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第三話【人手と紅茶と美少年】

・・・何かが足りていない。


何か重要なものが、完全なはずの記憶から、


抜け落ちて、深くかんがえることすら許してはくれない。


ただ重要であるがそれは使命とは違う個人としての気持ちであると言うのはわかる。


だから出来ないことは放置することにした。




いつこのことに後悔するか、計算して公開に備える方が今は最善であるはずだ。


欠伸をこう何度も連続で出してしまうと肺の空気が全部入れ替わっているようでどうにも気になり息遣いが荒くなってしまう。


そしてそのあとすぐに誰かと目が合う。その人たちは苦笑いをすると、立ち去っていく。今日はそんなことが多い。いつもは目も合わないのに今日はクラス半分くらいの人数と目があったような気がする。


(欠伸の声とか漏れちゃってるのかな…)


恥ずかしいと思いながらも気圧のせいなのか欠伸はで続ける。


まだ少し肌寒い風が吹きながらも冬服は少し蒸し暑くなってくる5月の中旬。


先輩のあの脳裏に焼きつく白いパ…ガッツポーズを見て数日。土日を挟むとすぐに彼女は行動を始めようと生徒会に謝罪しに行った。


貼り紙の件と鍵の件を改めて誤り少しでも部員を集められやすくなるようにするため彼女なりに全力をかけるそうだ。


で、僕はと言うと特にやることもなくあの変な鍵も持っていないので教室で端末でセネス(SNSアプリ)で近況や変な画像を見て暇をつぶしていた。


「…」


そしてその二つ前の席、先ほどから教科書を両手で持ったまま動かない背の低い男子生徒が一人いた。


(普通、この時間ってみんな帰ってるけど…考え事か?)


しかしどれほど優柔不断な人間なのかもう17:30ごろだと言うのにその体制から一切動こうとしない。


この数十日の学校生活、彼とは意外に話す方ではある。彼は清掃区域が同じで、唯一の同じグループの男子であるため、よくチリトリを持ってもらったりゴミ捨てを分担したりなどする。からと言ってそこまで仲がいいわけではなく、あくまでそう言う作業的な話のみであり世間話をしたり、積極的に話しかけるようなことはできる気がしない。


(以上から…放置、先輩の説得が終わるのを待とうかな)


と画面に視線を落とすと、ちょうど先輩から


[遅いけど部室開けたよ〜( ̄▽ ̄)]


と連絡が来た。


席を立ち上がり、バックを持って端末に目を向け、歩きタンマツをしながら部室へ行こうと歩き出す。すると


「え、えっと…あのっ」


と後ろから声をかけられた。まあやはりと言うかなんというか、彼は僕に用があったようで、興味もあり振り返る。


「はい」


返事ははっきり物腰柔らかく。


「…これから、帰るの?」


彼の顔をはっきり見たのはこれが初めてだった。顔立ち整っていて中性的というか女性のように可愛らしい見た目をしており、背も小さく細いことも相まって、女子にしか見えない。


「いや部活だけど…どうして、ですかね?」


「少しお話…したいなと思ってて…」


声変わりもまだなのか、来ない体質なのか細く弱く少し高めの声で話しかけてくるためやはり女子にしか見えず?何が緊張してしまう。


(今までそれで固まってたのか、決断にすごい時間かかったか帰るタイミングを待っていたか…まあどっちにしろ好意というものだ、受け取ろう)


「…うーん、ちょっと先輩に確認だけ、」


彼の言葉を優先することで彼を部活に誘えるのではないかと思った僕は先輩に遅れるとだけ打ってその場にあった机で腰を休める。


「お話ってなに?」


想定していたのは何かしらの相談か、身の回りに関する諸注意か、何かやらかしかなと自分に原因のある事件か何かかもしれないと想像していた。が、


「きみのバックについてるさ、そのキーホルダーさ…“キャンディー”だよね?注ぎたて紅茶姉妹(ティーシスター)の」


(え?そこ?というかそっち?というか何?なんて行った?キャンディなのにティー?)


「は、はい?」


困惑した頭のまま返事をしてバックを確認すると、たしかに見たこともないようなキーストラップがバックのポケットのジッパーに下げられていた。普段使わないジッパーだったために、全く気がつかなかったがいつのまにこんなものついていたのかと驚いてしまった。


(え?もしかしてこれ僕のじゃないんじゃ…)


そう思う無言で教科書なんかを探ってみるとやはり僕のだ。前から気になっていた背中の肩甲骨あたりにあたる部分の糸のほつれもある。


「あ、あれ?違ったかな?」


「あーいやねなんか覚えてないんだけど多分キャラクターはそれであってるんじゃないかな?ごめんね、そういうの詳しくなくて」


なんだか物腰柔らかくしすぎて子供をあやしてる口調になってしまった。語尾を上げすぎるのはあまりよろしくない。まるで煽りじゃないか。


「あ、いや、あそうだったんだ、ごめんなんか僕も話題間違えちゃったみたいで…」


不毛な会話のなってしまった。なんの発展もなく二人とも誤って会話が終了、そう思われた時僕の思考は別方向へ飛んでいた。


(というかもしかして、今日やけに人が僕のこと見てたのってそのストラップのせいじゃ…)


先ほどの自分自身の謝罪文には僕として、僕の持っている能力として絶対に有り得ないとまではいかなくともそうそう出ない言葉があった。


「待ってくれ、そうだそうだよ、そうだよね、僕が“覚えてない”なんてありえないよなおかしいよな…」


独り言が出るほどに疑問だった。自分が無意識に買い物をしていたような実は夢遊病で記憶に残らないような事実が体に残っていたりするのかと一瞬で他方にある程度の偏りを反映しながら想像が広がっていく。


