第十二話【念願と先生と巨木】
何かがこちらを見ていた。
彼がパフォーマンスをしたあの時。
今思えばあの時から人の進化を見ていたのだろう。
ビビットと名乗ったあの存在はなんだったのだろうと考えていた。
しかし今思えば簡単だ。
あれもまた、
無事、次の日から有紗が部活に来てくれるようになり空いていた瀬名の右隣の席に足を上げて座っているのを見て笑いそうになった。
「んだよ」
心なしかその顔は穏やかで前みたいに相変わらず左目は結構きつめの目つきをしているが見慣れたお陰か慄くこともなくなった。
洋介が紅茶を手渡してくれる。
そう今現在先輩が生徒会に正式に部活を立ち上げてくれるかの審議を聞きにいっているところだった。
空は掃除をしてレイアウトを戻したばかりの長机に突っ伏して突っ伏して寝ており、瀬名は何やらキョロキョロと全員の動きを伺っている。
そして本を読んでいた僕が紅茶を受け取った後に瀬菜の方を改めて見ると
「ケンヤさんとは目があったのです〜」
と何の遊びをしていたのか暇つぶしに目を合わせてもらえるのかの実験をしていたらしいことを話す。
「しかし!寝てるソラさんはまだしも、ヨウスケさん!どうしてあなたは目を合わせてはくれぬのですか!許せないのです!」
必死に洋介と目を合わせようとするもある意味高度なコミュニケーションスキルである洋介の極人見知りによって全てかわされてしまう。
「何やってんだおめえは」
とその間に瀬菜の頭を有紗が掴みわしゃわしゃと撫で始める。
「そんなへたれほっとけって、ほらオレならいくらでも目ぇあわしてやんぞ?」
相変わらずのドスの効いたなんとも低く太い声、
(よく出せるよなぁ)
と心の中で思っていると洋介が僕の制服の裾を引っ張ってくる。
「ぼぼ、ぼくはヘタレ…なんですかぁ」
と半ばあきらめたかのような言い回し、
「意識することもないだろあんなの」
「は!聞き捨てならぬのです!誰がチンチクリンなのです!私だって立派な高校生なのですよ!!そうなのですよね!有紗さん!」
「おぉ〜そうだなぁ」
必死に抵抗を見せる子供をあやすように机から足を下ろした有紗はその膝に瀬菜を乗せてさらに撫で回して遊ぶ。
「ははは、ごめんごめん」(チンチクリンとは言ってないんだけどなぁ)
「ヨウスケ、君はとにかくそのコミュ症をぼくと一緒に克服するべきだ、そうすれば」
パイプ椅子に強い振動が伝わりその衝撃でびっくりしながら立ち上がってしまう。
そして何事かと後ろを振り返ると、
「諸君!!見たまえ!!我々ブブケン活動継続が了承されたぞ!!」
と高々と勝訴と書かれた紙を掲げる先輩が立っていた。
「「お、おおお!!」」
みんなが声を上げて喜んでいると空がやっと起き上がりめを擦りながら、なんだどうしたと慌てる。
その顔がまた面白くてたまらなかった。
その日、バイトに遅刻するくらいまで残ってみんなでおめでとう会という名のいつも通りの活動をするのだった。
・・・
その帰り道、ふと視線を感じて校門から教室の方を見る。すると恐ろしいことに、
部室の窓あたりに誰かが浮いていてそいつがこちらを見つめているのがわかった。
遠くてよくわからなかったが小学生くらいで目立った特徴といえばあの青空みたいな色の短い紙くらいだったろう。
そいつはこちらに気がつくと慌てることなくゆっくりと消え去った。
(え、えええ…何あれぇ)
意味もわからずとりあえず見なかったことにして、バイトに向かおうとすると
『この際だから聞くけど君はなんなんだ?』
とふわっとした声のような波のようなものがどこからともなく聞こえてきた。
(え?どこ?だれ?)
気持ち悪さに鳥肌を立たせながら辺りを見回しても誰もいない。しかし
『見えるわけないだろ、もうそこにはいないよ、いいからさ、洗いざらい話なよ』
と絶えずはっきり声は聞こえて来る。
(話すって…何を話せば…)
心当たりがない。だって僕はただの能力者でそれがなんなのか自分でも理解していないほどなのだから。
『…あそう、んならいいや』
そしてその言葉を最後に声は全く聞こえなくなったのだった。
(…幻聴?)
