第57話:無慈悲な破壊
──大陸西、ワシャルド周辺、大河に不自然な大穴が空き、水が穴を避けるように流れている。暗く、底の見えない大穴。アラバイルの世界を呪う力によって異界化した空間。
オライオンドーズとウェイグストスの部隊はワシャルドに近いこの穴の攻略を任された。オライオンドーズだけでなくウェイグストスもいる関係上、戦力は他の部隊と比較して高い。しかし、歯車巨人の数は少なく、ウェイグストスとオライオンドーズが崩れれば、一気に戦力が低下してしまう。
オライオンドーズの部隊は穴に向かって侵入していく。最初に飛行可能な歯車巨人達が内部を確認し、安全を確認してから入っていく。外側から見ると真っ暗な穴は、内部に入ると明るい。穴の中心に近づけば近づくほど明るく、視界は悪くない。
異空間内部は今この時も常に範囲を拡大、周囲の空間を侵食し続けている。
「どうやらやっと戦う気になったようだな。これが、神であった者達か。ククク、今のオレならどこまで通用するか、楽しみというものだ!」
「ウェイグストスは楽しそうだねぇ。じゃあオイラは雑魚を減らすからそっちの元神々、元邪神の方々の相手は頼むよぉ?」
「助かる! オレはこやつらと戦いのだからなァ! 一番首もらいぃッ!!」
異空間内部に潜んでいたアラバイルの軍勢、それを構成していたのはアラバイルによって復活した、呪われた神々と邪神、そして呪われたタダヒト、アンデッド。邪気を放ち、身体能力を向上させている。
ウェイグストスが最初に狙った首、それは元邪神、大将首と言える存在。
「いくぞ! 顯現! 破神剣! うおおりゃぁぁあ!! 天地破断・明闇逆さ斬りぃいいいいいい!!」
ウェイグストスが放った技、それはかつてワーム・ドレイクとの戦争で使った一撃で100万の敵を殺し、塵も残さず滅した技。ワーム・ドレイクから奪った装甲で作った巨大な剣をウェイグストスは召喚魔法によって呼び出した。
異空間内部を剣の光が縦横無尽に駆ける、圧縮された斬撃エネルギーの光は、すでに敵軍の全てを捉えていた。その数およそ100万、ウェイグストスが最初に放った時よりも、ウェイグストスは成長している、であれば当然余裕で効果範囲内の数。
ウェイグストスは成長している。身体能力だけでなく、この技自体にも磨きをかけている。
「──重ね斬り、畏れ山彦!! 死ねぇええええいい!!」
重ね斬り、畏れ山彦。明闇逆さ斬りで放った斬撃エネルギーを維持し、そこからさらに斬撃エネルギーを大量充填することで、斬光を爆発させ、残光を分裂させるように増やし、威力と範囲を広げた。ウェイグストスが編み出した究極剣技である。
敵の逃げ場を塞ぐように斬光は数を増やし、檻のように敵を囲んだ。
「──爆破ァ!! オールクラッシュ!!」
ウェイグストスが片腕を掲げて、拳を握ると同時に、斬光の檻は絞られるように範囲を狭め、爆発、斬撃エネルギーが解放されて、敵を切り刻んでいく。一度切断されたなら、切断は塵となるまで続き、塵となったなら、それすらも消滅する。
「おいおい、雑魚掃除はオイラがやるって言ったのに……君が全部やっちゃあオイラの仕事もなくなっちゃうよ」
「確かに……しかし、殺せたのはどうやら雑魚だけ、一部の強者には少々の傷しかつけられていない。悔しさは残るが、少なくとも弱い神は殺せるまでは至ったか。ククク、ハーーッハハハ!! 善き哉、善き哉!!」
「ふむ……しかしウェイグストス。喜ぶのはまだ早いようだよぉ? 確かに殺した者は消えて、もう復活はしないみたいだけど……やつらの呪いの力は生き残りに力を与えるみたいだぁ。しかも、汚染された地脈から流れ出る呪いもやつらに力を与えているみたいだからねぇ。長期戦は無理だね。そして、君が本当に殺したかった大将首は、今のオイラよりも強くなってしまったみたいだねぇ」
