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恋する気持ちは計画的に

読んでいただければ幸いです!

「リリア」

 少し低く、どこか色気のある声が彼女の名前を呼んだ。優しくそして甘さも含まれるその声にリリアと呼ばれた彼女以外もそっと彼を見る。幸せそうに笑みを浮かべる彼の顔に、周りの女性たちは頬をほのかに染めた。

「ジル様」

 彼に応えるように、リリアと呼ばれた女性も幸せそうに微笑む。待ち合わせをしていたのだろうか、嬉しそうに彼の元に駆け寄った。黄色の鮮やかなスカートが小さく揺れる。

「待ったかい?」

「いいえ、全然」

 そう言いながら差し出された彼の手に、白く美しい自分の手をそっと添えた。

「リリアは今日も可愛いね」

 愛をささやくようにジルは言いながらリリアの手の甲にキスをする。

 そっと手を離すと今度は艶のあるリリアの黒髪に手を伸ばした。数回撫でたあと、毛先を少しだけ摘まみそっと口に寄せる。わざとらしく音を立てると、リリアの頬は少しだけ赤く染まった。

「…ありがとうございます」

 照れたように小さくはにかむ。可愛らしいその表情にジルは嬉しそうに頷いた。

「本当のことだからね」

 ジルは端正な顔に笑みを浮かべる。色気を感じさせるその表情に、周りにいた女性から小さく感嘆の声が上がった。けれど周りの音など聞こえないと言うように2人はそのまま見つめ合う。

「ジル様、本日はどちらに連れて行ってくださるのですか?」

「そうだな、この前できたばかりの植物園はどうだろか?リリア、花が好きだろう?」

「はい、とても。楽しみですわ」

「喜んでもらえるならよかったよ。さあ、馬車を用意してあるんだ。行こうか」

「はい」

 差し出したジルの引き締まった腕にリリアは右手を伸ばした。

 美男美女の幸せそうなやりとりに周りは目を奪われる。リリアの長い黒髪とジルのシルバーグレイの短髪がよく似合っていた。


◇◇◇


「今のってハウル公爵家の次男ジル様とドーリア子爵家の長女リリアさんよね?」

リリアとジルの背中が遠ざかるのを確認すると、周りで彼らに視線を向けていた数人が口々に話し始めた。

「ええ。噂どおり仲睦まじいご様子だったわね」

「3か月ほど前からお付き合いを始めたんでしょう?」

「ええ。何でも、あるパーティーに参加していた時に、ジル様が声をかけたんだとか。一目惚れって噂よね?」

「そう聞いているわ」

「でも…身分が違いすぎない?公爵家と子爵家でしょう?」

「確かにね。ドーリア家が経済的に裕福って言うならまだしも」

「あそこは…ね?貴族なのに、リリアさんのご両親って庶民と同じように働いてお給料をもらっているんでしょう?侍女も1人しかいないって聞いたわ」

「うちのお父様もドーリア家の当主は変わり者だとおっしゃっていたわ」

 リリアの生まれたドーリア家は子爵という爵位を持ちながらも庶民の様な生活をしていた。財政面の余裕はなく、昔から勤めている執事1人、侍女1人のみが働いている状況が続いている。

 そもそもドーリア家の当主、ガードに貴族としての自覚はあまりなく、その妻のフレアにとっても同じだった。

 ドーリア家の爵位は先祖代々のものではない。ガードの父、つまりリリアの祖父が行った善行を王家が認め、与えられたものだった。そのためガードは18歳を迎えるまで庶民として生きてきたのである。

 どうしても爵位が欲しいと望んでいたわけではないドーリア家にとって、急に与えられた爵位への感情は「困惑」だった。どうすればいいのかわからない中で、守らなければならない領民ができた。ただ、それだけだった。

 爵位が与えられたからと言って、急に貴族として振る舞えるはずもなく、そんな生活を求めていた訳でもないドーリア家が選んだ道は、今までどおりに汗水流して働き、領民を守るということだった。

 そして、ドーリア家の領民の感覚としても、ドーリア家は統治する領主というよりは領民のリーダー的存在であった。そしてそれでいいと思っていた。そしてそれは、現当主のガードとその妻フレアも同じように思っていることだった。フレアはガードの幼馴染みであり、庶民だった。彼女にも貴族としての自覚は同じようにない。