何がなんだかわからず、とにかく疲れているんだろうと思い特に考えることもなく家路に着く。
・・・
さてそんなことがあって数日、七月に入った頃。
生徒六人が部の承認用の条件にしても先生がいなければ今後なにかと、と先輩に話すと元から先生は居たと言われた。
どうやら清掃の時よく顔を合わせる物理の先生がこの部活の顧問だったとのこと、相変わらず忙しそうで特に顔を出すことはない。
「さて、今日はそんなみんなに朗報よ!」
と先輩がその数日ずっとノートパソコンと睨めっこして作っていた資料を見せてくれた。
「…合宿?」
「そう!」
その資料の表紙には大きく“夏の合宿(という程)”と書かれていた。どうやらこの先輩温泉に行きたかったらしく、先生を騙して許可を取ってきたらしい。
「やるなー」「すげーな千里パイセン」
不良二人が関心していると瀬菜が
「美濃路温泉!?めちゃめちゃお金かかる場所では何のですか!?」
確かに美濃路と言えば効能と呼ばれるものが全て入ってると噂の高級旅館、そんな場所に行けるというのはもう夢みたいだ。すると目の下にクマができている先輩が叫ぶ。
「先輩を舐めないで頂戴、このためにお金はしっかり準備してきたのよ」
と銀行のカードを見せてくれる。
「実は去年行きたかったんだけど…皆の都合が合わなくて行けなかったの、それを無理言って一年伸ばしてもらったのね…その日が来週の土日なのよ…」
「なぜ夏休みにしなかったんです?」
「予約が…いっぱいで」
疲れ切った顔からその努力が窺える。
(来週の土日か…確かまだシフト提出はしてなかったはず…)
ふと過去を振り返ろうとして額に手を当てる。最近よく使っていたからか簡単に意識を沈められる。
そしてそこで目に入ったのは目的とは違う記憶。そこにははっきり数日前の窓にいた青髪の人が映っていた。
(やっぱり提出はしてなかったか)
そして戻った直後、ふいに一瞬つい窓に目を向けてしまった。
するとそこには少年のような少女のようなどっち付かずの青髪の子供が窓の外で宙に浮いているのが見えた。
「あ!!」
と言って机を叩きながら立ち上がって窓を見ると瞬きした一瞬でそいつは消えていた。
「え?どどどうしたの?」「んだようるせーぞ」「姉御の言う通りだぜ、突然なんだ?」
「びびびびっくり…したぁ…」「耳が痛いのです!!」
瀬菜に逆ギレされて叩かれる。
「あ、いや窓に今子供が…」
もうすでにいなくなってることは確認できていたが、それでもはっきりそいつがこちらを見つめているのが見えてしまったのだ。
「だれもいないけど…大丈夫?」
「あーはい、すみませんたぶん寝ぼけてたんだと思います」
そんなことはない。意識を戻した直後に見えたんだ間違いはない。あそこに何かいた。
「まあそれで皆来週の土日は予定大丈夫かな?」
と彼女にとってたぶん一番重要なことを聞いているのだろう先輩の声が少し弱い。
「僕は大丈夫です」「予定ないな」「オレも大丈夫だ」「ノープログレムなのです!」「だ、だいじょうぶ…です!」
まさかの全員用事がないという、まあそれもそうか夏休みに入る少し前なのだから普通だろう。
「おおお!!やった!キャンセルなしだ!」
だが心配はその次の週にあるテストだ。
活動のおかげかここにいる人の殆どが歴史には強くなりつつある実感はあるらしいがそれ以外も手を抜いたら危うい。
(…ん?)
そんなことを考えていると資料の目次に気になる項を見つける。
勉強会と書かれた項目を開くとそこには“優秀な先輩がテストのために色々教えちゃう時間”と書かれ一日目の正午付近などがその時間にあてがわれていた。
果たして優秀なのだろうかと不安ではあるが持ち物に勉強道具一式と書かれてるくらいだからありがたい話だ。
さてその後、
「あ、合宿?この時期に?どこいくんだよ」
調理当番だった父が料理の片手間に聞いてくれた。
「…み、みのじ温泉」
まな板に打ち付けられる包丁の音が一段と大きく鳴り響いたかと思うと手が止まったのか一気に静寂が訪れる。
「…みみみみ美濃路!?あの高級温泉街か!?うちにそんな金ないぞ!?お前詐欺とかにあってるんじゃっ」
「違うって…」
父に一頻り話すと、目をパチクリしながら今まで置いていた包丁を慎重に持ち上げて
「焦ったぁ」
と言って調理に戻った。
「んじゃあれだな、ちゃんと準備してけよ」
「うん」
言われながら僕も服とかを確認していると父ができた料理を持ってこちらに戻って言う。
「あーそれとあれだ、合宿も帰ってくるまでが合宿だ、ちゃんとその部活の奴らと仲良くなってこいよ」
彼はなんであれ、僕が一人で出かける時毎回そう言う。
“帰ってくるまでが…仲良くなってこい”
今までさほど意識したことのない言葉だったがこの時の彼の表情はやけに楽しげで、安心し切ったように感じた。
目に焼きつくほどに、
「くうぞ〜」「はいはい」
そうして、着々と準備が進み…
・・・三日後
「むむむ??……むむむむ!??」
集合場所は学校の校門前、ここなら先生もきやすいとのことでみんな納得した。
