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第30話:預言者のことを理解するのが難しかった



「待ってウナギィ君、今デル姉ぇを完全に隔離するのはマズイよ。今デル姉ぇが動けなくなると、邪教に対する最大戦力が失われてしまう。外界からの影響を完全遮断したなら相手もデル姉ぇが動けないことに気づくよ」



「マロンちゃん、けどなぁ……ならどうする? 敵に情報を与えないように対策をしなけりゃ、結局デルタストリークが動けても意味がないんじゃ?」



「いや、意味はあるよ。デル姉ぇはシンプルで単純な存在だから、戦闘要員としての運用に特化すればいい。つまり情報や戦略的な事には関わらせず、カウンターするような形で戦場に出てもらう。戦う判断を他の誰か、司令塔が行って、平時は他社と関わらない場所で隔離、必要な時は念話で指示を伝える。そうすれば情報アドバンテージを相手に与えず、こっちは戦力を失わずに済む」



 た、確かに……そうか、デルタストリークは元々頭も悪いし、トップとして盤面を動かすことには向いていない。意思決定権を持たない鉄砲玉としての運用が理にかなっているんだ。けど、流石だなマロンちゃんは……この状況にまるで焦っていない。俺はデルタストリークが警戒していない身内、神々の誰かがデルタストリークに干渉を行っていると思っているが、やっぱりマロンちゃんはありえないと思う。



 マロンちゃんの提案した方法はあまりに隙がない。もちろん細かい運用部分に隙は出て来る可能性はあるけれど、俺達がデルタストリークを完全隔離しても、放置してもマズイことになっていた気がする。もし俺が敵対者の立場であったなら、隔離か放置の判断に誘導して、その隙をついたと思う。しかもこの状況ならば、さりげなく誘導したところで疑われることもない。



 マロンちゃんは的確に敵の次の手を潰しているような感じがする。勿論敵の真意なんて分かる段階ではないけれど……



「マロンさん、どうしてそこまで落ち着いていられるんですか? 自分の姉が、他の誰かに利用されているかもしれないっていうのに……怪しいです。自分が疑われないために、わたし達の信用を得るために発言したんじゃないんですか?」



 シャトルーニャがマロンちゃんを疑う。まぁ、無理もない……実際流れがスムーズ過ぎて不自然だしな。だけど、マロンちゃんはそれが自然にできてしまう理由がある。



「シャトルーニャちゃん、ボクを疑うこと、それ自体は良い判断だと思う。実際、君から見れば怪しい要素が多いだろうしね。だけどね、君も聞いたことあるんじゃないかな? 鉄槌神マロンは預言者でもあるんだってね」



「そ、それは……でも、そんなに凄い預言者なら……」



「──ファーカラルの策だって潰せた、そう言いたいんだろう? でもそれは無理なんだ。まず預言者というのがどういった存在なのか、君だけでなくみんなが深く知るべきだ。まず最初に預言者がどうやって預言を行っているのか、それを説明するよ?」



 マロンちゃんはシャトルーニャに疑いの目を向けられても、責めるようなことを言われてもまるで気にしていなかった。それもそうだろうと、シャトルーニャの言動に心底納得している様子だった。



「預言者は概念や因果、その動く方向性、流れが分かるんだ。運命が視覚的に見えるといった方が分かりやすいかな? 例えばだけど、死というものは物体として存在するわけじゃないけど、確かに概念として存在するだろう? それがボク達預言者の感覚でいうと実際にモノとして存在するように見える。だから避けられない死の運命に囚われた人がいたなら、その人が実際に死というモノに衝突していくように見える。そして、預言者としての能力が高ければ高いほど、そういったものを細かく、詳細に見ることができる」



「で、でもラインマーグさんはクローさんがわたしの街へ来なかった場合の運命を預言で知っていましたけど、結構詳細な感じでしたよ?」



「まぁ、そう焦らないでよ。ちゃんと説明するから。さっき因果の動く方向性や流れが分かるってボク言ったよね? 世界の運命、世の流れを固定化してしまうような強大な力が、この世界には存在するんだ。その力を橙の激流(とうのげきりゅう)と言って、その力の通り道にある因果は誰も動かせない。数少ない例外を除けばね……誰がどのように動いても、最終的には橙の激流という本流に合流するようになっている。ボク達にできることはその過程を変化させることができるぐらいなんだ」



 橙の激流……オレンジ色か……シャトルーニャの背後にある力、聖女の力や俺が蹂躙の力を分析した時に見た理不尽の壁と同じ色……おそらく同質のモノなんだろうな。



「一般的な預言者はその橙の激流によって固定化された因果の中でも、自分に見える範囲から分析をして、運命の解釈をしているんだよ。あくまでこうではないか? という予測で、視覚的に見えるだけ、完全な理解はできない。そして、橙の激流に固定化されていない領域は流動的で予測は難しい。今回ファーカラルが行った事、これは橙の激流の外側で起こったこと、そのはずだったんだけどね……」



