスで勉強し、書物を沢山読みちょっとして有名人になる。

 若葉のエルフ、歩く図書館という異名を持つ。

 その知識で街の子供達に読み書きを教え、街の財政やインフラ、発展に協力する。


 みんな大好きニャオ先生。


 そんなニャオ先生の悲鳴が街に響く!

 屋根の上を素早く走る白黒ネコ。

 その目は鋭く、赤く光り始める。


(若!焦ってはいけませんぞっ!)


(うるせー!俺のチビどもや先生に手を出した!?擦り傷一つ許さん!)


 コロロロロロッ!


 遠雷である。


 若の怒りが、雷を呼び始める。


(感情を制御して下さい!若っ!常にパーフェクトを心がけて下さいっ!)


 ネコである若の嗅覚は、血の臭いを嗅ぎつけていた。


 朝の景色が一変する。

 俄に灰色の分厚い雲が、青い空を覆う!

 太陽は遠く見えなくなり、灰色の雲はいつしか黒く色を変え、重く漂い始めた。


(!)


(若っ!どうされました!?)


(い、犬共がっ!)


 若の目は斬られてもなお、ならず者達に向う犬を見た。


 相手は7人、3匹の犬は……一匹は倒れ子供達が抱きしめている。

 もう一匹はニャオ先生の前に立ち咆えている。


(あいつ!あの犬っ、深手だ!あんなに血が!)


 ゴロロロロロッ!


 残りの一匹は木剣を構えたドワーフの少年と共にならず者に向っていた。


「このクソガキ!木剣で俺の剣を折りやがった!」


「ドワーフのガキだ!力だけは強いぞ!


「さっさと掠っちまおうぜ!エルフだぞエルフ!」


「子供孕ませて売れば、高値が付くぞ」


「まさかホントにいるとはなぁ」


 ゴロロロッ!


 彼らの防具、武器は粗末ではない。

 手入れがされ、それなりの装備である。


(これだけの装備、金回りはいい?ということはどれだけ悪いことしているんだ?)


 装備の維持にはそれ相応のお金が掛かる。

 ゴンザは自分で大太刀の手入れをしているが、普通はできない。

 ヘタに剣や槍、刃物を研ぐと逆に切れなくなってしまうのだ。

 切れ味を維持するためには、専門の知識と技術が必要なのだ。


 怒りに狂う若と、クールな視線で全体を見渡す若。


 戦いにおいて冷静さを保つことは、少なからず勝利に貢献する。

 いや、生き残ることに貢献する。


 その赤く輝きだしたネコの目がニャオ先生を捉える。


(!)


 裂けた服、胸元を押さえている手。

 胸元から見える乳房には、ミミズ腫れのような赤い筋が数本見えた。

 滲み出る鮮血。

 子供達が覆い被さるようにニャオ先生を庇う!


「邪魔なガキだ!」


「斬れ!早く逃げねぇと追手が来る!」


「追手?この街の住人ぐらい皆殺しにできるぜ?どいつもこいつもクズじゃねーか」


「酒場で見たが、強そうなヤツは一人もいねぇ。それに国境警備隊は飛龍の後始末ですぐには来ねぇ、騎士団も帰ったしな!」


 そこに倒れていた犬が突然飛び上がり、ならず者の一人に噛みついた。


 ベキベキッ!


 噛み砕かれる腕。


「うぎゃああっ!こ、この犬!なんてことしやがる!」


 振り下ろされる剣が勇敢な犬を斬り裂こうと迫った瞬間!


 若はブチ切れた!


(なんてことしやがるだと!?きさまらこそおおおおおおおおっ!)


 若の怒りが沸点、限界点を超える。

 戦場を見渡すクールな視線はどこかに行ってしまったようだ。

 ゴンザの声も、こうなると聞こえない。


 ドゴオオオオオオオオオオオオンッ!


 聴力を潰す轟音!

 ビリビリと震える大気、視力を奪う強烈な光!


 落雷だ。


「きゃっ!?」

「うわっ!?」

「うわーん雷様こえーよー」


 身を竦める子供達。

 暫くすると視力が回復し、聴力も緩やかに戻り始める。


「?」

「あれ?」

「悪いおじさん達は?」


 静寂が辺りを包む。

 いや、微かに聞こえる声。

 近寄ってくる大人達の足音。


 一人の子供は犬を抱きしめて放さない。

 長い舌をだし、ハッハッと短く息をする犬。


「お前の犬か?」


 突然の声に驚き、顔を上げると、そこには鬼の仮面。


「きゃっ?!」


「この街のヒーラーは?」


 赤く光る目、鬼の仮面。

 身に纏うはイカズチ。

 バチッ、バチッと雷の精霊が雷帝の周りを飛び交う。

 その迫力に思わず涙を流すチビちゃん。


「ぐすっ……ど、どちらさまですか?」


「雷帝さまだ」


「し、知らない人に、ま、街のこ、こと言ったらダメだっておとうさんが……」


「……そうか、お前は賢いな。その犬、このままでは死ぬぞ、傷痕が残ってもいいなら、オレ様が治すが、どうだ?」


「……し、死んじゃうの?」


「ああ、早く決めろ!」


「お願いします!」


 そう言ったのはニャオ先生だ。


「この街のヒーラーは国境警備隊に……今従軍して不在なのです、どうか助けてください……」


「お前も怪我をしているようだが?」


 頬を染め、目をそらすニャオ先生。


「わ、私の怪我は擦り傷です、どうか犬達を!」


「雷帝さま……」


「なんだ?ちびっ子?」


「あの悪いおじちゃん達、死んでいるの?」


 7人のならず者は、倒れてピクリとも動かない。

 剣、槍、弓は全て砕かれ、防具も焼け焦げている。


 それは一瞬の出来事。

 彼らは、雷の音しか聞いていない。

 殺してはいないが、瞬殺といってもいいだろう。


「いや、死んではいないぞ、感電して動けないだけだ。さあ、治療だ雷精で麻痺させ傷口を繋げる」


 雷帝は優しく犬を撫で、リラックスさせる。

 そしてバチン!と感電!


 グギャン!?


 犬の悲鳴が響く!

 感電した犬は驚き走り回り、ニャオ先生の後ろに隠れてしまう。


「元気いいじゃねぇか、治ったようだな?さぁ次はどの犬だ」


(若……)


(なんだゴンザ?)


(……マッパですが)


「はあ?」


 チビちゃん達がある一点をしきりに見つめている。


「……おい、見世物じゃねーぞ!」


「らいていしゃま、かわいい」


 子供は好奇心の塊である。


(くっ……おい、ゴンザ、こんな時どう対応すればいいんだ?)


(犬の治療は私がしましょう、大人達が話し掛ける前にお消えください)


 ささっ、と近寄るゴンザ。


「雷帝さま、犬の治療は私がしましょう、あちらにお召し物を用意しましたが(さ、若!今のうちに!ホントに!パーフェクトではありませんなっ!女性の前でマッパとは!)」


 パッ!と一瞬光る雷帝。


「!?」


 それは一瞬の出来事、もうそこに雷帝の姿はなかった。


「お礼を言いたかったのですが……」


 しきりに周囲を見回すニャオ先生。


「ニャオ先生、あなたも酷い怪我だ、治療を……誰か先生のお世話を!」


 ゴンザはその場をうまく収めようと、動き始めた。


できるだけ定時に投稿したく思います。

ではまた。

面白し!と思われたなら本編の下にある☆☆☆☆☆から評価をしていただけると嬉しいです。

ブックマークもしていただけるとさらに嬉しいです。

よろしくお願い致します!

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