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第21話:謎生物を創造してしまった



「クローさん! いきなり連れ去るなんて酷いですよ~~へへへ」



「何ニヤニヤしてんだお前……」



 買い出し中のシャトルーニャを拉致し、旅に同行させた俺だが、そのシャトルーニャは怒りながらニヤニヤしていた……どういう情緒なのかまるで分からない……



 今は大陸西側へと繋がる街道を馬車で進んでいる。俺一人ならば、徒歩でも問題ないが、シャトルーニャには必要だ。今回はシャトルーニャの力が必要になってくるだろうから、体力は温存させておきたい。



「え~? だって、旅にわたしが必要だったってことですよね~? わたしのことをちょっと避け気味だったクローさんから歩み寄ってくれたわけですから、嬉しいは嬉しいですよ。でも相談もなく、いきなり連れ去るのはよくないと思います! でも、どうしてこんなことになったんですか?」



「ああ、それはな──」



 シャトルーニャに経緯を説明する。俺が神になってしまうこと、争いを避けるためにパープルランドに神殿を作ること、パープルランドは呪いで満たされていて、俺とシャトルーニャぐらいしかまともに行動できないこと。



「なるほど、確かにこれはわたしの出番ですね。でも……クローさん一人でも問題なかったんじゃないですか? いやその! 一緒にはわたしも来たかったですけど、クローさんなら可能な気がしたので!」



「……それは……その、不安だったからだ」



「え? 不安? クローさんが? クローさんにも不安を感じる能力があるんですね」



「おい、なんだよその言い方……確かに俺は無鉄砲なところはあるが、ちゃんと考えた上で理性を無視してしまうだけだ。俺が不安なのは……このパープルランドを支配できるかどうか、神殿をあの場所に建てられるかどうかで、大勢の人間の生き死にが関わって来るからだ。今までの、場当たり的に俺の命を掛けるだけの話じゃない。お前も賢いわけじゃないが、俺一人よりは遥かにマシなはず。あとはまぁ……お前とは、友達ぐらいの関係性までなら問題ないと分かったからな」



 俺はいつの間にかラインマーグと同じような感覚でシャトルーニャと接してしまっていた。あの時、フロストペインの孤児院で俺の呪いに耐えられるかどうか試した時は耐えられなかった呪いの強度を、今のシャトルーニャは余裕で耐えている。こいつの呪い耐性は、成長している。



「そ、それって! わたしのことを友達だと思ってくれてるってことですよね!?」



「う、うん……」



 あれだけ頑張って避けてきたのに……結局、こいつのパワーに負けてしまっていた。その事実に、なんだか恥ずかしくなった。



「あはは! クローさん照れてます! でも、友達ぐらいまでならって言い方! これは、クローさんも不本意で、本当はもっと、友達より深い関係になりたいってことだったりするんですかね~? へへ」



「別にそんなことはないけど……」



「ええええええええええ!?」



 友達より深い関係というのが、何を指しているのかは分からんが、関係性というものは勝手に構築されてくもんだと思ってるからな。変わる時は勝手に変わるだろ。ま、そうじゃないときもあるのかもしれないけど……



 俺とシャトルーニャは目的地へ移動を続けた。最初に休憩した街で馬を替えた、普通の馬では速度が足りないと気づいたからだ。無理をさせて潰すわけにもいかない、俺は馬の代わりに魔獣の素材を体内で加工することで生み出した生体ゴーレムの馬? を使うことにした。最初からこうすればよかったぜ。



「これ? 馬なんですか? 足が10本ぐらい生えてて、エゲツナイ棘と牙、甲殻がついてるんですけど……」


「……馬じゃないかもしれない……魔蟲達の趣味のせいだろうな、虫とか甲殻類っぽいのは……」



「ヒヒーン」



「声はお馬さんなんですねぇ。なんか声を馬にしとけば納得するでしょみたいな雑な考えが見えます……でも、この子に名前をつけてあげましょうよ! というかクローさん! 聞きましたよ! 白蛇ちゃんて本名じゃなかったんですね! わたしはてっきり本名だと思ってました」



「そう言われてもなぁ。俺だって名前がわからなかったし、どう呼べばいいのかもなぁ……元なった魂達にはそれぞれ名前があったわけで……流れでずっと白蛇って呼んでただけでな……まぁでも今は名前あるんだしいいだろ。それよりこの馬……? の名前だろ?」



 馬……馬……どう見ても違うけど、こいつは俺というか、魔蟲達の細胞も使われているから、実質的に俺の分身、体の一部のような存在。まだ自我は存在しないが、そのうち自我が芽生える可能性もある。変な名前をつけたら自我が芽生えた時にキレるかもしれない。



