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第59話:逆転


『──マスクオープン!』


 敵の眷属達が俺達の元へたどり着く、その寸前にラインマーグが素顔を晒した。眷属と邪神はラインマーグの魅了の力で呆けている。


「そうか、俺には効かねぇからな!」


「……っぐ、はぁ、どうやらオレは耐えられるみたいだねぇ。創世神の力、呪いの力どっちも使ってこれかぁ……全く厄介だ。オレが今の君を作ったようなものだけどねぇ。君らだって分かってるだろ? オレがラインマーグの対策をしていないわけがないってさぁ」


 ──パチンッ


「なっ!? まさか、あれは!!」


『ぼ、僕の死体……ま、まずいッ!!』


 アラバイルが再び死体の召喚を行った。それはラインマーグの死体だった。今のラインマーグと違って角があるが、見た目は殆ど同じだった。


 そしてアラバイルはラインマーグの死体と融合した。そうか、アラバイルはラインマーグと同化してラインマーグの役割を引き継ぐつもりだったんだ。ラインマーグがセトラドーズの役割を受け継いだように、天界を壊す役割をラインマーグ経由で……


 必ずしもラインマーグが天界を壊す必要はなかったんだ。最悪ラインマーグが天界を壊さなくても、自分が壊せばいいと……


「ふぅ……これでオレは魅了への耐性を手に入れた! そしてぇ! 勇者の鼓舞は! 自分の耐性を仲間にも与えることが可能なんだよねぇ!」


 ラインマーグの魅了で呆けていた復活邪神と眷属達が正気に戻り、再び攻撃を開始した。それだけじゃない、ラインマーグの死体を取り込んだってことは……タダヒトの、英雄時代のラインマーグの戦闘能力を手に入れたってことだ。


 そしてそれは、創世神の力と世界を呪う力でブーストされている。


「クソッ!! これじゃあ、もう本当に加勢は期待できねぇぞ……デルタストリークとオライオンドーズも……魅了に抗えん!!」


『いや! 君なら対抗できるはずだ! ラインダーク様の魅了の呪いを破壊した君ならば、可能なはずだ! あれから強くなった君なら! 僕程度の魅了の呪い、一人でも壊せるはずだ!』


「分かった! 迷ってる暇もなさそうだからなァ!」


 俺はアラバイルに触手を巻きつける。それをアラバイルが剣で切り払おうとする。しかし、そのダメージを俺の魂に肩代わりさせることで、切り払いを無効化、強引に取り付く。その間もフルカスは俺に乱打を浴びせ続けている。


 死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ!! マズイ、俺の回復力が追いつかない! このままじゃ完全に死ぬ!!


「ははは! 打開策はあるみたいだけど、君も回復能力で耐えるのは限界みたいだねぇ。底が、見えて来たよぉ? 終わりさぁ」


「──ッ!? おい、待て! まだ、早い! 今じゃない!」


「何を言ってるんだぁ? ウナギィ・クロー! 命乞いをするなんて……」




「──クローくん! 無理し過ぎ! もう見てらんない!」


「ま、まさか命の神!? 待て、いったいどこから来た、君の中の転移門から来たのか? 何が起こっているんだぁ!? ──ッ!? なんだ!? なんなんだその翼はァ!!」


「──ったく、ラインダーク……お前は切り札だってのによ」


 白い翼が俺の背中から伸びている。片翼、マキの右翼だ。マキと影糸の翼にはウィングゲートという転移能力がある。マキが引きちぎってしまったその翼を、俺に移植していたのだ。この最終決戦に備えて。


 ラインダークはウィングゲートを通って、俺の所にやってきた。


 そして、命の神の力、強き混沌の力が、俺が今まで受けた全てのダメージを回復させた。


 ラインダークの使った回復魔法、それはこの戦いが始まってから全てのダメージを全回復させた。そしてこの魔法は、失った力を取り戻すという回復魔法。普通の生物はこの回復魔法を受けると、魂も肉体も制御不能に陥って死亡するが、俺は元々、肉体も魂も自由が効くからな。


その結果、俺の魂の総量は一気に増えてしまった。


「フルカス、アラバイル、惜しかったな。頑張って俺を殺す寸前までいったが、その努力は全部無駄に終わった。それどころか、俺を強くする結果に終わったみたいだぜ?」


「ば、馬鹿なぁあああ!! そんなの、あんまりじゃないかああああああ!!」


 発狂するアラバイル。気持ちは分かる。しかし、死ね。


「いくぞラインダーク! あいつの魅了の呪いを破壊する! 二人なら確実だ! 【蹂躙・喪失】!!」


「分かった! いくよ! アルタード・サイクル!!」


 ラインダークから放たれた緑の魔法の光は、アラバイルに浸透し、緑の雷のようにアラバイルの体を駆け巡る。


 ──パキイイイン!


