第4話。何を大切とするか、君は…
星を越えた輪廻転生。
自分のマンションの部屋に帰って来た美輪は、居間のソファに膝を抱えて座り込んでいた。頭がとても痛かった。胸もとっても。
その美輪の前に、ふわりと暖かい『気』が降りて来て美輪に触れた。
「あ、彩…」
彩が大きな瞳で心配そうに、美輪を見て来る。
「彩、大丈夫だよ。大したことないよ。」
その彩の首が大きく横に振られた。『隠さないで。私には何も隠さないで、』
その瞳がそう訴える。
「彩…」
汚れのない澄んだ綺麗な栗色の瞳には勝てない。
「今、またあの嫌な気がするのを倒していたら、同じ学校の奴ら、この力を見られて、でもそいつら、僕と同じクリスタルを持っていて、僕を『仲間』って言うんだ。前世で姫を守った騎士団の生まれ変わりだなんて…。そんなこといきなり言われたって信じられないよ。僕は僕自身さえ信じられないのに…」
彩が美輪に手を伸ばす。
「彩、でも…彩だけは別だよ?信じられる。彩だけは…」
ずっと側にいてくれた人。この少女が何者かなんで関係ない。何者でもかまわない。彩と名付けたこの少女だけは信じられる。この少女の存在が美輪を支えている。自分さえ信じられない美輪を…
言葉が出せれば、もっとなぐさめようもあろうが、今の彩には、繊細な美輪の心をそっと寄り添うことでしか、守ってやることしかできない。
「彩…」
『私は側にいるわ。』
そんな暖かいキスの『気』が美輪の額に落ちた。
「彩…」
彩はいつものように暖かい微笑みで、美輪は見つめる。
「彩…」
美輪が転校して来てから一週間がたった。
「どうだった?」
勇生の教室に入って来た直也は、首を横に振って答える。
「全然駄目。僕だけじゃなく、他の人にも心を閉ざして、笑うどころか笑いもしない。完全に心を閉ざしちゃっているよ。」
「誰かいないかな?美輪の心を開けるの。」
「それと同時に美輪が、どうしてあそこまで他人を拒絶するかだよ。僕の観察する限り、美輪は変わっていない。昔のままのようだよ。クラスメイトたちが楽しそうにはしゃぐのを羨ましそうに見ているもの。そうだね、あれは傷つきたくなくて殻の中にいるひよこのようだ。外に出たくて出れずにいる。そんな感じだ。」
「この世で何かあったのかな?」
「かもね。」
「俺たちにも少なからずあったことだから…」
この世界では異なり力。勇生はフッと窓の外に目をやって呟いた。
「美輪だ。」
短くなった髪の毛の両脇を垂らし、後ろで一つに結って、校門に行く。校門のところには白藤女子校の制服に身を包んだ少女がいて。ナンパらしき男につかまっている。美輪は真っ直ぐそこに行くと、二言3言言ってナンパ男たちを引き離すとその少女と歩きだした。
「あれ?珍しい。」
「そうだね、追いかけみようか。」
勇生たちはカバンを持って教室を飛び出した。
次話投稿します。