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赤い目の少年冒険譚  作者: MAYAKO
第一章 四月世界
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第20話 心地よい眠りを     

おはようございます。

投稿です。


(強者は結構いるしなぁ、そこに善悪はないよなぁ、あるのは……)


(勝者と敗者、利益だけですな)


(ゴンザァそ、こに名誉はないのか?)


(それぞれですな若。考え方、捉え方で結果は違って見えますぞ。ブリザード・ワームは恐ろしい生き物です、圧倒的暴力ですぞ。ソロで倒せる者は少ない、この街が襲われれば、ニャオ先生達は生き残れないでしょうな)


(おい、ゴンザ?嫌なこと言うなよ!)


(事実ですな、若、もしその時が来たらどうされます?)


(そりゃ全力で潰すさ!民や国を守るのは王族の勤めだろ?まぁオレはあの場所に帰れねぇけど。なんだっけ?り、り?)


(利権ですかな?)


(そう!それそれ!今更オレが世に出ても利権やらメンツやらで認められないだろう?それにオレが何と言おうと、自称だ。なーんの証拠もない。偽物扱いで消されるだけさ!)


(……そうですな)


 その赤い眼のことはあえて触れないゴンザ。

 その力、赤い眼、気性、あなたはどう見ても……ゴンザはその後の言葉を呑み込む。


(まぁオレとしては、なぜ捨てられたか、それだけでも直接聞きたいんだがなぁ)


「うううううぅ……」


((!?))


 白黒ネコの耳が、ピン!と立つ。


(うな)されている!?)


 大量の汗の臭い。


 それもこの臭いは、恐怖の感情に包まれている。

 運動や自然に流れる汗ではない、病的な汗の臭い。

 白黒ネコの鼻は、氷窓越しにニャオ先生の苦しさを感じ取った。


(若、悪夢を見ているようですな)


(はぁ?起きているときは酷い目に合って、寝ていても悪夢?ニャオ先生、なんか悪いことしたのかよ!ひっでー世界だな!)


(世の中、楽しいことばかりではありませんぞ)


(なんでだよ!誰が作ったんだよ!こんな世界っ!……今日はここで寝るぞ!)


(!?)


(オレの波動は癒やしの波動が含まれている、側にいるだけで軽いヒーリング状態になる。ニャオ先生に意識を向ければ、少しは悪夢から逃れられるだろう)


(ご飯はどうされますかな?)


(朝までお預けだ、寝る!おやすみ、ゴンザ!)


(……ご、ご婦人との添い寝!?……パーフェクトではありませんな!)


(オレは窓の外だっつうの!)


 白黒ネコの若は、静かに魔力を開放し、ニャオ先生の部屋を、家を、この街を、駐屯地までも包んだ。


 すると、楽しげに鳴き出す一角パンサー。


 ……ルルルルルルッ……


 その声を聞き、夜勤の隊員達も微笑む。


「おい、今夜の一角達、ゴキゲンだな?」

「ああ、気持ちよさそうに鳴いているぁ、晩メシ、美味かったのか?」


 不思議な一夜。


 その夜は、皆、悪夢を見ることなく、病や怪我で苦しんでいるのも達も、居酒屋の売り上げで悩んでいる店主も、鍛冶屋で失敗した若手見習い鍛冶も、またネッコ来るかなぁ、とやや心配気味のドリとシュウミンも、ニャオ先生に告白したチビちゃんも(私も好きですよ、と、あっさり返された)小さな悩みから大きな悩み、子供から大人まで何もかも忘れて、グッスリと眠った。


 周囲が明るくなり始めた。


 パチリ、と眼を開ける白黒ネコ。


 起床と伴に全神経が覚醒する。

 寝ぼける、という状態がないのだ。


(おお、綺麗な東雲だ)


 氷窓は曇って中が見えない。

 それでもニャオ先生がグッスリ眠っているのは分かった。


(少しは、ゆっくり眠れたかい?ニャオ先生?)


「すぴー」


(ふふっ、また来るぜ!)


 軽く伸びをすると、白黒ネコは軽快に屋根に登り、街並みを眺める。


「おい、あそこにいるヌッコ、ドリのヌッコじゃないか?」


(ん?)


「ああ、あの白黒ネッコは確かにシュウミンのネッコだ」


(どっちとも違ぇーよ!オレは自由な野生のネコなのっ!しかし、よくオレを見つけたな?こいつら眼がいいぞ!)


 二人の隊員が軽く周囲を眺めながら歩いてくる。


 いや、歩いてくるのは一角パンサーだ。

 この二人は騎乗しているのだ。


 何とも凄い迫力である。


(ああ、哨戒か?)


「へへっ、これでドリと話しができるぜ、ヌッコ見たぜっ、て」


「なんだよ、お前ドリを狙っているのかよ?」


「嫁に欲しい」


「あれをかぁ?」


「あれとは何だ!あれとは!お前だってシュウミンにご執心だろ!」


「妻になってほしい」


「あれをかぁ?」


「あれとは何だ!あれとはっ!」


(おもしれーコンビだな、第六国境警備隊の連中は仲がいいな)


「班分け見たか?オレは隊長班でC地区警備に明日出発だ。お前は副長班で、今日演習だぞ」


「夜勤明けで演習!?どこのブラック企業だよ!」


 一角パンサーが揃って白黒ネコを見上げる。

 その目には畏怖が宿っているようであった。


 今回はここまでです。

 ではまた後日。

次回はちょっと残酷描写が入るかも知れません。

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よろしくお願い致します!

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