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第一話 雷帝と炎帝

初めての方も常連の方も、こんばんは、MAYAKOです。

見つけて頂いてありがとうございます。

もし、よかったら、ご一読下さい。


 巨大な飛龍であった。

 どう見ても物理的に飛びそうもないほどの巨軀。

 相当な魔力を保持していると見ていい。

 その竜が真昼から、大暴れである。


 何が気にくわないのか周囲の村、構造物、人族や妖精族を喰らい、破壊する。

 最近、隣国で破壊活動をしていた氷属性の飛竜だ。

 隣国では、ギルド所属の冒険者では手に負えず、騎士団要請が掛かるほどの大物である。


 上空からのブレス攻撃。

 矢は届かず、魔法攻撃はヒットしない。


 そして飛龍の周りを飛び交う、小型の魔獣達。

 その数、数十匹。


 通常、魔獣一匹に5名パーティー二組の討伐隊である。


 そう、魔獣だけでも厄介な存在なのだ。


 その一軍が北の国、スノーホワイト国になだれ込んできたのだ。

 雪と氷に覆われた国スノーホワイト。

 鉱山に恵まれ、その地下資源は膨大であった。

 騎士団も強く、隣国からは頼りにされている大国だ。


 だがその大国が一匹の飛龍とその眷属に翻弄されていた。

 多くの騎士が仕える国なのだが、今回はタイミングが悪かった。

 ほとんどの騎士団が遠征中なのである。

 最強と言われる騎士団もいるにはいるのだが、この騎士団、中央政府の管轄外の騎士団で簡単は動かない。そう、皇帝直属の騎士団なのだ。


 皇帝の命令意外は一切受け付けない、皇帝だけの騎士団。


 さて、と住人達は思った。


 どうする?


 要請するとすぐに駆けつけてくれる、お馴染みの対空特化の騎士団『響弓』も遠征中である。

 被害は増える一方。

 そこで苦肉の策として、各ギルドより選抜されたSランク討伐隊が組まれたのだが、バトル開始5分後。

 果たして、彼らはこのままでは全滅だな、と自覚した。


「眷属持ちとは聞いていないぞ!」


「ちゃんと連絡しましたぁ!」


「矢が通らん!なんだあの鱗は!対魔竜の矢だぞ!」


「騎士団は何故出てこない!響弓だけが騎士団じゃないだろう!」


「遠征中だ!」


「皇帝陛下は何をしているんだ!自分の国だろ!」


「前衛!しっかりして!詠唱ができないわ!」


「今更愚痴など……ぎゃっ!」


「魔獣がっ!こいつら連携……ぐわっ!」


 重装備の戦士達が次々に倒されていく。

 前衛壁役が崩れると、後は全滅が待っている。


 その戦いを、遠方より眺める人物が二人。

 一人は2m程の戦士。

 軽装ではあるが、異様に長い剣を背中に一振り。

 壮年の戦士で、その巨軀には無数の傷痕があった。


 もう一人は赤い目の少年。

 この物語の主人公である。


 身長は165㎝?少し痩せて見える体型は、少年を更に小柄に見せる。

 しかしその動きは、獰猛な肉食系の動物のようである。

 グレーの髪に切れ長の目、その目は真紅でギラギラと輝いていた。

 そう、見えるのは眼だけだ。

 少年の顔は異様な鬼の仮面で覆われているのだ!


「若、その動き品がありませんな。常にパーフェクトを心がけて下さい」


「無理」


「またそのような……まだ死者は出ておりませんが、助けますか?」


 各5名、8パーティーの40名は次々に倒されていく。


「ぎゃああああっ!」


「ブ、ブレスの範囲が!」


「なんだこの飛龍は!」


 若と呼ばれた少年が、ぱしっ、と両手を鳴らす。

 右拳を包み込む左手。


「いくぞ、ゴンザ」

「はっ!」


 ふっ、と消える二つの影。

 次に現れた場所は、バトル中のど真ん中である。


「!」


「新手か!?」


 突然現れた高魔力の塊のような存在、それを感知した魔法使い達は敗北を確信した。


 ……識別不能!……

 ……どこに隠れていた……

 ……新たな魔獣か!?……


 魔獣?失礼な!ゴンザは小さく呟く。


 ……この魔力!魔人級ですっ!……


「若、間違って攻撃されそうですが?」


「その前に倒せばいい!ゴンザ!どっちだ!」


 少年の両拳が、放電し始める!

 その魔力の高さに周囲は息を呑む。


「では飛龍の方を」


 とゴンザが答えた時には、飛龍は大地に叩きつけられていた。


「私が……」


 ドオオオオオオオオオオンッ!


 大地が揺れ、雪や氷の破片が舞う。


「先に言えよ!もうヤっちまったぜ!『若、飛龍をお願いします!』じゃねーのかよっ!」


 そう言いながら、大地に叩きつけられた飛龍を踏み台にして蹴り、上空の魔獣に襲いかかる!

 こうなると、どっちが魔獣か分らない!

 凄まじい蹴り、突き、魔獣は粘土細工のように潰されていく!