 見た目甲殻類だよなぁコレ……アノマロカリスとシャコを混ぜたような見た目……



「決めた。シャコ=カリス、それがこいつの名前だ」



「え!? シャッコー村? なんでわたしの地元が……」



「いやシャッコーじゃなくてシャコな? 俺の世界の生き物にもシャコって名前のがいるんだよ。とにかく攻撃力の高い生き物だった。カリスの方は古代生物だな。似てるし、ロマンがあっていいかなって」



「ふーん、そうなんですね~。でもシャコってなんだか美味しそうな響きですよね? わたしもシャッコー村ってなんか美味しそうな名前だなって思ってましたし……謎ですね」



「ヒィ……ホ」



「おい、お前が美味しそうとかいうから。シャコがビビってるだろ……」



 そんなこんなで、シャコ=カリスが俺達の旅に加わった。俺の肉体の一部であるこいつにも、当然呪い耐性がある。つまり、こいつならパープルランドの内部まで連れて行くことができる。普通の生き物を馬にしていたら、パープルランドに入る前にどっかで置いてこなきゃいけない。そして入ったら徒歩で調査することになっただろう。



 で、今はシャコに乗ってるわけだが……こいつめっちゃ足はやい!! 馬の10倍のスピードはあるがまるで揺れないうえに、疲労もしない。シャトルーニャのために休憩したとしても、俺単独の移動より距離を稼げる。足がカサカサ超速で動くからキモイが、頼もしいヤツだ。



 俺がベースと言っても違いはある。こいつは餌が必要だ。俺と違って飲まず食わずという訳にはいかない。しかし、その餌も水とその辺の草でよく、水は勝手に浄化するので汚水でもよく、毒も効かないので毒草でも問題ないという、コスパ最強の存在だった。ともかくこいつのおかげで予想よりも早くパープルランドへとたどり着いた。半年はかかると思われていたパープルランドへ、二週間とちょっとで着いた。



 パープルランドは……紫色じゃなかった。どちらかと言うと赤と黒の世界だった。が、夜になるとそう呼ばれている理由がわかった。夜になると空が……紫色になった。



 パープルランドは言われていた通り瘴気と毒沼で溢れていたが、俺とシャトルーニャ、シャコは全くのノーダメージで、これもまた予定通りだった。動物はいなさそうだが……



 毒沼と棒きれのような植物しかない寂しい景色を進んでいく。しばらくそんな状態が続いて、結構深部に進んできたかというところで、ついに動物を見つけた。



「こ、こいつは……鳥なのか? 歯が生えてるけど……」



「う~ん、毛の生えたワイバーンじゃないですか? でも見た目は凶悪なのにおとなしいですね。ほら、撫でても怒らないですし、逃げもしないです!」



 噛まれたら人間の腕が簡単に千切れそうな凶悪な歯を持った、太った鳥のような生き物がいた。パープルランドで初めてみた動物、こいつは棒きれのような植物と瘴気と毒が固形化した岩をバリバリと食べていた。俺達をまるで警戒しないのも、ここらにはきっと天敵がいないからなんだろう。まぁでも、この鳥は食ってるもんが食ってるもんだから、こいつも毒あるだろうな。仮に他の生物がいたとしても、こいつを食ったら毒で死ぬだろうから、無敵だな。そう思っていたんだが……



「おお! ガイバンテスがいたぞ! 狩れ狩れ……あ? に、人間? お前ら人間か?」



 人っぽいのがいた。青色の肌の女の子がいた。角が生えている……鬼?



「いや、違うけど……こっちのやつはそうだぞ」



 俺はシャトルーニャを指してそう言った。正直戸惑う、言葉を話すような存在がパープルランドにいるとは思っていなかった。しかし、それは相手も同じだったのか、青色の女の子も困惑していた。



「……なんでここで普通に動けてんだ? お前ら……何をしに来た?」



「えっと、調査……下調べ? パープルランドに神殿を作ろうと思って……」



 あ、あれ? 流石に神殿を作ろうとしてるとか言わない方が良かったよな……やっべー、やっちまった。だって原住民がいるなら話は違ってきちゃうし……


「神殿を!? そっか、ラインダーク様の神殿を作るんだな!? っし、じゃあ、うちの村にこいよ!」



 いや、俺の神殿だけど……だが正直、それを言い出せる空気じゃない、青色の女の子は俺がラインダーク様とやらの神殿を作るもんだと目を輝かせてしまっている。



(おい、シャトルーニャ……ラインダークって知ってるか?)



(えっと確か……ものすごく古い神だった気がします。命の神様だったような)



 ヒソヒソ声でシャトルーニャと話す。結局シャトルーニャもラインダークのことはよく分からないみたいだ。



 ともかく、情報の欲しい俺達は女の子に着いていくことにした。女の子は手際よく、鳥の頭を殴って殺し、内臓をビンに詰め、鳥を背負って移動を始めた。この鳥……食うってことだよな? こいつ……食えるの?





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