表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/62

第39話:真実の交流



「ラインマーグ、それでは守備が手薄になりすぎるのではないか? 邪神共はまるで戦場には出てこないが、奴らも戦闘力は高いのだし」



『邪神を誘き出して倒さないことには、状況は好転しないよ。そのためにはある程度リスクをとる必要があるんだ』



 ハルバーがラインマーグの腕に抱きつきながら邪神対策を議論している……こ、これは……どういうこった……こいつらこんな仲よかったっけ?



「あれ? お前らちょっと見ない内に随分と仲良くなったんだなぁ」



『クローくん! ああ、実はそうなんだ。僕が落ち込んでいた所を彼女に救われてね。今は僕達、付き合ってるんだ』



「そ、そうだ。こいつはワレが守らねばならんのだ。ふふふ」



「ふーん。まぁいいや、その議論俺も混ぜてくれよ。俺もあれからちょっと強くなったから、十分戦術に組み込める存在になったと思うぜ?」



 なるほどな、ハルバーとラインマーグは付き合ってんのか。けど、大丈夫なのか? ラインマーグって厄介な女ファンとかがいっぱいいるんじゃなかったっけ?




──────



「炎神を殺せーーー!! 出てこいコラーー!!」



 大陸各地にある炎神ハルバーを崇める炎神教の教会、祭壇は今、襲撃を受けている。ラインマーグとハルバーが付き合っているという情報を聞いた、ラインマーグの過激なファン達は炎神に強い憎しみを懐き、彼らを攻撃した。


「炎神様とラインマーグ様は真面目な交際をしているんです! 外野がとやかくちゃちゃを入れないでください! それにラインマーグ様の方から炎神様にアプローチがあったと聞いていますから! ハルバー様は悪くありません!!」


「そんなの嘘に決まってるだろうが! ラインマーグ様は女に興味などない!!」



 ラインマーグの過激なファンは女だけでなく、男も多かった。彼らは普段敵対していたが、ラインマーグとハルバーの交際をきっかけに団結し、一つの過激集団として完成した。



「っふ、炎神ハルバー? あの面食いで有名な女神だろ? ラインマーグ様は顔で判断されるのが一番キライなんだよ。だからラインマーグ様が、ハルバーを好くなんてありえないんだよ。顔で食いつくあたしらと同類の、醜い肉袋の分際で、ラインマーグ様に触れようとするなんておこがましいんだよォ!!」



 そういってシスター服の女性は火薬ビンを炎神を祀る祭壇に投げ入れた。



「そうだそうだ! シスターフランの言う通りだ! ハルバーは己の醜さを自覚し、手を引くべき! ハルバーは死ぬぞ! いや、死ね!」



──────



 ラインマーグとハルバーの交際が発覚してから数日、俺とハルバー、ラインマーグは同じメンツで会議をしていた。



「なぁ大丈夫か? ハルバーの教会とか祭壇がラインマーグのファンに破壊されてるって話だけど……」



「そんなことは些事だ。外野が何を言おうと、こうしてワレはラインマーグと共におるのだ。それに、荒れてからの方が、ワレの信者は増えている」



「そうなのか、ハルバー? でもなんで信者が増えてんだ?」



「難攻不落のイケメンを手中に収めた恋愛の神としての需要が生まれたのだ。実際のワレは恋愛など苦手も苦手だが、実情を知らぬ者たちにはそう見えるのだ。いや、どちらかと言うと、ワレのそういった運にあやかりたいといった感じかもな」



 これが炎上商法か。まぁ、炎神だし、なるほどね。



「しかしクローよ。貴様も何があった……急激に力を強くして……ワレと最初に会った時とは比べ物にならんほど、存在の力を大きくしているではないか。すでに低ランクの邪神ならば単独で殺せるのではないか?」