「むむ??…むむむ??」
そして現在一番手で僕はそれなりにおしゃれをしてきたふくそうで校門に軽く寄り掛かっていたのだが、
「むむぅ〜!!?」
さっきから視界の端に、何かがちょろちょろ写っている。多分人の頭だろうが明らかに背が小さい。
「ケンヤさん!おはようございなのです!」
「おはようセナ…それでどうしたの?そんなに人のことジロジロと」
「むむ…んーとそのですね、なるべくオシャレはここが良いって言ってあげると異性は喜ぶと雑誌に書いてあったのですよ、そこでケンヤさんのファッションセンスを数値化しようと目でできるだけの計測をしていたのですが………わかんないのです」「だろうな」
そう言う瀬菜は、あいも変わらず白衣…と思いきやいつもと少しデザインが違う。それに中にきているのも涼しげな空色のワンピース。組み合わせはどうかと思ったが足元もおしゃれにしてきているようでくるぶしの出る白の靴下を履いてきていた。
(というかこの体制でよく見えたな)
白衣の背中にいつもは装飾すらないというのに今日はベルトのようなものが腰付近に付いておりくびれを表現できるような少し大人びた白衣だった。
「あそうだセナ、みんなは見た?」
先生は校内で何やら準備をしているのだろう以前先輩に教えてもらった車が駐車場に止められているのがわかる。しかしその隣にある明らかに大きなワゴン、今回はあれでいくのだろう。
「いいえ?ここからは見えないのです」
美濃路、ここからだと県境を跨いで北の方に少し行くことになる。東京を出てすぐの場所に軽い心霊スポットのような山道があるということを先日頭に入れてきた。合宿といえば怖い話がつきものなので、
「まあそりゃそうだろうね」
(いうべきだろうか、今日は変わった白衣を着ているんだねとか…聞くべきだろうか僕の今日のセンスはどれくらいかとか…)
「ええと…お、おはようござい、ます」
すると聴き慣れた声、陽介がどうやら到着したようで…瀬菜のいる側と反対左を向くと、
黒い裾が細くなっていくような涼しげな薄い生地のパンツの股に付近に丈の長い白シャツが上から着ている5分袖の暗めの紺色だろうか黒だろうかと言った大きめのTシャツの裾から飛び出しており首にアクセントとしてリングを下げていた。
(ザ、オシャレ…しかしお前がその格好か、そうかその格好なのか…)
「ヨウスケ…お前、」「かわいいのです!」「ヨースケ…なのかお前、かわいいの…な」
と右から来ていた有紗と思われる声はなんというか聴き慣れてない本性のほうのように聞こえた。ドスの聞いたキャラも流石にこの着こなしには度肝抜かれたと言ったところだろう。
しかしそれはこちらもだった。
「っよ、お前ら…んしょっと」
手荷物に何を持ってきたのかデカい赤のスーツケースを置く姿は長髪の赤髪ではなかった。
「あ、あれ!?アネゴさん髪が、」
あの時見た黒いショート髪に若干メッシュの入った感じ、そしてサングラスやそのヘソ出しの衣装と言いどことなくこいつが海外から来たセレブであるかのように見えた。
(実は海外の人なんだけどな)
「ああ、あれかあれ染めてたんだわ、暑苦しかったしあの髪は売った」
カツラを売ったのだとわかる僕からすればなんの疑問も浮かばないが女性が長い髪を切るとなると男は少し傷心を警戒してしまう。
男気を今まで意識してきていた洋介もそれはそれは丁寧に彼女の前でご冥福をお祈り致しますと言わんばかりに手を合わせる。
「ははは、別髪くらいすぐ生えてくるっての、お前が気にすんなよなかっこつけやがって」
そういうと顔を上げろと洋介の頬を掴みその顔をじっと見つめる。
そして目線をだんだん下にしていって、冷静に一言。
「やっぱお前男か?」
とだけいうと相変わらずロリかわいいのが好きなのか背の小さいセナを軽々と持ち上げて抱えて我が子のように抱き抱える。
「ダセーけどやっぱこっちのがいいなぁ!」
とおっさん臭いことを言いながら整えてきているであろう、瀬菜の頭を適当に見せつつ結構丁寧に撫で回す。
(やっぱこいつかわいいしか考えてないな)
「ケンヤ…ぼ、ぼくはぁぼかぁオトコだよね」
こちらにフラフラとよってきた陽介がこれでもかと目を潤しながら上目遣いをして服の裾を掴んでくる。
(すまんヨウスケ、お前の擁護はできん)
と黙って目を瞑って、境界を超えないように理性を保ちながら頭をチョップすることしかぼくにはできなかった。
そして、
「おおおおおおおお!!!!」
と気合に入った喉の枯れそうな声が公的側から聞こえてくる。
来る方角は、有紗や僕と同じで校門前右側から現れるはずの空がなぜか反対側の校門から巨大な風呂敷を背負って走ってきたのだ。
「あーありゃ間違えたな」「なのですね」「だなぁ」「ふ、風呂敷!?」
すると彼が途中疲れたのか一度校庭中央で止まり、足を踏み込んでこちらにすっ飛んできた。
「「うわああ!!」」
男性陣はその場から避難し、アリサはセナを奴の着地地点から遠ざけるように背を向ける。
「うっっし!!おはようみんな!!!いーい天気だ今日は!!」