「クローくん! 魅了の呪い、破壊成功したよ!」


「ちょうどいい、タイミングだぜ! ウェイグストス! オライオンドーズ! デルタストリーク! セトラドーズ!」


 みんなを俺の腹の中から出した。みんな、他の穴を全て攻略し終わり、俺の腹の中に転移してきたんだ。


 オライオンドーズはウェイグストスと合体し、デルタストリークも他の歯車巨人と合体しているようだった。最強クラスの武神達、戦力の質は敵よりも上、敵に強化された500の眷属がいようと、戦況は俺達側の有利だ!



「あ、あああ……ふ、ふふふ……ふ、ま、間に合った……」


 アラバイルが急に笑い始めた。間に合った、と意味深につぶやいている。


「この世界の呪いの浄化は、ラインダークが作った装置によって行われている。逆に言えばぁ、そいつを破壊したなら、誰も呪いを浄化できない。それがさ、たった今! 破壊できたんだ! 風神セルの人形がやり遂げてくれたんだぁ!! 世界中で生まれた呪いは! 浄化されず! 淀み、たまり続ける! 逆流さぁ! 呪いの逆流の大波が! オレ達に勝利をくれるんだ! 全部を破壊してくれって!」


「は?──」


 ──ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


 呪いの瘴気で出来た津波が、俺達だけでなく、この異空間にいる全ての存在を飲み込んだ。あまりにも濃い呪いは実体化して、超質量の物理的脅威も兼ね備えていた。


 そう全て、アラバイルは復活した邪神と眷属達を犠牲に、俺達に必殺の攻撃を行った。一つの大波が過ぎ去った後、周囲を確認すると、歯車巨人と合体して耐性を持つはずのデルタストリークもオライオンドーズも、意識を失っていた。ラインマーグも、ラインダークも、セトラドーズも……


 俺とアラバイル以外の全員が意識を失うか、死亡していた。


「は、ははは! やったぁ! 一発逆転だぁ! 諦めないで良かった! 力を出し切った。オレは勝ったんだぁ!」


「おい……まだ俺を倒せちゃいねーぞ? アラバイル」


「どうやって勝つって言うんだい? オレは味方を殺しちゃったけど、そのおかげで、そいつらの力を吸収できた。もう君を簡単に殺せる力があるよ? 君がさっきラインダークに増やしてもらった魂の総量も、今の津波でほとんど削られた。どうやって勝つのさぁ!」


「分かっちゃいねぇな。なんで俺が呪いでそんなダメージを受けるっていうんだ? お前は呪いのダメージを受けてねぇだろ? 俺だって、本来はお前と同じ結果になるはずだ。俺は呪いへの高い親和性を持つからな」


「な、何が言いたい……」


「俺の仲間は誰一人死んじゃいない。意識を失っただけ、俺がダメージを庇ったからな。直に意識を取り戻すだろうよ」


「あ、そう。だとしてもウナギィ・クロー、君さえ殺せば、あとは大した問題にはならないんだよ。創世神の力、世界を呪う力に抗い、オレの計画を破綻させるだけの強い不確定要素を持つのは君だけなんだから。あとはじっくり時間をかけてやればいい。まぁ君の忠告はありがたく受け取るとしようか。みんなが目覚める前に、今殺してあげるよぉ」


 だ、駄目だ……咄嗟にみんなを庇ってしまった……庇えばこうなると分かっていたはずなのに……ここでアラバイルを始末しきれないのはマズイって分かってたはずなのに……気づけば俺はみんなを庇っていた。庇わなければ、アラバイルを殺せた可能性はまだあったかもしれないのに……


 ──ピシュン



『──力を出し切ったらしいな、アラバイル!! ──待っていたぞ、この時を!!』


 アラバイルの体が両断された。赤い血しぶきが地面に撒き散らされる。完全なる不意打ち、不意打ちを行った者の声が響くと同時に、それは行われた。


「ぐ、ぐわあああああ!??」


「精神拘束魔法、一斉発動! 続けええええ!!!」


「「「おおおおお!!」」」


 複数の掛け声と共に、光のロープのような魔法が千切れたアラバイルの体を拘束していく。アラバイルをぶった切ったのはファーカラル、そして拘束したのはエルフ達だった。


 ファーカラルが転移によって、漁夫の利を狙いにきたんだ!


