第56話:ま、マロンちゃん……
「アラバイルは再び人化した。どうやったのかまでは分からねぇが、人化した後、ヤツは地上世界の地脈に世界を呪う力をぶち込みやがった。汚染された地上世界は、徐々に変容しつつある。そして地上だけでなく、それと繋がる天界と地獄もな……」
「マロンちゃんはなんて言ってる?」
俺達はセトラドーズからアラバイルの情報を聞くことにした。セトラドーズは今はマロンちゃんの部下だ。ということはマロンちゃんがいち早くこの情報に気づいたってことだ。けどこの情報を伝えるのなら、マロンちゃんもこの地上に、ワシャルドに来たっていいはずだ。それが来れねぇってことは……
「……あいつは……地獄に残った」
「ど、どういうことだよ!!」
「地上と地獄の境界は元々不安定だ。どっちの世界かもよく分からねぇ場所、地脈汚染からの影響を最初に受けた。地獄で転移門を監視してたあいつはそれにすぐ気づいた。そして、最終決戦が起こることも予知した。だから、対して戦闘力にならない自分は地獄に置いて……他の戦える奴らと、転移門のあるウナギィ・クロー、お前の分体を転移させるために力を使った。神々は元々転移の力を持ってるが、ファーカラルの野郎みたいにはいかない……転移はかなりの力を消費する。連発はできないし、自分以外のもんを大量に転移させちまったら……その消耗は言うまでもない……マロンはもう動くこともできないぐらい疲弊してるだろうよ。けど、あいつは地獄の全戦力を転移させたぜ! やりきった!」
「ま、マロンちゃん……ありがとう」
「そうだよ。感謝しなよクロー。彼女は自分の転移の力で転移門を無理やり安定させてオイラ達を連れてきた」
「お、オライオンドーズ!! お前怪我は……」
「この通りさ。どうにか右腕だけは復活させられたよ。ま、ファーカラルから力を貰ったセトラドーズと違って、信仰のないオイラは大した戦力にならないと思うけど。全力で戦うよ」
「オライオンドーズ……! お前とまた顔を合わせることになるとはな……どういう心境の変化か知らねぇが、今はアラバイルを倒すために過去は水に流す」
セトラドーズとオライオンドーズは互いを睨み合い、ピリピリしている。まぁセトラドーズはアラバイルを許さずずっと敵対して、殺すことを狙ってたけど、オライオンドーズはセルの仇であるはずのアラバイルに協力してたわけだからな。許せるわけもねぇ……だが、セトラドーズはブレない。アラバイルを殺すという目的だけを見ている。だからこそ、セトラドーズは俺達に従い、マロンの部下として活動していた。
「ウナギィ・クロー、俺は今、世界は変容しつつあると言ったが、それを具体的に言うと、世界各地で異界化が起きている。ちょうどお前の腹の中みたいな感じだ。世界を呪う力が、世界の概念体、世界の精神みてぇなもんを溶かして、世界に穴を開け、別の異空間を生み出し拡張している。アラバイルの軍勢はその異空間の中に潜んでやがる。その中で世界が完全に汚染され、勝手に滅ぶのを待っていやがる」
「ってことは、こちらから攻める必要があるってことか。そんで、異界化した穴を制圧して、呪いを除去することで世界を修復する必要がある。アラバイルは戦力を分散させて……自分が探し当てられる確立を下げた……」
『こちらも戦力を分散させなければ対処はできない。アラバイルを全勢力をあげて殺しても、ヤツが放った世界を呪う力自体は止まらない場合……アラバイルを殺しても世界は滅んでしまう。ふむ……セトラドーズ、地獄と地上間の転移はもう厳しそうだけど、その地上の異空間と別の地上の異空間を転移することは可能かな? 例えば、僕のジャスティスゲートは活用可能だろうか?』
「……ラインマーグ。おそらくだが……地上の異空間同士ならば可能だろう。ただし力を消耗するはずだ。ウナギィ・クローはファーカラルやアラバイルと同じく世界を呪う力の因子を宿している。呪いで概念が不安定化した異空間にある程度の耐性があるだろう。だから、ウナギィ・クロー経由の地上の転移なら、ある程度は安定するはず。逆にウナギィ・クローを経由しない場合は危険かもしれん。ラインマーグ、お前は命の神の力を持っているから、お前も何らかの耐性が存在するかもしれんが……」
「ほう、神王殿ならば異空間でも元気に動けるのか。だが、その言い方から察するに、神々や強きタダヒトも、異空間ではうまく力を発揮できないのかもしれない。そうだな? しかし、我ら歯車巨人はファーカラルと神王殿、そして命の神の力を受け継いでいる。我ら歯車巨人は通常通りの力を発揮できる可能性が高い。オレはそう考えるがどうだ?」