そして着地した彼はその場で風呂敷を背負ったまま肩を回し挨拶を交わした。
「ソラ!君はアホか!」「アホってなんだ!きて早々ひどいぞ!」「いいやお前は馬鹿だ、クソラ!お陰でオレのかわいいセナナがほら!!」
とまるでぬいぐるみでも見せびらかすかのようにがっちりと瀬菜の腰を掴んで空の方へ有紗が押しつける。
「こんなに可愛くなって…へへへへ」
その瀬菜の顔と言ったらあまりにびびりすぎたのか顔のありとあらゆるパーツが顔中央に寄っていて、それはそれはブサイクだった。
(あーあんな美少女もこうなるのかーというか有紗のその溶けた顔はなんだキモいぞ)
と和んでいると、目を開いた瀬菜が
「わわわわわ!ソラさん!おおおおおはようなのです!!!」
と緊張し切った声で改まった挨拶を交わす。それを見て空が吹き出し、校門付近で盛大な爆笑が起きる。
さてそうこうしていると校舎から先輩が先生を連れて現れ、改めて先生も交えて部の継続おめでとうをいうこととなった。
「…ってーことで!!先生でーす!」
僕と洋介はよく会う清掃の時の先生であり、物理学を教えている人。担当学年は3年つまり先輩の学年である。初老の男性教師だがその真っ白な髪はしっかり整えられていて意外に痩せている。というかどこか悪いのだろうかちょっと痩せすぎな気もする。
「雛森明道気軽にヒナミーと呼んでくれ」
少しかすれたような低い声が耳から喉あたりまで響く。案外洒落は好きらしい。
(いやヒナミーって)
顔立ちも結構柔らかいから普段から接しやすい印象はあったがここまでとは、授業的にあまり話したことは無かったが気さくな人で助かった。
「よろしくお願いします」
全員で一礼を交わした後、先輩から改めて今回の予定を説明される。
そして美濃路に向けてワゴンが動き出し、その景色を僕はワゴンの中で楽しんでいた。
夏が始まってすぐの透き通った青い空と高い雲は海を連想させたが今回は山だ。谷間にある美濃路へと順調に車は進んでいく。
(…ん?)
山道のカーブを行く時前から来た車とすれ違いすぐ後に見えたガードレールの奥、その森林に何やら違和感を感じた。一瞬その一角が歪んだように見えたのだ。
すると肩を掴まれた。
「ケンヤ、おめえの番だぞ」
隣に座った女性のメッシュが目に入らんくらいに彼女は眼帯をつけていない片目で僕を見る。そして付け加えるように小さな声で、
「どうした?」
と聞いて来た。僕は心配してくれた彼女に首を横に振って彼らのやっていたシリトリに戻った。
(なんだろう…何かあったのかな…)
考え事をしているのと景色を見ているのとでだんだん眠くなっていき自然とまぶたが重くなっていく。そしてそのまま目を瞑っていると、
・・・
「え!?ケンヤ??」
とそんな声が聞こえた気がした。それは空の声だった。空は後ろで寝ているはずだというのに目の前で声がする。
おかしいと思って目を開くと、そこは真っ白な空間。
「え?なに?どういうこと?」
その目の前に立っているのはさっきと全く同じ姿の空。しかしみんながいない。
慌てて彼の肩を掴もうとしたところで目が覚めた。
「「っわ!」」
寝覚は最悪ってほどでは無かったが唐突に夢が終わったことに変に汗をかいてしまった。
目が覚めてすぐに行ったことは後ろにいた空を見ることだったが彼も同様こちらを見ていた。
「二人とも一緒に起きるのやめてw面白いw」
そろそろパーキングだということで先生がスピードを緩めていたようで、助手席に座っている瀬菜も後ろを心配そうに眺めていた。
二人でハテナマークを浮かべながら首を傾げているとパーキングについたようでトイレ休憩とついでに席替えが行われた。
結果、オレオレコンビの空と有紗の間に先輩が挟まり、後ろに僕と瀬菜、助手席に洋介という形になった。
そしてトイレへいった帰り、空におそる聴くと、彼もしっかり意識があって触れられる瞬間に夢から醒めたのだと同じ夢の内容を語った。同じ内容の夢を見るというのは今までなかったため本当に不思議なこともあるものだとその時はそれで終わった。
そして全員戻ったのを確認して出発。そこからまた数十分するともう温泉街は見えて来た。
「「「おー!!」」」
こんな高校生が普段着できていいのかと思わせるほど趣のある外見のお店たち、整備がされているのか道は砂利道ながらも歩きやすい。街路樹はなく、緩やかな坂道を登った先に見える鳥居のようなものの奥には永久桜と呼ばれている巨木の一部分が見えていた。
(あ、圧巻とはこれまさに…すごい)
言葉をなくしていると長距離運転が久々の先生がくたくたな様子で早く宿に向かおうと言い道案内を先輩に任せた。
「ケンヤさんあちらを!これもすごいのですよ!おほー!」
隣を歩いている瀬菜はあまりに興奮しすぎで変な語尾が追加されている。
「こけないようにな」
と言ったそばからばたりという音、そして
「ぬはぁ〜」
という情けない声すぐ振り返って彼女が倒れたであろう場所を見るといざ彼女が立ち上がろうというところだったようで彼女の服の中が見えそうになった。
(ぬ!?)
