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陰キャと逢瀬
スピードの曲がかかる店内。
懐かしむ事も無く、しかしこの曲が分かるってのは、俺も確かにこの時代劇の人間だったって事だな。
と、何もかも覚えてもいないけれど、スピードの曲だけは覚えていた。
(しつこくかかってたもんな、昔って)
おや、懐かしい影だ。
(久しぶりと思ったら距離が近いよ。彼氏じゃねえんだから。最近お前ってやっと分かるようになったよ。お前影濃いもんな、ははっ。これがホントの陰キャか、笑えねえ。ふん、海外ミステリの棚で出てきやがって、暗いねぇ。んじゃ俺は違う棚行くわ)
テキトーに本を買うけど、読まない。
見るだけ。
こないだは鴨長明で今回は…
東の魔女さんの本だな。
毎回地味に愉しみさ。
既に新刊楽しみだ!
日向ぼっこしながら公園でめくろうと思ったのに、風が冷たくなってきた。
魔に合う前に買い物して帰るとするか。
雪がちんちらと降ってきて
庭の綿毛の様にフワフワに剪定された草木に挨拶をして、ふらふらと帰途に着いた。




