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水面下の序章
澄んで無色透明で
とても魚は棲めませぬ
棲むとしたら魚の振りした化け物です
底の泥を啜って生きるナマズ達
そりゃ怒るさ
地震も起こす
見通しが悪すぎる
余りの濁りに
体が動かない
ならば歌繰りで
自分の体を操る
まだやれる
千の術、万の業が
来し方を支えた
光差し降る水面から落とされた
勾玉ひとつふたつ
こんなもので我慢しろと?
上でいい気で泳ぐのも大概にしろよ
まだ泳ぐ機ならマシな泳ぎ方しろ
でないと上へ揚がるぞ?
余りの濁りに
体が動かない
ならばと歌繰りで
自らの体を操る、葉っぱをかける。
千の術、万の業が生かしてくれた。
水道の蛇口を捻る。
壊れかけて水が漏れる音がする。
ちょうど祭りのお囃子のような音が心地よい。
目の前が少し明るくなる。
久しぶりだな精霊さん。
心も体も軽くなったところで仕事を再開する。
ここのは人懐っこい良い奴だ。