軽く目を逸らすと裾を払う音が聞こえた。
「だ、大丈夫?」
冷静を装って彼女の持っていた荷物を手渡す。
「いやはや…少し興奮しすぎたのですね…あててて」
恥ずかしそうに白衣に汚れがないか見ていた。こんな砂利道で盛大に転んだのに傷がないということは空でもない限りないはずだと、膝とかをしゃがんで見る。
彼女がさすっている足首辺りが少し血で滲んでいる。
「大丈夫?絆創膏とか…」
「大丈夫なのです!」
苦笑いで摩っていた足首をポンと叩くとくるぶしの下までしかない短い靴下をキュッと伸ばして彼女は歩き始めた。
そしてそのまま前の団体に追いついてしまった。
(…ならいいか)
僕も改めて先輩を先頭に二列で進む団体へと合流した。
まあしかし、そんな彼女の強がりも続くはずもなく途中から最後尾にいる彼女と話をしながらついて行っているとどうも歩き方が変になって来ており怪我をしていただろう左足を引きずり始めていた。
(うーんどうも大丈夫そうじゃなさそうなんだよなぁ…ん?)
と偶然目に入ったのは駕籠だった。
なぜかわからないがこの場所には駕籠の体験ができるものがいくつかあるようでそれは先輩の作ってくれたシオリにも書いてあった。
(確か駕籠を置ける場所はいくつかあったって書いてあったな…そうだ)
「ねえみんな、折角だしカゴ使ってみない?」
と少し全員の足を止めさせてそちらを指差す。先輩が真っ先に反応し、
「いいね!!楽しそう!!」
と言っていたが何やらこちらを振り向いた瞬間に瀬菜の足元に目が行っていたのでどうやら気が付いたのだろう。
そして先生抜きで2班に分かれた。
僕、瀬菜、有紗チームと先輩、洋介、空チームとなり、先生はこちらの駕篭に荷物を預けて少し散策しながら向かうよと言って先に行ってしまった。
「おいアリサ!どっちが先に着くか競争だ!!」「ほう?いい度胸じゃねえか!!」
とすぐさま先頭になった二人の競争癖が出て来て、先輩はそれに乗っかって足の準備をしている。
乗り物酔いしやすいと言っていた洋介が残念ながら乗ることとなったらしく、こちらも一番軽い瀬菜が駕籠に乗ることになった。
その時小声でありがとうと言われた気がしたが別に他意はないとだけ言って駕籠の面を閉めた。
(はあ、有紗だから本気を出すことはないとは思うけど…あの感じは)
「おいケンヤ…」
手を抜いたら殺すと言った具合に威圧の篭ったいつもの声、そして眼帯を外して瞑っている目。
「絶対勝つからな」「はい姉御!」
どう考えても本気なのは目に見えてわかった。迷惑をかけないようにしてもらいたいとそう願うばかりだった。
能力使用の禁止の札がなかったからかスタート時点で空が念を唱えているのが分かる。先輩は能力者ではないため吹っ飛ばないように身構えているように見えた。
有紗はというと小細工というかで、明らかに宝眼を使おうとしている。僕は前に合わせて動くしかないと諦める他なかった。
さて、人が少なくなった瞬間を狙って先輩が声を張り上げる。
「いざ!出発!!」
とその声と同時にこちらは走り出した。
そして彼方はというと
「大樹流…やべえ名前忘れた…ああもうなんでもいい!“自由、色彩、具現…っ覇!!」
と叫ぶと彼の足元に溜まっていた念であろうかが爆発したように虹が飛び散り上へと飛び上がった。
先輩もあまりのことに駕篭にしがみついており、横目で見ても空を飛んで行くということが目に見えていた。
「っち、拳闘術師がっ!!」
しかしこちらはスタートダッシュが早かった分幾分か相手より先んじている。
(念を具現化して足場を作ってるのか…すごいな)
パフォーマンスで見た花のエフェクトを踏みながら進む男が駕籠を背負っているという変な映像だがどう考えても立地も人も相手の方が楽しかも曲がり角もなく彼らは直進することができるため、いつでも追い抜かれる可能性がある。
「ケンヤ全速力で走りな!!」
と人が少ないとはいえ無茶を言う有紗に対し僕はなにをするのかわかっているためわかったとすぐに頷く事はできたが、中の瀬菜は不安で仕方がなかろう。
「ぶつかりませんようにぶつかりませんようにぶつかりませんようにぶつかりませんようにぃいいい!!」
とひたすら狂ったように願う声が中から漏れていた。
(最近体育でしか走ってなかったけど意外とついていけるぞ!!)