「ふむ、ウェイグストス。おそらくその認識は正しい。しかし、問題は異空間だけではない。アラバイルの軍勢を構成する者達のことも考える必要がある。これはマロンの考察だが、アラバイルが人化、つまり世界を呪う力を再び操れるようになってから軍勢は現れた。預言者の目には軍勢は突然現れたように見えたらしい。マキやオライオンドーズが警戒していた通り、おそらく殺された堕落神や邪神を世界を呪う力で復活させた。そして、人化アラバイルの力で復活したのなら……当然異空間への耐性を持つ。こちらの戦力は異空間で弱体化する者も多いだろう。歯車巨人以外は弱体化するはずだ」
「その対策ならすでにしてあるも。異空間を閉じるための呪い除去も、お父さんが世界を呪う力を吸収すれば問題ないはずだも。お父さんの分体をそれぞれの部隊に一つずつ付けて穴を攻略すればいいも」
「マキとワタシはパパから生み出されたから異空間への耐性があるはず。ワタシ達のウィングゲートとパパの転移門はどちらも移動可能な、転移機構として使える。穴を制圧していき、制圧が完了したらウィングゲートと転移門を使ってこちらの戦力を合流させていく。マキとワタシは転移門のあるパパとその分体の次の移動ポイントに先に移動して、転移門をパパ達ごと転移させる。一つの穴を攻略している間に、ワタシ達は移動先を確保するために動く、パパが生み出したシャコ達を使えば、移動も早い。マロンが地獄側の転移門のあるパパをこちらに転移してくれたおかげでかなり楽になったわ」
め、めっちゃ助かるなそれ……マキと影糸、二人共生きているからこそできることだ。こんな形でそれが活きるとは思ってなかったな。二人共戦略的にどのポイントに移動すべきかもいい感じに決めてくれるだろうし、このやり方なら、こちらは予想される敵戦力に対して多めに戦力を割いて、安全策をとっても問題がなくなる。なにせ合流と移動が簡単にできるわけだからな。
十分な戦力で一気に一つの穴を攻略し、次の穴を攻略していく。アラバイルも俺達が転移門も使うことは知っているだろうが……巨大な転移門自体を簡単に移動させられるとは思ってなかったみたいだな。
「地獄側の転移門がなかったら、お父さんの中にみんなをしまってから、お父さんをウィングゲートで移動させる方式になったも。転移門があれば、戦闘力のあまりない、移動のためだけのお父さんの分体さえあれば、みんなの移動を簡単に補助しつつ、お父さんを戦力としてうまく活用できるし、同時に二箇所の移動を行えるのは大きいも」
「よし、なら部隊分けだな。デルタストリーク、ラインマーグ、オライオンドーズ、セトラドーズ、そして俺。この5人をリーダーとして戦力を分け、異界の穴を閉じる。アラバイルのいる異空間を特定したら、すぐには戦わず、合流を待つ。特にアラバイルの世界を呪う力に対抗するのなら、俺は必須だろう。最低でも俺の合流は待て」
『いやぁ、みんな待つんじゃない? デルタストリークは融通きかないけど、武神としてはしっかりしてるから勝つために動くよ。僕的には一番心配なのはクローくんだよ。クローくん、最初にアラバイルを見つけちゃったらみんなを待てずに突っ込んで行っちゃいそうだし』
ラインマーグの指摘にみんな頷いている……まぁ、そう思われるのもしゃあないか。
「そんぐらい俺だって待てる! まぁ、場合によりけりだがな……そうなったらそうなったで、そん時はラインマーグ、お前がジャスティスゲートで来い。そうすりゃ問題ねぇ」
『ま、それもそうだね。なら僕は聖女の聖獣と一緒に動くよ。あの子なら仮に僕が緊急でクローくんの所に移動しても、ちゃんと勝ってくれるはず』
「あぁ……あの馬鹿でかいアザラシか……そうだな。ウェイグストス、お前はオライオンドーズと一緒に行け。今のオライオンドーズは正直あんま強くないからな。お前がいれば安心だ」
「承知した。しかし、オレはオライオンドーズ殿が弱っているとは思えない。良い顔をしている。神々よりも、死線をくぐり抜ける、前進する意思を持った強きタダヒトに近い、そんな顔に見える。なぜそのような闘志を持つのか、オレには見当もつかぬが」
「最終回はリアルタイムで見なくてはいけないんだよねぇ。さっさと邪魔者を蹴散らして特等席から見たいのさぁ」
みんな、オライオンドーズに何言ってんだこいつ……と首を傾げている。ま、やる気があるならいいか。
俺達はそれぞれ別れ、世界各地に現れた異空間の穴の攻略を始めた。
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