 だからこそ変わり者と言われようともガードは庶民と一緒に汗を流し、野菜を作る。そして、妻のフレアは裁縫し、小物や服を売ってお金を稼いでいた。

 ガードやフレアの行いは、他の貴族からは白い目で見られるものだ。それでも毎日家族と過ごし、領民と過ごしている彼らは幸せで、周りの目など気にしていない。

「貴族らしくないと有名よね?」

「…でも、それでもいいとジル様は公言されているんでしょう?『好きだから一緒にいる、身分なんて関係ない』って」

「それは……素敵ね」

「ええ、私にもそんな風に言ってくれる人が現れたらいいのに」

 噂話をしていた彼女たちはどこかうっとりとした表情を浮かべた。小声で言えば聞こえないだろう、と当人たちが思っていても内緒話とは案外響くものである。

 馬車に乗る間際、リリアがそっと振り返り口角を上げたのに気づいた者はいなかった。


◇◇◇


 馬車の中に入り腰掛けた。隣ではなく、向かい合う形で座る。リリアはひと目ジルを見たが、すぐに外に視線を向けた。

「計画は順調のようですね」

 どこか鋭い声。先ほどまでその顔に浮かんでいた微笑みはどこかに消えている。そんなリリアにジルは小さく苦笑を浮かべた。

「ああ、これも君のおかげだ」

「そうですか」

「それにしても君がこんなに演技が上手なんて思わなかったよ」

「私にも隠された才能があってよかったですわ」

 ジルを見るリリアは片頬だけ持ち上げる。

「そんな風に卑下するのはよくないよ」

 ジルの声はどこか優しい。

「あら?それをジル様がおっしゃるのですか?」

「…」

「貧乏な家に生まれ、お金に困っている哀れな子爵令嬢だからこそ私を共犯者に仕立て上げた貴方が言うお言葉ではありませんわね」

 リリアの皮肉めいた言葉に、ジルは小さく笑うだけに留めた。そんな表情もこの美男子にはよくお似合いで、だからこそ小さなため息が漏れる。

「ため息をつくと幸せが逃げるって聞いたことがあるよ」

「…」

 また同じような言葉を口にしそうになって、繰り返すだけだと口を閉ざす。ジルから視線を外し、外を見た。通り過ぎていく景色を見ながら、ジルの計画に乗ることとなった3月前のことをリリアは思い出していた。


◆◆◆


 少しだけ強い風が吹いていた日だった。空を見上げれば、三日月が綺麗に輝いていた。

 多くの貴族が参加する夜会に、リリアは子爵家の長女として参加していた。父のガードと母のフレアは「行きたくなければ行かなくていい」と言ってくれたが、貴族の娘である以上そんな訳にもいかない。まだ若く、周りの目を気にするリリアは両親の言葉に首を横に振り、出席することを決めたのだった。

 貧しいドーリア家に夜会のためのドレスを新調するお金はない。そのためリリアは母親フレアのお古の水色のドレスを着て参加した。今のデザインとは違い肩幅が広く、スカートの型も古いものだった。それでも裁縫が得意なフレアがリメイクしてくれたドレスは、リリアのお気に入りだった。

 長い黒髪に高すぎない身長。顔は小さく、小動物のようであり、けれどどこか妖艶だった。とびきりの美女というわけではないが、惹かれる容姿である。けれどリリアの周りには誰もいなかった。理由は「変わり者のドーリア子爵」の長女だからであろう。

 リリアの仲のいい友達はみんな平民であるからこの場にはいない。貴族だけが参加する夜会では、いつもそうだ。奇異の目を遠目に向けられるだけ。その視線から避けるために、リリアはよく風にあたりにバルコニーに出ていた。

