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暴れ蝉





病棟にて。

赤さんが元気に泣いていたので、南洋のステップを踏んであやしてみたら、泣きやんだ。



「厭だねえ………」



そう言って、男は赤子をあやす事無く奥へ消えていった。

ふむ。

傷つく。




病院を出て信号待ちしていると、ハイソな婆さんから道を聞かれる。

知らない人に普通に声を掛けられるのは、超久しぶりだったので、警戒した。

もっと、いい受け答えできたのになあ………と思った。



やっぱり、これだけ不特定多数から色々言われたら、人の心は無傷でおれんのだ。





仮説として、だいたいのことに置いて欠点しか持っていないとするならば、関係の無い人達が目の前で喋っている内容も心当たってしまうわけだw



いーくんも大変だな 


症状なら、統合失調症ってとこか。


戯れ言だっちゃ。












人とぶつかりそうになって、足を止める。


止まってからの一歩目がしんどい。



気分よく歩きたいもんだ。






と、思ったら灼熱の真っ昼間。

人っ子一人消えた。

街の焼けたアスファルトを独り歩く。





こんなにも自分のペースで歩けるのが、嬉しいとは。


蝉時雨を聴きながら、真夏の散歩をする。

すると目の前を影がよぎった。








イノシシの影。






もうちょい東の方やねんけどな。 


珍しい。


しかも影だけ。


ぶつからんからええけどな。






不思議。


竹山の三味線聴くと、消えないまでも心の上の方は澄むのが分かる。







テレビの音が漏れて情緒に代わる。


鈴の音も鳴り渡る。


少し涼しくなる。


蝉が暴れている。







エスカレーターで前で立っていたお爺さんが、エスカレーターを歩いて上がろうとした。



しかし途中で止まり、照れながら



「足があがらんわ」



と笑顔で言われたので、どうぞどうぞと前を譲り、少し話された。



82で、それは元気やと思う。

照れ隠しの笑顔もかわいらしい。




そして仕事場へ向かう途中。

俺まだその半分ぐらいの歳やのに、足が上がらなかったのさ。

でも気分は悪くなかった。




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