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星の想い  作者: 景虎
新たな魔法神
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迦具土

「あのう、アマテラス様、シルフ達はどこにいったんでしょうか?」


大神様とアマテラス様の関係とフェチズムが暴露されたが、当の本人達はまるで意に介していないようだ。


「おお、エミリー、彼奴(あやつ)らは夜乃食国(よるのおすくに)に送っておいたわ。いい修行になるだろう。」

「ツクヨミの世界ではないか!なんじゃ!わしには会わなかったのにツクヨミには会っておったのか?」

「何を言う、お主が大神候補を早く育てなかったのが悪いのだ。」

「わしの方がアマテラスを想っておるのに!」

「ああ、お主は何を言っているのだ。ツクヨミの方が早く候補を育てたから、我は次の指導に行ってただけぞ。」

大神様とアマテラス様はまた言い合いを始めてしまった。


「サクヤ姫、よるのおすくにって何のこと?」

「夜乃食国はツクヨミ様が統治する世界で、この世界とは別の次元にあるの。アマテラス様の太陽の世界と対をなす月の世界ね。」

「ああ、あたい達は『魔界』って呼んでるけどな。」


「え?魔界?なら悪魔とか魔王がいるってこと?」

「うーん、ちょっと違うんだよなー。」


ジェシカとサクヤが言うには、この世には大きな四つの世界があって互いに影響しあって存在しているらしい。

四つの世界とは『昼の世界』と『夜の世界』、『生の世界』と『死の世界』のそれぞれ対となる二つの世界観から成り立っている。そして『昼の世界』は『生の世界』と、『夜の世界』は『死の世界』と関係が強いのだそうだ。

四つの世界はそれぞれ別の次元にあって、直接的には干渉できない。

つまり簡単に行き来は出来ないということらしい。


「『昼』と『夜』の世界は神々と精霊の世界だから、この世界よりずっと魔力が多いの。だから魔界。」

「じゃあ、アマテラス様のいる世界も『魔界』ってこと?」

「そーだぜ、でも区別して『神界』って呼んでんだ。」


ちなみに私達が本来いるはずの神の世界はその『神界』の出張所みたいなものらしい。強い魔力がある空間で肉体を必要としない。地上では(比較的に)魔力が少ない上に肉体の維持に魔力をごっそり使うため、普通は大きな魔法が使えなくなるようだ。


「エミリーさん、悪魔とか魔王がいるのは『死の世界』の方ね。」

「そーだな、サタンやエンマがいるからな。この神達は確かに魔王とか大王と呼ばれるな。こいつらははっきり言って魔王の中の魔王、大魔王だよな。」


「お姉様、それってめちゃくちゃ怖い世界なんじゃ・・・」

「そんなことねーぞ、カーラ。むしろ一番安全な世界だよな、サクヤ!」

「そうね、死んだ魂が集まる世界で、基本的には不死の住人が穏やかに暮らしているわ。生きている現世より争いもなくて平和な世界だと思うわ。」


「どうして争い事が起きないの?大魔王が怖くて何もできないの?」

「エミリーさん、争い事が起きないのは大魔王とは関係ないわ。争わないのは死なないからよ。そしてこの世界は誰でも平等で飢えることも寒さで凍えることもなくてとても快適な世界なの。時間が無限にあって何不自由なくいられたら争うことなんて馬鹿馬鹿しくてやってられないの。」


「サクヤ様、エンマ大王がいるのは地獄ですよね。地獄って悪い人が死んだらいくところじゃないですか?」

「カーラ、大王の仕事は『地獄』の裁判官よ。見た目は恐いけどとても公平な神様なの。『地獄』は現世で罪を犯した人間が罪を償うところ。『地獄』が『死の世界』じゃなくて、『死の世界』の中に『地獄』があるのよ。」


人は死ぬとその魂は次に生まれ変わるために浄化されるそうだ。

現世で良い行いを認められた者は『死の世界』の『天国』で浄化されてすぐ生まれ変わる。

現世で悪い行いをした者は『地獄』で長い時間罰を受けた後、魂が浄化されていれば生まれ変わる。

浄化されない場合は魂がすり減り消滅するまで『地獄』の罰を受け続けることになる。


ただほとんどの魂は『天国』にも『地獄』にもいかない。

穏やかな『死の世界』の中でゆっくりと魂を浄化していくのだ。


『地獄』は恐ろしいところだが、悪い事をすると落とされる場所だ。

一方的に罰を受けることしか出来ないので争いは起きようがない。

そして『地獄』は隔離されているので『死の世界』にいても『地獄』を感じることはできない。


『死の世界』は変化を求めない。魂をリセットする。そういう世界なのだ。



「結局、シルフ達はいつ頃戻ってくるのかしら?サラマンダーがいないとアイスの製造に支障がでるのに。」

「ああ、そうだったわ。サラマンダーと契約して火の魔法のレベルを上げなきゃ、いつまで経ってもキスができないじゃない!」


「カーラよ、サラマンダーと契約したとしてもその力をポーション作りに使うことはできんぞ。」

大神様が戻ってきていた。

「ど、どうしてですか?テスト前だから私はまだ半人前の女神です。だから人間に協力してもいいはずですよね?」


「称号じゃよ。お主の『幸福神の後継者候補』という称号じゃ。候補者はとなったものはこの世界にどれだけ貢献したかを競い合うのじゃ。それは同条件で行わねばならぬ。神は直接この世界に関与できぬ決まりがある。だからなんじゃよ。」