「なっ!? 流石にオライオンドーズ殿よりも強い敵は、オレにも倒せんぞ?」
「ああ、ごめんごめん。言い方が悪かったねぇ。ここに満たされてる呪いの力がオイラの力を弱くしてるから、それでオイラよりも強いって言ったのさぁ。警戒していた、耐性持ち以外の弱体化ってやつだねぇ……」
「そういうことか。しかし敵を倒せば他の者が強くなるのなら敵の総量が実質的に変化していないのと同じ、それではこちらが一方的に消耗するだけ……敵を殺したならすぐにその呪いを神王殿の分体に食わせる必要がある……完全に肉体を消すのはマズイ…呪いが定着する余地を残さねば……はぁ……せっかくオレが、神を殺すために技を磨き上げたというのに、使ってはならんとはなぁ……オライオンドーズ殿、オレは貴殿のサポートに回る。おそらくオレのあの技以外では威力が足りん」
ウェイグストスは使いたくて使いたくて仕方なかった、神を殺すために磨き上げた技が、この戦場では逆に邪魔となることにショックを受けていた。落胆し肩を落とす。
しかし、そこに悲観はない。オライオンドーズよりもウェイグストスよりも敵が強いという事実をしっかりと把握しているのにも関わらず、ウェイグストスとオライオンドーズには余裕があった。
「では行こう! 合体だァ! 装着変形! 歯車合体!!」
ウェイグストスが鎧に変形し、オライオンドーズを包み込んだ。そして、オライオンドーズの欠けた左腕をウェイグストスの腕が埋めた。
歯車合体、それこそがマキと影糸が考えた秘策。世界を呪う力の影響を、歯車巨人がカットすることで神々の弱体化を防ぎ、さらにはパワーアップさせる策だった。
「ほう、これは凄いねぇ……オイラの力とウェイグストスの力が互いの力を高め合うように昇っていく……全盛期よりも強いじゃないか。これじゃあ、ちょっと敵さん達が可哀想だねぇ……なんの見せ場もなく、消えていくんだから──破壊」
──バギイイイイイイイイイイイイ!!!
空間が割れる音が響く。オライオンドーズの破壊の力が正確に、一瞬で敵を殺した。復活した神々も邪神も、体がバラバラになった。そして、破壊時の衝撃で死体をクローの分体のところまで運び、クローの分体は死体を喰らった。呪いを取り込み、吸収すると、空間内が浄化された。今やオライオンドーズ達の眼前には呪いと元の空間が衝突を起こすことで生まれる眩しい光だけがあった。その光のすぐ側に、汚染された地脈の核がある。
オライオンドーズはそれを周囲の空間ごと破壊し、クローの分体に食わせた。
すると、周囲の空間が波打つように歪み、気づいた頃にはオライオンドーズ達は元の空間に戻されていた。
「おいおい、もうちょい猶予くれよぉ……もうびちゃびちゃじゃないかぁ……」
異空間の穴は大河にあったため、オライオンドーズ達は当然、元のの空間に戻ると同時にずぶ濡れになった。
「防御無視で肉があるなら絶対に壊せるとはとんでもない力よ。しかし、あっさりとし過ぎて、オレ好みではないな。オレはもっと戦ってる感じを求めているからなぁ。だが参考にできることは多かったな……もっと範囲を絞って力を収束させれば破壊力だけなら再現できるやもしれぬ……」
「う~ん、ちょっとスルメが水に濡れてふやけちゃったなぁ。まぁいいか、それでもうまいし……クチャクチャ」
「さて、神王殿やマキ達に報告せねばな。穴を攻略したことと、呪いの特性をな」
ウェイグストスはマキとクローに念話で連絡を取り、ワシャルドに待機しているクローの分体を呼び寄せた。そして転移門を通って次の穴の攻略へと向かう。
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