 あの日もそんな風に、バルコニーで風にあたっていた。そんなリリアに声をかけてきたのがジルだった。


◇◇◇


 リリアの長い髪が風に吹かれ、少しだけ浮かぶ。部屋の中の喧噪がかすかに遠くに聞こえる静かな空間だった。

「はじめまして、レディ。素敵な夜ですね」

 そんな中、少しだけ低い音を耳が拾う。そっと視線を向ければそこにいたのは端正な顔立ちの青年だった。浮かぶ笑みがあまりにも美しく、リリアの視線は彼に釘付けになった。

「…」

「レディ?」

「あ、いえ。はじめまして、サー」

 バルコニーの柵に預けていた背中を離し、スカートを持ち上げ挨拶をする。

「ご丁寧にありがとう。…隣、いいかな?」

 そう言いながら、彼は返事を待たずにリリアの隣に歩み寄った。そして先ほどまでのリリアと同じようにバルコニーの柵に背中を預ける。

「…はい」

 意図がわからず、リリアは首を傾げながらも小さく頷いた。

「びっくりさせてごめんね。…ドーリア家のリリア嬢だよね。俺は、ハウル公爵家次男のジルです。はじめまして」

「…ハウル…公爵家、ですか?」

 予想もしなかった名前にリリアは目を丸くする。

 ハウル公爵家は代々、王家に仕える名門だ。家の格もさることながら、長男も次男も容姿端麗であるともっぱらの噂だ。確か次男はリリアの2つ年上のはずである。

 リリアも実際に見たのは今日がはじめてであったが噂には聞いたことがあった。そういえば、親友のアンリが目を輝かせて熱弁していたなとふと思い出しす

「そうだよ」

「…えっと、風にあたりに来たのですよね?私はもう十分なので、外しますわ」

 またあの喧噪の中に戻ると思うと億劫ではあったが、初めて言葉を交わした男性と2人でいる勇気はなかった。

「……」

「…?どうかされました、サー?」

「実は、君に会いにここに来たんだ」

「…」

 変わり者のドーリア家の長女に公爵家の次男が会いに来る理由は何だろうか。しかも、今まで話したことすらないのに。けれど、からかう雰囲気は見受けられなかった。だから、リリアは少しだけ背筋を正し、彼を見る。

「私に何かご用でしょうか?」

「君にお願いしたいことがあってね」

「…お願い、ですか?」

 リリアの言葉にジルは頷いた。そして端正な顔に妖艶な笑みを浮かべて言ったのだ。

「俺と恋人のふりをしてくれませんか?」

「……」

 言葉の意味を理解できず、リリアは一瞬時が止まったように固まった。

「リリア嬢?」

「……今、なんと?」

「だから、俺の恋人のふりをしてほしいんだ」

 部屋の中の喧噪がさらに遠くなったように、その言葉だけが耳に入った。咀嚼するように理解していく。けれど、理解しろと言われても無理があるのも事実だった。

「何を…おっしゃっているのか…」

「今、貴族の子息、令嬢は、家のために結婚していることがほとんどだよね。いわゆる政略結婚だ」

 リリアの混乱を余所に、ジルは涼しい顔で説明を始めた。リリアはそれにどう反応すればいいのかわからず、ただ耳を傾けた。

「だが、皇太子、次期国王は、それに反対の立場を示している」

「…皇太…子…様…?」

「ああ。俺は皇太子に仕えている。まあ、仕えているというよりは友達みたいに思ってもらっているようだけれど。…皇太子のアルマ様は貴族の自由恋愛を進めたいと考えていらっしゃるんだ」

「…」

 出てくる単語をリリアは一つも理解できなかった。当惑した目を向けるが、ジルは一つ笑みを浮かべるだけで、言葉を止めてはくれなかった。

「次世代を担う子どもたちの育成に今の状況は悪い影響を与えている。それが、王家の研究チームの回答だ。愛情のある家で育った子どもとそうではない子ども。そこには大きな違いがある。情緒的な安定や大人になってからの人間関係の作り方、感情の制御の仕方。愛し合う夫婦のもとで育てられた子どもの方がよい傾向にある」

「そう、ですか」

 リリアの事務的な相槌に、ジルは頷くことで応える。

「だからこそ俺が自由恋愛をしようと思ってね」

「…」

「まあ、ふりだけど」

「……人目を引くハウル公爵様が計画的に自由恋愛をすることで、周りの意識を変えていこう、とされているということでしょうか」

 リリアの問いにジルは少しだけ目を丸くした。

「驚いた。君、頭の回転が速いんだね」

「…恐れ入ります」

「俺は早くして騎士になった。右腕、友人として皇太子の傍についている。それに俺の顔は淑女の皆さんに人気らしいからね」

 どこか茶目っ気を含ませてそう言った。その言葉が嫌みではないほど綺麗な顔だなとリリアはジルの顔を見る。

「俺が貴族同士のつながりではなく、自由な恋愛をすれば注目の的となる。それに合わせて他の何人かにも自由恋愛をさせる予定だ」

「…」

「そしたら、政略結婚に違和感を持っていた人や自由恋愛へ憧れがあった人たちが追随してくるだろう」

「ひとつ伺っても…よろしいでしょうか?」

「どうぞ?」

「どうして、私なのでしょうか?」

「都合がよかったから、かな」

 端的な言葉に取り繕うつもりもないことがわかった。なるほど、ここまで自分の家は周りから白い目で見られているのだなとリリアは実感する。

 確かに都合がいいのかもしれない。公爵家の子息と子爵家の令嬢。相手が平民よりも貴族である分リアルだ。しかも、貴族同士であっても、身分的には許されない。それは身近に感じるシンデレラストーリーだろう。それに変わり者として有名なドーリア家の令嬢なら話題性もいいはずだ。

 リリアの容姿もこの計画にちょうどいいのかもしれない。綺麗すぎず、かといって不細工でもない。可愛いとも綺麗ともとれる顔立ちは自分を投影するにはちょうどいいのだろう。

