プロローグ・3「伝承の儀式」
◆プロローグ・3
「伝承の儀式」
源祖ルワラの杯は
青く光る透明度の高い液体で
満たされていた。
最初の光魔族、
源祖といわれている
魔女ルワラ。
彼女はその子孫たちに
記憶と予言とを与える存在だ。
杯を手にしたソルンは
一度だけ父のほうを見る。
だまってうなずく
長身の父エリオス。
(わたし、これを飲むんだ)
不安は無かった。
小さな頃から憧れだった
伝承の儀式。
光魔族の貴族は
この儀式を済ませなければ
オトナとは認められない。
ふうっ、と、ひと息。
ソルンは両手を添えると
目を閉じて、一気に杯をあおった。
くっ
冷たい液体がノドを通過する。
刹那
ぐにゃりと空間が歪んだ。
全ての感覚が曖昧になり
白い霧に包まれた感じがする。
その白は
どんどん色濃さを増していき
気づくとソルンは
真っ白い空間にひとり
たたずんでいた。
(ここはどこ?)
心が問う。
すると、誰かの声がした。
(よくきたわ、運命の子ソルン)
ハープのように響く女性の声だ。
(わたしは、魔女ルワラ)
「わたしたちの源祖・・・ルワラ」
(いまから、あなたに
過去と未来の断片をお見せしましょう)
声とともに、ソルンは
背後に熱風が渦巻くのを感じた。
(そう、それは過去)
ふりかえると
雲のようなものが大きく膨らみながら
迫ってくる。
(!!!)
巨大な雲は音もなく
ぽつんと立っている
光魔族の少女を飲み込んでいった。




