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星の想い  作者: 景虎
新たな魔法神
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火加減は重要

ポーションは体力回復はもちろん、魔力も回復する。

そして軽度な傷なら治してしまう。

体力や魔力は寝れば大抵回復するし、擦り傷なども気がつけば治ってしまうものだ。

ならば強いポーションなら体の欠損のような大怪我や病気にも効くかというと残念ながら効果はない。

ポーションは自身の体の免疫力を瞬間的に高めて自己回復する薬ではなく、液体の形をした回復魔法なのだ。


エミリーがそれに気づいたのは、ミーナの手の治癒の際、記憶を固定する魔法薬を見たからだった。

サクヤの魔法薬はミーナの大剣を振る記憶を元通りにその手に刻み込ませたのだった。そしてその魔法の術式は魔法薬の中に作られていた。つまり魔法薬が魔法そのものだったのだ。

エミリーは一度見た魔法を解析する力がある。液体魔法を見た時、それまで見えていなかった液体の中の魔法陣が認識できるようになったのだった。

そしてポーションの中に回復の魔法陣を発見した。ポーションは何度も飲んでいたので経験済みだったから。


魔法の水で作った生ポーションといつもの不味いポーションの魔法式は比べてみると随分と違った。

どうやら材料の魔力量と製法に関係しているようで、生ポーションは魔法水に薬草を入れるだけなので、魔法水の魔力が高いほど水の性質が強く残るポーションが出来上がる。水に苦味がないので不味くないのだ。ただし魔力が固定されていないので、時間が経つと魔法式が分解して薬草の効果がなくなってしまう。

リーが作るポーションは簡単に説明すれば、薬草を水でさらしてから刻んだ物を茹でてアク抜きをする。そうして用意した物を乾燥させ、専用の溶剤に入れゆっくり火にかけてエキスを抽出する。そのエキスを水で薄めてポーションにしているのだ。

この専用の溶剤が魔法陣を固定する触媒になっているのだ。

ではこの溶剤を生ポーションに入れれば魔法陣が固定されるのかといえば、残念ながらそうはならなかった。

魔法水の魔力が強すぎるためだ。この溶剤にも魔力が宿っているが普通の水用の触媒のようで、反応しなかった。


実のところ、エミリーはすでに生ポーションの水性魔法陣を固定する方法を手に入れていた。サクヤの治癒魔法で液体魔法を手に記憶させる魔法を見ていたからだ。これを生ポーションの魔法陣に応用すれば良いので、試してみたら上手く行ったのだった。


「あああーーーーーー!!!!!」

エミリーは日夜魔法の研究を行っている。その日何となく生ポーションの魔法陣を見ているとふと魔法陣の定着が出来るんじゃないかと思った。


「魔法神エミリーの名においてこの即席ポーションの魔法陣に持続的な力を与える!」


「これは液体魔法じゃなくて、液体の加護ですね・・・」

エミリーの叫び声を聞いたキャンディとルークはエミリーの部屋に入ると不思議な光を放つ小瓶を見つけた。

キャンディはアクアを呼び出してしばらく液体を調べた後そう言った。

「そうです。これはもうポーションとは言えない何かです。言うなれば超神水とでもいうべき代物です!まったく!」

シルフは少し呆れたように後に続いた。


「あらあら、エミリーさんはすごい物を作っちゃったのね。」

出来たものを調べてもらうためにサクヤを訪ねると、瓶を少し見たサクヤはそう言って笑った。

「あ、あのサクヤ姫?これはポーションじゃないんですか?」

「うーん、そうね。ポーションって飲み物でしょ?でもこれは持ってるだけで回復するくらい魔力が溢れちゃってるわ。だからこれは強力な護符みたいなものかしらね。」

「飲めないんですか?」

「どうかしら?魔力の強い人なら耐性があるからいいけど、普通の人には劇薬になっちゃうと思うわ。」

「何でこんなものができちゃったのかしら?魔法が間違っていたのかな?」

「別に間違っちゃいねーさ。ただエミリーの込めた魔力が強かったのさ。もっともっと少ない魔力で十分だったんだ。ちっちゃな小瓶なんだから。」

ジェシカは自分の体の半分くらいある瓶の周りを飛びながらそう言った。

「せっかく上手くいったと思ったのに・・・」

「まあ、仕方がないわ。エミリーさんはまだ魔力調整の修行中なんだから。それはそうとそれは危ないから私が預かっておくわ。ついでに効果も調べておくわね。」

サクヤはそう言って小瓶を空間魔法で収納した。


「うー、私まだまだだわ・・・」

「何言ってるですか?あんなものエミリーしか作れないです!むしろ流石エミリー、胸を張るがいいです!」

部屋に戻ってくると少し凹んだが、シルフがフォローしてくれた。

「そうだぜ!それにエミリー様かキャンディの水魔法じゃないとあんなに強い魔法水はまだ作れないんだからさ。予定通り魔法の火を使ったポーションの作り方を完成させようぜ!」