 そして何よりリリアは、お金で解決できる環境にある。

「変わり者で有名の子爵家令嬢で、ちょうどいい容姿。しかも貧乏であるからお金に困っている。確かに都合がいいのかもしれませんね」

「そのとおりだよ」

 皮肉を言ったつもりのリリアの言葉にジルはにこりと笑い頷いた。その表情すら格好良くて、すねを蹴飛ばしたくなるのを堪えるのに、リリアは必死だった。

 断る方が困らせるのか、話を受ける方が困らせるのか。そこまで考えて、リリアは小さく首を横に振る。相手が困る方ではなく、自分が有利な方を選ばなくては。

 ここまで馬鹿にされたのだ。それならば、少しでも自分のためになるように行動しよう。そう考えて、リリアは自分の心を落ち着かせるように深く息を吸い、大きく吐き出した。目の前の端正な顔を睨むように見つめる。

 リリアの思考が固まるのを待つように、ジルはただ黙っていた。それは痛いほどの沈黙。窓を一つ隔てただけの向こうのホールでは、賑やかな音楽が流れている。それなのに、なぜかリリアには少しも聞こえなかった。

 お金がなくてもいい、とはリリアには言えなかった。今も十分に幸せだ。しかし、夢中になる夢も愛する人もいないリリアにとって、平凡に生きるのにはある程度のお金が必要である。そして、それが貴族ならばなおさらだった。

「…承知しました。このお話お受けします」

「本当かい?感謝するよ!」

「それでは、契約の内容を決めましょうか」

「契約?」

 リリアの言葉をジルは聞き返した。そのジルにリリアは小さく嘲笑を浮かべる。

「契約も結ばずに手を結ぶとお思いですか?期限も私へのメリットも文字にして残していただかなければ困ります。それに貴方が裏切らないとも、私が裏切らないとも限らないでしょう?それとも、私がそこまで信頼できる人間に見えましたか?」

 リリアの言葉にジルは瞬きを2回した。そして微苦笑を浮かべる。

「いや、君が正しいよ」

 素直に自分の非を認めるジルに少しだけリリアは好感を抱いた。


◇◇◇


「それでは了承しかねます」

 初めての逢瀬は、ジルの友達が運営する小さなカフェだった。人目がつかないように時間差で中に入る。カフェは貸し切りだ。

 店主からサービスされたおいしいクッキーと紅茶を嗜みつつ、リリアはジルの提案に待ったをかける。

「どうしてだい?」

 リリアの立場上、反対意見など本来許されるものではない。それでもこれは契約で自分たちは対等な関係なのだと思い、リリアは言葉を口にした。そんなリリアに不快感を示さず、ジルは首を傾げる。

「期間は2年間、定期的に人目の付く場所でデートを繰り返し、自由恋愛であることをアピールする。身体的接触は極力避けるが、必要だと判断した場合は、手を繋ぐ、抱きしめる。口づけは頬までで、それ以上はしない。互いに一目惚れという設定だ」

「…」

「2年後には円満に別れ、君に汚点がつくようなことはないと約束しよう。報酬はうちで雇っているメイドの月給の3倍は払う。なかなかの好条件だと思うけど?」

 どこか不服そうに見えるリリアにジルはこの話のメリットを再度説明した。

「ええ、好条件ですね。私にとっては」

「ならどうして?」

 けれどリリアの表情は晴れない。ジルの問いにリリアはまっすぐに目を見ながら応える。

「今のこの国の状態で自由恋愛を推奨すれば、身分の低い女性たちが身分の高い男性に弄ばれるだけですわ」

 この国では、女性の活躍の場がほとんど存在しない。20歳までに結婚し、嫁ぐのが一般的である。嫁ぎ先の、家事、育児、家の管理を担うが、決定権は夫にある。貴族の女性は働かないのが一般的であり、自由に使えるお金は極端に少ない。

 平民の女性は働いて収入を得ている人も多いが、それでも稼ぎは男性の半分程度だ。男性は、生涯結婚しない自由があるが、女性が結婚せず生きていくのは難しい。

「だから、女性の地位向上も合わせて行わないと自由恋愛なんてありえません。女性が結婚しないという選択すらもできるようになるほど社会を変えてください」

 リリアの言葉にジルは目を丸くした。こんな風に考える女性がいることが驚きだったからだ。そして、次に、リリアの言葉をゆっくり理解していく。もっともだと思った。たしかにこのままでは、身分の低い女性が身分の高い男性の浮気や不倫相手になる未来が見えてくる。

「たしかに君の言うとおりかもしれない」

 リリアの言葉に素直に頷いたジルに、今度はリリアが驚いた。女性の地位が決して高くないこの国では女性の発言権などないに等しい。それなのに公爵家であり、皇太子の右腕であるジルが自分の意見を聞いてくれるとは思わなかったからだ。

