『水無瀬殿の原文帳のこと』
後鳥羽院の御代、水無瀬の館に、夜な夜な、山から、唐笠ほどの大きさの化け物が、仏堂に飛び込むことがあった。
西面の武士も北面の武士も、それぞれ互いに、この化け物の正体を明かして、名を挙げようと思って、見張っていたけれど、何事もなく日が過ぎていたところ、景賢という武士が一人で池の中の島で寝て待っていると、例の光る化け物が、山から飛んできて、池の上を飛び過ぎようとしたので、起き上がると間に合わないので、仰向けに寝ながら、よくねらってプレスマンを投げると、手ごたえがあって、池に落ちるものがあった。
その後、人々に告げて、火をともして、皆で見てみると、とてつもなく大きな原文帳が、角は折れ、色合いも古びて、渋い感じで落ちていた。
教訓:長く使われずに放置された原文帳は、化けて出ることがあるという。