 本来、翼のある獅子のようなこの獣、こいつは魔法も使い難易度A評価の怪物である。

 まず、単騎ソロでは倒せない。

 この魔獣は空を飛び、大地を走ってもかなり速い!更には魔法による属性攻撃。

 一部の魔法学者は、暴走した獣人族の成れの果てではないかと言っているくらいである。

 そう、この魔獣、再生能力も非常に高いのだ。


「ひ、飛龍が落ちた!前衛!しっかりしろ!魔獣だけなら!」


「む、無理だ!この魔獣、連携してくるって!知能が異様に高……い?」


(ゴンザ、こいつら再生が速い!一気に行くぞ!)

(仰せのままに!)


 ばちこーん!


 と、響く打撃音。


 ピカッ!ドドーン!


 その後更に響き渡る轟音と閃光!

 落雷だ!


 ばちこーん!ピカッ!ドドーン!

 ばちこーん!ピカッ!ドドーン!

 ばちこーん!ピカッ!ドドーン!


 次々に撃破されていく魔獣。

 若と呼ばれた少年の打撃は魔獣達の再生を上回り、その上、高魔力による落雷攻撃。

 それでもしぶとく再生しようとする魔獣は……。


「とりゃ!」


 サクッ!


 軽く分断される。

 ハサミで紙を切るように、サクサクと細切れになっていく。

 異様に長い剣、それは大太刀であった。

 キラキラとその分厚い刃が輝く度に、魔獣が斬り伏せられていく……。

 そして斬り伏せられた魔獣はゴゥと火を噴き、燃え尽きてしまう。


「お、おい、あの剣、炎……炎帝?」


「ま、間違いない、炎帝と……雷帝だっ!」


 騒がしかった戦いの場は、いつの間にか静かになった。

 魔獣は燃え尽き、飛龍は動かなくなったのだ。

 討伐隊のリーダーが進み出る。


「雷帝さまと炎帝さまか?」


 応えたのは大太刀の戦士。


「……その二つ名は好まぬ」


「そ、そうなのか?……俺は討伐隊のリーダー……」


「……名乗るな、名乗れば我らも名乗り返さなければならぬ」


「……我々パーティーの任務は……騎士団響弓、もしくはベーグル竜騎士団が戻るまでの時間稼ぎだったのだが」


「……決死隊か」


「礼をいう、助かった、ありがとう」


「ゴンザ、さみーよ!俺、もう帰る」


「……ですから若、名前呼ぶのは禁止ですとあれほど!」


 荒れ果てた雪原に座り込む『若』


「若っ!なんです、そのだらしない格好は!パーフェクトではありませんな!常に心がけて下さいっ!」


「……うっさい」


「ぬわんですとぉ!」


 うっさい、と一言残し『若』はその場を後にする。


「若っ!……そこのリーダーとやら!ワシの名前を聞いたか?」


 そう言って大太刀の柄をコツコツと爪で軽く叩くゴンザ。

 ゴンザ、お顔はとびきりの笑顔である。


「い……いえ、き、聞こえませんでした……(目、笑ってねーじゃん!)……どちらサマで?」


「まぁ、そう震えるな、聞こえなかったらそれでいい、あ、顔も見なかったよなぁ?」


 コツコツ。


「は、はい、吹雪で何も見えませんでしたっ!」


「よろしい」


 そう言って、長身の戦士もふっ、と消える。

 そして雪と氷で覆われた森の方から微かな声が聞こえてくる。


 ……わかぁ……おまちくださぁあい……


「お、おい、い、今のは?」


「……間違いなく噂の雷帝さまと炎帝さまだ……ヒーラー重傷者優先、それから街に連絡を」


「炎帝さまの名前を知らせるのか?」


「アホタリ!討伐完了の知らせだ!炎帝さまのお顔も名前も知らない!いいな?俺はあの剣で斬られたくないのでな!」


「剣?あれは太刀ですよ、それも大太刀!あんなスゲー太刀を軽々と……」


 ここ数年、スノーホワイト国に現れる謎の二人組。

 竜や魔獣、魔人を軽々と倒す屈強な戦士。


 一人は長身の戦士で、刃渡り180㎝以上の大太刀使い。

 火の属性攻撃を得意とし、野太刀使いとも大太刀使いとも呼ばれていた。

 その炎の豪剣は周囲を圧倒し、いつしか炎帝と呼ばれるようになった。

 旅人や冒険者、街の人々さらには騎士団まで、炎帝に助けられた者達は数知れない。


 もう一人は体術を得意とする仮面を付けた少年だ。


 雷の属性攻撃を得意とし、その赤い眼はルビーアイとも呼ばれていた。

 人々が危機に陥ると、どこからか響いてくる雷鳴。

 いつしか、少年は雷帝と呼ばれるようになった。


 雷帝と炎帝、この二人は途轍もなく強かった。

 騎士団すら救う無敗の二人。

 スノーホワイト国で絶大な支持と人気を誇る謎の二人組、このお話はそんな二人の冒険のお話しです。


『赤い目の少年冒険譚』は毎週木曜日23時20分の投稿予定です。

第二話は 少年の秘密 を予定しています。


面白し!と思われたなら本編の下にある☆☆☆☆☆から評価をしていただけると嬉しいです。

ブックマークもしていただけるとさらに嬉しいです。

よろしくお願い致します!

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