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第58話:戦闘、アラバイル



 大陸東、【傭兵国家・カールヴァイン】周辺にある丘に、異界化した穴があった。この穴を攻略するのはラインマーグの部隊。ラインマーグが攻略する3つ目の穴。


 ラインマーグを先頭に穴へ入っていく。続いて聖獣パルサウルが穴へと入り、その巨体を続く兵士達の足場、クッションとした。


 聖獣パルサウルはちょっとした小山のような大きさのアザラシで、自ら望んでクローによる肉体改造を受けたパルサウルは、魔蟲の硬い牙と同じ素材の甲殻を持っていた。鎧を着込んだ武者のような巨大アザラシ。クロー達と合流してから3年の間に急成長した彼は今も成長期であり、パルサウルが穴に侵入すると同時に押しつぶし、殺した敵から存在の力を得てすでに少し成長した。


「ブロオオオオオオオオオオ!!!」


 パルサウルの咆哮は音魔法が編み込まれていて、それは敵の耳を頭部ごと破裂させた。味方を巻き込まず、敵だけを粉砕する。パルサウルが穴に入って3秒、このアザラシの洗礼、試練を受けた敵の復活神達と有象無象は、その試練を乗り越えなれなかった者を全滅させた。大軍であったはずだが、残った敵は数百しかない。


『助かるよ、僕は範囲攻撃は苦手だからね。しかし、結構残ったね。やっぱりカールヴァインの近くだから僕が来ることを想定して、強者をここに集中させていたのかな? じゃあ、最後の仕上げだ』


 パルサウルの試練を乗り越えた数百の強者達は、その殆どがラインマーグの移動を知覚できなかった。彼らからすれば気づいた瞬間には、自身の首の肉をラインマーグによって引きちぎられ、自分よりも後ろにラインマーグが進んでいた。


 ラインマーグは引きちぎった肉を握りつぶし、血を絞り出し、大きく手を振るった。血液を飛ばし、カッターを生み出し、敵の首を飛ばした。


 数百いた強者は4人しか残らなかった。


『ハルバー……?』


「止まれ! ラインマーグ、知っているぞ! この女が貴様の大切な者なのだろう! 動けばこいつを殺す!!」


『……──ッ!? 今、このタイミングでか……クローくんがアラバイルを見つけた……』


 ハルバーが復活した邪神に四肢を切断された状態で囚われている。そんな状況をラインマーグが理解した瞬間のことだった。クローがアラバイルを発見した。予定ではクローがアラバイルを発見したなら、ラインマーグはすぐにクローの元へジャスティスゲートを使って駆けつけなければならない。


「いけ! ラインマーグ! ワレに構うな。お前のやるべきことをやれ! 未だアラバイルにつく天界の馬鹿共を説得できると考えた愚か者など捨て置け」


『……分かった。自分のやるべきことをする』


 ラインマーグはハルバーの叫び、願いに素直に従った。ラインマーグは、ジャスティスゲートを使って転移した。


「ば、馬鹿な……この女はヤツの恋人ではないのか? ラインマーグを立ち直らせた存在ではないのか?」


「ふふ、ッハッハッハッハ! 愚かだなぁ。お前もワレも……あいつは、ラインマーグは悲しいぐらいワレに興味などなかったよ。あいつの戦う理由になれるのは……クローとあいつの息子だけ……全く、子供がいるならいると言え……無駄に浮かれてしまったではないか……はぁ……まぁでもいいか。超絶イケメンと遊べたのは事実なのだし」


「な……に……?」


 ハルバーはラインマーグの足を止めるだけの価値を持たなかった。邪神は困惑、動揺している。アラバイルにハルバーを人質として使えば少しは時間稼ぎができると聞いていたから。しかし、アラバイルは予言にあることしか理解できない、その中にある感情までは読み取れなかった。


 クローがラインマーグにとっての英雄で、憧れで、息子と触れ合わないのは、息子を守るためにあえて距離を取っていたことを。


 ラインマーグはハルバーを愛していない。


『──良かった。転移する時、君のホッとした顔が見えた。おかげでこうしてハルバーも助けられた』


 ジャスティスゲートで移動し、消えたはずのラインマーグはいつの間にかハルバーを捕らえた邪神の背後にいた。そして、すでに邪神の首を引きちぎり、殺していた。


 ラインマーグは一度、クローの元へ移動した後、すぐに、ハルバーの正義の心を座標としてジャスティゲートを開いたのだ。そして、ハルバーを解放し、聖獣パルサウルにハルバーを渡して、またすぐにジャスティゲートを使って消えた。


