003 ダンジョンコアのクリスティと、スライム・マザーのメルト
少し休憩すると、魔力も回復してきた。
ふとダンジョンコアに話しかけようとしたが……。
「なあ、名前はないのか?」
「私ですか? 私は、ダンジョンコアです。それ以外に名前はありません」
「呼ぶときに困るな……」
俺は少し考えて、ダンジョンコアに名前をつけることにした。
「クリスティはどうだろう」
クリスタルからの安直なネーミングかもしれない。
「わぁ! 嬉しいです! 名前をもらえるなんて……。夢のようです」
そこまで言うほどか?
まあ、喜んでくれているなら良いけれど……。
「クリスティ、ステータスを表示してくれ」
クリスティが点滅し、ステータスを表示してくれる。
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【ダンジョンステータス】
ダンジョン名: 名もなき古のダンジョン
ダンジョンレベル: 1
階層: 1
ダンジョンコア魔力残量: 30/100 (+10/1h)
保有モンスター: なし(スライム幼体を除く)
侵入者撃退数: 0
特記事項: 魔力循環機能一部回復、構造一部修復
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「少し魔力が回復したな」
「はい! アッシュ様のおかげでございます!」
「改善はしているが、まだまだ先は長いな。ひとまず、次は……モンスターか」
モンスターのいないダンジョンなど、ただの洞窟だ。
防衛のためにも、早急にモンスターを生み出す必要がある。
「クリスティ、この階層に、他に何か特徴的な場所はないか? 水源とか」
「残念ながら……。この階層の北西に、小さな泉がありましたが、いまは枯れています」
「よし、行ってみよう」
俺は、杖を頼りに、薄暗い通路を進んでいった。
クリスティは、光の板を俺の前に浮かべ、地図を表示してくれている。
少し開けた空間に出た。
そこには、直径五メートルほどの小さな泉があった。
泉といっても、ほとんど枯れている。
しかし、さきほどの修復によってだろうか、ちょろちょろと水が湧き出ていた。
「少しは復活してきているようだな。よし、この泉を使ってモンスターを生み出せないか、やってみよう」
大昔に使われていたと思われる水をいれる瓶があった。
瓶に湧き出ていた水を入れて、水晶の部屋へと運ぶ。
そして、さきほどの瓦礫をあさり、魔力鉱石の破片を採取した。
もともと持っていた魔力草と、瓦礫の中から見つけた魔力鉱石の破片を、すり鉢で細かく砕き、水と混ぜ合わせる。
「あとは……魔力を注入してどうかだな。クリスティの力も借りて良いか?」
「もちろんです。私の魔力は、すべてアッシュ様のためにありますから」
俺はクリスティに触れた。
少量の魔力を受け取り、自分の魔力と混ぜ合わせる。
そしてできた魔力を、混合水に注入していく。
「……私たちの、愛の結晶、はじめての子ですね」
「変な言い方をするな」
単に魔力を混ぜ合わせただけのことだ。
混合水が、ゆっくりと光を帯びはじめる。
やがて、その光は強まり、周囲が何も見えなくなるほどだった。
光が落ち着き、目を開く。
そこには、一体の美しい女性の姿があった。
彼女は、透き通るような青い肌を持つ。
その体は、スライムのようにプルプルと揺れている。
長い髪は、水のように流麗で、淡い水色のグラデーションがかかっている。
服装は、スライム状の液体が、身体の要所要所を覆っているような、露出度の高い際どいデザインだ。
「成功だな」
「パパ」とスライムはこちらを見てつぶやいた。
パパ……。
複雑な気持ちだった。
嬉しいような……。
しかしまあ、スライムを生み出したのは俺だし、父親と言えば父親か……。
「普通のスライムではなさそうです」
クリスティが報告する。
ダンジョンの管理者として、スライムのデータを確認する。
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【スライム・マザー】
レベル: 5
種族: スライム系(特殊個体)
HP: 80/80
MP: 120/120
攻撃力: 15
防御力: 25
素早さ: 10
知力: 20
特殊能力:
スライム生成: 下級モンスター「スライム」を生成できる。(消費MP:10/体)
スライム支配: 配下のスライムを操ることができる。
形態変化: 自身の体をスライム状に変化させることができる。
水属性魔法(初級): 水属性の初級魔法を使用できる。
自己再生: ゆっくりとHPが回復する
弱点:
火属性攻撃
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「レベル5なんて、そんな……」
クリスティは驚いた声を出していた。
「通常、生まれたばかりのモンスターはレベル1です。しかも、特殊個体だなんて。通常のモンスター生成ではあり得ません」
俺の魔力とクリスティの魔力の相性が良かったのだろうか。
「スライム生成に、スライム支配か……。一ぴきずつ生成していく手間が省けたな。これで、ひとまずの戦闘員は確保できたか」
「パパぁ」といって、よちよちとスライムが歩いてくる。
「名前、つけてあげないとですね」とクリスティが言った。
「そうだな。うーん……」
俺は、しゃがみ込み、スライム・マザーの顔を見た。
少し足元が溶けている。
「よし、いまからお前はメルトだ」
「あたし、メルト」
メルトは嬉しそうに笑顔を見せ、俺の足元によってきた。
冷たい体を擦り寄せてくる。
「気に入ってもらえたようですね」
クリスティも嬉しそうだった。
「メルト。お前には、配下のスライムを生み出してもらいたい」
「うん、わかった。パパの力になりたい。パパの子、たくさん生む」
それは少し語弊がある言い回しのような気がした。
メルトは水晶の近くへ移動し、目を閉じて精神を集中させ始めた。
すると、彼女の体が、プルプルと小刻みに震え始め、徐々にその大きさを増していく。
そして、体の表面から、小さな水滴のようなものが、ポタリ、ポタリと滴り落ち始めた。
水滴は、床に落ちると、瞬く間にスライムの形に変化する。
生まれたばかりのスライムたちは、まだ小さく、頼りない存在だが、確かに魔力を持って生まれてきている。
「すごい……! 本当にスライムを生み出しています!」
クリスティは驚いているようだった。
俺も、目の前で繰り広げられる光景に、ただただ圧倒されていた。
これが、スライム・マザーの力……。
「メルト、すごいじゃないか!」
「えへへ……」
メルトは得意気に微笑んだ。
十匹ほどのスライムを生み出したところで、メルトは生成を止めた。
「パパ、疲れたぁ……」
「そうか、無理はするな。……ありがとう、メルト」
初めての出産で疲れたのだろう。
「ゆっくり休んでくれ」
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