『ご苦労。助太刀に感謝する』


「いえ! 我らエルフは、勇者殿への恩を返したまで! 創世神の傲慢さを打ち砕くのは、我らの悲願であります!」


「ゆう……しゃ? ファーカラルが……勇者だと?」


『……そうだ。創世神に見捨てられ、邪神に殺され、世界を恨んだワレを……アラバイルは歪んだ神にした。ワレを元ある形から反転させた……勇者であったワレを愛する者達が、ワレに向けた愛は、絆は、その強さと同じだけの呪いを、ワレに与えた』


「じゃ、じゃあ、あの歌の勇者は……お前なのか……お前が、ソルトなのか?」


『……反転した愛、思えば思うほど、その対象を憎み、拒絶する。互いが交わらないように……それが人間を愛せない呪いだ。ウナギィ・クロー、お前はこの世界で誰にも愛されていなかった段階でこの呪いを受けた故に、その呪いも変質してしまったようだがな……』


「ふ、くくく、ファーカラルぅ……君は、あれだけのことをしておいて……ソルト・クオンだった頃みたいに、勇者みたいに生きていけると思うのかい? む、無理だよぉ。君の持つ、その勇者の剣は、君を拒絶して、今にも君を焼き殺そうとしてるじゃないか……ああ、もう終わりかぁ……けど、諦めたくないなぁ。なんかさぁ、おかしいんだ。ファーカラル、君の死体を取り込んでから、なんだかおかしいんだ」


 アラバイルは笑っている。狂ったか?


「もうどうしようもない状態で、諦めるしかないんだけど、なんだか全然諦められる気がしなくて……これってぇ、君の体が、そういう生き方をしてきたせいなのかな? 君の死体を取り込む前だったら、諦めていたと思うんだけど──今、僕を満たしているのは勇気なんだ! まだオレは立ち上がれる! まだ勝てるって! 君の体が! オレを奮い立たせるんだァ──ッ!!」


『──ま、マズイ!! 避けろウナギィ・クロー!!』


「──ブレイブ・フラム」


 アラバイルから炎が放たれた。ファーカラルが俺を庇って、俺を炎に当たらないように突き飛ばした。しかし、それでも完全に避けることは叶わなかった。青とオレンジに輝く炎が俺とファーカラル、エルフ達を燃やす。


 エルフ達はすぐに燃えきって、消えてしまった。


「はは、流石に勇者は勇者の炎で燃やせないかぁ。けれど、自由になれた。いやぁ実にいい、ラインマーグの体は回復力も高い。真っ二つにされた体を元に戻せるんだからねぇ。ウナギィ・クロー。その炎は消えないよ? 相手を燃やし切るまで消えないんだ。つまり、君はその炎のせいでダメージを受け続ける、だから実質的に回復能力が下がったようなものだぁ。まぁ、この魔法強すぎるから魔力を全部消費しちゃうんだけどね。おかげで、神の方のアラバイルは魔力を使い果たして、完全消滅しちゃったよ。もう神の力を消費することに囚われなくていいから、逆に助かるけどさぁ」


『ば、馬鹿な……貴様が、このような選択をするはずが……』


「そうだよねぇ? オレだって不思議でしょうがないよ。神のアラバイルを今殺してしまったら、その瞬間に次の時代への移行が始まってしまったら、オレが世界を完全に破壊する前に、オレは力を失って、目的が達成できないかも……そう思ってたんだぁ……人のアラバイルが、予言にあるアラバイルとして認めてくれるのか分からなかったから。でもさぁ、ファーカラル……君の体が諦めるなって応援してくれたんだぁ! 賭けてみようって思えたんだ、君のおかげでねぇ? そして、賭けに勝った。創世神はァ! タダヒトアラバイルを! 次代の門番アラバイルとして認めているゥ──ッ!!」


 ファーカラルの奇襲は、きっともう通用しない……ファーカラルが連れてきたエルフは全滅して、俺の仲間達も全員意識を失っている。逆にアラバイルは、完全なる人化に成功し、仲間の力を吸収してより強くなった。もしかすると、さらに神々の死体を召喚して、その能力を取り込むかも……そうなれば、さらに強くなる……アラバイルは、死体をコレクションしてると言っていた……それが事実だとすれば、強化のための死体ストックがあるのは間違いない……




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