足の回しだけを気にして前より奥を見て感覚で次どちらに避けるのかを即座に判断する。
有紗がその間能力を使って少しだけその人たちを止めてくれる。死地を潜ってきただけありその能力の使用と足捌きは正確で綺麗に一瞬通る瞬間の2秒だけ彼らを止めていた。
200mくらい走ったところだろうか曲がり角を曲がった先に宿が見えた。そして案の定僕らは空たちに抜かれていた。
完全に人がいない通り、残りは一本道そしてどうやら空の能力も効果切れでそろそろ地面に足がつくこれならまだ走っていた僕たちの方がこの砂利道に離れている。
「いけるよアリサ!!」「ああ!!」
「ぬうおおおおお!!」「あははは!!」
そんな声がこの趣ある静かな街に響く、先ほどまで走っていたせいか何やら端末を持った人々がこちらにカメラを構えていたり応援してくれるような声が聞こえてくるのがわかるがそんなことを気にしている余裕はない。
直向きにただ走る。転ばないように置いていかれないように。
そしてゴール直前で2チームが並んだ。
ただ一生懸命に走る。すると
「お、やっと来たかね、随分遅かったなぁ」
と先生の声が聞こえてきた。揺れる駕籠の先にヒナミー先生が道を塞ぐように立っていたのだ。たしかにそこがゴールだがぶつかるとみんなで大事故だ。
「あぶねえぞヒナミー!!」
と走りながらだが空が叫ぶが先生がそのまま動こうとしない。
(やばいあのままぶつかっちゃいけない…?)
と減速を考えていると
「いいから空くん走って!!先生は大丈夫!」
先輩が減速しつつある空に言う。
(怪我してもいいって言うことか?…いや違う)
記憶を探るにも、時間も手も空いてない。そう迷っていると減速しつつあった僕らに駕籠の中から声がかかる。
「雛森先生はその昔なの通った特殊な流派、混成流の拳闘術師ですっ!!!行けます!走ってください!!」
「そういうことっ!!」「ありがとうセナ!!」
二人でよりスピードを上げる。
避けなくていいというのはよほど楽だったのか二人の息が合うというのが駕籠を通して分かった。
「うおおおお!!」「はああああ!!」「あははははははは」「おらああああ!!」
先生の立っている部分をゴールだと全員がわかった時、両チームの駕籠が同時に先生の肩を超えたことを理解した。
そして
「流派及び型省略柔禍盾・引縄波混成」
という声が聞こえてすぐ、目の前に幕のようなものが現れ、入るとなんの衝撃も無くなり駕籠を運んでいた僕たちの勢いが一気に消えてまるで水の中にいるような感覚に陥った。
体が浮くかもしれないと思った時能力がとけ駕籠の重さがゆっくりと戻ってくる。
「先生どっちでした!!」
と念が溶けてすぐ駕籠を下ろした先輩チームは先生に駆け寄る。僕たちも駕籠を起きそちらへ向かうと
「うーん…おんなじだったんじゃないかな」
その言葉に駕籠を運んでいた僕以外のみんなが「えええ」と落胆している中僕は駕籠の中にいた二人の安否を確認する。
「ケンヤさんそういう気の利かせ方は誤解を生むので今後一切禁止なのですよ?」
とさっきまで興奮気味だったせいか瀬菜は顔を赤らめており、逆に本気で酔ったのか洋介は肩を貸すとフラフラと立ち上がり真っ青な顔で
「あ、ありがとう…ケンヤ」
とかすれた声で言うのだった。あのノリに乗った僕もそうだが中に乗せたらもっとゆっくり行くべきだったと思った次第で
「なんかごめんな」
と二人に向けてだけでなくこの街にいる全ての人になるべく誠意を込めた一例をしてみんなの元へ戻っていった。
いわゆる歓声みたいなものが上がっていた気がしたが気のせいだろうとそう思いたい。
さてそんなところで宿に着き、仲居さんに部屋まで案内される。
部屋の中に仕切りがある約九畳のお部屋、男は扉に近い方、女子らは奥の方で寝るときはしきりになっている襖を閉めるということになった。
冷房も両部屋にあり、奥の部屋からベランダへ出て行くとこちらの部屋のベランダとつながっておりその景色はというとまだお昼だが、あの巨木が見えるというだけで素晴らしく思えた。
「いやぁ久々にあんなに走ったから汗かいちゃったよ」
という先輩が服の襟をパタパタと仰ぎ空気を入れているようだがそれは僕にいうべきではなかろう。首から伝った汗が鎖骨からその下に垂れていくのが見えてしまいつい息を飲んでしまった。
「僕は普段からあまり汗かかないんですけどあと二人はどうなんですかね?」
