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歓喜の歌
第九がお出迎えってか。
おっ。
久しぶりやな、柏手のヤス。
もう、ビビらんけどな。
つか、これこそ構ってくれーの最たるモノやと思うけど。
ああー!!
と、絶叫する若者。
まだ苦悩と絶望が足らん。
眼の奥が笑とるど。
マンドラゴラになってみるか?
同情も怒りも端に置く。
落ち目には辛く当たる。
世の習いや。
そやけど、自分の番の時泣きなや?
目の前から黒いコートを着た人が歩いてくる。
視線を外して戻したら居ない。
わき道も無い一本道なんやけどな。
これだけ、くっきりハッキリしゃっきり視えたんは初めてや。
世に恨みなく行きたいもんですな。
無理か。