「ハウル公爵様は、…とても素敵な御方なのですね」

「それはどうも」

 リリアの褒め言葉に、ジルはにこりと笑った。その反応に、常日頃褒められていることがうかがえる。

「あ、それと、ハウル公爵様は長いから、ジルと呼んでくれないかい?これから婚約者として過ごすのだから」

「ジル…様…?」

「そうだよ、リリア」

 父親以外の男性から初めて下の名前で呼び捨てにされた。それでも不快に感じないのは、イケメンの成せる技なのか、それともこちらの意見を聞いてくれる紳士だからか。

「それでは、失礼しまして、ジル様、私の提案をどのように実現していただけるのでしょうか。サインをするのはそれからですわ」

「わかった。女性であるリリアの意見も聞かせてくれ」


◇◇◇


 そうやって話し合った結果、ジルとリリアが決めたのは大きく分けて5つだった。

1契約期間は2年間(契約については口外厳禁)

2身体的接触は極力避ける(状況により適宜対応可)

3報酬は契約終了日にまとめて払う(ハウル公爵家のメイドの3倍)

4女性の地位向上(自立を支援)

5法律の整備(女性が弄ばれることがないように)

「こんな感じで納得してもらえるだろうか」

 ジルがきれいにまとめた契約書をリリアに見せる。リリアはそれを受け取ると時間をかけて読み込んだ。

 静寂が2人を包む。先に口を開いたのはジルだった。

「……女性の地位の向上と法の整備には時間がかかる。だからこれを2年でできるとは思わない。けれど、貴族の自由恋愛を進めていく中で、優先して対応していくことを約束しよう」

「…2年という歳月は大きいものです。契約終了後には、婚約者として高位貴族の子息を紹介してください。ジル様達の計画に反していて申し訳ありませんが、政略結婚でかまいません」

「ああ、構わない。ただ、恋愛結婚として振る舞ってもらいたいが」

「ええ。もちろんですわ。それから、仕事先も紹介していただきたいです」

「仕事先?」

 ジルの言葉にリリアは頷いた。この契約を進めていく上で、ジルの恋人であるリリアが仕事をしてお金を稼ぐことに意味があると考えたからだ。そしてそれはドーリア家への偏見の払拭にもなる。

「ジル様の恋人が貴族ながら仕事をする。そしてジル様がそれに肯定的な態度を示す。そうすることで女性の社会進出の足がかりになるのではないかと思ったので」

「……なるほど。言われてみればそうだ」

「幸い、頭は悪い方ではないと自負しております」

「ああ、君ときちんと話したのは今日で2回目だが、賢い女性であることを痛感したよ。そして、君みたいな人が家の管理をしているだけ、というのもこの国の損失だ。…君みたいに賢く頭が回る女性は俺が考えている以上にいるのだろうね」

「ええ、そうだと思います。だから女性の社会進出はこの国のためにもなるのではないでしょうか」

 ジルは頷くことで応えた。生まれた性別だけでできることが限られるというのはこんなにも生産性のないことなのだと改めて思う。

「君に一番いい仕事先を紹介するよ。偏見はあるとは思うが、リリアの優秀さでねじ伏せられると思う」

「ご期待に添えるように頑張ります」

「ということは、契約成立、ということでいいのかな?」

 そう言いながらジルはリリアに手を伸ばす。リリアは笑みを浮かべながらその手に自分の手を重ねた。


◆◆◆


 リリアが紹介されたのは王宮での仕事だった。主に税や予算の管理をする財務担当であり、リリアの他にも数人が同じ業務を担っている。慢性的な人手不足もあるのか、女性であるリリアが仕事をすることに同僚となる人たちははじめからリリアの想定以上に好意的であった。

「リリアさん、すみませんがこの計算の検算してもらえますか?」

「はい、わかりました」

 同僚であるレオナルドに渡された書類を受け取りながら頷く。肩まで伸ばした金色の髪がよく似合うレオナルドは伯爵家の三男である。歳はリリアの3つ上で、ジルとはまた違った系統の格好良さを持つ男性だった。

「レオナルド様、問題ありませんでした」

「どうもありがとう。いや、それにしてもリリアさんが来てくれて、業務の効率が格段に上がりました」

「そう言っていただけるなら光栄です」

 お世辞も含まれているなと思いながらもリリアは素直に喜びを示した。リリアは基本的に、他の同僚の資料の検算など確認作業を担っている。性格的にも慎重で、暗算も速い彼女は、この仕事に適任だった。 