「え?ん?いや確かにこんなマイナーなアニメのキャラどうしてつけてるのか気になっているんだけど、」


ここで出た情報で分かったことは、マイナーつまりあまり視聴率のないアニメのキャラということ、目の前の彼がそのキャラクターのファンということ。


とにかく今はどこにその記憶があったのか、いつからこれがついていたのかの“事実”を確認しなくちゃ原因も何もわからない。


(僕にはその確認ができる能力がある)


額に右手の人差し指を当て、意識を触れたその感覚に集中させる。


すると意識が吸い込まれ水のように流れてまた意識の形が整うと落下している。


泡を最新のものから見ていくというのは少し時間がかかる。まあ時間はあるので何も考えずに辿るのもアリなのだが、


幸いあてがある。


昨日の放課後まで一気に飛ばし、そこから再生する。


人の記憶は古いものからドンドンと改竄されるという、それは事実を受け入れるのに時間がかかる人間には当たり前に付いているものらしいけど、僕はそれすらを完全に戻すことができる。


(こんな下らないことでこんな大それた能力を発揮するなんて…)


ーふふふふ〜ー


見つけた。


部室、昨日の17:00ごろ、僕がトイレに行こうと席を離れようとしている場面。ここで視界写っている彼女の手元には今見たストラップと同じものがあり、それを見ながら何が良からぬことを企んでいる先輩の顔が写っていた。


(…やっぱりか)


人差し指を離して意識を戻す。


「どうやらうちの先輩につけられたみたいで、僕は詳しくないけどあの人なら…」


(お、いい口実ができた)


「私なら!!!詳しいわよ!!!ティータイム、リーフチャージ!!!」


(この声は…)


振り返るとそこにはどこから盗んできたのかカーテンを翻したブブケン部長がいた。


「茶葉の香りは奪わせない!!」


魔法少女かと思えば何やら物騒な踊りを見せたあと、彼女が決めポーズを取る。


「紅色のアイスティー、キャンディー!」


そう騒ぐと後ろにいる例の彼も同じように物騒なダンスを踊り始め、また別な決めポーズを取る。


「だ、橙色のストレート、ダージリン!」


お前も叫ぶのかと、ツッコミたくなるくらい完璧なタイミング。


と感心と若干の痛さに、厨二病の頃がフラッシュバック仕掛けていると先輩がアイコンタクトでお前もなんかやれと言ってくる。


それに無理だと返すと、


「えー、次はリゼの番だよ知らないの?」


「知りません」


「まあ、アニメ結構マイナーですからね…」


アニメはまあ時々漫画で読んでたやつがやってると嬉しいくらいでそこまでは知らない。


というかどうしてそれを知っていると、僕はただの陰の者であって、もうちょっとベクトルは別というかで。


「原作派?私アニメから入ったんだ」「僕の入りはアニメですね、今は原作派です」「同じだ〜…ふーむ、君いいね」


二人が会話に盛り上がり始めたのでそそくさ退散しようとしていると彼女も僕と同じ発想に至ったらしい。


「ねえ君、名前は?うちの部活に来ない?」


松波洋介(まつなみ ようすけ)って言います!こんなに通じる人初めてです!誘ってくれてありがとうございます!…でも僕、そういう演技とかは」


何やら格好やらで誤解が生じているらしい。


「ああ、うちの部活そういうのじゃないからって大丈夫だと思う、なんならやること決まってないから困るくらいだよ」


彼の顔が少しばかり明るくなる。


「なんという部活なんですか?」


そして聞いてきたそれに答えるのはもちろんこの人、


「文芸文化研究部!!訳してブブケンよ!」


森千里の先輩であった。


「そんな部活あったんですね」


やはり影が薄いらしい。大概こう言う部活には人との接触をしたくない人とかが来るはずだと思っていたけども、中途半端に先輩が頑張っていたおかげかそれとも先代たちが何かあったのか、認知が低いようだ。


「ねね?どう?君、うちにこない?」


「はいと…言いたいんですが、僕今部活動10こ入ってまして…これ以上はというか今も手が間に合ってないっていうかで、」



「「10個掛け持ち!?」」



バイト尽くしの生活の僕からするとなんて贅沢なのかと思ってしまう反面、大変すぎて過労死するのではないかと思ってしまった。


その時廊下から風が入る。


その風に先輩の持っていたカーテンと窓のカーテンが揺れ、窓から僕の斜め前に立っていた彼の顔半分に光が入る。


その目の下にはくっきりと生活が不足している人間特有のクマができていた。


「そこで…彼に少し頼みたいことがあったのですが…先輩にもお願いできますか?」


彼の願いはこうだった。


その部活動を全部辞めて、一つに絞りたいとのことだった。


「オーケー先輩たちに任せて頂戴!!代わりに見返りは君の体!!いただくよ!」


テンションの上がった彼女の誤解を生みそうな言葉が彼に飛ぶ。彼は困惑し始め顔を赤く染めていく。


その誤解を解くやら、話を聞くやら、


(忙しくなりそうだ…)


楽しいと思ってしまった。




→#4「淫魔と退部とイエスマン」

VerGo:Only#3

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オレはどうしてここにいる。誰にも認められるわけがない。罪を背負った人間は、身を削られてその魂ごとなくなっていくはずだ。だと言うのに何故いる。この姿は誰だ。


「お前は誰だ」


「僕は神、君は……クルシュ」


その言葉を聞いた途端彼は目の前から姿を消し、


オレは中世の街並みの中に佇んでいた。

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投稿者メモ

後書きの文章はフィクションですなんなら前書きも本文も“この作品”には“それほど”関係ないですので別に読まないでもいいと思います。自己満足って大事!

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