とベランダから中を覗くと、
洋介の介抱をしてくれていた瀬菜が有紗に奪われ彼女がひたすらほっぺを擦り付けている。空はというと目を回している洋介の横で畳に大の字で寝転がっている。
(なんであの二人はあんなに元気なんだ…ってか汗一つ書いてる様子ないんだけど)
「うわぁいいな〜、私は汗っかきなんだね〜今思い出したよ」
すると景色を眺めつつ風を浴びていた彼女が不思議なことを言った。
「思い出した?忘れてたんですか」
冗談かと思い少し笑いながら聴くと、そのまま雰囲気を変えることなく彼女は桜を見ながら
「うんそうなの〜、私忘れっぽいんだよねぇ〜、だから昨日もお兄ちゃんの苗字間違っちゃったのよ〜おかしいでしょ?名前でもあり得ないのに苗字よ?」
そもそも僕は兄がいるということを知らなかった。がそれでなんとなくこの少しばかり無防備っぽいあざとさがあることに納得がいく気がした。
「反抗期かなんかなんじゃないですか?」
「そんなことないって〜だって私お兄ちゃん大好きだし」
(大好きね、先輩ってやっぱなんか子供っぽいんだよな)
などと時間をつぶす。
僕は勉強道具を出して机で勉強を開始した。
他の人たちも勉強会だと、張り切ってそれぞれノートを開いたものの数分で飽きたのか、空は体調の戻った洋介と探検に出かけ、瀬菜は必要ないこともあってちょっかいをかけてくる。有紗はベランダにある竹の椅子で先生とくつろいでいるし先輩は疲れたのか眠ってしまった。
瀬菜の標的が僕から先輩に代わりにあの柔らかいほっぺをつねりに行った。
(自由だなぁ)
と見ているとつねられている頬が案外伸びることにさらに興味が惹かれたのかモチモチとその頬で遊び始めたのだ。足を痛めているというのに正座をして半ば膝枕のような体制で瀬菜はひたすら先輩のほっぺをモチモチする。その目は何か美味しそうなものを見つけたかのようで今にもよだれが落ちてきそうな顔をしながら楽しそうに頬をつねって遊んでいるのだ。
とそこに探検に行っていた二人が、というか空が洋介を抱えて戻ってきた。
「ケンヤ!!俺腹減ったぞ!!」
と開口早々に、そんなことを口走る。
そういえばと時間を確認するともう13時でお昼のピークは過ぎていることに気がついた。
「んじゃ何か食べに行こうか!!」
僕が口を開こうとした途端いつ起きたのか先輩が既に支度を済ませて、外に行く準備をしていた。
ベランダにいた二人に声をかけ、先生に旅館で適当に食べるからと部屋の鍵を預けて大きな桜の街を歩くことになった。
「セナさん、もう足は大丈夫?」
と洋介が瀬名の心配をしているが彼女にもう足を引きずるような様子はなく、元気いっぱいに
「大丈夫なのです!!」
と言い、洋介が巻いてくれた包帯のおかげだと彼の肩を背伸びをして叩いた。
「もし辛いようだったら、彼らに担いでもらいなね?」
と先輩が僕と空そしてそう言われて嬉しそうに胸を張る洋介ではなく有紗に目線を向けていた。
「感謝なのです!」
「任せな」「おうさ」「ええ…ぼ、ぼくはぁ」「ああじゃあ僕が怪我した時、頼んでもいいかヨウスケっ」
なぜ僕が彼を励ましているんだろうか。
と謎にテンションが上がったものと少し自分の傷がえぐられつつある人、その他数名を連れて街を歩く。
見上げなくとも屋根が見えるほどに低い建物たちと山の斜面を緩やかにしたような円状の構造の街、それが美濃路。
温泉の効能は殆どが夜にならないと発揮されないという伝承やその効能の数の多さは世界一とされており、確実に疲労回復や免疫力強化には使えるらしい。
温泉の効能をより多く受けたことで大きく育ったとされている巨木がこの街のシンボルでありどの温泉よりも足並みの多い観光地でもある。
「さて!何を食べよう諸君!!」
美濃路の名産は巨木に合わせ巨大に作られた桜餅と温泉卵やお酒、そして蕎麦が有名である。
そのためまずみんなで蕎麦を食べにいくものかと思っていたが、
「粉物だ!」「蕎麦」「桜餅!」「緑茶が飲めれば…どこでも」「たまご…って統一感のなさ!!」
こんなに腹が減っているならせっかくここにきたのだからと思うのはわかるが蕎麦という意見が一致してるのが何故か有紗しかいなかった。
「お金は持ってるのよね?なら三つか二つに分けてもいいかもね?」
と先輩が各々の自由時間を設けてくれる。
さてそんなこんなで本日何度目かの人分けが始まったが、