「全く……忙しいやつだ……ワレのあの行動は……正義だったのだな。ラインマーグ、お前に少し怒っていたのだがな……しかし、そうだな。お前が誰かを助けるのに、理由はいらないのだな。そこになんの感情がなくとも、片手間にお前は救うのだ。救うなら、もっとこう……必死な感じで救って欲しかったな……ああ、もう……駄目だ、口を開くと不満ばかり言ってしまう……ま、いいか。四肢を切断された状態とはいえ、どこぞの姫のように抱きかかえられて救われたのだし」


 ハルバーは前向きに吹っ切れた。真面目だったハルバーは、もう少し適当に生きてみようと思った。



──────



「来たかラインマーグ。どうやらここは俺らじゃないと駄目みたいだぜ」


『パープルランドにあるのか……ここは』


 俺は4つの穴を攻略した後、パープルランドにある穴を攻略することにした。そしてその内部で、アラバイルとその配下達を発見した。


 アラバイルは若い人の姿をしていた。元はジジイらしいが……でも、目の前にしていくつか気づいたことがある。


「あいつ、常に神としての力を大量消費してるみたいだ。そうすると世界を呪う力を相殺するだけの力がなくなって、人化ができる……」


『けど、人化してしまえば、神の力をコントールできなくなって、力の大量消費もできなくなるはずじゃ……ま、まさか……だからパープルランドなのか! 呪いが世界中から集まるから、それで自分の神の部分を呪って……強制的に力を消耗させる』


「いや、よく見ろ。それだけじゃない……あのオレンジの光…人化が完了しているにも関わらず、創世神の力が使えるってことだぜ。人化状態でも呪いと創世神の力、どちらも使えるようにしたんだ。この3年の間に、その準備をしてたんだろうよ」


 アラバイルはオレンジ色の光を一部纏っていた。どういうことだ? 世界を呪う力と、創世神の力は相反する力じゃないのか?


「君たちが来るのは想定内、というか、君たちしかこのパープルランドではまともに戦えないだろぉ? あとは聖女と、命の神、歯車巨人がここに来られる。でも、歯車巨人をここだけに回すってことはできないんだろぉ? それに、ここはオレ達が無限にパワーアップできるからねぇ。君らには勝ち目なんてない」


『……!? 待って、歯車巨人達が……どうしてここにいないんだい? クローくんと一緒に結構いたはずじゃ……』


「退避させた。確かにあいつらはここでも動けるが……あいつらもファーカラルの因子を持ってる。つまりは世界を呪う力を持ってるってことだ。あいつらが死ぬと、その呪いの力を吸った敵が強化される。実力が拮抗してるならまだいいが……明らかにここの敵は、他よりもつえーのが集められてる。だから今は魔蟲以外は、俺の中に誰もいない」


『シャトルーニャとラインダーク様ならそれでも戦力に──』


「駄目だ!! 分からねぇか? あのアラバイルのオレンジを見て! 創世神はアラバイルの野郎に味方してる。だったら、聖女の力がシャトルーニャに力を貸す保証なんてない。聖女の力のないシャトルーニャはただの弱い人間だ! 仮に聖女の力抜きで英雄レベルに強かったとしても、ここじゃ戦力にならねぇ!!」


 俺の視界にある強者達の姿、それはアルーカス、クラーカス、フルカス。ファーカラルの仲間だった邪神が復活してそこにいた。クラーカスとフルカスは俺が一人で殺したやつらだ。あの時は特に何の対策もなく一方的に殺せたが、今のやつらは俺が戦った時よりも強く見えた。


「フルカスはパワータイプで物理攻撃を反射してくる。クラーカスは状態異常、弱体魔法特化……どっちも俺には対して刺さらなかったからどうにかなったが。やつらが世界を呪う力で強化されているのなら……」


「すまないねぇ。君たちには言ってなかったことがあった」


 ──パチンッ!


