第20話 心地よい眠りを
おはようございます。
投稿です。
(強者は結構いるしなぁ、そこに善悪はないよなぁ、あるのは……)
(勝者と敗者、利益だけですな)
(ゴンザァそ、こに名誉はないのか?)
(それぞれですな若。考え方、捉え方で結果は違って見えますぞ。ブリザード・ワームは恐ろしい生き物です、圧倒的暴力ですぞ。ソロで倒せる者は少ない、この街が襲われれば、ニャオ先生達は生き残れないでしょうな)
(おい、ゴンザ?嫌なこと言うなよ!)
(事実ですな、若、もしその時が来たらどうされます?)
(そりゃ全力で潰すさ!民や国を守るのは王族の勤めだろ?まぁオレはあの場所に帰れねぇけど。なんだっけ?り、り?)
(利権ですかな?)
(そう!それそれ!今更オレが世に出ても利権やらメンツやらで認められないだろう?それにオレが何と言おうと、自称だ。なーんの証拠もない。偽物扱いで消されるだけさ!)
(……そうですな)
その赤い眼のことはあえて触れないゴンザ。
その力、赤い眼、気性、あなたはどう見ても……ゴンザはその後の言葉を呑み込む。
(まぁオレとしては、なぜ捨てられたか、それだけでも直接聞きたいんだがなぁ)
「うううううぅ……」
((!?))
白黒ネコの耳が、ピン!と立つ。
(魘されている!?)
大量の汗の臭い。
それもこの臭いは、恐怖の感情に包まれている。
運動や自然に流れる汗ではない、病的な汗の臭い。
白黒ネコの鼻は、氷窓越しにニャオ先生の苦しさを感じ取った。
(若、悪夢を見ているようですな)
(はぁ?起きているときは酷い目に合って、寝ていても悪夢?ニャオ先生、なんか悪いことしたのかよ!ひっでー世界だな!)
(世の中、楽しいことばかりではありませんぞ)
(なんでだよ!誰が作ったんだよ!こんな世界っ!……今日はここで寝るぞ!)
(!?)
(オレの波動は癒やしの波動が含まれている、側にいるだけで軽いヒーリング状態になる。ニャオ先生に意識を向ければ、少しは悪夢から逃れられるだろう)
(ご飯はどうされますかな?)
(朝までお預けだ、寝る!おやすみ、ゴンザ!)
(……ご、ご婦人との添い寝!?……パーフェクトではありませんな!)
(オレは窓の外だっつうの!)
白黒ネコの若は、静かに魔力を開放し、ニャオ先生の部屋を、家を、この街を、駐屯地までも包んだ。
すると、楽しげに鳴き出す一角パンサー。
……ルルルルルルッ……
その声を聞き、夜勤の隊員達も微笑む。
「おい、今夜の一角達、ゴキゲンだな?」
「ああ、気持ちよさそうに鳴いているぁ、晩メシ、美味かったのか?」
不思議な一夜。
その夜は、皆、悪夢を見ることなく、病や怪我で苦しんでいるのも達も、居酒屋の売り上げで悩んでいる店主も、鍛冶屋で失敗した若手見習い鍛冶も、またネッコ来るかなぁ、とやや心配気味のドリとシュウミンも、ニャオ先生に告白したチビちゃんも(私も好きですよ、と、あっさり返された)小さな悩みから大きな悩み、子供から大人まで何もかも忘れて、グッスリと眠った。
周囲が明るくなり始めた。
パチリ、と眼を開ける白黒ネコ。
起床と伴に全神経が覚醒する。
寝ぼける、という状態がないのだ。
(おお、綺麗な東雲だ)
氷窓は曇って中が見えない。
それでもニャオ先生がグッスリ眠っているのは分かった。
(少しは、ゆっくり眠れたかい?ニャオ先生?)
「すぴー」
(ふふっ、また来るぜ!)
軽く伸びをすると、白黒ネコは軽快に屋根に登り、街並みを眺める。
「おい、あそこにいるヌッコ、ドリのヌッコじゃないか?」
(ん?)
「ああ、あの白黒ネッコは確かにシュウミンのネッコだ」
(どっちとも違ぇーよ!オレは自由な野生のネコなのっ!しかし、よくオレを見つけたな?こいつら眼がいいぞ!)
二人の隊員が軽く周囲を眺めながら歩いてくる。
いや、歩いてくるのは一角パンサーだ。
この二人は騎乗しているのだ。
何とも凄い迫力である。
(ああ、哨戒か?)
「へへっ、これでドリと話しができるぜ、ヌッコ見たぜっ、て」
「なんだよ、お前ドリを狙っているのかよ?」
「嫁に欲しい」
「あれをかぁ?」
「あれとは何だ!あれとは!お前だってシュウミンにご執心だろ!」
「妻になってほしい」
「あれをかぁ?」
「あれとは何だ!あれとはっ!」
(おもしれーコンビだな、第六国境警備隊の連中は仲がいいな)
「班分け見たか?オレは隊長班でC地区警備に明日出発だ。お前は副長班で、今日演習だぞ」
「夜勤明けで演習!?どこのブラック企業だよ!」
一角パンサーが揃って白黒ネコを見上げる。
その目には畏怖が宿っているようであった。
今回はここまでです。
ではまた後日。
次回はちょっと残酷描写が入るかも知れません。
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