有紗と僕とそれ以外というなんとも言い難い組み合わせになった。と言っても近くのお店で別々にものを食べたいという意見が変わらなかったからだが、
僕の見つけたお蕎麦屋さんの向かいにちょうど粉物とかを扱ってるお店があったので残りがそこでという形になってしまったのだ。
(普通群れるだろ高校生って)
と突っ込みながら有紗に目で来いと言われ蕎麦屋に入っていく。
さて要するに女性と二人きりで食事というわけだが、先輩と部室で二人でいた時より全くドキドキしない。
多分胸がないせいではないだろうが、記憶をある程度共有している仲だからかやはり安心が強い。
「ケンヤは何頼むんだ?」
「ざるでいいかな」
それよりも彼女のチョイスとして蕎麦が出てきたことがより気になっていた。
「ざる…もり…なんだこれ何が違うんだ?多いのか?」
例のつり目気味で目蓋がキリッと揃った目でアホみたいなことを言ってこられると面白い。
「ざるそばには海苔が乗ってるんだ、もりそばは海苔がないんだ…あと違いというとお店では器を丸か四角かで変えてたりする…感じだったと思う」
「さすが日本人詳しいな」
なんでかわからないけどさっきより演技がゆるい気がする。所々“彼女”である部分が出てきている。
「ははは、こんなこと鼻を高くして言える人そうそういないよ」
(そう見るとこの人結構純粋で可愛いと思うんだけどな……いや待て空に女体化って考えが張り付いてどうやっても可愛く見えないぞ己空め)
「んだよオレがバカっていいてぇのか?」
ドスの効いた声が戻ってくる。怒るとすぐにこの声になるためか最近離れてあまり怖く無くなってきた。
注文を取り食事が届く間こんな質問が投げかけられた。
「そういや気になってたんだがよ、お前の記憶覗いた時、お前の黒歴史みたいなの見たわけだが、アレってまじなのか?裏番みたいなことやってたって」
「いや、裏番って…(まあ確かに言い方にもよるけど)まあ一応事実だよ、でも記憶に残ってる人はいないよ親にも言ってないから墓場まで持っていこうかと思ったんだけどね」
中学生の記憶を弄りまくって犯罪っぽいことをしていたという事実は先日の事件の時に有紗に知られている。それも瀬菜にも見られていない中学内での僕の幼い企みも全てだ。
「うかつにも自分の能力のイレギュラーでばれたってか、ッハッハッハウケるわ」
「もういいだろアリサそのことは忘れてくれよ、僕だってバカだってわかってるんだ…」
不公平だとも誰かに話されてしまうとも考えることはなかった。自分も彼女の秘密を持っているためである。だがあの時見えた映像以上のデータを僕はまだ知らない。
(そういえば有紗も偽名なんだっけ)
とそう思った時、
「…ユノーフィト・サリア、あたしのナマエだ覚えとけ、後々あたしがなんか話そうものならその名前を叫べばいい、まあ逆の時はそうだな“第四の三英雄”とでも叫んでやるよ」
ジョークなのだろうが温かみがあった。
(ユノーフィトで柚乃、サリアを有紗って…)
「ふふ…ははははおかしいw、そりゃいいねっていうか本名殆ど変わってなくてww」
その優しさに甘えてしまったのかつい本人の前で名前を笑ってしまった。だが彼女は怒ることもなくただいつもより穏やかな目でこちらを見たあと対面から軽くチョップをかましてきた。
→#13「始まりと終わりの森」
VerGo:Only#12
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忘れてしまったことを思い出そうとするとよく鍵がかかったみたいに思い出せなくなる。思い出せなくなるから諦めると、その記憶のかけらが目を掠めてく。
でもそういうことがあるとすぐに現実でびっくりすることが起きてしまって気が緩んだ隙にまたその考えていたこと自体をど忘れしちゃう。
今だってそうだ。
あんなに楽しそうに笑う村上くんを目の前で見てみたいと思ってしまったから、何頼もうとしてたのか忘れちゃった。
砂利道を挟んでちょうど向かいに対面で座る彼らをガラス越しから眺めながら自分で分けたのに何故か不満だらけでついやけ食いをしたくなってしまった。
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投稿者メモ
いつもより少し長めに書きました。なのでメモは少し短めです。