 アラバイルが指を鳴らした。すると人間の男のようなものが召喚された。力なく、地に倒れ伏す。それは死体だった。


「オレはねぇ? 神の時からそうだったけど、色んな存在を無理やりにオレに継ぎ接ぎして、自分自身を強化してきた。神の身は、成長することを許してくれなかったから、強くなるには強引な方法じゃないと無理だったんだぁ。けれど、神から人の身に変わっても、オレは混ざったままだった。それでぇ、オレはねぇ……自分を強化するために色々死体をコレクションしてるんだ。例えばそう、この勇者の死体とかね」


「勇者の死体……だと?」


「ああ、そうだよぉ? そして、オレは人として成長できるから……オレという存在の在り方も進化した。ただ継ぎ接ぎするだけじゃなく、ほんとうの意味で混ざり合う、完全なる融合の力を会得したぁ!! さぁ、融合だ! 勇者の力を見せてあげるよォ!!」


 アラバイルが勇者の死体に触れる。触れた瞬間、その死体は流体のようにドロドロに溶けて、アラバイルを包み、浸透していった。アラバイルが纏うオレンジの光が強くなった。


「さぁ、みんな! 頑張ってくれぇ。勇者の鼓舞だよぉ!」


 勇者の鼓舞、伝説では無力なタダヒトにも化け物と戦うほどの力を与えたと言う。勇者の鼓舞によって、復活した邪神達はその力を増した。今までと比べ物にならないほどに。


 そして、復活邪神達は自身の眷属を召喚する。その数約500、勇者の鼓舞は眷属達にも力を与えた。


「マズイな……ラインマーグ、どう思う?」


『単体で見れば、僕らの方が強い……だけど、あの物量……このままでは厳しいだろうね。君がやつらの呪いを喰らうにしても、その隙があるかどうか……』


「さぁ、戦いの始まりだァ!! オレのために死んでくれ、ウナギィ・クロー!」


 敵が動き出す。フルカスが俺にとんでもないスピードで詰めてきた、そのまま俺を殴り飛ばす。前は、身体操作でダメージを軽減できたが、今のフルカスの攻撃は軽減できなかった。


「っぐ!??」


 ラインマーグを見ると、ラインマーグはクラーカスの弱体魔法によってその速度を低下させられ、アルーカスに移動経路をカットされていた。フルカスの攻撃は見えていたみたいだが、その攻撃についていくことは無理だったみてぇだ。


「ラインマーグ、お前はクラーカスの相手に集中しろ! こっちは大したダメージはねぇ……魔蟲は一匹も死んじゃいねぇ!」


 大ダメージを受けたが問題はない。フルカスの筋骨隆々な腕から放たれた打撃、本来なら魔蟲が何匹も死ぬ威力。だが、俺は、俺の魂でダメージを受け止めた。オライオンドーズが言っていた。俺の精神体、魂は物理干渉が可能だ、俺がやったのは魂の物理干渉能力によるダメージの肩代わりだ。そして俺の魂には異常な回復能力がある。


「打ってこいよフルカス! 何度ぶん殴ろうと、テメェ如きの攻撃じゃ、俺は倒れねぇ!」


 フルカスの乱打が俺を襲う。腕、脚、フルカスの攻撃はどれも洗練されていて、俺ではまともに回避もできない。すべて直撃する。全てが必殺の威力で、一瞬の間にフルカスの乱打は数百発打ち込まれる。


 俺はその全てを魂で受け止める。


「ぐああああああああああ!??」


 激痛、魂が直接削り取られるような感覚。だが痛ぇだけ、痛いだけだ! 俺は倒れねぇ、俺の魂は無限に回復する! お前が俺を壊すスピードよりも、俺が回復するスピードの方が早い!!


「──オレを忘れてもらっちゃぁ困るねぇ! オレだって! 戦えるんだよぉッ?」


「──……あ!」


 俺は声のする方に、俺の横に目線をやった。剣を振りかぶったアラバイルがいた。そうだ……フルカスよりも強いアラバイルは……自由に動けるんだ。


 ──ザシャアアアアアアア!!!


 アラバイルの剣が俺を容赦なく切り裂いた。それは俺の肉体を狙ったものじゃなかった。最初から俺の魂を狙ってのものだった。


「どうだい? ウナギィ・クロー。魂を断ち切る剣だ、すごく痛いんじゃないかなぁ? 回復、間に合うかなぁ? 全くずるいよ、その力、意味不明だ。魔力も使わず無限に再生するなんて、馬鹿だよねぇ。けど、良かった。これなら殺せそうだねぇ」


 俺の回復速度を上回るダメージを、敵は持っていた。俺は、このままでは死ぬ。そして、復活邪神とアラバイルの背後には、勇者の鼓舞の力で強化された眷属達がいる。圧倒的な数の脅威が俺達に迫ろうとしていた。




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