 まだ仕事を始めて数か月しか経っていないが、彼女の実力を認められ、任される仕事は増えていた。

「その上に、ハウル公爵家の次男の恋人なのだから、向かうところ敵なしだね」

 レオナルドの言葉に肯定も否定もせずに、リリアは笑みを浮かべることで応える。

「リリアさんって秘密主義だよね」

「そんなことありませんわ。私の話よりレオナルド様のお話を聞かせてください」

「俺?俺は、…仕事が忙しいし、恋人も婚約者もいないよ」

「そうなんですか?」

「やっぱ驚くよね。…俺は政略結婚って嫌で、その手の話を断ってたからね。寂しい独り身だよ」

 どこか自嘲的に言うレオナルド。家柄も見た目もよく優しいレオナルドなら欲しいと思えばすぐに恋人ができるのだろうなとリリアは思った。

「話してるところごめんね。リリアさん、恋人がお迎えに来ているよ」

 他の同僚がリリアに声をかける。時計を見れば、リリアの退勤時間となっていた。

「え、もうこんな時間…」

「ごめん、リリアさん、引き留めてしまって」

「レオナルド様のせいではありませんわ。お話が楽しくて私が時間を忘れていたのです」

「そう言ってもらえると助かるよ」

 レオナルドの言葉にリリアは笑みを浮かべて頷いた。

「それでは皆様、お先に失礼いたします」

 スカートを軽く持ち上げ、頭を下げる。

「お疲れ様、リリアさん。今日もありがとうね」

「それにしてもほとんど毎日お迎えに来て、アツいね」

「まあ、政略結婚の相手じゃなくて、お互いが好きで一緒にいるのだからそうなるんじゃねぇの?」

「公爵様、俺たちのことも射殺さんばかりの目で見てくるもんな」

 どこか茶化すような視線がリリアに向けられた。リリアは恥ずかしそうな表情を浮かべながら、その視線から逃げるように退室をする。

 リリア以外女性がいない職場でも、幸せそうなリリアの背中にどこか羨ましそうな視線が注がれた。

「リリアさん、照れてたね」

「ああいうの見ると、いいな~と思うよな」

「…やっぱり、政略結婚じゃなくて、恋愛結婚の方が幸せなのかな」

「まあ、そりゃそうだろう」

「でも、身分の低い女性ってどうなんだろう」

「確かに心配だよな。家の管理を任せて大丈夫なのか、とか」

「……でもさ、リリアさんみたいな女性ならむしろありがたくないか?」

 一人がそう言った。リリアの処理能力や頭の回転の速さを思い出し、その場にいた全員が静かに頷く。

「リリアさんみたいに優秀な女性ならいいよな」

「たしかに。そんな人と恋愛して結婚できたら幸せだろうな」

「そうだろうな」

 そんな会話が扉越しに聞こえた。同僚たちの会話に自分たちの計画がうまくいっていることを知れてリリアは頬を持ち上げながらジルのもとへ急いだ。

「リリア、お疲れ様」

 ただ立っているだけなのに絵になるなと王宮の外でリリアを待っていたジルを見てリリアは思った。

「ありがとうございます」

 小さく頭を下げ、リリアも笑みを返す。そっと差し伸べられたジルの腕に自分の手を絡めた。馬車の中に入り、扉を閉める。

「ジル様、今、同僚達が恋愛結婚がいい、と話しておりましたわ。計画の効果が出ているみたいですね」

「それはよかった。人の認識を変えるのはなかなか難しいが、リリアが優秀なおかげでいいモデルになっているようだね」

「そう言っていただけて光栄ですわ」

「それじゃあ、今日のデートに行こうか」

「承知しました」

 ジルの言葉にリリアはにこりと笑みを浮かべた。


◇◇◇


 リリアは馬車の窓から空を見上げた。オレンジ色が世界を染めている。ふと隣を見れば、夕日に照らされた端正な顔立ちが当たり前にそこにあった。契約を結んでから3か月が経った。こんな風にジルの隣に座ることに慣れてきた自分に少しだけ驚く。

「どうかした?」

 視線に気づいたのか、ジルもリリアの方を向いた。当たり前に正面の顔も美しく、ずるいなと思う。

「綺麗な顔だなって」

「それ、改めて言うこと?」

 笑いを含みながらそう言うジルに、リリアは素直に頷いた。

「今さらですけど、ジル様が私に一目惚れって、無理がある設定ですよね」

「そう?」

「そうですよ」

「そんなことないと思うけどな。リリア可愛いし」

「…その顔で言われましても」

「じゃあ、どの顔で言えばいいんだい?」

 リリアの反応に、ジルは楽しそうにそう返す。

「そういえば、同僚の皆さんが、ジル様が嫉妬しているって言っていたんですよ。冷静に考えればそんなはずないのに。…やっぱ、家柄がいいイケメンの言うことは説得力があるのですかね」