「昔は、俺はできるだけ命を奪わないようにしていた。そいつが殺すべき行いをしていたら殺す、そんな感じだった。でもさ、言うほどそんなやつらに会うこともなかったんだ。いてもそういう時は、俺は大体ラインマーグと一緒でさ、ラインマーグが殺してた。こいつせっかちだからなぁ、俺を待つまでもなくすぐ終わらせた。だけど、今は戦争中で、ワーム・ドレイク達を殺すことは、ファーカラルからの解放を意味する。だから俺は殺してる。殺す相手を選ぶ必要のない時代。だから俺は、殺し続けて、強くなった」



『クローくん……そうだね。そんな時代だから君は強くなる機会を得たのかも。これが普通の、タダヒト同士の争いだったら、君はここまで強くなることはなかった。ワーム・ドレイク達は力も強い、だから君が殺すことで得る存在の力も多い……──っ!?』



「ど、どうしたラインマーグ?」



 ラインマーグが急に跳ねた、震える腕を抑えている。



『いやぁ、あはは、ちょっとね。僕はここらでちょっとお暇するよ。ハルバーはクロー君と会議を続けていてくれ』



 ラインマーグ? いったいどうしたってんだ? ラインマーグはそそくさとこの場を去っていった。




──────



 命の神の祭壇、その地下にある墓守の住処、薄暗い石造りの部屋、そこにラインマーグともう一人がいる。



『マキ、探したよ。こんな所にいるなんてね……だけど、おかしな話だ、君ならば、僕がたどり着けない場所に隠れることもできたんじゃないかな?』



「ラインマーグ、要件があるなら手短にして欲しいも」



『マキ、君は”クローを成長させるために、異形再誕事件の発生を放置した”んじゃないか?』



「……確かに、この状況はマキが望んだ状況といえるも。だけど、異形再誕の阻止は、あたしでも”難しい”ことだも。気づいた頃には、すでにほとんど手遅れの状態だったも。再誕を防ぐことは可能でも、それは強引な方法となって、別の犠牲、生贄を必要とするから……あたしは、放置したも。むしろ、その事が起こった後の情勢を利用する方がメリットが大きいと判断したも」



『は、ははは! じゃ、じゃあさ! もし防ぐなら! どういう手段をとったの? 君の言う強引な方法ってどんな方法?』



 ラインマーグは笑っていた。地上のタダヒトが怪物となってしまうことを知りながら放置したというマキの選択、それを聞いて笑っていた。光で顔を隠していたとしても、その声は明るい音を響かせていた。誰もがラインマーグの表情を想像できるほどに、もっとも、この場に存在するのはマキとラインマーグの二人だけなのだが。



「別に、そんな特別な方法じゃないも。思いついたのは異形を再誕させない方法で、ただ殺すだけの方法。スペクター鉱石って知ってるも? 砕くと詠唱妨害効果のある光線が生み出される鉱石だも。あれを内臓し、砕く装置を各地に設置、異形再誕が始まったタイミングで発動させれば、異形は再誕プロセスにノイズが発生させ、再誕は失敗したはずだも」



『そうか……確かにその方法なら、現実的に可能ではあったかも。もちろん協力者は必要だったけど、スペクター鉱石も希少じゃないし、シンプルに砕くだけの装置なんてすぐに作れる。そっか……そういうことか。スペクター鉱石の光線が影響を与えるのは、異形の再誕だけじゃない、地上の普通の生物の誕生にも影響を与えるから……君はこの手段を選ばなかった』



「どのみち大きな被害が出ることになったも。それならお兄さんが生き残る確立をあげた方が有意義な選択だったも。で? 結局、ラインマーグはなんでここに来たんだも?」



『凄い! 凄い凄い! 凄いよマキちゃん! 少しだけ、君のことが理解できた気がするよ! 君がどうして、彼に異常な執着を見せるのか、今までよくわからなかったけど、今君の……残酷な選択を話す君の、救いを求める顔を見て! 僕はわかった気がする。君にとって、彼は、クローは父親なんだ。歪な形だけど、今この瞬間も、君は彼を求めている。お父さんに死んで欲しくなかったから、君は頑張っているんだね!』