ルークの言う通り、水の出る蛇口にキャンディの水魔法から解読した魔法陣を組み込んでみたが、同じレベルの魔法水を得ることはできなかった。

キャンディの水魔法は強力だが、精霊魔法ではないので魔法陣が有れば誰でも使えると思ったが、できる魔法水の魔力は、キャンディのそれには遠く及ばないものだった。

魔法にはやはり適正があるのだった。

それでも魔法水を使うことで製造作業に大きな変化があった。

ただの水では薬草のアク抜き作業で魔力も一緒に抜けてしまっていた事がわかったのだ。

そしていろいろ試してみた結果もう一つわかったことがあった。

液体魔法の固定には魔力のバランスを整える必要があると。

魔法水使用でより多くのエキスの抽出が可能になったが、それに見合う魔力がないためできる量は変わらなかった。

魔法陣固定のためには追加の魔力が必要で、それが魔法の火というわけなのだ。

そして強すぎても弱すぎてもダメ、バランスが大切なのだった。


魔法の火自体は、エミリーもカーラも出すことはできるが、調理や物作りのための実用的な魔法の火は出せなかった。

時間が経つと魔力が切れて消えてしまうのだ。

持続的な魔法の火を使うには精霊魔法かそれ相当の魔法使いが必要なのだった。


☆★☆★☆★☆★


「ホーリーライト!」

ミサキの体を暖かい光が包み込んだ。

ぼんやりしていた意識がハッキリしてくる。

「私、魔法使いになったんだ。」

とんでもないないことが次々と起きるのを間近で見ながら正気でいられたのは、どこか他人事のように感じていたからだろう。

そんな中で自分が魔法使いになったと言われ訳がわからなくなったところに、光に包まれた眩しすぎるアマテラスに精霊を贈られたところで意識が飛んだ。


目の前にはルークとさっきまでは眩しすぎてよく見えなかったアマテラスが立っていた。

「おお、ルークよ。ホーリーライトとは良い判断じゃ。褒美に口付をしてやろうか?」

「ダメーーー!」

「ダメじゃあーー!」

キャンディとセバスチャンが凄い勢いで突っ込んでくる。

「アマテラス様、ホーリーライトはノアの思い付きです。ノアを褒めてあげてください。ノア、おいで。」

ルークから白い光が出てきて妖精になった。

「良い働きじゃ、ノア。これからもルークを頼んだぞよ。」

アマテラスがその小さな頭を撫でるとノアは眩しい光を放ちながら飛び回り、その喜びを爆発させた。


「エミリー、ミサキに加護を与えてくれ。精霊付きとはいえ身にあまる魔力持ちになっておるからな。」

「あ、はい、アマテラス様!」

まだまだだわ、ルークはすぐに動いたのに。エミリーは少し自分を恥じた。


「魔法神エミリーの名において、ミシマ ミサキに加護を与える。」

ミサキの頭に手をかざした。

「ありがとうございます、エミリー様。これから魔法神の使徒として精一杯頑張ります!」

「ええ、期待しているわ。でもそんなに固くならなくてもいいのよ。仲良くやっていきましょうね!」

「そんな、私なんかにもったいないお言葉・・・」

「いいんだよ!エミリー様はこんな感じさ!すぐ慣れるさ!」

「ミサキさん、改めてよろしくね、あっちにお茶を用意してあるわ。」

「エミリー様はドワーフの私にも同じように接してくれた。そして女ドワーフにとっての非願、エルフ女王イワナガ様との拝謁も叶えてくれた、偉大にして寛大な心の持ち主。あなたも自然体でいればいい。」

「エミリー様は里に降臨するずっと前、誕生したその瞬間からは私達エルフに再び人間との交流をもたらした偉大な女神様。ただ、今は大切な仲間というそれ以上の絆が私たちにはある!エミリー様をサポート出来て仲間として歩む事は確かにこの上ない光栄だけど遠慮なんかは無用よ!」

「そうよ、ミサキ!エミリーは人でもエルフでもドワーフでも女神だって同じに接するのよ!私も女神だけど気にしなくていいわ。なんたって私の旦那様は人なんだから、ねえ、ライアン!同じ火の魔法使い同士なんだから、なんでも聞いてちょうだい!」

「そうですよ、これからみんなで新しい魔法の世界を作っていくんです。カーラにも火の魔法を教えてあげてくださいね。」

みんなが口々にミサキを歓迎する。


「エミリーよ、これがお主の力なのだ。お主の想いはちゃんと伝わっておる。何を恥じることがある?気付かぬことは誰かが教えてくれるだろう。お主は堂々として居れば良いのだ!」

アマテラスがエミリーの頭をポンポンと叩く。

「そうですね!未熟な私が悩んでもしょうがないですよね。新しい仲間も加わったことだし、お茶にしましょうか!」


ミサキが加わったことでようやくポーション作りのための人材が揃った。

ドワーフの里に着くまでに火加減の研究も進むだろう。

でも今はこの出会いを喜びお茶会を楽しむとしよう。


火山でのお茶会はアイスコーヒーが人気だったのは言うまでもない。

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