「俺の質問は無視なの?」

「だって何を言っても丸め込まれそうなんですもの」

「リリア、最近、遠慮がなくなったね」

「素でいていいと言ったのはジル様ですわ」

「うん、その方がうれしいよ」

 少しだけ緩んだ顔でジルがそう言った。どこか愛おしさを感じるその表情にリリアはどんな反応を返せばいいのかわからなかった。

「まあ、さっきの話だけど、俺の言葉に説得力があるのはそうだと思うけど、それだけじゃなくて、リリアが優秀だからってのもあると思うよ。君と一緒に仕事をしているなら余計にわかるはずだよ。頭の回転が速いし、着眼点もいい」

「そう…ですか?」

「ああ。…この計画だって、君に言われるまで俺もアルマ様も完璧だと思っていたからね。俺がモデルとなって自由恋愛を推進すれば周りにも浸透して、アルマ様が考えるように恋愛結婚が増え、愛情の中で子育てができると、そう思っていた。未来を背負う子ども達のためにもそれがいいと」

「…」

「でも、今の男性社会のまま計画を推進すれば、家柄で政略結婚をして、下位の貴族や平民の女性に恋愛を強要する、なんてこともあるかもしれない。それはアルマ様が描く将来とは真逆のことだ。…この計画の危険性に君に言われて初めて気づいたんだ」

「…それは私が女性でジル様達が男性だから、ではないですか?」

「それももちろんあると思う。でもリリアも知ってのとおり俺は公爵家の次男で、比較的優秀だ」

「そう、ですね」

 ジルの言葉の意図がわからず、リリアは少しだけ首を傾げる。

「その俺がほとんど決定事項として伝えた内容に反対意見を言える人が何人いるだろうね」

「…」

 たしかにそうかもしれないと思った。一歩引いて見ていなければリリアもジルの言葉にそのまま頷いていたかもしれない。

「状況に囚われず、きちんと判断できる冷静さと、自分の意見を堂々と言える強さをリリアは持っているんだと思う。…声をかけたのがリリアで良かった」

「…そう言っていただけて光栄ですわ」

「あ、リリア」

 ジルが手を伸ばした。そっとリリアの頬に触れる。誰も見ていない馬車の中で演技などする必要はないのにとリリア小さく笑う。

「髪の毛、食べてたよ」

「…ありがとうございます。でも、誰も見ていないところで演技する必要はありませんわ。次からは教えていただければ大丈夫です」

 リリアの言葉にジルは苦笑を浮かべた。

「そんな風に言われるのは初めてだよ」

「ということは演技ではなく素だったんですね。あの、余計なお世話かもしれませんが、これからは恋人でも婚約者でもない女性には、口で伝えた方がいいと思いますわ」

「…ありがとう、肝に銘じるよ」

 ジルの言葉とほぼ同時に馬車が止まった。従者が馬車の扉を開ける。先にジルがおり、そっと手を差し伸べた。リリアはそっと手を重ねる。

 玄関前にはリリアの父のガードと母のフレアがいた。リリアの帰りを待っていた様子である。

「今日も娘を送ってくださったのですね、ありがとうございます」

 フレアがジルに向かって頭を下げる。そんな彼女にジルは優雅に首を横に振った。

「いいえ、とんでもございません。リリアと一緒の時間をいただきまして、私の方がお礼を言いたいです」

「そんな風に言っていただけて、娘は幸せ者ですな」

 そう言ってガードが笑った。娘の幸せを純粋に喜ぶ親の姿がそこにあり、リリアは少しだけ罪悪感を抱く。

「もしよければ夕食を食べていきませんか?」

 ガードがジルに提案する。ドーリア家の食卓に出てくるのはごく庶民的な料理であり、きっとジルの口には合わないだろう。

「お父様、お母様、ジル様はお忙しい方ですから」

「それもそうか」

「いえ…その、ご迷惑でなければご一緒させていただいてもよろしいでしょうか」

「えっと、ジル様…?」

「君とまだ一緒にいたいんだ、だめかな?」

 リリアを見つめてジルはそう言った。フレアが嬉しそうな笑みを浮かべる。両親の前で演技する必要があるのだろうか。敵をだますにはまずは味方から、みたいなものなのだろうかとリリアは心の中で首を傾げる。

「…」

「ぜひ食べていってください。公爵家で出てくるような立派なものは出せなくて申し訳ないが、新鮮な野菜で作るうちの妻の料理はおいしいですよ」

 貴族の家であるにもかかわらず料理人を雇うことができないため料理はフレアと侍女で作っている。

「奥様が料理をされるなんて、ご立派ですね」

「まあ、うちには料理人がいないんでね」

 ガードがそう笑った。けれどそこに恥ずかしさなどは感じられなかった。

「リリアも時々料理をするんですよ」

 フレアの言葉にジルはリリアを見る。

「そうなんですね。リリア、今度君の手料理を食べさせてくれる?」

 愛おしさをのせた視線をリリアに注ぐ。その視線が気恥ずかしくて、リリアは少しだけ視線を逸らしながら小さく頷いた。

 