「待ってくれ、橙の激流の外側で起こったこと? そのはずっていったいどういうことだよ……」



「今回の異形再誕事変、ファーカラルの行いの因果は、橙の激流に取り込まれていないものだった。なのに……事が終わってみれば、それは橙の激流に取り込まれていた。こんなことは今まで見たことがない……さっきも言ったけど預言者は基本的に橙の激流周りを監視して、その情報を分析して預言を行っている。逆を言えば橙の激流以外の領域はあまり重要視していないし、見ていない。だから、こんな後出しジャンケンみたいなことをされたらどうしようもないんだよ。最初からしっかり運命が固定化されていることならある程度は詳細に分析することも可能、だからラインマーグが得た預言には起こるはずだった未来が結構詳しく分かっていたんだよ。まぁ、それも今じゃ滅茶苦茶なんだけどね」



「今じゃ滅茶苦茶……? あ、そうか……シャトルーニャの街は本来滅ぶはずだったけど、俺があの街に行った結果街は滅ばなかったし、シャトルーニャが絶望することもなく、聖女として覚醒した……ラインマーグが前になんか言ってたな……俺が聖女関連に関わると重要な部分は維持されたまま結果が変わるって……」



 なんでだ? どうして俺が関わったことによって運命が変わった? あ、でもそうか……大きな流れ、時代の流れ自体は変わってないのか? 多少細部が変わっただけで……まぁ世界とってどうかは知らんが、悲劇が減ったことは俺にとっては重要だ。



「デル姉ぇの因果は、未来は橙の激流の中にある。そしてそれは、聖女や勇者と共に戦い、邪教勢力を滅ぼす因果、その未来は確実に起こること。その時が来るまで、デル姉ぇが無事なのは確定してる。だからデル姉ぇの心配はする必要がない。ボクは……今回のことで考えを改めることにした、いや……前々から思ってたことではあるんだけど。ボクは橙の激流の外にある因果を見ることにしたんだよ。預言者としての力を持って生まれたボクは、ずっとこの世界がつまらなかった。自分ではどうしようもないのに、その未来が見える。いったいなんのために? どうしようもないのに、それを伝えるため生まれたボクは……いったいなんのために存在しているのかがわからなかった」



 まぁそうだよな。預言者っつっても、やってることは悲劇を止めるためじゃなく、速やかに預言を遂行させるための調整役みたいなもんだ。マロンちゃんは知っているからこその虚無感や絶望感と生まれながら戦ってきた。



「でもね、ウナギィ君と会ってから考えも変わった。分かってても、知ってても、そこには実感も理解もない。ボクは今までそこに在るだけで、生きてはいなかった。橙の激流の外側は、そもそもボクが知らないことだらけだったのに、そんなことすらボクは知らなかった。知ろうともしなかった。ボクがどうでもいいと思っていた場所にこそ、ボクの生きている実感と、大切なものがあった。それで、今回の異形再誕事変だろ? これからは橙の激流の外にも意識を向けていかなければ対応できないだろう。だけど、ボクはそれに対して肯定的だ。そこに広がるのが不確定で複雑な世界だったとしても、自分なりに考えて未来を予測することはできる。例え運命が見えなくてもね。だって、この世界生きる人々は、運命が見えなくたって、未来を想像して生きてきたんだから」



「マロンさん……それ、いい感じですね! わたしもそう思います! 何が大事で大事じゃないかなんて、偉い人が勝手に決められることじゃないです! 預言者としての役割以外の所に大事があったっていいんです!」



 シャトルーニャはマロンをあっさりと認めた。いつもそうだが、掌返しが凄い。いや良いことではあるんだけどよ……良いことは良い、悪いことは悪いそれをしっかり判断できるのはいいことだ。相手の印象とか、過去の行いに引きずられて悪いように捉えてしまったりなんてよくあることだと思うけど、そういうもんを取っ払うっていうのは難しいと俺は思う。



「まぁそういうわけで、今はちゃんと見てるからある程度は見えるんだ。デル姉ぇを利用しようとする存在の因果がね。どうすればそいつが困るのかもなんとなくは見えるし、橙の激流の外側にいるのも分かる。まぁ自分で言うのもなんだけど、ボクは元から頭を使うのは得意だし、やってみればそう難しいことじゃない。敵の思惑は潰していく、全力でね」



 そうそう、マロンちゃんはデルタストリークと違って元が賢いから預言者としての能力もあって、焦ることもなく対応可能なんだよな。特に地盤があるわけでもない出張先の地獄で出世しまくって、今じゃ地獄の支配者の一人、まぁ優秀だよな。俺には絶対無理だ。



「……」



 あれ? マロンちゃんが俺のことを見てる? 謎だ……え? 今度は微笑んだ……何故だ……俺の運命なり因果でも見てたんだろうか? それで良いことでもあったのかな? 考えても仕方ないけど、良いことっぽいならいいか。





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