「ラインマ──」



 ラインマーグは光の仮面を外した。素顔が露わになる。そこには涙を流し、笑顔でマキを見つめる顔があった。



『ほら! 君は僕の顔を見ても君のままだ! だって、君はクローの魂を受け継いだ子だから!! ははは! 凄いなぁ! 君達はシンプルだ、シンプル過ぎて、異常に見える。そういうところがそっくりだ』



「……」



 マキはラインマーグの素顔を見ても、魅了の呪いの虜になることはなかった。しかし、マキには少しの驚きがあった。元々自分にもラインマーグの魅了の呪いが効かない可能性については予測していた。だが、ラインマーグがこのような形で自分に素顔を晒してくるのは予想外だったし、ラインマーグがマキの”予想の外”の行動ができるとは思っていなかった。



『僕はもう、おかしくなってしまったんだ。僕はずっとアラバイルに操られていて、今までの生に意味なんてなかったと知ってしまったから……それで、僕の中にある、価値あるモノってなんだろうって、ずっと考えてた。何もかもが無意味に見える中で、ただ一つの輝きがあったんだ。それは彼だ。この生に意味なんてなくても、クローと一緒に過ごした時間は楽しかった。なぜなら僕は、彼に憧れていたからだ。無力でも無謀でも、神に挑む愚かな意志の強さに! 僕は強さを感じていた! 僕ならあんなことできないと思った。だから、僕よりも──強いと思ったんだ!』



 ラインマーグは、最初、聖女の魂から聞いた話でしかクローを知らなかった。本質を欺ことのできない魂の世界で、無謀にも邪神に挑んだ男の話、ラインマーグからしてもそれは異常な話で、ラインマーグはクローに興味を持った。



 ラインマーグは地獄に干渉することは許されなかったが、クローの過去を調べることはできた。オライオンドーズに頼んで、クローの元いた世界の”記憶”からクローの死に様を見せてもらった。



 その記憶の中でもクローは無謀で、愚かだった。やはり無鉄砲に、ただ一人の人を助けるために死んだ。ラインマーグはさらに前のクローの死に様を調べた。そのさらに前も、永遠に繰り返す輪廻、その死に様を見続けた。



 その全ての死に様が、人を救済するため、無謀に挑んだ結果の死であったことを確認したラインマーグは感動していた。涙を流し、クローに憧れを抱いていた。



 どの魂も繰り返すうちに変わっていった。他の者は無謀も愚かさも捨て去って、己の幸福を手に入れていく中で、クローの魂は最初から最後、今の今まで、その無謀と愚かさを貫いた。この世界を創った創世神さえも超える、全ての次元を生み出した”ナニカ”それが、魂の棘、角を削る、システムを生み出し、そうなるように強制したにも関わらず、クローはそのシステムに反逆し、無謀と愚かを貫いた。クローはこの世界に呪いの肉人形として生まれる前から、ずっとずっと強大な存在と戦っていた。



『彼は愚かで無謀だ。だけど、それゆえに今! 彼が! 彼のまま存在することが! 奇跡なんだ!! 創世神が定めた運命? そんなもの、クローが永劫の輪廻の中で戦って来たモノと比べれば雑魚も良いとこさ! だから僕は思うんだ。創世神の思惑さえ、彼と一緒ならぶっ飛ばせる。絶望の定めもぶっ壊せるって! 僕は! 創世神を倒す! そして、新たな未来を切り開く! マキ、君も僕と同じ考えなんだろう? 手を組んで欲しい!』



 ラインマーグはそう言ってマキへ手を伸ばした。



「ラインマーグは、お兄さんの過去を……ずるいも……だけど、目的は同じ、組んであげるも! だって、お兄さんもう創世神にも喧嘩を売っちゃったし、後戻りなんてできないも!」



 マキはラインマーグの手を取り、握手を交わした。マキとラインマーグはこの時、互いを共犯者、運命共同体として認めあった。


 クローを英雄として見る者、父として見る者、関係性は違えど、二人にとってクローは生きるうえでの”軸”だった。





少しでも「良かった」という所があれば


↓↓↓の方から評価、ブクマお願いします! 連載の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