◇◇◇


 気持ちの良い風が吹いた。リリアの長い髪を揺らす。

「気持ちいい風ですね」

「うん、そうだね」

 そう言いながら、ジルはリリアの髪に手を伸ばし、そっと耳にかけた。リリアは周りを見渡す。2人が座っている公園のベンチからは人の姿は見えない。

「ジル様、周りには誰もいませんよ?」

「…うんそうだね」

「…?」

「そうだ、リリア。今度一緒に夜会に参加するために今から、ドレスを見に行かないかい?」

「ドレス、ですか?」

「リリアには何色が似合うかな。あ、もちろんプレゼントだから安心して」

 ドーリア家の懐事情を思ってジルがそう付け足す。その言葉にリリアは首を横に振った。

「プレゼントは契約には含まれてはいませんわ。ただ、…その、すぐにお金をお渡しすることはできないので、大変申し訳ないのですが、契約金から差し引く形にしていただければ助かります」

「あ、いや、純粋に贈りたいだけなんだけど…」

「どうしてですか?」

「いや、どうしてって」

 リリアの反応にジルは困ったように頬をかいた。

「俺から贈ったらだめかな?」

「…タダより高いものはないと思っています」

 沈黙が2人を包んだ。きっと遠くから見れば見つめ合っているように見えるだろう。けれど当事者同士は纏う空気に鋭さを感じていた。

 どうしてこんな風になっているのかリリアにはわからなかった。

「好きな人にプレゼントをしたいっていうのは当然の気持ちだろう?」

「……へ?」

 想定していなかった言葉にリリアから変な声が出た。その反応にジルの顔に小さな笑みがこぼれる。

「好きなんだ」

「…」

「頭の回転が速いところも、違った視点から見られるところも素敵だなって思う。それから俺に興味がないところも」

「…」

「リリア、君と過ごして、君といろんな話をするうちに俺は君のことが好きになってしまったんだ。…どうか、計画的にではなく、俺と恋をしてくれませんか」

 まっすぐリリアを見つめるその目は真剣で、リリアの胸の鼓動はリリアの意思とは関係なく速度を速めた。

「……私の家はドーリア家ですよ?父も母も普通の貴族とは違います」

「周りの人を思いやれる素敵なご両親だって思っている」

「…うちは貧乏です」

「俺が支援するよ」

「…私ではジル様と釣り合いが取れません」

「そうかな?俺にはリリアが誰よりも可愛く見えるんだけど」

「…」

「ねぇ、リリア。家柄とか見た目とかそんなの関係なく、俺は君が好きなんだ。そして君も同じ気持ちになってくれたら嬉しいと思う。だから俺の本当の恋人になってくれないか?」

「……考えてみます」

 即答はできなかった。どこまでが演技で、どこまでが本当なのかわからない。けれどジルの言葉が嘘だとも思えなかった。

 話が急展開過ぎて、すぐに決断することなどできなかった。演技だと思っていたからそんな風にジルを見たことはなかった。

 きっと女性にこんな風に言われたことがないだろうジルは苦笑いを浮かべる。しかしそれでもどこか嬉しそうにリリアを見つめた。

「きっぱり断られなかっただけよしとするよ。これから君を落としていくから。あ、言っておくけど、今までのが本気だと思ったら大間違いだよ。これからがんがん攻めるから、覚悟してね、リリア」

 端正な顔に満面の笑みを浮かべてジルがそう言う。

「…あの、えっと」

「ねぇ、リリア、恋愛って、計画してするんじゃなくて、勝手に落ちるものなんだね。君に出会って初めて知ったよ」

「その、ジル様?」

「リリア、大好きだよ」

 ジルのストレートな言葉にリリアの頬は赤くなる。今までにはなかった反応にジルは幸せそうに笑った。

もしかしたら続くかもです。

とりあえず、いったんここまで。

読んでいただきありがとうございました!

※いまからお仕事繁忙期なので、続くとしてもしばらく先です。。

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― 新着の感想 ―
これはとてもいい…!! 続きというか話に出てきた王太子の恋愛はどうなってんの?ってのも気になります……!!
お話を読んで、え↭すごい好き↭と思って他のシリーズも読んで戻ってきました。 お気に入り登録もしたので更新も逃さないぞ! 続きを期待していますが、ご無理のないように、気長にお待ちしています。
えっ?!今すぐに続きが読みたいんですけども!!!
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