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第20話:まんまと乗せられてしまった



「お前はすでに……かなり信仰されている。お前が死んだなら確実に神化する。というか生きている今の状態でも、すでに神化しつつある。他の神々が認めるかどうかとか、お前が神になりたいかどうかとか、それぞれの望みがどこにあろうと、お前が神化し、神となってしまうのは確実、現実だ。だから今のうちに神殿を作っておいた方がいい」



「え……?」



 俺が……神に……?



「そりゃあそうでしょうよ! だって、クローさんは俺達の神様なんすから! いやぁ、こりゃみんな張り切るぞ~?」



 はしゃぐドラッシャー。マキの方はどうだろうと反応を見る。マキはまぁ、そうかと納得していた。このことも予測してたのか?



「待ってくれよ。なんで神になってない段階で神殿を作るべきなんだ?」



「経験則だが……タダヒトから神となる者が生まれる時、神々は中々その現実を認めない。基本的に神となるタイミングで神々からの妨害が入る。それが原因で信者同士の戦争が起こることも珍しくない。さらに言えば、聖地を決める時も問題が起こりやすい。信者主導で聖地はここだろうと、流れで決まってしまうこともよくあるが……これも諍いの原因になる。元から活動地域が限定的な場合は、聖地決めも問題とならないことが多いが、お前は活動地域が広すぎるからな。お前が、この場所が聖地であると決めた方がスムーズだ」



「あぁ……そういうことか。まぁこれから大戦争が起こるってんなら余計な争いはない方がいいよな。それに大戦争が起こるなら、俺が死んでそのまま神化してしまう可能性も高いってことだしな……けど、どうして【パープル・ランド】が俺の聖地なんだ? 俺はここへ行ったことないけど……」



「そうっすよ! パープル・ランドなんて誰も寄り付かない最悪な土地じゃないっすか! ハルバー様、もしかしてクローさんを舐めてるんすか?」



「おいおい、ドラッシャー落ち着けよ。説明を最後まで聞こうぜ?」



 俺はピキッっているドラッシャーを宥める。



「誰も寄り付かない、危険な土地だからだ。あの土地を聖地と決めても、誰も反対しない。そして、あの場所を聖地にすることができるのは──クロー、お前だけだからだ。あの土地はワレの浄化の炎を持ってしても浄化が不可能だった。あの土地の呪いを消すことはできない、呪いと共に、共存できる者でしか……あの土地を支配できない。あの大地の呪いを、お前が支配するんだ。そして、誰も支配できなかった大地を支配する。その行為こそが、お前が次代の神であることを証明、伝説となる!」



「うおおおおおお!! かっけええええええええ!! それ、いいっすね!! クローさん! 作りましょうよ! 伝説!!」



「伝説を作るんだも!!」



 目を輝かせ、掌返し的にハルバーに同意するドラッシャー、便乗するマキ……っく……抗うことができない……! この流れに……この、ノリにっ……ここで反対することは、無粋ってもんだぜ!



「っふ、やってやろうじゃねぇか! 俺は呪いを受け入れることには定評があるからな。確かに、俺ならばパープル・ランドの呪いと共存できるかもしれねぇ」



「あの、でもパープル・ランドって、そもそも立ち入ることのできる者なんてほとんどいないから……そうだね、結局パープル・ランドを聖女シャトルーニャ、クローくんの二人だけで攻略しないといけないってことじゃないかな?」



「あああああ!! そんな! クローさんの伝説に、一緒に成し遂げることができないなんて……くぅ~~~、無念っす」



 デルタストリークが鋭い指摘を行う……どういうこった……



「いやね、実は私も咎人を取り逃してしまったことがあるんだ。魔術師の男がパープルランドへと逃げてしまって。私は追うことができなかった。まぁでも、パープルランドに逃げたらならどうせあの男も死ぬだろうとその後の調査をすることもなかった。だからあの土地のことは何度か考えたことがある。あそこに咎人が逃げ込み、もしもあの土地でも生きていける術を持っていたとしたら……私はどうすればいいのかな? どうやって断罪すればいいのかな? ってね」



 断罪するためなら頭は回るデルタストリークだった。



「むぅ、正直……頭脳担当であるマキを連れていくことができないってのが一番の不安要素だが……まぁ、基本誰もいないってんなら、そんな厄介事もないよな! じゃ、パープルランド行ってくるわ! マキ、ドラッシャーお前らは邪教の情報収集と神殿の準備を進めといてくれ」



 俺は、教会を出て、買い出しに出かけていたシャトルーニャを拉致して、パープルランドへの旅を始めた。




──────



 クローが教会を出ていった後、ハルバーはその場に留まり、マキと向かい合っていた。ラインマーグが注視すべきといった、この大精霊を見極めるために。



「面食いのお姉さんの狙いは争いを減らすだけじゃないも?」



「ほう? ならお前は他になんの狙いがあると思っているんだ?」



「基点だも。パープルランドは世界中の呪いが集まる場所だも、面食いのお姉さんは呪いが浄化できないみたいな言い方をしたけど、あれは嘘だも。だって浄化できず、呪いが溜まる一方なら、今頃のパープルランドから呪いが溢れて、世界中呪いで満たされているはずだも。でも、そうなってないから、なんらかの浄化、呪いの減少は起きてるんだも。浄化ができないっていうのは、その一部を浄化しても次々呪いが流れ込んで来て、キリがないから諦めているだけだも」



「そうだな。それはお前の解釈が正しい、と言っても? ワレは分かりやすいように細かい説明を省いただけだ。それで結局、お前はワレが何を狙っていると?」



「パープルランドから呪いが溢れない、それはつまり世界中の呪いをたったひとつの場所が食い止めているということだも。最強の浄化の力が、パープルランドには存在するということだも! 面食いのお姉さんの狙いは、その力だも。自分では探索できない、パープルランドの最深部をお兄さんに調査させるつもりだも。最強の掃除道具が欲しいんだも?」



 マキは笑う。張り付いたような偽物の笑顔。マキは心の距離、拒絶心を隠そうともしない。お前は仲間じゃない、調子に乗るな。ハルバーにそう言っているかのようだった。



「ふふ、はははは! なるほど、ラインマーグが警戒するのも分かる。もしワレに敵意があったなら、お前はその情報を使って先手を打ち、ワレを罠にかけ、殺したかもしれんな。ワレにはデルタストリークのように、感情を完全な形で読み取ることはできんが、その者の持つ熱を見ることはできる。大精霊マキよ、ワレはお前から感じている。熱く、煮えたぎる狂気、ウナギィ・クローに対する狂信を。あの男はそれをまるで分かっていない、ほんの指先ほどしか見えていない。そしてお前も、それを隠している。警告するぞマキ、あの男のために、世界を歪ませるなら、ワレをお前を燃やす」



 脅し、警告、マキもハルバーも互いにそれを行った。マキは神々を信用していない、何故ならば、神々は誰も自分たちを救わなかったからだ。助けたのはクロー、彼だけがマキにとっての救済者だった。クローを誘導したラインマーグも、マキにとっては上から地上を見下ろす他の神々と変わらない。クローと繋がり、再誕したマキは、クローの持つ優しさと熱、その輝きを決して忘れることができない。それはクローが意図せずマキへとかけた呪いだった。





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