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3.桃色令嬢


「こんなに震えて…。もう大丈夫だ、ミリアリアをいじめる偽聖女は追放したから」


「はい…ありがとうございます。私が殿下の婚約者で聖女なんですねっ」


「そうだよ、愛しいミリアリア。きっと君は素晴らしい聖女になる」


「自信がありませんわ」


第一王子の執務室の大きめのソファーには、王子にしな垂れかかるようにして座るピンクの髪の露出過多なドレスを着た令嬢。


こぼれ落ちそうな二つの塊は、上から見ると谷間がより一層主張される。

さらに、背中がバックリと開いているデザインなので、王子が触れている腰部分は素肌だ。

慰めるように撫でているが、実際は素肌を楽しんでいる。男とはそういう生き物だ。


第一王子の突然の婚約破棄宣言から始まって、現役聖女の国外追放と、前代未聞の卒業パーティーは、それでも表向きにはつつがなく終了した。


しかし、そこで起きた事件は、瞬く間に王国を駆け巡った。


パーティーに参加していた学園関係者は、実は第一王子の仕組んだ罠だと気がついていた者も多かった。


また、比較的良識のある貴族たちは、聖女が決してサボってなどいないと知っていたし、ある一定の年齢以上の者は、前任の聖女(現在の正妃)も、結界の維持中には、ぼんやりしていたことも知っていた。


しかし、そもそも平民の聖女など前代未聞と、異を唱える貴族が多く存在していた。

良識ある貴族ほど、身分社会を大切にする傾向にあった。


またそれにに加え、ジルヴァラには後ろ盾もなく、所作も雑で、いかにも平民のような地味な雰囲気を醸し出していたのも支持されない原因だった。

それなりに美しいとはいえ、年齢より幼い容姿が薄気味悪いとも思われていたために、聖女交代については、治癒魔法の使い手である伯爵令嬢のミリアリアが次の聖女を担うのであればと、この聖女交代劇は、概ね肯定的に受け入れられていた。



「大丈夫だよ。平民のあいつに出来たことが、伯爵令嬢のキミに出来ないなんてことは絶対にない」


「うふふ。そうですわね」


第一王子の執務室では、執務の最中にも拘らず、新しい婚約者が入り浸り、二人で婚約蜜月を味わい尽くしていた。


ジルヴァラが破廉恥と表現したドレスのスカート部分は、薄い布が幾重にも重なったデザインで、両脇に腰の付け根までのスリットが入っていた。

ミリアリアは、しなだれかかりながらもさり気なくスカートの布地を避け、太ももをチラリと露出させる。


「聖女なんて、教会でただただ祈っていれば良いだけなんだ。誰にだって出来る」


王子の視線が太ももに吸い寄せられる。


「うふふ…私、治癒魔法も使えますもの、教会でお祈りするのは得意ですわ」


「聖女とは言え、私の婚約者が平民など、堪え難かったのだ。ましてやあのようにいつまでも幼い姿で気味が悪い。

話しかけてもいつもボーッとしていて、ろくに返事も返せないような女を未来の王妃になどと。

父上は、聖女だった母上と早く結婚したいがために、あの平民の女を無理矢理私の婚約者にして聖女にしたのだ。少しばかり魔力が多いという理由だけで。

歴代聖女は王族と結婚するものだからと言うが、王妃である母上は侯爵令嬢だったのだ!

なぜ私の婚約者が平民なのだっ!

しかもあのような幼子の姿、抱く気もおきないっ!」


「私では、ダメですか?」


目をウルウルさせながらの上目遣に、手を胸の谷間のあたりで組む。さりげなく、腕で大きな肉の塊を持ち上げている。そして、太ももをチラ見せ。

これで落ちない男はいなかった。


「ミリアリア…、そうだな、今は、貴族であり、聖女でもあるミリアリアが私の婚約者なのだな」


「うふふ、私はアレフ様のものですわ」


「ミリアリア…」


「うふふふ…幸せですわ」


「父上と母上に報告したら、すぐにでも結婚式を挙げよう」


「まぁ!嬉しいですわ」


王族であれば、この国が護国の聖女に護られて成り立っていると正確に教えられる。


聖女に処女性は必要ではないが、聖女という職は、決して名誉職ではなく、激務なため、王妃との両立は物理的に難しい。

また現王は、元聖女であった王妃を独占し、子づくりをしたいがために、聖女の任を解いたらしい。


第一王子もミリアリアも、聖女というものを理解していない故の行動であった。


第一王子の執務室の、応接用の三人掛けのソファーに、並んで座っていた二人は、今はミリアリアが王子の膝の上に乗り上げ、すっかり露わになった太ももを王子の掌が堪能しているところだ。


「美しいミリアリアは、良い王妃になるだろう」


「アレフ様…」


「ミリアリア…」



古い国の王族だけあって、第一王子は芸術品のように美しい造作をしていた。


それ故に、多少中身が残念でも、それなりに人気があった。


王族とは王政を摂るこの国の政治の中心なのだが、戦争も飢饉もないこの国においては、中身が凡庸でも、外見の美しさが重要視されていた。


第一王子は、良き王になると言われていた。


護国の聖女がこの国を護っている限りは。

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[一言] 現王からして恋愛脳のバカ王族か まあ滅びるのもやむ無し
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