大神様の説明は私たちをがっかりさせるのに十分になものだった。カーラの力をポーション作りに利用できないと言われたのだから。

とりわけ当のカーラの落ち込み方はひどいものだった。


「そもそも、カーラよ。お主がサラマンダーと契約するとな、婿の体が耐えられなくなるぞ。それはお主も望まぬだろう。」

アマテラス様が決定的なダメ出しをした。


そうだった。そもそもライアンの魔力が弱すぎて、キスができないのだ。カーラへの想いとシルフも驚くほどの鍛錬によって急速に体に耐性をつけたといっても、カーラに大精霊の力がいきなり加わればライアンの体にどんな作用が出てしまうかわからない。


「カーラ、あなたの意気込みは嬉しいわ。でも特別魔法習得のために私が協力する条件はバニラアイスを作ることよ?サラマンダーと契約出来なかったのは少し残念だけど、火の魔法使いは他を当たればいいわ。それに新しい称号が手にはいったんだからここに来た意味はあったじゃない!元気出しなさいよ!」


本当は美味しいポーションを作れたらライアンに加護を与えるつもりだったのだ。ただドワーフの協力が必要なことが分かった後に、バニラ成分の抽出にもドワーフの技術が役に立ちそうなことが分かったのだった。

二つ一緒に解決すれば良かったが、目的地は一緒なのだからこの旅が無駄になることはない。

着いてしまえばいつでもゲートで訪問できるのだから何も問題はないだろう。


「うう、エミリーあんた優しいわね。本当はバニラアイスはついでなんでしょ?美味しいポーションはこの世界に必要になるからみんなであんなに準備してきたのに!」

カーラは涙目で言った。


「な、何を言ってるのかしら!」

「だってバニラはエミリーが食べたいだけでしょ?私だって女神なんだ!この世界のためにやってる事に協力できないんじゃバニラが作れたって意味ないよ!」


「馬鹿ね、カーラ。バニラアイスは私の名声を高めるのに必要だから交換条件にしたのよ。ポーションは魔法が広まらないと効果がないわ!つまり新米の私が世界から信仰を得ることが必要でしょ?使徒のキャンディが旧世界のコーヒーを広めることは魔法神を広める事に繋がるの。バニラアイスはコーヒーに合うからとても便利だったのよ!それにあなただって食べてみたいでしょう?」

さあ、咄嗟に思いついた言い訳だけど信じてくれるかな?


「あはは、全くあんたはいつも予想の斜め上を行くのね、バニラが世界のためになるのなら・・・そうね、落ち込んでなんていられないわ。やっぱり私あんたのそういうところ嫌いじゃないわ。」

よかった。いつものカーラに戻りそうだ。

カーラが少し元気になったので、みんなも自然に笑顔になった。


「あの、エミリー様。ちょっといいですか?」

「なあに、キャンディ?」

「いますよ、火の魔法使い。」

「どこに?」

「ミサキさんです。」

「え?」


「ミサキさん、あなた火の魔法使いだったの?」

「い、いえ。私は巫女ですから。大精霊サラマンダー様に仕えていただけで、そんな魔法使いだなんて知らなくて・・・」


「あー、これなー。」

「何?ジェシカ何か知っているの?」

「うーん、困ったな?」

ジェシカはミサキの周りをブンブン飛びながらブツブツ言っている。


「エミリーさん、これが幸福神の力なのよ。それにカーラの転災の力が加わったのね。ほら、カーラは今、魔法少女だから。」

確かに戦闘に参加していたカーラは変身したままだ。


「つまりどういう事?」

「これには我が答えよう。」

アマテラス様が言った。


「我がサラマンダーを夜乃食国に送ったことで、この精霊の住処には(あるじ)がいなくなったんだ。普通は結界がなくなり精霊が散らばることで魔素もなくなり場は落ち着くんだが我がいるため、結界は維持された。」

アマテラス様は続ける。


「そこにジェシカがスサノオを連れてやってきた。まあ、簡単に言えばこの閉鎖空間が満員になったのだ。それで窮屈になった精霊達が居場所を求めた。この時ジェシカの幸福神の力とカーラの転災の力がこの場に働き、精霊達を空いている体に押し込んで一人の魔法使いを誕生させたのだ。それがそこの娘だ。精霊の力を宿しているが通常の契約と違うので精霊の意思統一ができておらんのだ。ジェシカが困っているのはそのことだろう。」


「そーなんだ。属性を火に固定されてるから、火の上位精霊を迎え入れねーといけねーのにここには何故かいねーんだよ?」

「まあ、われにも責任がある。任せておけ。迦具土(かぐつち)を呼ぼう。」

アマテラスはそういうとミサキの前に立った。


「娘、名を申せ。」

「は、はい、ミシマ ミサキ と申します。」

「うむ、覚えておこう。お主に火の上位精霊迦具土を贈る。ここで会ったのも縁なのだろう。これからはエミリー、カーラ両女神に尽くすが良いぞ。」

「あ、ありがとうございます。身に余る光栄でございます。ですがサラマンダー様はどうなるのでしょうか?」

「何、サラマンダーのことは心配するな。しっかり修行させた後、カーラに贈るつもりだ。ではゆくぞ!」


赤い光が降りてきてミサキの中に入っていった。ビクッと一瞬体が震えたがすぐに落ち着いた。


ルークやキャンディと同レベルの魔法使いがここに誕生した。


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